カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※雪菜視点です。



46話 安息あるいは落雷

 

 4ターン目。

 

 月城先生がカードを引いて、手札の枚数は7枚……ちょうど、香澄の手札の枚数と、同じ枚数になった。

 

 「──コストを4使って、【安息の罪禍アルバ】を召喚する」

 

 その宣言と同時に、盤面に、木の枝……いや、竜の角のような物を側頭部に2本生やした、眠たげに目を擦る着物の《巫女》が、現れた。

 

 

 ……その《巫女》は、欠伸をしながら大きく伸びをすると。

 穏やかな表情で、そのままゆったりと、目を閉じた。

 

 【安息の罪禍アルバ】

 コスト4。エンティティ。攻撃力4、体力4《分類:罪禍の巫女》

 召喚時、前のお互いのターン中に攻撃を行なっていたエンティティ全てに《分類:罪禍の刻印》を付与する。その後、自分の盤面に《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティがいなければ、これ以外のランダムな自分のエンティティ2枚は『防衛』を持ち、カードを2枚引く。

 

 

 ……【安息の罪禍アルバ】の召喚時効果によって、月城先生はカードを2枚引き、さらに、自分の盤面の【暗黙の罪禍シャローシュ】に『防衛』が付与された。

 

 「で、【暗黙の罪禍シャローシュ】でソーサラーに攻撃だ」

 

 月城先生の指示に従い、口元が隠されて今ひとつ表情の読めない《巫女》が、錫杖のような物で、香澄に直接殴り掛かる。

 

 ……当の香澄は、まるで虫にでもたかられたかのように、小さく眉を顰めた。

 

 【暗黙の罪禍シャローシュ】はデバフ込みで攻撃力が2になっているため。……これで、香澄の体力は23になった。

 

 

 「これで私のターンは終わりだ」

 

 ターン終了時、未だに盤面を漂っていた白い霧によって、盤面の【暗黙の罪禍シャローシュ】と、【安息の罪禍アルバ】が、さらに、その力を奪われたようだった。

 

 それを最後に、白い霧は晴れて。

 

 そこには、デバフによって攻撃力と体力を-1された【安息の罪禍アルバ】と、二重のデバフによって、攻撃力と体力を-2された、【暗黙の罪禍シャローシュ】の姿があった。

 

 ……デバフの影響は小さくないようだけれど。

 しかし、それでも、その2枚のエンティティは、確かに盤面に残っていた。

 

 「わたしの番」

 

 一連の出来事を、ただじっと眺めていた香澄は、月城先生の盤面の、2枚のエンティティの姿を確認すると、カードを、静かに1枚引いた。

 

 

 「……手札のカードを公開する。【ルクバト】」

 

 香澄が宣言すると、弓を構えた《魔女》が手札のカードの中に現れて、そして、その矢を真っ直ぐに月城先生へと向けた。

 

 

 「……ほう、なるほどな」

 

 

 ……【人馬の魔女ルクバト】の効果を見たのか、月城先生は、薄く口角を上げて。

 

 負けず劣らずの鋭い目で、《魔女》を睨み返した。

 

 

 「コスト4。【アンタレス】。召喚時効果で【アルバ】を破壊する。」

 

 召喚されたのは、鋼の鎧のような重装備を身に纏った、おおよそ《魔女》という言葉から想像できるようなイメージとかけ離れた格好の、背の低い《魔女》だった。

 

 そして、何よりも特徴的で目を引くのは、長い尻尾のような、あるいはムチのような、先端が尖った機械仕掛けの武器だろう。

 

 

 ──その《魔女》は、姿を表すと同時に、その武器を、なんの前触れもなく、大きく弧を描くように払った。

 

 

 ……それは、あまりにも突然のことで。

 

 誰も反応できず、それはなんの抵抗も受けないままに、微睡む【安息の罪禍アルバ】まで一気に届くと、その肩の辺りを、硬質な先端が、掠る。

 

 

 その《魔女》が、武器を引き戻すと同時。

 そこに毒でも仕込んであったのか、刃を受けた《巫女》は、膝から崩れ落ちて、霧散した。

 

 【天蠍の魔女アンタレス】

 コスト4。エンティティ。攻撃力2、体力1《分類:星辰の魔女》

 『致命』

 『猛進』

 召喚時、これは『被破壊時、【天蠍の魔女アンタレス】を1枚盤面に出現させる』を持つ。その後、これ以外の盤面のカード1枚を選択し、破壊する。破壊したカードが《分類:星辰の魔女》を持っていたなら、これは『受けるダメージを-2する』を持ち、コストを2回復する。

 

 

 「……【アンタレス】で【シャローシュ】を攻撃」

 

 ……【天蠍の魔女アンタレス】は、『猛進』を持っている。

 

 またも毒の仕込まれた武器が振るわれるが、今回は、【シャローシュ】は何とかそれに反応し、どうにか、といった様子で、相打ちへと持ち込んだ。

 

