カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※雪菜視点です。



45話 小手調べあるいは下準備

 

 月城先生と香澄のバトルは、コイントスの結果、月城先生の先行で始まった。

 

 「──雪菜ちゃんは、どう思う?」

 

 有栖が私に訊く。

 ──どう、というのは、単純にどちらが勝つと思うか、ということだろう。

 

 「……そうね。私としては、五分……ってところかしら」

 

 私が答えると、有栖は、自分ならどう思うのか、ということを考えているのか、静かに目を閉じた。

 

 「ボクは……ううん、わからないことが多すぎる、かな。結局、香澄ちゃんのレジェンダリーの効果もわからないし、それ以外もまだデッキのカード全部は見えてないし……」

 

 

 ……まあ、それも妥当な考えだろう。

 未知数である部分が多いのは事実だし、正確な予測が困難であるのは確かだ。

 

 けれど、その上で、見えている部分だけで判断するなら、という前置きを前提とするのなら、やはり、五分というのが無難……まあ、つまり、結局「わからない」という形に落ち着くから、意味がない答えと言えばそうなのだろう。

 

 

 「……それはそうとして相変わらずの変わりようだよね」

 

 ……有栖が、青い瞳を輝かせて、無感情に立つ香澄を見ながら、今更そんなことを呟く。

 確かに、教師を前にしてあんな態度を取るなんて、普段の香澄からは、とても考えられない姿だろう。

 

 まあ、先輩方を前にしてもそうだったので、本当に、今更でしかない話なのだけれど。

 

 

 ……それで、引き直しは、月城先生が4枚、香澄が2枚。

 

 「んじゃあ、こっちのターンからだ」

 

 

 ……正直なところ、先生、つまりは大人なのだから、コイントスではなく、先手くらい譲ってくれても良さそうなものだと思うのだけれど……。

 

 ……まあ、3戦目でカードの情報がわかっているという情報アドバンテージを考慮すると……ある意味、妥当、なのだろうか。

 

 

 「……何もしない。パスだ」

 

 1ターン目、月城先生は何もせず、ターンを終えた。

 

 「コスト1、【サダルメリク】」

 

 対して、香澄はコストを1使い、【宝瓶の魔女サダルメリク】を召喚した。

 

 ……盤面に、糸目の胡散臭い《魔女》が現れると同時、香澄はカードを1枚引く。

 そして、その代わりに、手札のカードを1枚、選んでデッキへと戻す。

 

 能動的な手札の入れ替えと、攻撃力と体力の値が共に1しか無いとは言え、エンティティを盤面に出すことができたことは、初動として、かなり悪くないのではないだろうか。

 

 「──なるほど。嫌なカードを持ってるな」

 

 ……とは言え、初動が良ければそのまま勝ちに直接繋がるというわけでもないし、まだまだ後攻1ターン目でしかない。

 

 ここで形勢の有利不利を判断するのは、あまりにも早計と言うべきだろう。

 

 「終わり」

 

 相変わらず熱意の感じられない平坦な声色で、香澄がターンの終了を宣言した。

 

 「……じゃあ、私のターンだな」

 

 ……しかし、そんな中。

 月城先生は、香澄の態度の変化や目の色の違いなどを気に留めるようなそぶりも見せず、平常な様子でカードを引いた。

 

 

 「──【無形の罪禍シュナイム】。コスト2のエンティティだ」

 

 コストを2支払い、エンティティを召喚する。

 

 ……召喚されたのは、黒い服を身に纏い、暗器を構える忍者のような少女だった。

 

 【無形の罪禍シュナイム】

 コスト2。エンティティ。攻撃力2、体力2《分類:罪禍の巫女》

 召喚時、相手の盤面のエンティティ1体を選択し、それがソーサラーを対象に攻撃または効果の発動をしていたなら、それに《分類:罪禍の刻印》を付与する。その後、自分の盤面に《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティがいなければ、これは『猛進』を持つ。

 

 「そのまま【無形の罪禍シュナイム】で【宝瓶の魔女サダルメリク】に攻撃する」

 

 縮地、とでも言うのだろうか。

 

 ……黒ずくめの《巫女》は、瞬時に《魔女》へと距離を詰めると。

 一息で、その首の辺りに刃を走らせ、一方で《魔女》は、反撃するのがやっと、といった様子で霧散した。

 

 そして、後に残った水瓶が割れると同時に、香澄は無言でカードを1枚引いた。

 

 「これでこのターンは終わりだ」

 

 

 「……じゃ、わたしの番」

 

 香澄がターン開始時のドローをして、手札の枚数は、6枚。

 

 「【ハマル】」

 

 召喚されたのは、【白羊の魔女ハマル】。

 

 攻撃力2、体力1のエンティティだけれど、召喚時に、自身に1ターンの間『不可視』を付与するエンティティなので、簡単には倒されないと踏んでの判断だろう。

 

