カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※有栖視点です。



50話 攻勢あるいは一転

 

 【人馬の魔女ルクバト】が加えた【不可避の一矢】で、香澄ちゃんの手札が10枚になって。

 

 ──ターン開始時のドローで引いたカードは、手札に加えられず、直接墓所へと送られた。

 

 香澄ちゃんの、ターン。

 

 

 ……月城先生の盤面には、一切のエンティティが存在していない場面だから、自由に動くことができそうな状況にはなっている。

 ──ただし、【再臨せし全知】の自動召喚までもう猶予がないから、無駄にできない状況でもある、と言うこともできるだろうね。

 

 

 ……ちなみに、具体的に【再臨せし全知】の自動召喚までの猶予について考えるのなら、自由に動くことができるのは、多分……最速で、このターンを含めて残り2ターン。

 

 それだけの間に、23点……回復がないと仮定してのそれだから、実際にはもっと──ダメージを出すのは、ボクには、現実的とは思えない。

 

 

 ……香澄ちゃんが、青い瞳を、右から左へ。

 

 彼女の手札のカードを、端から端まで、目線でなぞる。

 

 

 ……そして、目を閉じて。

 

 「……コスト2、【カストル】」

 

 ──目を開いて、香澄ちゃんが宣言する。

 

 

 ……召喚されたのは、この試合だけで、もう何度も見た【双児の魔女】。

 2枚並んで『ライフリンク』によって繋がり、盤面に立つ。

 

 

 「次、【アルレシャ】」

 

 さらにコストを2払い、【双魚の魔女アルレシャ】が、盤面へと召喚される。

 ──召喚時効果で、盤面に2枚の【双魚の魔女】が並び立つ。

 

 

 ……同じような、効果のカード。

 

 

 この流れは、多分……。

 

 香澄ちゃんが、次にやろうとしていることの、予想が立った。

 

 

 「──【レグルス】」

 

 ……それは突然の出来事だったけど。

 

 既に見たことがあって、全く予想していた通りの光景だった。

 

 

 大剣が、横薙ぎに一閃。

 

 盤面に唯一残る攻撃力5の【獅子の魔女】。

 

 

 ……手札のカードを3枚使ったけれど、【双児の魔女カストル】と2枚の【双魚の魔女】の被破壊時効果で、手札のカードは3枚増えて。

 

 手札の枚数は、まだ、10枚。

 

 このままでは、次のターン【不可避の一矢】を手札に加えることができず、ターン開始時にカードを引くこともできないけれど。

 

 ……コストは、まだ3、残っている。

 

 

 「【不可避の一矢】。対象はソーサラー」

 

 ……コストを2消費して、先生に3のダメージ。

 

 残り体力は、まだ、20。

 

 

 ……一応、【獅子の魔女レグルス】の被破壊時効果を加味しても。

 それでも、体力0は、まだまだ遠い。

 

 

 「──終わり」

 

 

 けれど、不思議と、焦るような様子もなく。

 

 ……香澄ちゃんは、コストを1余らせて、ターン終了の宣言をした。

 

 【ターモイル・プラネット】のターン終了時効果を発動させる香澄ちゃんの姿を見て、わかりやすく怪訝な表情を見せた先生だけど。……すぐに切り替えて、同じように、ターン終了時効果を、利用した。

 

 

 「……いいんだな?」

 

 月城先生は、カードを引いてから、改めて、香澄ちゃんに目を向ける。

 

 

 ……香澄ちゃんは、その気迫に怯むことなく。

 小さく、首を縦に振った。

 

 

 「──じゃあ、一足先に、決めに行くか。【無欲の罪禍エセル】」

 

 コストを9支払い、コスト10のエンティティが召喚される。

 

 

 ……これは、先生が算数を間違えた──わけではない。

 

 ──そのカードは、コストが、軽減されていたんだ。

 

 

 ……そう言えば。

 思い返して、思い当たるのは、【暗黙の罪禍シャローシュ】の、召喚時効果。

 

 確か、《分類:罪禍の刻印》を持つカードが自分の盤面にいなければ、手札のカードを1枚だけ選んで、そのコストを-1することが……できたような。

 

 

 現れた《巫女》……【無欲の罪禍エセル】は、静かに、瞳を閉じる。

 ──そして、目を開いて、【獅子の魔女レグルス】へと指を差した後。

 

 

 ……手を下ろした《巫女》は、打って変わって、小さく、優しい笑みを、見せた。

 

 

 ……その、直後。

 ──一気に、月城先生の盤面が、大型のエンティティで埋め尽くされた。

 

 

