カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※有栖視点です。



20話 佳境あるいは序章

 

 「ボクのターンだね!」

 

 カードを引いて、手札の枚数は7枚。

 前のターンに【保管された物語】でカードをデッキに戻していたから、さらにカードを引いて、合計は8枚。

 

 ターン開始時の効果によって、【月の姫君】のコストは11になった。

 【姫君の秘宝】は引けていないから、このまま行けば、【月の姫君】は召喚できず、効果で墓所へと送ることになりそうだ。

 

 その一方で、カードを2枚引いたことによって、【幸運の青鳥】のコストは4まで下がった。

 

 現在の使用可能コストは4なので、【幸運の青鳥】を召喚して攻撃に転じることもできるけれど……。

 

 【幸運の青鳥】は『不可視』を持っている。

 

 これは、【白羊の魔女ハマル】のそれとは違って、効果に時間的な制限がない。

 

 【白羊の魔女ハマル】の方の『不可視』は、あくまでも『行動保証』──つまり、召喚してすぐに攻撃できないという『猛進』系列の効果を有していないエンティティの弱点を、ある程度カバーする目的があると思う。

 

 それに対して、【幸運の青鳥】の方の『不可視』は、単純に場持ちの良い……盤面に残りやすいダメージソースとしての役割を果たすためのものだから。

 

 香澄ちゃんがこっちの体力を削りにきている以上、ある程度耐久に回る必要はあるけれど、果たしてどこまで耐えればいいのか、ということも重要だ。

 

 勝利効果達成まで、は、正直ちょっと遠すぎる気がする。

 

 そういう時は、『相手のリソースがなくなるまで』というのも1つの目安だけど、それは多分、今のところもっと遠い。

 

 で、あるのなら。

 ……後に残るのは、『相手の体力を削るまで』。

 

 ダメージを出すのにカードを使う必要があるのなら、それはただの早さ比べだけれど。

 ボクの【幸運の青鳥】は、盤面に残りやすい性質がある都合上、カードやコストといった、リソースを継続して投じる必要のないダメージソースだ。

 

 狙ってみる価値は、あるだろう。

 

 「【幸運の青鳥】を召喚するよ!」

 

 このターンに使えるコストを全て使い、召喚する。

 

 効果によって、デッキの【幸運の青鳥】は、除外……つまり、墓場にも加わらない、完全な消滅が成された。

 そして、【幸運の青鳥】の召喚時効果──味方エンティティへの回復効果は、今回は自分の盤面にエンティティがいなかったので、発動はせず。

 

 「【幸運の青鳥】でソーサラーに攻撃!」

 

 さらに、『神速』の効果で香澄ちゃんに直接攻撃。

 

 これで、今の香澄ちゃんの体力は、21だ。

 こっちの残り16と比べれば、まだ残ってはいるけれど、毎ターン攻撃できれば、逆転までの道筋は、充分見える。

 

 「ターン終わりだよ!」

 

 ボクがまたカードをデッキに戻して、手札の枚数を6枚にするのに対して。

 香澄ちゃんは、【人馬の魔女ルクバト】の効果で手札を7枚にして、さらにターン開始時のドローを行い、手札の枚数はまた8枚に戻っていた。

 「【カストル】」

 

 彼女は2のコストを使って、【双児の魔女カストル】というエンティティを召喚した。

 その効果によって、【双児の魔女ポルクス】というエンティティが、出現する。

 

 それらは、お互いに『ライフリンク』で結ばれた。

 

 『ライフリンク』は、盤面に残りにくくする、デメリット的な効果の1つだ。

 

 ……これは、コスト2で、コスト2相当のエンティティが2枚盤面に出ることへの帳尻合わせなのか、あるいは別な意味を持つのか。

 

 どちらも『被破壊時』効果を有しているので、やっぱり、自壊を軸としたデッキである可能性がいよいよ強まってきた。

 

 ただ、香澄ちゃんのレジェンダリーがまだ見えていないから、なんとも言えない。

 これは、引けていないのか、それともボクの【旅立ちへの支度】や雪菜ちゃんの【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】のような、事前に一度見せるようなことを、香澄ちゃんのレジェンダリーが必要としないカードなのか。

 

 後者なら、『その瞬間』まで答え合わせができないから、厄介だ。

 

 「【不可避の一矢】対象は【サダルメリク】」

 

 次に、香澄ちゃんは自分の【宝瓶の魔女サダルメリク】を、容赦無く射抜いた。

 

