カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



57話 警察あるいは不審者

 

 旅行の計画は決まりまして、それから何日かが経った日のことでした。

 

 

 あたしは、数日後には3人で旅行に行くのだと考えただけで、不安と緊張と楽しみで頭がいっぱいになってしまうくらいには、浮かれていました。

 

 

 何かの記念日というわけでも何でもないただの高校生の旅行としては、少しばかり……いや、かなり多めに予算が必要な予定にはなってしまいましたが、貯金などを加味すれば、かなりの余裕はある見通しです。

 

 

 ……楽しみなことがあれば、大体のことは楽しく感じられてしまうようでして。

 

 今はアルバイトからの帰りですが、なんだかとてもあっという間だったような気さえします。

 

 

 ──そうです。

 

 不安も緊張もありますが、やはり、あたしの中では、『楽しみ』が最も勝るようです。

 

 

 ……つまり、と言いますか、これは、ある意味人間的に少しばかり成長したとすら言ってもいいのではないでしょう。

 

 

 ゲーム風に言うなら、レベルが1上がった!スキル:社交性を手に入れた!と言ったところです!

 

 ……あたしは一体何を言っているのでしょうか……?

 

 

 そんな浮ついた気持ちで、日が沈んですっかり暗い、道を歩いていると。

 

 

 「あ、おぉー……い。香澄っちー!」

 

 ──と、急に聞こえてきたあたしを呼ぶ声に。

 ……驚きと共に、現実に引き戻されたような気持ちがしました。

 

 

 「……あ、は、はい……な、なんでしょう……?」

 

 ……とりあえず返事をしてみますが、小さい声しか出てこなかったので、おそらく、向こうには聞こえていないでしょう。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 ……迷いましたが、あたしは、方向転換をしまして。

 

 

 声の聞こえてきた方に、恐る恐る……足を、進めることにしました。

 

 

 ……。

 

 

 ……少し歩きまして、そこにいたのは、先日おしゃれなカフェでお会いした、奈々実さんでした。

 

 

 「ごめんねー……急に声かけちゃったりして」

 

 

 ……その、何と言いますか、相変わらずのんびりとした声で。……まったりした雰囲気を、感じる方です。

 

 

 「ちょっとさぁ……今困ってるんだけどー、時間とか大丈夫?」

 

 ……時間、は、門限とかはないので大丈夫ですが……。

 

 ……その、何だか人気のないところによく知らない先輩と2人きり、という状況がちょっとあたしには辛い気持ちがありますね……。

 

 

 「……えっと、時間、は、大丈夫……です……?」

 

 

 ただ、嘘を言うのも気が引けてしまいましたので、あたしは、正直に、時間的には問題がないということを、言ってしまいました。

 

 

 「そっかー、ならよかった。ちょっとだけ、ついてきて」

 

 

 そう言いながら、奈々実さんは、突然ポケットから飴玉を1つ、2つと取り出しました。

 

 

 「あ、そうだ。……どっちかいるー?」

 

 

 奈々実さんは、飴玉を手のひらに乗せると、あたしに差し出してきました。

 

 

 「えっ、あ、いえ……大丈夫です……」

 

 あたしは、どうすればいいのかわからず、反射的に拒否してしまいましたが……こういうのって、受け取った方が礼儀としていい、みたいなことってあったりするのでしょうか……?

 

 

 「そっかー」

 

 しかし、奈々実さんは、あまり気にしていない様子で、その飴玉2つの封を開けると、何の躊躇もなく、両方とも、口の中に突っ込んでしまいました。

 

 

 「……えっと、確かこのあたりに……あ、いた」

 

 

 少々歩きまして、そこは、どこか見覚えのある風景……あ、思い出しました。

 

 

 えっと、そこは、あたしが、以前不審者にバトルを挑まれた、例の、人通りの少ない、場所でした。

 

 

 「……あの、その……この場所に一体何が……?」

 

 

 あたしが、身構えながら奈々実さんの視線の先に目を向けてみますと。

 

 

 ……そこには、全身黒ずくめの、不審者が倒れていました。

 

 ただし、多分ですが、あたしに以前絡んできた不審者の人とは、違う顔です。

 

 

 「急にバトル仕掛けられて……大したことないなーって思いながら返り討ちにしたら……なんか目を覚まさなくって……」

 

 

 ……確かに、あの時も、そうでした。

 

 

 あの時は、偶然警察の人が通りがかったからよかったですが。

 

