カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※前の話と同じく雪菜視点です。



11話 膠着あるいは決着

 

 「──あなたのターンの終了時、わたしは既に公開している手札の2枚の【ルクバト】の効果を起動する」

 

 まるで台本を読み上げているかのような気のない声で香澄がそう宣言すると、彼女の手札の内の、2枚……少し前から絶えずこちらに弓を向ける2人の《魔女》が、その弓で矢を頭上へと打ち上げた。

 

 打ち上げられた矢はカードとなり、香澄の手札へと加わってゆく。

 

 【人馬の魔女ルクバト】

 コスト11。エンティティ。攻撃力1、体力1《分類:星辰の魔女》

 自分のターン中、手札にあるこのカードは任意のタイミングで公開してよい。公開された状態のこのカードが手札にあるなら、相手のターン終了時《不可避の一矢》を1枚手札に加え、このカードのコストを-2する。その後、このカードのコストが0以下なら、このカードを盤面に出して破壊する。

 

 【不可避の一矢】

 コスト2。マジック。ファントム。《分類:星辰の魔女》

 盤面のエンティティ、もしくはソーサラーを選択して、3ダメージを与える。

 自分の盤面のエンティティを選択したなら、3ダメージを与えるのではなく破壊し、その後コストを3回復し、カードを墓所からランダムに1枚デッキに加える。

 

 現在、【人馬の魔女ルクバト】2枚のコストは、3と5。

 ……【不可避の一矢】の供給は、まだ続く。

 

 処理できなかったレグルスだけではない。

 今問題なのは、この【人馬の魔女ルクバト】もそうだ。

 

 つい先ほどから、私はこの【不可避の一矢】で、少しずつ、確実に削られていた。

 

 この【人馬の魔女ルクバト】の効果は『相手のターン終了時』という条件であり、すなわち私のターンの終了時に、効果を発揮する。

 自分のターン終了時に効果を発揮するカードは少なくないけれど、わざわざ相手のターン終了時に効果を発揮するカードは、実は、まあまあ少ない。

 

 「ターン開始」

 

 香澄は、淡々とカードを引く。

 

 しかし私にも、少しだけ彼女についてわかってきたことがあった。

 

 ……まるで無関心であるかのように、無表情でつまらなさそうにカードを引いているけれど。

 【人馬の魔女ルクバト】の効果が2回挟まる都合上、ドローと合わせて毎ターン3枚カードが増えている現状でありながらも、手札の枚数上限である10枚ちょうどで収まっている辺り、案外と、丁寧なカード使用選択が為されている。

 

 

 「【レグルス】でソーサラーに攻撃」

 

 攻撃力4の【獅子の魔女レグルス】が、こちらに殴りかかってきた。

 これで私の体力は、14。

 

 お互いの使用可能コストは既に最大値である10に達しており、やはり、少しずつジリジリと削られていくような展開が続いていると言わざるを得ない。

 

 バトル場は、相変わらず【吹き荒れる銀世界】の影響により、強烈な吹雪の光景が投影されていたけれど。

 

 ──上空には、現実の夜空よりも遥かに多くの星々が満天に輝く、曇りのない夜空が広がっていた。

 ……ただし、その空に浮かぶ星々は何故か赤色に染められていて、時折チカチカと明滅したり流れ星のように動いたりするので、『星空』という言葉からイメージできる雰囲気とは似つかわしくないものであり。

 ──それは、吹雪と似たり寄ったりの騒々しい景色だった。

 

 【ターモイル・プラネット】

 コスト6。フィールド。ファントム。【分類:星辰の魔女】

 お互いのソーサラーは、自分の盤面のカードが自分のカードの効果の影響によって破壊された時、体力を1回復する。ターン中に1度まで、お互いのソーサラーは自分の召喚するエンティティが『召喚時、自分の盤面のカードを破壊し、その後、猛進を持つ』を持つものとして良い。

 お互いのソーサラーはお互いのターン終了時、自分の墓所のカードをランダムに1枚デッキに加えることができる。

 

 これは、ファントムカード……つまり、カードの効果によって生成されたものである。

 これを領域に設置したカードは、1枚のマジックカードだった。

 

 【星辰の争乱】

 コスト4。マジック。《分類:星辰の魔女》

 【ターモイル・プラネット】を1枚生成し、領域へと設置する。その後、デッキと墓所からランダムな《分類:星辰の魔女》を持つエンティティを2枚ずつ手札に加える。

 

 攻め手の多いデッキであれば、使用する隙を作り出すのが難しそうなカードだけれど、私のデッキはそうではない。

 

 気がつけば、あっさりと、なんら苦もなく設置されてしまっていた。

 

 そして、これの効果で、お互いに盤面のサイクルが異常なまでに加速してしまっており、結果として、手札のカードというリソースが尽きた私は。

 先ほどのターン、ついには盤面に小型のエンティティ1枚しか出すことができなくなってしまったのだった。

 

 「【アクベンス】」

 

 コストを9使用して、香澄はエンティティの召喚を行った。

 

 目が濁り切った、不気味なその《魔女》は、両肩の辺りに巨大な蟹の鋏のような金属の塊を浮遊させていた。

 ……その《魔女》が何やら小声で捲し立てるように呟くと、彼女の足元の辺りに、奇妙な魔法陣のようなものが現れた。

 

 そうして魔法陣から現れたのは、巨大な蛇のような竜のようなナニカだった。

 

 ──そして。

 その得体の知れないナニカは、近くにいた【獅子の魔女レグルス】に目をつけると。

 長い首をうねらせて、容赦なくその巨大な顎で咀嚼した。

 

 ……【獅子の魔女レグルス】が手にしていた大剣が、その牙の隙間から1人でに飛び出して、私の胴を、切り裂いた。

 