 これは、【宝瓶の魔女サダルメリク】でカードを引きたかったのか、それともコストを増やしたかったのか。

 自壊のカウントを増やしにきたのか……あるいは、もしかしたら、盤面が5枚しかエンティティを置けない以上、単に邪魔だったのかもしれない。

 いずれにせよ、ボクが毎ターンダメージを減衰するのを見て攻撃力が1しかないエンティティに価値を感じなかったのだろうということは、予想できる。

 

 カードを1枚引いた香澄ちゃんは、一度、薄く開かれたその目をこちらへと向けた。

 

 ……そして。

 

 「手札のカードを新たに公開する。2枚目の【ルクバト】」

 

 香澄ちゃんの手札から、またも【人馬の魔女ルクバト】が公開された。

 

 これによって、今は2つの弓矢が、ボクの方に狙いをつけているのが見える。

 

 既に公開されていた方は、【不可避の一矢】を加えるたびにコストが下がっていて、それで、今は3になっていたから。

 ……もう少しでその供給も止まるかなといったところでこれだから、少し、計算が変わってきた。

 

 「【アルレシャ】の召喚」

 

 さらに、香澄ちゃんは、続けてエンティティを召喚した。

 

 コストを2使用して召喚されたそのエンティティは、一見、人魚のような姿をしていた。

 そして、その姿が一瞬ブレたと思ったら、それは、2体に分裂していた。

 

 【双魚の魔女アルレシャ】

 コスト2。エンティティ。攻撃力1、体力1《分類:星辰の魔女》

 召喚時、【双魚の魔女アルレシャ】を自分の盤面に出し、それとこれにお互いを対象とした『ライフリンク』を付与する。

 被破壊時、デッキからコストの最も低いカードをランダムに1枚引く。

 

 また、『ライフリンク』だ。

 そして、被破壊時効果が、すごく強い。

 

 コストの低いカードを2枚引いてくるのであれば、それはコストが足りなくて『使えない』という場面も少ないだろうし、この効果なら、狙って特定のカードを引くこともできそうだ。

 

 「【レグルス】」

 

 今度は、コスト1のエンティティ……と思った次の瞬間。

 

 突如として現れた大剣が、香澄ちゃんの盤面のエンティティを一掃した。

 

 そして、地面に突き刺さったその大剣を、どこからともなく現れた1人の女……《魔女》が豪快に引き抜いて。

 その大剣の《魔女》は、無造作にそれを構えて、こちらを睨む。

 

 【獅子の魔女レグルス】の効果によって、自分の盤面の全破壊。

 それに誘発する《獅子の魔女レグルス》自身の効果での攻撃力上昇により、その攻撃力は5になった。

 

 そして、【双児の魔女カストル】の被破壊時効果によってカードを引いて、【双児の魔女ポルクス】の効果で【双児の魔女カストル】はデッキに還り、【双魚の魔女アルレシャ】2枚の効果によって、さらに手札を2枚増やした香澄ちゃんの手札の枚数は、8枚。

 

 「ターン終わり。あと、あなたの『フィールド』の効果を使ってカードを2枚デッキに戻す」

 

 それは、【人馬の魔女ルクバト】の効果でカードが2枚増えることを見据えた調整だろう。

 

 8枚のままでターンを移せば、ターン開始のドローと合わせて3枚増えて……結果として、手札の枚数上限の10枚を超えてしまい、カードが1枚溢れてしまう。

 1枚戻して7枚にしても、ボクの『フィールド』──【保管された物語】は、これの効果を使うと、次のターン開始時にカードを1枚引く効果を持っているから、結果として、同じことになる。

 

 だから、敢えて2枚をデッキに戻したんだろう。

 

 

 ……さて、これでボクのターン、と思ったその瞬間。

 

 【獅子の魔女レグルス】が突然その大剣を上空へと放り投げた。

 そして、その大剣は、雷のように落下してきて──ボクの盤面の【幸運の青鳥】を、上から貫いた。

 

 【幸運の青鳥】が霧散すると、その大剣は1人でに彼女の……【獅子の魔女レグルス】の手元へと還っていく。

 

 【獅子の魔女レグルス】の、ターン終了時効果。

 自分の攻撃力が5以上であるのなら、攻撃力の最も高い相手の盤面のエンティティ1枚を破壊する、効果。

 

 これは、対象を手動で選択するわけではない、だから。

 

 結果として、『不可視』が突破されて。

 ボクの盤面は、更地に戻ってしまっていた。

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