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ですので、改めまして、ありがとうございます!
話はまだ続きますので、今後ともお付き合いいただけたら幸いです!
※今回は香澄視点のお話です。
新しい朝が来ました。
希望の朝、かも知れないし、そうではないのかも知れません。
──すみません、さすがにこれはちょっと自分でも適当なこと言ってるなって、思います、はい。
日課のラジオ体操を終えて、学校へと向かう、通学路。
道路を走る車に反射した朝日が、寝ぼけた目には、ちょっとだけ眩しいです。
……。
……えっと、少しばかりお話は遡るのですが。
昨日の夜、バイトから帰ってきたあたしは、夜ご飯を食べたりお風呂に入ったり色々なことを終わらせた後。
部屋で1人で、うきうきした気持ちで、『イミテーション』のパックを1パックだけ開けました。
何故1パックなのかと言えば、それは1パックしか買っていないからで。
では、何故1パックしか買ってないのかと言えば、単純にその方が何が出るのかわからない一期一会みたいな……そんな、こう、運命的な感覚を味わうことができるのかなって、そう思ったんです。
まあ、バイトでたくさん開けたので、個人的な方でも、またいっぱい開けてもなぁ……という思いもありまして。
買ったパックは《遊星の魔法少女》デッキと、《旅立ちの始点》デッキと、《氷晶の銀世界》デッキという、3つのデッキのカードのうち、ランダムに10枚が封入されているパック……つまり、例の『中学生全国大会』の記念パックです。
そして、出たカードはと言えば。
まず、《遊星の魔法少女》……つまり、あたしにとってのハズレ枠から。
こちらは、【冥の魔法少女プルト】と、【乙女座の福音】の2枚でした。
【冥の魔法少女プルト】はエンティティですが、『ファントムカード』で、【乙女座の福音】は、マジックカードです。
特に、【乙女座の福音】はエピックなので、世間一般的には当たりの方だと思いますので……ちょっと、複雑です。
次に、《旅立ちの始点》……『大会』のときを除くと面識はありませんが、準優勝した夢園有栖さんのデッキです。
出たのは【勿忘草の押し花】と、【輝く月の姫】、【銀の靴の少女】の3枚でした。
【勿忘草の押し花】の他の2枚……【輝く月の姫】と【銀の靴の少女】は、どちらも『ファントムカード』です。
《旅立ちの始点》は、なんだか穏やかな雰囲気と言いますか、楽しげな空気と言いますか、そんな感じのデッキなので、結構、好きです。
最後に、《氷晶の銀世界》……湖織さんのデッキですが、その……。まあ、はい。
こちら、出てきたカードが5枚ありまして。
……【レリック・タービン】、【ホワイトラビット】、【氷海の影ブラックオルカ】、【ダイヤモンド・ダスト】、そして、なんと【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】でした。
驚くべきことですが、【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】は、レジェンダリーのカードです。
……レジェンダリーは、パック封入率が極めて低いカードなのですが……なんでしょう。
その、不思議と「嬉しい」よりも、少しだけ、「怖い」と感じてしまったのは、あたしが悪いのではないと思います。
カードの右上あたりに書いてある湖織さんのサインが、印刷されたものではありつつも、確かな謎の圧力を放っているように感じました。
……と、まあそんなこんながありまして。
しっかりと、10枚のカードを透明なスリーブに入れたあたしは。
しばらく、色々な角度から眺めていたのですが。
──ここで、ようやく違和感に気がつきました。
……そこには、あるはずのものが無かったんです。
いえ、『そこ』というのが極めて曖昧で、言語化が難しいのですが……。
そう、ですね。
あたしは、小さい頃から、よく自分のカードを意味もなく生成して、眺めていました。
今にして思えば、きっとこういうことの積み重ねでお父さんやお母さんに変な心配をかけてしまっていたのでしょうけれど、それは一旦置いておきまして。
ファントムビルドのカードをよく見ると、その『能力』がわかります。
これは、ソーサラーの持つ基本的な技術だそうで、常識として、ソーサラーでない人に対しても、広く知られている部分でもあります。
……なんなら、今やリアルタイムで『カードの能力』が、ソーサラーでなくても理解できる、観戦補助サービスなんていうものまであるくらいなのです。
なのですが、実はこの力には続きがあります。
『能力』の、その先を、閲覧すること。
──それをすると、ファントムビルドのカードの『フレーバーテキスト』なるものが、わかるんです。
『フレーバーテキスト』、というのは、カードの持つ世界観みたいな、物語みたいな……まあ、そんな感じのものです。
えっと、はい、そうなんです。
あたしは、小さい頃、自分のカードの『フレーバーテキスト』を、よく読んでいたのでした。
しかし、今のところ、あたしは自分以外のカードに向けて『フレーバーテキスト』を読もうとしたことが何度もありますが、まだ1度も読み取ることができていません。
何か条件があるのか、あるいは単に『自分のカード』でしか『フレーバーテキスト』を読み取ることができないのか。
それとも、『あたしのカード』にしか、『フレーバーテキスト』が存在していないのか。
その答えは謎ですが、あるいは、結局謎のままになってしまっている……と言いますか。
結論から言えば、『イミテーション』には、『能力』は印刷されていたものの、『フレーバーテキスト』は印刷されていませんでした。
まあ、だからどうということはないのですが。
そのことを知った上で、朝起きて、何となく金色のトロフィーの隣に置いた、【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】を見たときに。
……何と言いますか、こう、物足りないような、寂しいような、そんな感じがしたんです。
と、まあ、あたしのどうでもいい個人的なお話は以上です。
そろそろ、学校に着きます。
今日から授業が始まると聞いているのもあって、今から、少し……不安な気持ちが拭えません。
……。
教室に着いたあたしは、椅子に座ってのんびりスマホを見ていました。
スマホには、新しい『ファントムビルド』の大会情報。
5ヶ月後くらいに、ここから比較的近めなところで、テレビとかでも取り上げられる有名な大会が開催されるのです。
『レジェンダリーカップU18杯』
18歳以下を対象にした大会で、最大の特徴は、なんと言っても参加条件として『デッキにレジェンダリーを有していること』にあります。
……去年も見に行った記憶がありますが、参加人数の規模感の割に、かなり熱と勢いのある大会です。
今年はどんな人が出るのでしょうか。
正直なところ、とても楽しみです。
「あんた、さ」
突然声をかけられて、飛び上がるように顔を上げると。
そこには、隣に座っている湖織さんが、何の遠慮もなく当たり前のようにあたしのスマホを覗き込んできていました。
「──興味あるの?それ」
……なんでしょうか、この既視感は。
しかし、あたしは学ぶのです。
同じことにはなりません。
「えっと、見に行こうかなって……思ってまして」
「ふうん」
どこかつまらなそうに、湖織さんは声を漏らします。
「それ、結構有名な大会だけど……昨日の感じから考えてあんたなら結構良いとこまでいけそうだし……それ、出てみない?」
そう来ましたか。
しかし、流石にお断りします。
「えっと、こういうのに出るのは……ちょっと、その」
「──もしかしてメディア露出とか嫌なタイプ?」
「……そういうわけではないのですが……その、なんと言いますか……大会に出たら、他の人にちょっと迷惑をかけてしまう、と言いますか……」
まさか『チート』的なものが〜〜なんて言うわけにもいかないので、結果的に、中途半端な言い訳みたいになってしまいました。
「なるほど、ね」
しかし、どこか湖織さんは納得したような態度を見せました。
「よし、やっぱりあんたも出なさいよ!これ!」
そして、湖織さんは、何故か、楽しそうにそう言い放ちました。