※香澄視点です。
「最初のターン!ボクはコストを1使って、【福呼びの鳥】を使うよ!」
1ターン目、先行の有栖さんは、【福呼びの鳥】というカードを使用しました。
これによって、有栖さんの手札に、カードが1枚増えます。
増えたカードは、【幸運の青鳥】というカードです。
「──これで、ターンエンド!」
……あたしは、こういう時、カードの効果は見ません。
なぜなら、効果を理解するためにじっくり読んでいると、あっという間に置いていかれてしまうからです。
折角、リアルタイムで観戦しているのですから、置いていかれてしまうのはもったいないと思いますし……。
「──初動から【福呼びの鳥】はついてるわね。早ければ早いほど【幸運の青鳥】のコストが下がるのが早まるから、カードの相対的な価値が跳ね上がるわ」
……しかし、隣で試合を見ている雪菜さんは違うようで、しっかりとカードの効果を把握しているようです。
せめてあたしも、こういうところの意識から直していくべきなのでしょうか……?
あ、えっと、ちなみになのですが、あたしたち観客視点では、お互いの手札のカードを見ることはできません。
……これは、見えないような建物の構造になっている、とか、そういうわけではなくて、本当に、見えないのです。
もっと言うのであれば、そうですね……仮に、ではありますが、どちらかのソーサラーの真後ろに立ったとしても、カードの内容はわかりません。
公開されているカードでない限り、手札にあるカードというものは、他者視点で見るとただの浮遊するカード型の物体、あるいは幻影です。
つまり、手札のカードの内容がわかるのは、当人だけ、ということですね。
……ですので、あたしたちが今わかっているカードは、有栖さんの手札に先ほど加わった、【幸運の青鳥】しかありません。
「何もしません。ターンを終わります」
天柄さんは、何もせず。
再び、有栖さんにターンが移りました。
「ボクのターン!」
有栖さんは、そう言いながらカードを引きます。
手札の枚数は、これで6枚、になりました。
まあ、その、枚数を見て何かがわかると言うわけでもありませんが……。
「コストを2使って、【仙禽の報恩】2枚!」
有栖さんは、同じカードを2枚使いました。
「かなり強い動きね……。追加コストが2つでも、【飛び去る仙禽】が2枚出ても、どっちも強いわ」
……そうらしいです。
今はただ効果のないマジックを使っただけですが……おそらく、あれは後のターンに布石として機能する、ということなのでしょう。
「ターンを終わるよ!」
有栖さんは、堂々とした表情で、ターンの終了を宣言します。
「……良い手札のようですね。では、先に仕掛けさせてもらいます」
カードを引きながら、天柄さんは話します。
「コストは2。【情報機構ラジエル】」
天柄さんは、盤面に小型の機械……型のエンティティを出すと、カードを2枚引きました。
「ターンを終了します」
そして、ターン終了と同時に、天柄さんはさらに、カードを2枚も引きました。
……しかし、その後、その内の1枚を、デッキに戻してしまいます。
──手札の枚数は一気に3枚も増えて、合計は8枚です。
「……面倒なカードね。攻撃力は低いけど体力がやや高い。ターン終了時効果があるから倒したいけど……体力が高い分、リソースを吐くのも、少しだけ多く必要になる」
解説?の雪菜さんによると、面倒なカードみたいです。
確かに、ドローをいっぱいできるのは強そうですが……あたしとしては、あのペースで引いていったら、むしろ引き過ぎてカードを使いきれない心配をする必要がありそうにも見えます。
あ、いえ、あたしのはあくまで素人意見なので、雪菜さんの言葉の方が正しいとは思いますが……自分の意見も、何かしら考えた方が良いのではないかと思いまして……。
──ところで、その……すごく今更ではありますが、天柄さんがあの格好なのにきちっとした口調で話しているのを見ていると、変な感じがしてきます。
あ、今眼鏡を、こう……くいって上げるみたいに、星形サングラスをくいってしました。
……なんて、関係ないことを考えている間にも試合は進んでしまいますので、自制しないと、ですね。
試合の方は、3ターン目、ちょうどターンが有栖さんに移るところです。
「ボクのターンだね!」
有栖さんはカードを引き、手札の枚数は5枚……つまり、最初のターンと同じ枚数です。
……有栖さんは考え込むように、少しの間、目を閉じました。
「……【少女の灯火】!手札に【幸福の幻】を加えるよ!」
有栖さんはコストを3消費して、マジックを使用しました。
「──そして、ターンエンド!」
有栖さんは、またも手札にカードを加えるだけで、ターンを終えます。
相手の盤面には既にエンティティがいますが、大丈夫なのでしょうか……?