 さらに、エンティティに対して攻撃した時、盤面の全てのエンティティの攻撃力と体力を-1する効果があって。

 

 その上、自分の攻撃時効果によって自壊したなら……という条件こそあるものの、被破壊時に、墓所ではなくて手札に加わり。──お互いのソーサラーへと、次の相手のターン開始時まで、『自分のターン終了時、自分の盤面の全てのエンティティの攻撃力と体力を-1する』効果を付与する能力がある。

 

 

 ……試合の立ち上がりとしては、かなり手堅い動きと言えるだろう。

 

 

 「ターン終わり」

 

 

 ……ターン終了時の処理などは特に無く。

 お互い、今はすんなりと、ターンを移し合っていく。

 

 「私のターンだな」

 

 カードを引いて、月城先生の手札の枚数は、6枚。

 

 ……引いたカードを見て、彼女は小さく笑みを浮かべた……ような、気がした。

 一瞬、今引いた手札のカードに手を伸ばした……けれど、「まだ早いか」とばかりに、首を小さく傾げて、別なカードへと手を伸ばした。

 

 「コスト3、【暗黙の罪禍シャローシュ】」

 

 コストを3支払い、召喚されたのは、白い布のような物で口元を覆った、《巫女》だった。

 

 【暗黙の罪禍シャローシュ】

 コスト3。エンティティ。攻撃力3、体力3《分類:罪禍の巫女》

 召喚時、前のお互いのターン中にソーサラーがマジックを使用していたなら、これを除くそのソーサラーの盤面のエンティティを3体ずつまで選択し、それらに《分類:罪禍の刻印》を付与する。その後、自分の盤面に《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティがいなければ、自分の手札のエンティティカード1枚を選択し、そのコストを-1する。

 

 

 月城先生は、手札のカードの内、1枚に手を触れる。

 

 おそらく、コストを-1するカードを選択した、ということだろう。

 

 

 「──以上だ。ターンを終了する」

 

 

 「……そう」

 

 香澄は、あまり興味がないとでも言うかのような態度で、カードを1枚引く。

 

 「【ハマル】で【シュナイム】に攻撃」

 

 【白羊の魔女ハマル】が、突如として【無形の罪禍シュナイム】へと接近する。

 

 【無形の巫女シュナイム】は、咄嗟に手に持っていた刃で【白羊の魔女ハマル】の首を狙うものの……どこからとも無く立ち込めてきた、白い霧のような物を裂いただけに終わった。

 

 白い霧によって、【白羊の魔女ハマル】は攻撃力と体力に-1のデバフを受けて、自壊したものの。

 

 ……【白羊の魔女ハマル】の効果によって、それは『自分自身の効果で破壊されたため』、墓所ではなくて、手札へと戻っていく。

 

 一方で、【無形の罪禍シュナイム】は【宝瓶の魔女サダルメリク】との交戦で受けたダメージと合わせて、デバフの効果によって体力が0になり、破壊された。

 

 さらに、【暗黙の罪禍シャローシュ】もまた、白い霧に巻き込まれて、攻撃力と体力に-1のデバフを受けたようだ。

 

 

 ……そうして、盤面全体に多大な影響を残して盤面を離れた【白羊の魔女ハマル】だったけれど。

 

 よく見れば、白い霧自体は、まだ盤面を漂っているようだった。

 

 

 「……コスト2【カストル】の召喚」

 

 続けて、香澄はコストを2支払い、【双児の魔女カストル】を召喚した。

 

 【双児の魔女カストル】は、召喚時効果によって、【双児の魔女ポルクス】を盤面へと出現させる。

 

 ……そして、それら2枚は、『ライフリンク』によって、結ばれた。

 

 【双児の魔女カストル】は攻撃力が2、体力が1。

 【双児の魔女ポルクス】は攻撃力が1、体力が4。

 

 一見、そこそこ強そうな盤面に見える、けれど。

 

 

 「……ターン終了」

 

 香澄がそう宣言すると。

 ……またも白い霧が立ち込めて、今度は、自分の盤面の、【双児の魔女】だけを包み込んだ。

 

 霧が晴れた時には、【双児の魔女】はデバフと『ライフリンク』によって、2枚とも破壊され……。

 

 香澄は【双児の魔女】2枚分の被破壊時効果によって、カードを1枚、デッキから引いて、そして【双児の魔女カストル】を、デッキに、1枚加えたようだった。

 

 

 ……一連の処理が終わり、盤面に残ったのは。

 まとわりつく白い霧に、鬱陶しそうにうっすらと眉間に皺を寄せる、布で口元の見えない《巫女》だけで。……一方の香澄の盤面は、全くの更地だった。

 

 

 「……なるほどな。一見無駄な行動に見えるが……まあ、そんなわけはない、か」

 

 口角を上げて、「これだから情報のない相手とのバトルは面倒だ」なんて言いながら。

 

 ──月城先生は勢いよく、カードを、1枚引いた。

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