 ──がらり、と、《魔女》の纏っていた鎧が崩れる。

 

 しかし、それはもぬけの殻だった様子で、その残骸を踏みつけながら、そこに再び、【天蠍の魔女アンタレス】が現れた。

 

 

 「……これでターンを終える」

 

 

 香澄は、まるで表情を変えず。

 ……ただ、その青い瞳を月城先生へと向ける。

 

 

 「悪くないな。盤面に『致命』持ちのエンティティを残して、相手の盤面は全部処理……か」

 

 冷静な口調でそう言いながら、月城先生は、カードを引く。

 

 

 ……手札の枚数だけで言えば、香澄が6枚なのに対して、月城先生が9枚。

 

 どちらも余裕のある枚数ではあるが、その上で、よりリソースに余裕があると言えるのは、月城先生の方だろう。

 

 

 「……さて、そろそろ頃合いか。マジック、【博愛の慈悲】」

 

 力強く宣言すると、雷鳴が轟いた。

 

 

 ……そうして気がつけば、灰色の分厚い雲が、天井を隠していた。

 

 ──さらに、そこでは、幾度となく。

 激しい音と光が発生し、いつ落雷が起こっても不思議でない様相を呈していた。

 

 

 ……それだけではない。

 一瞬。荒れた雲に隠された向こう側……天、とでも言うべきところに、何かが、ただひたすらに大きな何かが、見えた。

 

 ……そんな、気がした。

 

 

 ……そして、改めて状況を見ると。

 今、使用したマジックのコストは3だったが、月城先生のコストは、その全てが消費されていた。

 

 

 【博愛の慈悲】

 コスト3。マジック。《分類:罪禍の巫女》

 そのターン中に自分がコストを使用していないなら、このカードは使用できる。

 残りコストを全て消費する。その後、【再臨せし全知】を1枚デッキに加え、その後、そのターンの最大使用可能コストの値と同じだけ、それのコストを減算し、【審判の雷雲】を領域に1枚設置する。

 

 

 

 【再臨せし全知】

 コスト21。エンティティ。ファントム。11/11《分類:罪禍の巫女》

 このカードは、これが存在している場所を問わず、これ自身の効果以外の影響を全て無効化する。

 自分のターン終了時、デッキもしくは手札にあるこのカードは、このカードのコストが11以下なら、自分の盤面に自動召喚される。コストが11より大きい値であり、そのターン中に《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティ(敵味方問わず)が破壊されていたなら、デッキもしくは手札にあるこのカードのコストを-1する。

 自動召喚時、このカードを除くお互いの盤面の全てのエンティティを手札に戻す。その後、お互いの《分類:罪禍の刻印》を持つ墓所のカード全てをゲームから除外し、相手の手札とデッキのカード全てに《分類:罪禍の刻印》を付与する。そして、このカードは『デッキ、もしくは手札にあるこのカードは、自分のターン開始時、相手の墓所に《分類:罪禍の刻印》を持つカードがあるなら、自動召喚される』と『自動召喚時、このバトルに勝利する』を持つ。さらにその後、このカードはデッキに戻る。

 

 

 【審判の雷雲】

 コスト7。フィールド。ファントム。《分類:罪禍の巫女》

 これが領域に設置された時、お互いの盤面のエンティティ全てに《分類:罪禍の刻印》を付与する。

 お互いのターン中、エンティティに《分類:罪禍の刻印》が付与された時、そのエンティティに、『このターン終了時、これは破壊される』を付与する。

 また、お互いのターン中、盤面にエンティティが出た時、それが《分類:罪禍の刻印》を持っていたなら、そのエンティティに、『このターン終了時、これは破壊される』を付与する。

 これが領域にある限り、お互いのソーサラーは、『相手の《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティが破壊された時、その枚数と同じ値だけ体力を回復する』を持つ。

 

 

 雷雲の向こう側に見えた気がした『何か』は、効果によってデッキへと加わった、【再臨せし全知】で、間違いないだろう。

 

 

 ……勝利効果を有する『ファントムカード』を生成する、この効果は、紛れもなく、レジェンダリー特有のものだ。

 

 

 ──そして、では、雷雲の発生と同時に鳴り響いた雷鳴は、何だったのか。

 

 ……その答えは、すぐにわかった。

 【天蠍の魔女アンタレス】に、禍々しい、黒い『印』のようなものが浮かび上がっている。

 

 ……それは、《刻印》だった。

 

 このターンの終了と共に、裁かれることを示す、余命宣告。

 

 

 「──ターンを終了する」

 

 ……無情なその言葉と共に、再び雷鳴が響く。

 

 

 直後、【天蠍の魔女アンタレス】は、なす術もなく雷を身体に受けて。

 そうして、瞬く間に、跡形もなく。……その身体は霧散した。

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