カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



29話 統率あるいは叛乱

 

 有栖さんは、4ターン目を終了しました。

 

 ……はっきり言って、前のターンから考えると、一気に状況が動いたと言えると思います。

 

 えっと、有栖さんの盤面には、【情報機構ラジエル】との戦闘によってダメージこそ受けたものの、まだまだ体力は4残っている、攻撃力5の、【勇敢なる獅子】。そして、攻撃力4、体力5の【心持つブリキ人形】、逆に、攻撃力が5で、体力が4の【知性あるカカシ】がいます。

 

 一方で、天柄さんの盤面には、攻撃力0、体力4の【永劫なる動力】しかありません。

 

 「──かなり状況がいいわね。盤面だけじゃなくて、手札には【幸運の青鳥】もあって、コスト3までコストダウンしてる。4コストじゃあ簡単にはあの盤面を全部取り切ることはできないだろうし、本当に勝てるかも知れないわ」

 

 「……そう、ですかね……?」

 

 未だに、隣で小さな声で解説をしている雪菜さんも、頭の中で【幸運の青鳥】のコストを計算したようでして。

 どうやら、あたしと同じように、有栖さんが有利だ、という結論になったようです。

 

 ──もっとも、あたしのはパッと見て「有栖さんの盤面強そうだなあ」と思っただけなので、結論の方向性としては同じでも、その質は全く違うのですが……。

 

 同じような結論だったことで、少し自分に自信が持てたような、安心したような気持ちで、つい言葉が漏れてしまいまして、雪菜さんが怪訝な目で、一瞬、こちらを見てきました。

 

 

 ……観客であるあたしたちがそうこうしている間にも、試合は進みます。

 

 「……困りました。まさかこうも強い動きを見せられることになるとは、正直なところ、想定外です」

 

 天柄さんは、カードを引いて、手札の枚数が10枚になります。

 

 果たして、あの10枚の中に、コストが4しか使えない中で、この状況を覆すことができるカードはあるのでしょうか。

 

 「……ですが、カードの1枚で決着がつくとは、思わないことですね」

 

 まっすぐな立ち姿のまま、天柄さんは、腕組みをします。

 

 そして、言い終わると。

 静かに腕組みを解いて、サングラスをくいっとし、手札のカードへと手を伸ばしました。

 

 「まずはコスト1のマジック……【機構の支配】を使用します」

 

 天柄さんがそう宣言すると、耳障りな音、というよりも音波、でしょうか……?

 とにかく、そんなようなものが発せられて、有栖さんの盤面のエンティティだけが、攻撃力を-1されました。

 

 「《分類:機構の天使》以外のエンティティへのデバフ……コスト1のマジックとしては優秀なカードね……」

 

 ──隣を見れば、雪菜さんが耳元に手を当てながら、真剣な眼差しで状況の分析をしているようです。

 

 「【機構の支配】の効果で、お互いに手札のカードを捨てます。……そうですね。こちらは、このカードを捨てましょう」

 

 ……このカード、と言われましても、観客視点では、何を捨てたのかわかりません。

 

 「……ボクはこのカードにするよ」

 

 ……お2人がどのカードを捨てたのかはさっぱりですが、これで手札の枚数は有栖さんが7枚、天柄さんが8枚です。

 

 「そして、残ったコスト3。【機構の創造】です」

 

 続けて、またもマジックです。

 

 天柄さんがそう宣言して、コストを3消費すると。

 ──天柄さんの手札のカードが1枚、勝手に飛び出してきて、盤面へと出現しました。

 

 そして、それと同時に強い光が発生して、有栖さんと天柄さんを焼いたように見えました。

 

 ……どうやら、双方のソーサラーに1ダメージずつが与えられたようで、有栖さんの体力が23、天柄さんの体力が24になりました。

 

 「【機構の創造】によって出現したエンティティは、召喚時効果が起動します」

 

 天柄さんが、静かな口調でそう告げると、【機構の創造】によって出現したエンティティ……【統率機構ミカエル】の機体から赤い光が漏れ出して、それから、まるでそれに呼応するように、3つの赤い光の柱が発生しました。

 

 ……赤い光の柱は転送ポインターか何かを表していたようで、そこに、両腕が長い刃物になっている人型ロボット……【機構の尖兵】が、3体現れました。

 

 その上で、さらに。

 

 それら一連の出来事が終わると、今度は【永劫の動力】が光を放ち、また自分自身の体力を-1して、体力が3になりました。

 

 「これで、【統率機構ミカエル】に『猛進』の付与……。なるほどね。想定外なんていうのは、半分嘘だったってことね」

 

 ……あ、えっと、なんか【統率機構ミカエル】に『猛進』が付与されたらしいです。

 

 しかし、【統率機構ミカエル】は攻撃力2、体力4のエンティティで、《機構の尖兵》は攻撃力と体力が共に1しかありません。

 

 ……これで本当に、盤面を返せるのでしょうか……?

