カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※雪菜視点です。



47話 争乱あるいは刻印

 

 「……ふうん?」

 

 レジェンダリーカードの登場により、まさしく、世界が塗り替えられたと言うべき光景が広がる中。

 

 裁きを下した雷雲が更に光を放ち、お互いのソーサラーへと回復効果をもたらした時。

 

 

 ようやく香澄が、その青い瞳を微かに揺らした……ように見えた。

 

 一度軽く瞬きを挟んで、公開されている、手札の【人馬の魔女ルクバト】が、手札に1枚の【不可避の一矢】を加えて。

 

 そして、それから、ターン開始時のドローを行う。

 

 ……手札の枚数は、合計8枚。

 

 「……じゃあ、せっかくだから。」

 

 香澄は僅かに目を細めて、──今日はちょっとだけ、長めに遊んであげようか……と言葉を続けた。

 

 「まず【カストル】」

 

 コストを2支払い、【双児の魔女カストル】を召喚する。

 

 【双児の魔女カストル】は、召喚されると同時に、いつも通り、盤面に【双児の魔女ポルクス】を出現させて、『ライフリンク』の効果を互いに付与する。

 

 【双児の魔女カストル】は、今試合2度目の召喚だ。

 

 通常、同じカードが3枚しかないことを考えると、同じカードを何枚も引くことは、少なくはないけれど、多くもない。

 

 ……しかし、召喚時効果によって出現させる【双児の魔女ポルクス】の被破壊時効果によってデッキに加わることを考えると。

 必然的に、他のカードよりも、盤面に出せる機会が多くなりがち、にはなるのだろう。

 

 「……【不可避の一矢】。対象は【カストル】」

 

 つい先ほど召喚した【双児の魔女カストル】を射抜き、『ライフリンク』によって、【双児の魔女ポルクス】も、同時に倒れる。

 

 

 ……何が狙いなのかはわからないけれど、とりあえず、破壊された2枚の【双児の魔女】によって、手札の枚数は7枚になり、【不可避の一矢】が自分の盤面に向けて放たれたことによってコストが回復したため、コストは、残りが4になった。

 

 「【星辰の争乱】」

 

 ……それは、ちょうどコストが4のマジックだった。

 

 最初に、香澄はデッキから2枚、そして墓所から2枚、カードをランダムに手札へと加えた。

 

 ……そして。

 

 赤く明滅する星々が、荒天の空へと映し出される。

 絶えず瞬く稲光と組み合わさり、それは、最早、世界の終わりでも訪れようとしているかのような……。

 そこには、そんな、不吉な光景が広がっていた。

 

 

 ……この星空は、私は見たことがある。

 

 香澄と最初にバトルした時。

 

 このフィールドを、設置された覚えがあった。

 

 【ターモイル・プラネット】というフィールド。

 

 お互いのソーサラーに対して、自分のカードを自壊させた時に、体力を1回復させる効果を持っていて、さらに、ターン中に1度まで、お互いのソーサラーはエンティティを召喚する時、『召喚時、自分の盤面のカードを破壊し、その後猛進を持つ』という効果を持っていることにして良い、という効果も持っている。

 

 後は、追加で、お互いのソーサラーはお互いのターン終了時に、自分の墓所のカードをランダムに1枚デッキに加えることも、できる。

 

 

 ……回復効果や、自壊という代償があるとはいえ任意の自分のカード1枚に『猛進』を付与できる効果は、確かに、優秀だ。

 

 けれど、おそらく。

 私は、重要なのは、最後の効果の方だと思っている。

 

 

 ……香澄のデッキは、自壊することによってメリットを得るカードが多い。

 

 その上で、カードを引く効果や、カードを加える効果を持つカードは少なくないから、手札切れ自体は起こりにくいかも知れないけれど、繰り返していくことを考えると、デッキ切れというリソースの消失は、常にリスクとして付きまとうだろう。

 

 

 このカードは、多分、それを補うためのカード……なのではないか、と思っている。

 

 

 ……結局、私も、香澄のデッキのカードの全てを知っていると言うわけでもないから、断定はできないのだけれど。

 まあ、あながち的外れな事でもないのではないか、とは考えている。

 

 「これで終わり」

 

 【星辰の争乱】によって、4枚のカードが一気に手札に加わったことによって、香澄の手札の枚数は、上限の10枚。

 

 次のターン、【人馬の魔女ルクバト】が加える【不可避の一矢】と、デッキの1番上のカードを1枚、手札に加えず捨ててしまうことになるだろう。

 

