カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



35話 既知あるいは違和感

 

 厳重なロックをされた扉を、通り抜けて行きます。

 ……えっと、これは物理的な法則を無視してすり抜けた、と言う訳ではありません。

 

 隣を歩く雪菜さんが、何かカードのようなものをかざして、ロックを解除したのです。

 

 そして、今度は暗証番号を入力しています。

 

 ……何と言いますか、到着した時は、外から見てもわかる厳しいセキュリティの圧力を前に、帰ろうかと思ったのですが……もう、逃げられそうにありません。

 

 ……。

 

 「……着いたわ。ここが私の部屋よ」

 

 ……そんなこんなありまして、あれからエレベーターで上に上がったり廊下を歩いたりして、ようやく、雪菜さんのお部屋の前に到着しました。

 

 「えっと、すごく、しっかりしたセキュリティ……ですね」

 

 ……小学生並みの感想が、つい、口をついて出て来てしまいました。

 

 「まあ、そうね。やっぱりちょっと過保護よね……」

 

 あたしの独り言を受けて、雪菜さんは、ドアの鍵を開けながら少し考えるように呟きます。

 

 ……それは、どうなのでしょうか。

 

 たしかに、おそらく世間一般的に見れば、かなり厳重ではありますが。

 

 最近、あたし自身不審者を目撃しましたし、用心はしないよりもした方がいいと思います。

 

 「えっと、すごく立派な建物ですし……あたしは、いいと、思いますけど……」

 

 とりあえず、あたしは無難なことを言いました。

 

 ……。

 

 ……そんな会話をしつつ。

 ──ドアが、開きました。

 

 「お、お邪魔します……」

 

 まず、玄関で靴を脱いで、スリッパをお借りしまして。

 

 ……それから、左右にいくつかドアのある廊下を歩きまして、雪菜さんは、突き当たりのドアを開けました。

 

 「おお」

 

 開かれたドアの中を見て、思わず声が出てしまいました。

 第一印象としては、かなり綺麗に整頓されている、という感じです。

 

 大きくて、見ただけでふわふわしていることが分かるようなベッドに、ソファやテーブル、そしてキッチンがあります。

 

 「ちょっと飲み物とってくるから、適当に休んでて」

 

 あたしが周りを眺めていると、雪菜さんはその場から少し離れてしまいました。

 

 あたしも、なんだかそわそわする気持ちはありますが、あまり見て回るのもよくないのかなと思いましたので。

 ……恐る恐る、ソファに腰を掛けます。

 

 ──えっと、すごく、柔らかいです。

 

 しかし、その、色々とあたしの知る世界とは違うような感じがしているせいでしょうか。

 ……正直な所、中々気持ちが休まりません。

 

 

 仕方がないので、少しだけ、考え事をして気を逸らすことにします。

 

 ……どうでもいいお話な上に今更ではありますが、その、アパートとマンションの違いとは、いったい何なのでしょうか。

 

 

 雪菜さんは、この建物をアパート、と呼んでいましたが、こういう立派な作りで、セキュリティが充実している建物は、マンションと呼ばれていることが多いイメージがあります。

 

 まあ、言葉の使い分けなんて、あたしが自分で考えたって分かるはずもないので、スマホで調べます。

 

 スマホがあれば、大抵の疑問は解決しますので、便利ですよね……。

 

 ……えっと、はい。

 

 スマホ……インターネットによりますと、まず、どうやら「アパート」と「マンション」には法律上では明確な定義はないそうです。

 

 違いと言えば、建物の材料と建物の高さ、みたいですね。

 

 確かに、ビルみたいな背の高い建物かと言えばそうではありませんし、床や天井を見れば、木でできているのが分かります。

 

 そういう視点で見れば、この建物は、アパート、で合っているみたいですね……。

 

 それでも、やっぱり連れてこられる前に想像していたアパートとは随分と違いましたが……。

 

 

 ……と、あたしがぼんやり考えていましたら、雪菜さんがキッチンの方から戻って来ました。

 

 雪菜さんが持って来たのは、湯気の立つ、おしゃれな2つのカップでした。

 

 そして、それらは静かにテーブルの上に乗せられて、片方が、雪菜さんの手によって、あたしの前に置かれます。

 

 ──上から見下ろすまでもなく、香りが湯気と一緒に漂ってきましたので、すぐに分かりましたが、その中身は、紅茶のようでした。

 

 ……もしかして、いえ、もしかしなくても、これっていわゆる、良い紅茶、なのではないでしょうか。

 

 その、あたしがたまにお家で飲むような、スーパーで売っている紙パックを入れて、それから沸騰したお湯を入れて……それを適当に何回か使い回した後、紙パックをゴミ箱にポイってするような。

 ……そんな感じのものとは、全く違うような気がします。

 

 

 ……。

 

 「……さて、じゃあ、そろそろ『イミテーション』の方、やってみる?」

 

 ……とにかく慣れないことの連続で、びくびくしっぱなしではありましたが。

 ようやく少しだけ落ち着いて来た頃に、今日の本題に入りました。

 

 ──そうです。

 そう言えば、あたしはここに雪菜さんと『イミテーション』を遊びに来たのでした……。

 

 

 それで、雪菜さんは、たくさんの種類の『イミテーション』のデッキを、持っているようです。

 たしかこれって、1つ完成させるだけですごく大変だと思うのですが、どうしてそんなに持っているのでしょうか……?

 

 ──という疑問もありましたが、まあ、そういうものだと思うことにします。

 

 「──あんたは、どれを使ってみたい?」

 

 と、言われましても……。

 

 強いて言うなら、自分のデッキなので、まだ比較的知っている方であると言える、《遊星の魔法少女》……でしょうか?

