※有栖視点です。
【仙禽の報恩】
コスト1。マジック。《分類:旅立ちの始点》
自分のソーサラーは『次の次のターン開始時、自分が前のターンとその前のターン中にマジックやエンティティの効果によってカードを引いていなかったなら、そのターン中のみ使える追加のコストを1だけ得て、カードを2枚引く。条件を満たしていなかったなら、自分の盤面に【飛び去る仙禽】を1枚出現させる』と『次の次のターン開始時、自分の手札とデッキと墓所にある【仙禽の報恩】は《分類:読了の栞》を持つ』を持つ。
このカードが《分類:読了の栞》を持っているなら、このカードのコストは0になり、上記の効果は発動せず、代わりにカードを1枚引く。
これが、ボクが最初に使用したカード。
…… そして、これと関連する『ファントムカード』が、こう。
【飛び去る仙禽】
コスト2。エンティティ。ファントム。攻撃力3、体力1《分類:旅立ちの始点》
『猛進』
要するに、2ターン後に追加コストと2ドローか、『猛進』持ちエンティティを出すか、ということを選べるカード。
様子見として使うなら、まあかなり無難なカードって言えるんじゃないかな。
マジックに《分類:読了の栞》が追加されるのは……まあ、メリットでありデメリットでもある。
これが付くと、もうこのカードは同じように使えない。
ただの0コスト1ドローカードになってしまう。
まあ、ある意味それはそれで強いこともあるんだけどね。
ボクのデッキの勝利効果の発生……レジェンダリーの勝利条件が満たされるのは、大まかに言えば、この《分類:読了の栞》が、デッキの全ての《分類:旅立ちの始点》を持っているマジックカードに付与されていること。
だからそういう点では、この分類が付与される効果は、メリットでもあると言えるんだ。
つまり、カードは使わないといけないけれど、何も考えずに使っていくと、デッキというリソースの有限性が他の人のデッキより高いから、たまに酷いことになる、っていうだけのお話なんだよね。
「ターンエンド!」
「【ルクバト】の効果」
ボクがターンの終わりを宣言すると、香澄ちゃんの手札の中の、公開されている1枚……【人馬の魔女ルクバト】の矢が、頭上へと放たれて、香澄ちゃんの手札のカードの枚数が増えた。
【人馬の魔女ルクバト】と【不可避の一矢】。
何が本命かは一旦置いておいて、嫌なカードだ。
だって、あれが手札にあるだけで、それだけで手札のリソース量が段違いになる。そんなカードだ。
ターン開始のドローも合わせて、彼女のカードの枚数は7枚。
なんだかんだ、溢れないようにしなきゃなのは前提だけど……その範囲に収められるのなら、手札の枚数が多いというのは、それだけで強い。
「【ハマル】の召喚」
コストを2使用して、エンティティを召喚してきた。
それは、霧のような、モヤのような……あるいは煙のような、そんな、実体を持たなさそうな白いもくもくに身を包んだ、《魔女》だった。
【白羊の魔女ハマル】
コスト2。エンティティ。攻撃力2、体力1《分類:星辰の魔女》
召喚時、1ターンの間『不可視』を持つ。
攻撃時、対象がエンティティであるなら、処理を行う前に盤面のエンティティ全ての攻撃力と体力を-1する。この効果によって自壊したなら、墓所ではなく手札に加わり、お互いのソーサラーは、次の相手のターン開始時まで、『自分のターン終了時、自分の盤面のエンティティ全ての攻撃力と体力を-1する』を持つ。
『不可視』は、相手のカードで対象に選ぶことができない、っていう効果。
つまり、カードの効果でダメージを与えるとか、エンティティの攻撃でダメージを与えるとか、そういうことができないっていうことだね。
……まあ、『盤面全体』にダメージ、とか『ランダム』なエンティティ1枚にダメージ、とかなら通せるから、完全無敵という訳ではないけど。
まあ、問題なのは、攻撃時効果の方だろうね。
『不可視』は1ターンしか付与されないみたいだし、どう見ても本命ではない。
盤面全体へのデバフ。
……味方にも影響があるのは使い所が難しそうだけれど、牽制としては充分な効果だ。
しかも、時間差があって、合計2回起動する効果。
これは、即座に効果が起動して攻撃力と体力を-2するよりも、強い場面が多いから、むしろ、この時間差は強みだと思う。
例えば、これだけで攻撃力や体力が1とかの小粒のエンティティが一気に価値を失うから。
序盤の、小粒しか出せないようなタイミングを、潰してしまうことができてしまう。
それも、コスト2のカード1枚で。
まあ、今考えるべきなのは、多分そこではなくて。
……自分にも影響を及ぼすことが、どういう意味なのか、ということが気になっている。
単純に強すぎる効果への帳尻合わせならいいけれど、これがメリットに転じるのなら、酷い話だ。
デメリット効果に見せかけたメリット効果、なんて。
『羊の皮を被る狼』みたいで、いかにもそれっぽいんじゃあ、ないだろうか。
「ターンエンド」
ボクのことはまるで意に介していないとばかりに、香澄ちゃんは、無感情にターンを終えた。
ターン開始のドローをして。
「コストを1支払って、【福呼びの鳥】を使うよ!」
それは、たった今引いたカードだった。
本当は最初の引き直しの時に引いて確保しておきたかったカードだけれど、充分間に合ったって言えると思う。えらい!