 『あの』香澄……つまり、『ファントムビルド』をしている時の香澄にしては意外な状態だけれど。

 

 考えなしとは思いづらいので、逆説的に。

 ……おそらく、あの手札の中に、既に重要なカードは揃っている、ということなのではないだろうか。 

 

 「ターン終了時、わたしは【ターモイル・プラネット】の効果で墓所のカードをランダムに1枚、デッキに加える」

 

 赤い不気味な星の光が強まり、既に役目を終えていたはずのカードが、浮かび上がり、デッキへと加わっていく。

 

 「ふん、じゃ、私もその効果を利用する」

 

 【ターモイル・プラネット】のターン終了時効果は、お互いのソーサラーが、お互いのターン終了時に、その効果を発揮させることができる。

 

 そして、墓所のカードをデッキに戻すのは、『墓所にカードがあること』を引き金に効果を起こすようなデッキでもなければ、まあ、利用しない理由もないだろう。

 

 

 「……しかしねえ、フィールドにはフィールド、か。そう言うの、嫌いではない、な」

 

 言いながら、月城先生は、一切の迷いなく。

 ……相変わらずの勢いで、カードを1枚、引いて手札へと加えていった。

 

 

 しかし、カードを加えた後に、少しだけ考え込むような、姿を見せた。

 

 「……とは言え、なるほどな。確かに、盤面に何もいなければ、私は《罪禍の刻印》を付与できない」

 

 腕を組んで、「これじゃあこっちは、勝利条件が満たせないもんな」と、1人呟く。

 

 「……コスト1、【無二の罪禍エハド】を召喚」

 

 少しだけ考えるような様子を見せた後、月城先生は、コスト1のエンティティを召喚した。

 

 【無二の罪禍エハド】

 コスト1。エンティティ。攻撃力1、体力1《分類:罪禍の巫女》

 召喚時、相手の盤面のエンティティ1体を選択し、それに《分類:罪禍の刻印》を付与する。その後、自分のターン終了時、自分の盤面に《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティがいなければ、カードを1枚引く。

 

 

 単純に、無条件で相手のエンティティ1枚に《分類:罪禍の刻印》を付与するカード。

 ……つまり、フィールドがある今、それは、無条件で相手のエンティティを1枚、召喚するだけで破壊できる、ということを意味している。

 

 そんな破格の効果を持ったカードを、月城先生は、躊躇なく、使った。

 ……香澄の盤面には、一切、エンティティが存在していないにも関わらず。

 

 

 ……ただ、月城先生の盤面には、《分類:罪禍の刻印》どころか、そもそも今召喚した【無二の罪禍エハド】を除いてエンティティが存在しないため。

 カードを1枚引く効果の方は、当然、問題なく働いたようだった。

 

 

 「次、コスト3で【暗黙の罪禍シャローシュ】を召喚。私は前のターンにマジックを使ってるから、召喚時に自分の盤面の【暗黙の罪禍シャローシュ】を除いた中でエンティティ3枚までに《分類:罪禍の刻印》を選んで付与する必要があるな」

 

 話しながら、先ほど召喚した、【無二の罪禍エハド】へと、指を向ける。

 

 「と言っても、対象にできるのは、【無二の罪禍エハド】しかいないから、こいつ1枚に《分類:罪禍の刻印》を付与しようか」

 

 言い終わると、雷が鳴り響き、【無二の罪禍エハド】に、黒い印がまとわりついた。

 

 「ん、ああ、ちょうどいいから、お前の【ターモイル・プラネット】で、ついでに【暗黙の罪禍シャローシュ】に召喚時効果をつけて、【無二の罪禍エハド】をそのまま破壊しよう」

 

 そう言うと、顔を覆った《巫女》によって。

 ……罪の印をなすり付けられた《巫女》は、問答無用で裁かれた。

 

 【罪禍の巫女エハド】が倒れるのと同時に、また雷雲が光を放ち、少し前に【天蠍の魔女アンタレス】が雷に撃たれたときと同様に、互いのソーサラーへと、回復効果を発揮して。

 

 両者の体力は、最大まで回復した。

 

 

 「……【暗黙の罪禍シャローシュ】はこれで『猛進』を持ったが……まあ、これは流石に今は利用できそうにねえか」

 

 盤面に、1枚のエンティティだけを残して、月城先生は、再び、腕を組む。

 

 「……ターン終わりだ」

 

 ターン終了時、また、お互いに、墓所のカードを1枚デッキに戻して。

 

 

 ……香澄のターンへと、移って行った。

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