カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※有栖視点です。



49話 計算あるいは決断

 

 ……【人馬の魔女ルクバト】の効果によって、【不可避の一矢】を1枚手札に加えて。

 そして、ターン開始時のドローを行い……。

 

 香澄ちゃんの手札は、再び、最大枚数の、10枚になった。

 

 

 ……それから、青い目を少しだけ伏せて、香澄ちゃんは、少しだけ、考えるようなそぶりを見せた。

 

 

 隣で見ている雪菜ちゃんもまた、静かに、考え込んでいる。

 

 

 ……釣られるように、ボクも、考えてみる。

 

 香澄ちゃんのデッキなら、月城先生の盤面を更地にして返すくらいのことは簡単だろう。

 

 ……けれど、多分。

 それだけじゃあ、状況は、良くはならなさそうに、感じる。

 

 

 今この場で、明確に長期的な持久戦へと誘導しているのは、先生の方で、明確な、勝利条件も、提示されている。

 

 

 ──ボクが数えている限りでは、【再臨せし全知】のコストは、今のところ、13。

 

 テキストの書き方から見て、自動召喚の条件を満たしているかの判定が先だから、コストが11になってから、その次のターンに、盤面へと自動召喚されることだろう。

 

 毎ターン、《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティを破壊しなきゃいけない、という条件こそあるけれど。……一旦、それは確実に満たせるものとした場合。

 

 

 ……【再臨せし全知】自動召喚までの猶予は、このターンを含めて、あと3ターン……と、言ったところだ。

 

 

 ボクが、頭の中で、ついさっきの計算が合っているかの確認をして。

 ……間違いなく13コストになっているはずだ、と、結論を出した、ちょうどそのタイミングに。

 

 ──香澄ちゃんが、口を開いた。

 

 「……【アルレシャ】を召喚」

 

 選ばれたのは、コスト2の、エンティティ。

 

 ……攻撃力も体力も、どちらも1しかないけれど、破壊されれば、デッキから『コストの最も低いカード』を手札へと加える効果を持っている。

 

 そして、そんな人魚のような姿をした《魔女》……【双魚の魔女アルレシャ】は、召喚時効果によって、自身と瓜二つの存在を、作り出した。

 

 これで、盤面には、2枚のエンティティ。

 ……ただ、『ライフリンク』によって、それらは一蓮托生の存在になったから、あまり厚みのある盤面、とは言えないだろう。

 

 

 「……コスト5、【アルゲディ】を召喚。……効果対象は、【アルレシャ】と、【ハーメシュ】」

 

 続けて召喚されたのは、大きく弧を描いた角と、横向きの瞳孔。そして、【双魚の魔女アルレシャ】と同様の、魚のような下半身が特徴的な、《魔女》だった。

 

 

 角を生やした半魚の《魔女》は、勢いよく前進して……そして、大きな飛沫を立てた。

 

 

 カードによる幻だと分かっていても、反射的に、ボクは水飛沫から顔を背けてしまった。

 

 

 ……そして、もう一度目を向けると。

 そこには、その《魔女》だけが、そこにいた。

 

 

 【磨羯の魔女アルゲディ】

 コスト5。エンティティ。攻撃力3、体力5《分類:争乱の魔女》

 召喚時、自分と相手の両方の盤面に、エンティティが1枚以上あるなら、それらを1枚ずつ選んで破壊し、その後、それらのカードを墓所に加えずにデッキに加える。

 自分のターン終了時、このカードを破壊する。その後、これは墓所ではなくデッキへ加わる。

 被破壊時、手札にエンティティカードが2枚以上あるなら、その中から2枚選んで、それらの能力を全て失わせた状態で盤面に出して、破壊する。その後、この効果で破壊された自分のエンティティのコストの合計を上限とした中で、最もコストの高い《分類:星辰の魔女》を持つカード1枚を手札に加えて、そのコストを-2する。

 

 

 自分の盤面のカードを犠牲に、相手の盤面のカードを1枚、破壊するカード。

 

 

 ……悪くない性能のカードには、見える。……でも、これそのものは、ダメージを狙えるカードではない。

 

 

 ──本当に、コストを5支払って、このカードを出すのが、最適解なのか。

 

 それは、ボクが香澄ちゃんのデッキの全てを知る訳ではない以上、わかるはずのない問いと、言えるだろう。

 

 

 「……ターンを終える」

 

 コストを全て使い果たした香澄ちゃんは、ターンの終了を宣言する。

 

 

 その時、【磨羯の魔女アルゲディ】の効果によって、再び大きな水飛沫が上がった。

 

 そして、そこには……盤面には、誰もいなくなっていた。

 

 

 ……香澄ちゃんが、手札から2枚のエンティティを、選んで、盤面へと出す。

 