 

 「【統率機構ミカエル】で【心持つブリキ人形】に攻撃します」

 

 『猛進』を持った【統率機構ミカエル】が、『防衛』を持つ【心持つブリキ人形】へと攻撃するために動作を開始した──かと、思いましたが。

 

 攻撃を行う前に、【統率機構ミカエル】が、何やらまた赤い光を発しました。

 

 また【機構の尖兵】を出そうとするのでしょうか?

 ……盤面は5枚が上限なので、もう出せないと思いますが……と、あたしがそんなことを思っていると、今回はそういう効果ではなかったらしく。

 

 盤面の【機構の尖兵】と【永劫の動力】が、【統率機構ミカエル】の光に呼応して、何やら赤い光を帯びています。

 

 よく見てみれば、【機構の尖兵】と【永劫の動力】の攻撃力が+1されているようです。

 

 【統率機構ミカエル】そのものは、攻撃力の加算はしないらしく、【心持つブリキ人形】との戦闘で、2のダメージを与えて、【心持つブリキ人形】から3のダメージを受けました。

 

 「さらに、【統率機構ミカエル】の効果で『猛進』を持った【機構の尖兵】1枚で、【心持つブリキ人形】に追撃します」

 

 【統率機構ミカエル】が攻撃を終えて、一時的に距離を取ると。

 入れ替わるように、【機構の尖兵】が突っ込んでいきます。

 

 しかも、赤い光を纏っているだけでなく、両腕が高温で熱された金属のように、眩しく光っています。

 

 あ、えっと、いえ。

 

 ……ちゃんと見てみれば、あれはただの攻撃モーション、というわけではないようです。

 

 攻撃力が、さらに+1されていて、今の【機構の尖兵】の攻撃力は、3になっています。

 

 【心持つブリキ人形】の斧によって、【機構の尖兵】は残骸の山へと変わり果てましたが、同時に、【心持つブリキ人形】もまた、【機構の尖兵】によって、真っ二つに焼き切られました。

 

 

 ……そして、突如、その瓦礫の山が音と光を発して炸裂しました。

 【機構の尖兵】に搭載されていた火薬が発火したことによって、有栖さんと天柄さんは、それぞれ1ずつダメージを受けています。

 

 

 「……あとは、そうですね。『誘引』持ちを先に潰しておきましょうか。【機構の尖兵】2枚で【知性あるカカシ】に攻撃です」

 

 涼しげな声で、星形サングラスをまたくいっと上げながら、天柄さんは、さらなる攻撃を指示します。

 

 「……もし【永劫の動力】も攻撃できれば、【勇敢なる獅子】も削っておくことができましたが……まあ、仕方がありませんね」

 

 天柄さんが独り言を呟く中、命令以外は全く気にかけることがないとばかりに、【機構の尖兵】は、その両腕を赤熱させて、【知性あるカカシ】へと襲い掛かります。

 

 【知性あるカカシ】もまた、懸命に迎撃しましたが、2対1の結果は、相打ちです。

 

 ……最後には、炭の山と瓦礫が残り、瓦礫の方がまた炸裂して、お2人の体力を削っていきます。

 

 これで、有栖さんの盤面には、【情報機構ラジエル】との戦闘で1ダメージを受け、【機構の支配】によって攻撃力が1低下した【勇敢なる獅子】1枚、天柄さんの盤面には、攻撃力1、体力3の【永劫の動力】と、【心あるブリキ人形】との戦闘により傷つき、体力の残りが1の【統率機構ミカエル】、という形になりました。

 

 ……あ、あとついでに言いますと、ソーサラーの体力については、有栖さんが20で、天柄さんが21です。

 

 「ターンを終わります」

 

 そして、天柄さんがそう宣言すると、また【永劫の動力】が、光を放ちます。

 

 発光が終わると、なんと【統率機構ミカエル】の損傷箇所が、修復されているようでした。

 

 ──そして、さらに。

 ……その【統率機構ミカエル】が光を放つと、今度は【永劫の動力】と【統率機構ミカエル】自身の攻撃力と体力を+1したようです。

 

 これで、【統率機構ミカエル】の攻撃力と体力は、それぞれ3と5で、【永劫の動力】も、攻撃力2、体力3です。

 

 ……まあ、【永劫の動力】は攻撃できないみたいなので、大事なのは体力だけかも知れないですが……。

 

 ──そして、これで、ターンが有栖さんに移る、と思った、その瞬間でした。

 

 

 何やら、積み上がった瓦礫の山から、黄緑色の光が漏れ出しています。

 

 

 「……ターン終了時、墓所にある【叛乱の機構ルシフェル】の効果が起動します」

 

 天柄さんがそう言うと同時に、瓦礫の山から現れた巨大な機体が……1枚のカードが、手札へと還っていきます。

 

 僅かな間の顕現でしたが、確かな存在感を放ったそれは、【叛乱の機構ルシフェル】は、いわゆるレジェンダリーのカードでした。

 

 ……そして。

 ──気がつけば、バトル場は、黒煙が立ち上る瓦礫の山があちこちに広がっていまして。

 

 ……そんな、命の感じられない。

 まるで、『全てが滅びてしまった戦場の跡地』とでもいうような光景へと。そこは、塗り替えられていたのでした。

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