 【無欲の罪禍エセル】

 コスト10。エンティティ。攻撃力10、体力10《分類:罪禍の巫女》

 召喚時、お互いの前のターン中にソーサラーがエンティティもしくはマジックを用いて相手のエンティティもしくはソーサラーに対してダメージを与えていたなら、そのソーサラーのエンティティ全てに《分類:罪禍の刻印》を付与する。その後、自分の盤面に《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティがいなければ、自分の盤面が上限になるまでデッキからコストの異なる《分類:罪禍の巫女》を持つエンティティをコストが高い順にランダムに出現させ、それから、それら全ての召喚時効果を1度ずつ発動させる。さらにその後、自分の盤面に《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティがいなければ、自分の盤面のエンティティ全てに『挺身』を付与し、自分のソーサラーに『自分のターン終了時、自分の盤面の最も体力の高いエンティティの体力と同じ値だけ、相手ソーサラーへとダメージを与える』を付与する。

 

 

 ……まず、最初に召喚時効果で、『ソーサラーがエンティティかマジックでダメージを与えているか』で《罪禍》の判定。

 

 これに【獅子の魔女レグルス】が引っかかって、逆に、先生側は引っかからなくて……。

 

 

 効果で、デッキから、コストの高い順にエンティティを出現させた。

 

 ……これによって出現したエンティティはそれぞれ、コストが、9、8、7、6と、並んでいる。

 

 

 ……そして、さらに。

 

 

 先生の盤面の5枚のエンティティが全部、大きく強化された様子で、しかも、先生の体力が、25……つまり、最大値まで、回復した。

 

 ──これは、【無欲の罪禍エセル】の効果で、『出現したエンティティ全ての召喚時効果を、その場で発動させたから』だろう。

 

 

 ……どうやら、5枚全てのエンティティが、召喚時効果を同時に発揮してなお、誰にも《分類:罪禍の刻印》が自分の盤面に付与されることはなかったみたいだ。

 

 

 【真実の罪禍テーシャ】

 コスト9。エンティティ。攻撃力9、体力9《分類:罪禍の巫女》

 召喚時、お互いの盤面の、攻撃力もしくは体力が効果によって加算されているエンティティ全てに《分類:罪禍の刻印》を付与する。その後、自分の盤面に《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティがいなければ、自分の盤面のエンティティ全ては『受けるダメージを-9する』を得る。

 

 

 【無私の罪禍シュモネー】

 コスト8。エンティティ。攻撃力8、体力8《分類:罪禍の巫女》

 召喚時、お互いの前のターン中にソーサラーがデッキ以外からカードを手札に加えていたならそのソーサラーの盤面のエンティティ全てに《分類:罪禍の刻印》を付与する。その後、自分の盤面に《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティがいなければ、自分の盤面のエンティティ全ては『2回攻撃できる』を得る。

 

 

 【清純の罪禍シェヴァ】

 コスト7。エンティティ。攻撃力7、体力7《分類:罪禍の巫女》

 召喚時、お互いの盤面の、エンティティに対して攻撃を行なっていたエンティティ全てに《分類:罪禍の刻印》を付与する。その後、自分の盤面に《分類:罪禍の刻印》を持つエンティティがいなければ、カードを手札が最大7枚になるまで引き、それから、手札の枚数と同じ値だけ味方ソーサラーの体力を回復する。

 

 

 ……後のもう1枚──【不殺の罪禍シェシュ】は、既に、効果をこの試合の中で見ている。

 

 過去にエンティティの破壊をしているエンティティに《刻印》を付与して、自分の盤面に《刻印》がなければ、1ターンの間、相手エンティティ全ての攻撃を封じる……っていうやつだ。

 

 

 ……それで、最終的に、結局何が起こったかってことで言えば。

 

 

 要するに、先生の盤面に、10〜6コストのエンティティが並んで、それ全部が『受けるダメージ-9』を持って、『2回攻撃』も持って、カードによる攻撃も効果も吸い込む『挺身』まで持って……その上で、ソーサラーの体力が全回復した。

 

 ……と、言ったところだろうか。

 

 

 あとは……。

 

 

 「──ターン終わりだ」

 

 月城先生が宣言して、【獅子の魔女レグルス】が、雷によって、破壊される。

 

 

 【審判の雷雲】の回復効果と差し引き-4で、月城先生の体力は、21になって。

 

 

 ……それから、月城先生自身に付与された効果……『自分の盤面の最も体力の高いエンティティの体力と同じ値だけ、相手ソーサラーへとダメージを与える』効果が発動する。

 

 月城先生の盤面で、1番体力が高いのは、もちろん、【無欲の罪禍エセル】の、10だから。……直接10のダメージが飛んで。それで、香澄ちゃんの体力は、15にまで一気に削られた。

 

 

 ……それで、一方の香澄ちゃんの方はと言えば。

 

 【人馬の魔女ルクバト】が、手札に最後の【不可避の一矢】を加えて。

 ──【人馬の魔女ルクバト】が、自壊する。

 

 

 手札は、9枚。

 

 ターン開始時のドローを合わせて、ちょうど10枚になる計算だけど。

 

 

 ……ボクには、もう。

 

 ……香澄ちゃんに、勝ち筋が残っているようには、とても、考えることが、できなかった。

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