【福呼びの鳥】
コスト1。マジック。《分類:旅立ちの始点》
デッキに【幸福の青鳥】を1枚加え、そのコストを0にする。その後、手札に【幸運の青鳥】を1枚加える。
このカードが《分類:読了の栞》を持っているなら、このカードのコストは0になり、上記の効果は発動せず、代わりにカードを1枚引く。
効果によって、手札にカードが増えたけれど、カードを引く効果じゃないから、【仙禽の報恩】の『条件』には、全く影響がない。
そして、その手札に増えたカードは、これ。
……デッキにもカードが増えたけれど、内容は、全く一緒だ。
【幸運の青鳥】
コスト8。エンティティ。ファントム。攻撃力4、体力3《分類:旅立ちの始点》
『神速』
『不可視』
召喚時、手札とデッキの【幸運の青鳥】を全て除外し、自分の盤面のランダムなエンティティ1体の体力を2回復する。その後、自分の手札とデッキと墓所にある【福呼びの鳥】は《分類:読了の栞》を持つ。
手札にあるこのカードは、カードを1枚引くたびにコストを-1する。
『神速』は、盤面に出たばかりのターンからでも攻撃ができる、という能力のことを指している。
『猛進』と違うのは、ソーサラーを攻撃相手に指定することもできる、という点で、そういう意味では、完全に『猛進』の上位互換だ。
そして、これの『不可視』は、【白羊の魔女ハマル】と違って、付与されている期間に制限がない。
……まあ、同じ『不可視』でも用途が違うってだけだろうけどね。
デッキからコスト0の【幸運の青鳥】を引ければ万々歳だし、引けなくっても少しずつ手札の【幸運の青鳥】のコストが下がっていく。
──そして、どっち道、盤面に【幸運の青鳥】は出すことになる。
まあ、辿る経緯が違うだけで、結果は同じところに収束する、そういうカードだ。
さて、残った1コスト。
1コストで使えるカードを引くカードもあるけれど、それを使って次のターンに【飛び去る仙禽】を出すべきか、否か。
出すべきだね、うん。
自壊の欠点……というより、自壊をメインにしたい相手への対処の1つとしては、盤面に出しておいたエンティティを、できるだけ残さないようにする、というのがある。
そうすれば、自壊の数を稼ぐ必要があってそうしたい時、わざわざ盤面に出して自壊するという、2行程をターンの内に要求できるから。
問題は、このカードを使ってまでそうするべきかってところだけど。
こっちの情報については、最初から隠匿なんて期待してない。
「さらにコスト1、【旅立ちへの支度】!」
【旅立ちへの支度】
コスト1。マジック。《分類:旅立ちの始点》
自分のデッキに《分類:読了の栞》を持つカードが10種類以上あり、自分のデッキに《分類:読了の栞》を持たない《分類:旅立ちの始点》を持つマジックがなく、そのターンの使用可能なコストの上限が10なら、自分のソーサラーに『次の自分のターン開始時、このバトルに勝利する』を付与する。
もし、上記の条件を満たしていないなら、デッキから《分類:読了の栞》を持たない《分類:旅立ちの始点》を持つマジックを1枚引き、自分の領域に【保管された物語】を1枚生成し、設置する。その後、このカードは墓所ではなくデッキに加わる。
……ちなみにこれは豆知識だけれど、『使用可能なコストの上限』に、追加コストは計上されない。
そうでなければ、【仙禽の報恩】の追加コスト効果で勝利ターンを早められたりするんだけど、ね。
カードを使った瞬間、たくさんの背の高い本棚の幻が、まるで大きな図書館のような風景が、あたりに広がる。
【保管された物語】
コスト6。フィールド。ファントム。《分類:旅立ちの始点》
お互いのソーサラーは自分のターン終了時、手札のカードを好きな枚数だけデッキに戻してよい。その後、これの効果によって、前の自分のターン終了時にカードをデッキに戻していたなら、そのソーサラーは『次の自分のターン開始時まで、受けるダメージを-1する』と『次の自分のターン開始時、カードを1枚引く』を持つ。
なお、これが場に出てから1ターン経過するまで、お互いのソーサラーはこれの効果を使用できない。
強い効果のカードだけれど、使うことに躊躇いがあったのは、これが──【旅立ちへの支度】が、勝利条件を持つカード……レジェンダリーだから。
今ボクがしているように、普通、レジェンダリーの情報は憶測に推測を重ねて予想するものである。
だから、こうしてあっさりバラすのは、本当は、あまり強い動きではない。
雪菜ちゃんから聞いた話からの判断だけど、多分、香澄ちゃんはボクのデッキを知っているから。
だから、ボクは、これを見せてもいいって、考えたんだ。