……そう思って、それとなく隣を盗み見ると、雪菜さんが納得したように頷いていましたので、多分大丈夫そうです。
「なるほど。勝負はまだ先、と。良いでしょう」
天柄さんは、凛とした立ち姿で、カードを引きます。
──繰り返しで大変申し訳ないのですが、もちろん、南国バカンススタイルです。
……えっと、そして、これで手札は9枚、ですね。
つまり、後1枚で、手札は満杯になってしまいます。
「──コスト0【永劫の動力】」
それは、確かにコストが0のエンティティでした。
橙色に強く発光するその球体──まるで太陽のようなそれは、コストが0であるにも関わらず。
盤面に現れた瞬間、一際大きく輝き、天柄さんの残りのコスト全てを、消費……というよりは、『吸収』したように見えました。
「あれは……デッキの加速装置とでも言うべきパーツね。次のターンから試合の流れが大きく変わりそうだわ」
……らしいです。はい。
何かよくはわかりませんが、あれがあるかないかで、何かが変わるみたいです。
……ううん、その、えっと……せめて攻撃力と体力くらいは見ておかないとついていけなさそうなので、それくらいは見ておきます。
【情報機構ラジエル】が攻撃力1、体力3で、【永劫の動力】が、攻撃力0、体力5……ですね。
なんだか、体力の多いエンティティに偏っているような気がします。
「【情報機構ラジエル】で攻撃します」
天柄さんがそう宣言しますと、小型の機械が動き出しました。
……その機械自体は、何か移動したりしたわけではありませんでしたが、その機械から、赤い光の線……つまり、細いレーザーと言うべきものが、全く関係ない方向へと照射されました。
──そして、そのレーザーは、何も無いところで何度も跳ね返ると、最終的に有栖さんを撃ち抜きました。
……これで、有栖さんは1のダメージを受けまして。
残り体力は、24です。
「──ターン終了です」
レーザーの行末を見届けた天柄さんが、そう言いますと。
【情報機構ラジエル】の効果がまた発揮されたようで、カードを2枚引きました。
そして、その内の1枚を、やはり、デッキに戻します。
そして、それで終わりかと思いきや、今度は、また【永劫の動力】の輝きが強まりました。
そして、【永劫の動力】の体力が、1マイナスされて、4になってしまいました。
……えっと、体力のマイナスについて、なのですが、これはダメージとは異なる挙動をします。
具体的にどう違うかと言いますと……ダメージはただのダメージで、体力マイナスは、RPGゲームの強めのボスがやるような、最大HPを削る攻撃!みたいな感じです。
後で回復できるかどうか、という違いとも、言えますね。
しかし、その体力マイナスという、比較的大きい代償を払ったものの、盤面に変化は無いように見えます。
「ターン開始!」
一方で、有栖さんは、まず、カードを引きます。
「【仙禽の報恩】の効果でさらに2枚引くよ!」
そして、宣言通りに、有栖さんは追加で2枚カードを引き、一気に3枚のカードが増えて、合計8枚です。
……それでも、天柄さんは9枚なので、天柄さんの方が手札の枚数は多いです。
「仕掛けるよ!【魔法使いとの邂逅】」
4ターン目ですが、コスト6のマジックです。
あたしが突然の急展開についていけず、『算数間違えたのかな?』と思っていると、そんなあたしに追い討ちをかけるかのように、盤面に、ライオンと、ブリキ人形と、カカシが現れました。
さらに、有栖さんは、続けてカードを手札に加えます。
……ええっと、普段ならもうキャパシティオーバーで頭から煙が出てくるところですが、ギリギリ大丈夫です。
確か、あれらのカードは、昨日バトルした時に見た記憶があります。
昨日のことなはずなのに、少しバトル中の記憶が曖昧なので、あまりちゃんとは思い出せませんが……カード自体は、なんか強そうなカードだった気がします。
……【勇敢なる獅子】と、【心持つブリキ人形】、【知性あるカカシ】の3枚のエンティティを場に出した有栖さんは、手札に加えた【銀の靴の少女】はそのまま手札に持っておくようです。
「【勇敢なる獅子】で【情報機構ラジエル】を攻撃!」
『猛進』の効果があれば、盤面に出たばかりのターンでも攻撃できるので、【勇敢なる獅子】はすぐに攻撃に移りまして。
そこにいた鋼の球体──【情報機構ラジエル】を、その鋭い爪で、粉砕しました。