カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

35 / 153

※香澄視点です。



30話 処理あるいは紛争

 

 【叛乱の機構ルシフェル】が墓所から手札へと戻ったことによって、天柄さんの手札の枚数は7枚になりました。

 

 そして、この急な景色の変化は、【叛乱の機構ルシフェル】が墓所から手札へと戻る際に領域へと設置した、【創造者無き世界】というフィールドカードの影響のようです。

 

 「──これで、ボクのターンだね?」

 

 有栖さんは確認してからカードを引いて、これで手札の枚数は8枚です。

 

 えっと、確か、と言いますか、朧げな記憶なので不確かですが、と言いますか……その、こう言ったターン終了時処理が長い場合、途中で終わったと思ってカードを引こうとしてしまうことはありがちではあるのですが、そう言った場合、そもそもカードは引こうとしても引けません。

 

 こう言ったところも、紙でやるカードバトル『イミテーション』との違いではありますね……という、『ファントムビルド』のあまり役に立たない豆知識のコーナーが挟まったところで。

 

 あたしがどうでもいいことを考えていると、少しだけ、バトル場の方で動きがありました。

 

 【創造者無き世界】の効果なのか、有栖さんの手札に、まるで押し付けられるかのように、カードが加わりました。

 

 ……加わったカードの名前は、【生命無き紛争】というもののようです。

 

 「──【勇敢なる獅子】の攻撃力が減少してる以上、あれの攻撃だけでは【統率機構ミカエル】を倒しきれない。かと言って【銀の靴の少女】を使ってしまえば、【永劫の動力】がダメージ全般への耐性を持ってる以上、能動的に破壊する手段が無くなってしまう……。なら、今押し付けられたカードを使えば……いや、だけど……私なら──」

 

 あたしが状況をぼんやり見ている間にも、雪菜さんは真剣に考えています。

 

 あたしだったら、「まあ、でもどうせ【永劫の動力】って攻撃できないんですよね……?」とか思いながら【統率機構ミカエル】の処理を優先する……のでしょうか?

 

 ……うーん、どうもバトル中じゃないとあの不思議な「この状況ならこうすればいい」みたいなこう……迷いのなさ、みたいな……答えを知っていた、みたいな感じの現象は起こらないみたいですね……。

 

 バトル中だけじゃなくてこういう観戦中でも『フルオート』の時みたいな思考ができたのであれば。

 ……そしたら、その、なんかいい感じに雪菜さんとお話も合いそうなのですが……。

 

 今のあたしには、残念ながら何が正解か、とか、それ以前に、今がどういう状況か、とかすらも怪しい状態ですので、黙って見ていることしかできません。

 

 

 そうこうしている間に、有栖さんは結論が出たのか、動き出しました。

 

 「──まずは、【輝く月の姫】!」

 

 コストを3消費して、手札に【月の姫君】というカードを加えます。

 そして、デッキに【姫君の秘宝】というマジックカードを加えて、さらに、カードを引きます。

 

 ……これで、手札の枚数は10枚ですね。

 

 「コスト0、【銀の靴の少女】!」

 

 さらに、銀色の靴を履いた女の子が盤面へと召喚されます。

 ……そして、盤面にそれが召喚された時、周りの瓦礫が薄く光って、有栖さんの体力を1回復しました。

 

 演出を見た感じではありますが、多分、回復効果は【創造者無き世界】の効果のようです。

 

 「──そのまま【統率機構ミカエル】に攻撃!」

 

 有栖さんがそう宣言すると、女の子……【銀の靴の少女】は、大きな、銀色の羽根がたくさん生えた機械……【統率機構ミカエル】へと突撃していき、その機体から赤い光が漏れ出すよりも早く、手に持っていたバケツの水をかけて、溶かしてしまいました。

 

 ……あのバケツ、一体何が入っているのでしょうか……?

 

 

 「そして、【斧と女神】!」

 

 【銀の靴の少女】によって【統率機構ミカエル】が破壊された様子を見届けた有栖さんは、続いて、コスト1のマジックを使用しました。

 効果によって、有栖さんは、カードを1枚、デッキへと戻します。

 

 「あとはコスト1の【幸運の青鳥】!そのままソーサラーに攻撃するよ!」

 

 青い鳥が手札から飛び出してきて、そのまま天柄さんの方へと、まるで放たれた矢か弾丸のように、飛んでいきます。

 

 ──青い鳥が出た瞬間、ですが。

 また、瓦礫が光を発して、有栖さんの体力をさらに1回復しました。

 

 「最後に、盤面の【勇敢なる獅子】で追撃だ!」

 

 青い鳥の一閃に貫かれた天柄さんに、さらにライオンの爪が振り下ろされます。

 

 これで、体力は13……おおよそ半分くらいまで減りました。

 

 謎の回復効果によって回復した有栖さんは体力が22なので、9点分の、差が生まれた状況です。

 

 「ターン終了!」

 

 手札を6枚まで減らしたところで、有栖さんはターンを終えます。

 

 「……では、こちらのターンですね」

 

 1ターンの間に大きなダメージを受けて、体力が一気に減らされたにも関わらず、天柄さんは涼しい顔で、淡々とターンを迎えます。

 