 

 【巨蟹の魔女アクベンス】

 コスト9。エンティティ。攻撃力6、体力9《分類:星辰の魔女》

『挺身』

 自分の盤面の【歪なる友愛ヒュドラ】が破壊されたとき、それを墓所に加えず、代わりに自分の盤面に出現させる。

 召喚時、自分の盤面に【歪なる友愛ヒュドラ】がいないなら、【歪なる友愛ヒュドラ】を1枚自分の盤面に出現させる。

 被破壊時、盤面に【歪なる友愛ヒュドラ】があるなら、これは墓所ではなく手札に加わる。

 

 【歪なる友愛ヒュドラ】

 コスト10。エンティティ。ファントム。攻撃力9、体力1《分類:なし》

 『致命』

 これがダメージを受けて破壊されなかった時、自分の盤面に【巨蟹の魔女アクベンス】がいるなら、これの体力を最大まで回復する。

 このカードの効果やダメージによってエンティティが破壊された時、これの体力を+1し、それが《分類:星辰の魔女》を持っていたなら、コストを1回復する。

 これの体力最大値が7以下なら、自分の盤面に【巨蟹の魔女アクベンス】でないカードが出るたびにそれを破壊する。

 これの体力最大値が8以上なら『猛進』を持つ。

 これの体力最大値が9以上なら、さらに『ターン終了時、相手のソーサラーに9ダメージを与え、自分の手札が6枚未満なら6枚になるまでカードをデッキから引く』を持つ。

 出現時、自分の盤面の【巨蟹の魔女アクベンス】を除く全てのエンティティを破壊する。

 

 ……ここに来て、特大打点が狙える超大型のカード。

 つまり、これは一種のフィニッシャーだ。

 

 【巨蟹の魔女アクベンス】の持つ『挺身』は、相手が『攻撃』や『効果』などで、『対象を選択する』際に、そのターゲットを強制的に自分へと向けるという、防御系能力の中でも最も影響範囲の広い効果だ。

 

 そして、【歪なる友愛ヒュドラ】の『致命』は、攻撃した相手がエンティティであったのであれば、ダメージを与え合った後、たとえ体力が残っていたとしても、強制的に破壊する、というもの。

 

 しかし、攻撃力が9もあればそのようなものはほとんど関係ないし、本命はどう考えてもそこではないだろう。

 

 どこを見ているのか分からない、焦点の合わない【ヒュドラ】の持つ2つの頭が、こちらへと向いた気がした。

 

 ……焦ってはダメだ。

 見たところ、【歪なる友愛ヒュドラ】がダメージを出すには、少なくとも7枚の生贄用のエンティティが必要だ。

 

 【獅子の魔女レグルス】の分を考えれば、残りは6枚。

 

 香澄の手札のカードは9枚。そして、その内2枚は【不可避の一矢】……つまり、マジックカード。それに、【人馬の魔女ルクバト】も、コストは、3と5。

 カードを引くエンティティから引っ張って来られるかも知れないけれど、そうでなければ、まだ可能性はある。

 

 現状、【獅子の魔女レグルス】の被破壊時効果によって、破壊された時の【獅子の魔女レグルス】の攻撃力と同じ値……つまり4のダメージを受けた私の、残り体力の数値は10だ。

 

 前のターンに攻撃力を-1していたおかげで、受けることになったダメージは2点減らすことができた。

 可能性は薄いけれど、次のターン、どうにか【歪なる友愛ヒュドラ】と【巨蟹の魔女アクベンス】を抑え切れるだけのカードを引きさえすれば、あるいは……。

 

 「【不可避の一矢】。対象は【ヒュドラ】」

 

 香澄はコストを2支払い、自分の【歪なる友愛ヒュドラ】を破壊する。

 そうして、コストを3回復……つまり、コストは差し引き1回復して、そして、カードを1枚墓所からデッキへと加えた。

 

 つまり、使用可能なコストの残りは、これで3になった。

 まさか、これで強引に【人馬の魔女ルクバト】を1枚、生贄にするとでも言うのだろうか……?

 

 【巨蟹の魔女】が、目を見開いて、また魔法陣を描くと、再度そこに【ヒュドラ】が姿を現したが、その首の数は1つに戻っていた。

 

 1度破壊されたことで、状態がリセットされたのだ。

 

 「【レグルス】」

 

 コストを1支払い、召喚されたのは、先ほど破壊されたばかりの【獅子の魔女レグルス】。

 

 【獅子の魔女レグルス】は、勝利効果を有していない。

 ──つまり、レジェンダリーではない。

 

 レジェンダリーでないカードは、大体、デッキに3枚同じカードが入っている。

 

 突如として現れた【レグルス】の大剣が振り払われたのは、【ヒュドラ】がその存在に気づくよりも、ずっと早かった。

 

 何が起こったのか理解すらできていないとばかりに、【アクベンス】と【ヒュドラ】は霧散した。

 

 ──召喚時効果や、出現時効果は、誘発的な効果よりも発生が早い。

 ……その結果として、【歪なる友愛ヒュドラ】の効果は発動せず。

 【獅子の魔女レグルス】の召喚時効果で、【巨蟹の魔女アクベンス】と【歪なる友愛ヒュドラ】が、まとめて破壊されたのだ。

 

 そうしてそこにいたのは、攻撃力が10の、【獅子の魔女レグルス】だった。

 

 「──及第点。もう少し粘ることはできたはずだけど……その冷静な分析は嫌いじゃない」

 

 香澄は、最後にその青い瞳でこちらを、半開きの瞼の隙間から覗き見ると、そう言い捨てて。

 

 「【不可避の一矢】。対象は【レグルス】」

 

 コストを2支払って、その矢で【獅子の魔女レグルス】を確かに射抜いた。

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