 

 雪菜さんの中では《遊星の魔法少女》デッキの持ち主とあたしは、何故か生き別れの姉妹か何かだということになっています。

 ですので、ここでそれを選んでもそこまで不自然ではないでしょうし、疑われるようなことも起こらない……はずです。

 

 「え、えっと、これ……で、お願いします……」

 

 あたしは、思い切って、自分の指を、馴染みの深いそのデッキへと向けました。

 

 「──ふうん、なるほどね。まあ、ここにあんた自身のデッキがない以上……消去法的に、それを選ぶ気はしていたわ」

 

 「私は勿論これよ」と、言いながら。

 雪菜さんは、ご自身のデッキである、《氷晶の銀世界》デッキを選びました。

 

 ……。

 

 ……後は、デッキ外のカードである『ファントムカード』の用意もしていただいてあったので、それもお借りしまして。

 

 準備が整ったので、実戦です。

 

 コイントスの結果、先行は雪菜さんで、後攻はあたしになりました。

 

 ……えっと、まず、最初のターン、ですね。

 

 思考が散らかり、緊張と不安で頭が真っ白になりそうです。

 

 ……と、言いますか。

 これ、やっぱり『フルオート』的な謎現象、発生していませんね……。

 

 ──まあ、『フルオート』が無いのは良いとしまして……。

 

 実のところ、それ以上に重要と思われる現象が発生しています。

 

 

 ……上手く表現できないのですが、違和感……みたいなものがすごいです。

 

 何と言ったら良いのでしょうか。

 

 えっと、まるで……いえ、すみません。

 例えがちょっと思い浮かばない、です。

 

 その、すごくぞわぞわして、むずむずするような……あ、ちょっと良い例えが思い浮かんだかも、です。

 えっと、教科書を買いに出かけたのに、途中でコンビニで飲み物を買って、それで満足してお家に向かって引き返してしまった時のような、あるいは、人間だと思って、ずっと人工知能に話しかけていたとか……。

 

 

 ……ううん、ごめんなさい、やっぱり、ダメですね。

 

 なんだか自分でも曖昧すぎて、ちょっと頑張ってみましたが、言語化できそうにありません。

 

 ……それに、始まったものは、もう仕方がありません。

 

 

 改めて、カードを見ます。

 

 手札には5枚のカードがあり、今からこれを何枚か引き直しします。

 

 雪菜さんと『イミテーション』をするということが決まって、昨日までに、ものすごくしっかりと調べて来たので、ルール自体は大丈夫……だとは思いますが。

 

 えっと、カードの効果が、うろ覚え過ぎてまずいです。

 ……特に、『ファントムカード』が、この場で読めない分、かなり、わからないです。

 

 そうですね、はい。手札のカードは、現状、こんな感じです。

 

 【水の契約精霊】

 コスト1。エンティティ。攻撃力0、体力1《分類:契約精霊》

 『不可視』

 このエンティティは攻撃できない。

 自分のターン終了時、【水の魔法少女マーキュリー】を1枚手札に加える。

 次の自分のターン開始時、これを破壊する。

 

 【地の契約精霊】

 コスト1。エンティティ。攻撃力0、体力1《分類:契約精霊》

 『不可視』

 このエンティティは攻撃できない。

 自分のターン終了時、【地の魔法少女アース】を1枚手札に加える。

 次の自分のターン開始時、これを破壊する。

 

 【冥の契約精霊】

 コスト1。エンティティ。攻撃力0、体力1《分類:契約精霊》

 『不可視』

 このエンティティは攻撃できない。

 自分のターン終了時、【冥の魔法少女プルト】を1枚手札に加える。

 次の自分のターン開始時、これを破壊する。

 

 【乙女座の福音】

 コスト20。マジック。《分類:遊星の魔法少女》《分類:星辰の魔女》

 デッキから、ランダムな【蛇使いの魔女ラサルハグェ】1枚を盤面に出現させ、それの『被破壊時』以外の効果を喪失させる。

 手札とデッキのこのカードは、自分の使用した《分類:遊星の魔法少女》を持つマジックの種類の数だけコストを-2する。

 

 【蛇使いの魔女ラサルハグェ】

 コスト13。エンティティ。攻撃力13、体力13《分類:星辰の魔女》

 このカードが手札に加わった時、このカードは自動的に公開されて、デッキからランダムな《分類:契約精霊》を持つカード1枚を手札に加え、このカードはデッキへと加わる。その後、デッキにある【蛇使いの魔女ラサルハグェ】全てのコストと攻撃力と体力を、-3する(最小値1)。

 『不可視』

 カードの能力によって破壊されない。

 出現時、墓所からランダムな《分類:遊星の魔法少女》を持つエンティティを4枚まで出現させ、それらの能力を失わせた後、それらすべてに『猛進』と『自分のターン終了時、これを破壊する』を付与する。

 自分の盤面のエンティティが破壊された時、このエンティティはデッキへと戻る。

 被破壊時、【解き放たれた意思】を1枚手札に加える。

 

 

 ……えっと、とりあえず、コストが低いカードを、残せばいいのでしょうか……?

 

 

 結局、考えてもよく分からなかったので。

 《契約精霊》3枚を残して、引き直すことにしました。

 

 

 ……ところで、この《契約精霊》なのですが。

 全部イラストは蛇みたいな見た目で統一されていますし、効果についても、書いてあることがほとんど同じです。

 

 その、加わるカードの名前が違うのは分かりますが、えっと……どれがどれ、でしたっけ……?

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