 ……もちろん、今のは「淡々と」と、「ターン」をかけた高度な……いえ、すみません。なんでもないです……。

 

 

 ……えっと、天柄さんはターン開始時のドローと、【創造者無き世界】の効果による【生命無き紛争】の手札追加によって、手札の枚数は9枚になりました。

 

 「手札の公開を宣言します。【叛乱の機構ルシフェル】」

 

 天柄さんがそう言いますと、手札の中の1枚──【叛乱の機構ルシフェル】が、手札の中で、その姿を露わにしました。

 

 漆のように黒く塗られた巨大な機体は、その目に相当するであろう部分の光を強めます。

 

 ……なんだか、まるでゲーム機の電源をつけた時みたいだなあと思っていると。

 ──天柄さんの盤面に、2枚の【機構の尖兵】が出現しました。

 

 そして、さらにそれらは、何となく薄緑色の光を纏っているように見えます。

 

 「公開だけで被破壊時持ちエンティティの複数出現に加えて『防衛』付与……やっぱり、かなり強力なカードね……しかも、ターン中の回数制限付きとはいえソーサラーに火力支援の付与効果まで……!?」

 

 雪菜さんが静かに分析している中、瓦礫が発光……【創造者無き世界】の効果が発動して、今度は、天柄さんの体力が2回復しました。

 

 「コスト4を使い、【焼却機構ウリエル】を召喚します」

 

 天柄さんは、手札から、【機構の尖兵】が攻撃する時の両腕のような剣を浮遊させた、炎を纏った機械……いえ、《機構の天使》を召喚しました。

 

 【焼却機構ウリエル】は、攻撃力が2で、体力が5のエンティティのようです。

 

 ……そして、ここでも【創造者無き世界】の効果は発動して、天柄さんの体力は、16まで回復しました。

 

 「【焼却機構ウリエル】の召喚時効果は、そちらの【銀の靴の少女】を選択します」

 

 天柄さんがそう言うと、【焼却機構ウリエル】の赤い炎が全身に浴びせられ、【銀の靴の少女】は炎に包まれて霧散します。

 

 「……っ」

 

 心なしか、カードの効果を読んだであろう有栖さんの表情に、焦りが見えます。

 

 そして、炎は、【銀の靴の少女】を焼いただけでは消えず、さらに自分の盤面の、何もないところに2つほど飛びまして。

 それらが着弾すると、今度はそこに【機構の尖兵】が現れました……が、盤面の上限によって、1枚はそのまま盤面に収まりきらなかったため、墓所へと送られてしまいました。

 

 少しだけ遅れて、【焼却機構ウリエル】が盤面に現れたことを感知したのか、【永劫の動力】が光を発します。

 

 ……どうやら、【永劫の動力】が効果を発揮して、【焼却機構ウリエル】は、『猛進』を得たようです。

 

 「【焼却機構ウリエル】で【勇敢なる獅子】に攻撃します」

 

 天柄さんの指示により、【焼却機構ウリエル】は、不気味な赤い炎を纏ったまま、【勇敢なる獅子】へと突撃していきました。

 

 【勇敢なる獅子】は果敢に立ち向かいましたが、その爪は【焼却機構ウリエル】に致命傷を与えるには至らなかったようです。

 

 そして、また、【焼却機構ウリエル】の攻撃も、【勇敢なる獅子】を倒すには及ばない……筈でした。

 しかし、【焼却機構ウリエル】が攻撃した後、纏った炎が方々に散らばり、【勇敢なる獅子】と【幸運の青鳥】を焼いて、それぞれに2ダメージずつを与えました。

 

 ……この2ダメージが致命傷となり、【勇敢なる獅子】もまた、その場に崩れ落ちるように霧散していきました。

 

 「……最後に、コストを1使って【生命無き紛争】を使用します。対象は……【永劫の動力】です」

 

 天柄さんがそう言い切ると、攻撃できないはずの【永劫の動力】が、見えないはずの【幸運の青鳥】へと、迫っていきました。

 

 そして、【幸運の青鳥】もまた、【焼却機構ウリエル】による火傷の痕が痛々しい姿ではありましたが、応戦します。

 

 ……それで、結果としては、ダメージを受けない【永劫の動力】だけが無傷でその場を制しまして。

 

 「……これで、ターンを終わります」

 

 宣言と同時に、【永劫の動力】が発光して、【焼却機構ウリエル】の機体に付いていたライオンの爪の跡を、完全に修復してしまいます。

 

 そして。

 

 「──ターン終了時効果として、手札の【叛乱の機構ルシフェル】の効果を使用します。対象は手札のこのカードと……盤面の【永劫の動力】です」

 

 天柄さんがそう宣言すると、手札の【叛乱の機構ルシフェル】が、ミサイルのような飛翔体を、2発、発射しました。

 

 ……そして、それらが着弾すると。

 

 【永劫の動力】と手札のカード1枚は墓所へと送られて、その残骸が天柄さんへと吸収されていきます。

 

 ……どうやら、体力の回復効果が発動したらしく。

 20まで、天柄さんの体力が回復してしまいました。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。