 ……もし通りがからず、そして、不審者の人も目も覚まさないとなれば、どうしていいかわからず、困ってしまっていたでしょう。

 

 

 奈々実さんは、どうやら、そういった感じの様子みたいです。

 

 

 「……あ、あたしも、その、前にこんな感じの人とバトル……しました」

 

 

 あたしがそう言うと、奈々実さんは、少しだけ、興味を示しました。

 

 

 「へー、で、その時はどうしたのー?無視しちゃってもいいのかな……?」

 

 

 「えっと、あたしは……無視は、してない、です……。たしか、警察の人に、預かってもらいました」

 

 

 「そっかあ……まあ、それがいっかあ……」

 

 

 あたしがその話をすると、奈々実さんは、ポケットからスマホを取り出して、電話画面を表示しました、が。

 

 

 「……警察の人って、電話かけてもいいのかな……なんか怒られたりしないー?」

 

 緊張感があるのかないのかよくわからない雰囲気で、あたしの方に目を向けてきました。

 

 

 ……その、そんなことを言われても、あたしとしては困りますが……。

 

 「……えっと……たしか、そういうので怒る人って、たぶん、警察より、救急車のイメージが強い……と、思います……?」

 

 

 途中で自信がなくなってきましたが、何となく、そんな感じのポスターを見た記憶はあります。

 

 

 ……いえ、ですが、だからと言って警察の人が意味もなく呼ばれて怒らないことにはなりませんが……。

 

 ……もう電話はかけてしまったので、遅い、ですね。

 

 

 ……まあ、呼んだわけではありませんが、以前警察の人にお願いしたのは事実なので、多分、怒られたりはしない……と、思います。

 

 

 ……。

 

 

 しばらく、奈々実さんのちょっとした世間話のようなものを聞きながら、警察の人が来るのを待っていますと。

 

 

 ……その人は目を覚すことなく、呼ばれた警察の人が、パトカーに乗って、やって来ました。

 

 

 ……あれ、警察の方の制服って、こんな感じでしたっけ……?

 

 

 うーん、すみません、多分あたしの記憶力が弱いせいで何か勘違いしている気がしますが、何となく、思ってたより、生地がしっかりしているような感じがすると言いますか……。

 

 

 ……あ、あと、『警察手帳』と言うものも、見せていただきました。

 初めて見ましたが、なんだか、ドラマみたいでかっこいいなって、思いました。

 

 

 それで、どうやら、警察の方は2人でいらっしゃったようで、あたしたちは、それぞれ事情を聞かれました。

 

 

 以前はこんなことを聞かれなかった気がするのですが、夜道で危ないから、とかでしょうか……?

 

 

 「あの、すみません……えっと、以前同じようなことがあったと思いますが……あの方って、どのくらいで目を覚まされましたか……?」

 

 

 ……気になってきたので、タイミングをみて、以前のことを聞いてみます。

 

 

 ……が、警察の方曰く、以前同じようなことがあった、という話はとくに聞いていないそうで、よく、わかりませんでした。

 

 

 あたしが困惑していると、警察の方は、もしかしたら、この町に偽の警察がいるかも知れないというお話になりまして……。

 

 

 かなり、詳しく、当時の状況の聞き取りをされてしまいました……。

 

 

 ……別に、聞き取りをされて困るようなことがある、というわけではありませんが、夜ご飯がまだでお腹が空いていたのと、うっかり道を間違えて迷子になってしまったお話をすることになったのは、少し、辛かったです。

 

 

 ……と、こんな感じで事情聴取も終わりまして。

 

 

 「……ごめんね、巻き込んじゃって……」

 

 奈々実さんは、なんだかとても、申し訳なさそうに言いました。

 

 

 「あ、い、いえ……その、あたしの話が長引いたのは、別なお話ですので……」

 

 

 ……どちらかといえば、長引く原因になったのはあたしの方なのに、気を使わせてしまったみたいです。

 

 

 「……そーかもだけど、うちがあそこで声かけたのが最初だし、ちょっとキツめにあの人倒しちゃったのが原因かもだからー……そうだ、何か、食べ物でも奢るよー」

 

 ……それは、流石に申し訳ないので、できる限りの全力でお断りさせていただきました。……が、思ってた以上に、奈々実さんの意思は固く……。

 

 

 今日は今から家に帰って夕飯を食べるので、とお断りできましたが。

 

 ……気が付けば、今度一緒に、奈々実さんのおすすめのカフェに行くことが、決まってしまいました……。

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