 出てきたのは、【天秤の魔女ズベン・エル・ゲヌビ】が、2枚だった。

 

 そして、それらは、出てきてそのまま、何の効果も発揮することなく、破壊された。

 

 ──香澄ちゃんが、デッキからカードを1枚手札へと、加えていく。

 

 

 ……ここまでが、【磨羯の魔女アルゲディ】の、効果だ。

 

 

 2枚の【天秤の魔女】が破壊されて、また盤面が空っぽになったタイミングで、「……ちッ」と、月城先生が不機嫌そうに、舌を打った……ような、気がした。

 

 

 ……それで、コスト5のエンティティを2枚、犠牲にしたから。

 今、香澄ちゃんの手札に加わったカードは、10以下の数字の中でコストが最大のカードなはずだ。

 

 ──そして、その上で、それはコストが2だけ、軽減されている。

 

 

 ……《星辰の魔女》デッキの、ボクが知っているカードの中で言うなら、そこには、コスト5の、【天秤の魔女ズベン・エル・ゲヌビ】と、【磨羯の魔女アルゲディ】の2枚しか、該当しない。

 

 

 けれど、今の流れで、流石にそのどちらかを加えたとは考えにくいから……多分、あれは、ボクの知らないカードなんだろう。

 

 

 もし、あと1多くて11だったなら、【人馬の魔女ルクバト】がそこに該当するんだけどね……。

 

 

 ……もしかしたら、雪菜ちゃんなら、何か心当たりがあるだろうか、と、ボクはちらりと、目を向ける。

 

 そしたら、どこか納得しているような表情をしていたので……おそらく、心当たりがありそうな、何かを知っていそうな、雰囲気だ。

 

 

 ……まあ、いくら雪菜ちゃんが知っていたとしても、ボクはわからないので、考えても仕方がない。

 

 

 聞いたら教えてくれるかもしれないけれど……わざわざネタバレをお願いする理由もないだろう。

 

 

 とにかく、そのカードが、手札に加わって。

 

 ……香澄ちゃんの手札は、9枚。

 

 このままなら、【不可避の一矢】は手札に加えられるだろうけれど、その後の、ターン開始時の1枚は、捨てざるをえない形だ。

 

 

 後は、互いに【ターモイル・プラネット】の効果を利用して墓所のカードを1枚デッキに加えて……。

 

 

 ……これで、ターン終了時の効果は全部、発動しただろう。

 

 

 「──じゃ、こっちのターンだな?」

 

 確認のつもりなのか、そんなことを言いながら、月城先生は、カードを引いた。

 

 

 「……コスト6、【不殺の罪禍シェシュ】を召喚する」

 

 顔の大きさとアンバランスな、大きな丸メガネをかけて、首から古めかしい時計を下げた少女……《巫女》が、盤面へと現れる。

 

 【不殺の罪禍シェシュ】

 コスト6。エンティティ。攻撃力6、体力6《分類:罪禍の巫女》

 召喚時、お互いの盤面の、過去にエンティティの破壊を行っていたエンティティ全てに《分類:罪禍の刻印》を付与する。その後、自分の盤面に《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティがいなければ、相手の盤面のエンティティ全てに『次の相手のターン終了時まで攻撃できない』を付与する。

 

 

 強力な効果を持っているみたいだけど、《罪禍の刻印》どころか、盤面が空っぽなので、効果は空振り。

 

 

 「──【断罪の救済】で【不殺の罪禍シェシュ】を選択する」

 

 月城先生が、不本意そうな表情で、宣言すると。

 その盤面にいた丸メガネの《巫女》は、光の剣のようなもので切り裂かれて……破壊された。

 

 

 【断罪の救済】

 コスト2。マジック。《分類:罪禍の巫女》

 盤面のエンティティを1枚選択し、《分類:罪禍の刻印》を付与する。その後、《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティ全てに『被破壊時、お互いのソーサラーの体力を1回復する』付与し、破壊する。

 

 

 ……【不殺の罪禍シェシュ】が破壊されると同時に、雷雲が柔らかい光を放ち、先生の体力を回復して。

 

 【断罪の救済】の効果も合わせて、月城先生の体力は、23になった。

 

 

 「……ターン終わりだ」

 

 ……こうして合計8のコストを使い切って、月城先生は、ターンを終えた。

 

 

 またお互いに【ターモイル・プラネット】の効果を利用して、デッキのカードを手札に戻すくらいで、それ以外に、目立った動きはない。

 

 ──やっぱり、先生は、多少無理をしてでも、【再臨せし全知】の自動召喚を狙っているのだろう。

 

 

 これで、【再臨せし全知】のコストは、12になったはず。

 

 

 ……お互いの行動がどう転ぶにせよ。

 

 ──勝負の結果が出るのは、きっと、もう、そろそろだ。

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