カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



59話 アナログあるいはデジタル

 

 「……あとは、そうだねー……。『ファントムビルド』が強くなりたいならー……知識とか、そういうのを身に付けたいってことなら……役に立てるものを持ってるかもー?」

 

 あくびをしながら、奈々実さんは、そんなことを言いました。

 

 

 「うーんと、ちょっと待ってねー……」

 

 

 奈々実さんは、のんびりとした声でそう言うと、プリンを一口、続けて二口。

 

 ……食べました。

 

 

 「……うん、えっと、そーだね。まず、『イミテーション』って、あるでしょ?」

 

 

 「……あ、はい。えっと……あります」

 

 

 「でも……あれって、始める前も実際にやってる時も色々と大変でしょー……?」

 

 

 ……まあ、そうです。

 

 カードを集めるのに加えて、関連の道具を一式揃えるのは、もちろん大変だと思いますが。

 

 

 ……ログを記録したり、たくさんの『ファントムカード』の山の中から使うものを毎回引っ張り出したり。

 

 デッキからカードを手札に加えるようなことをするたびにお互いに確認したりする必要があったり……と。

 

 ……とにかく、手間が多かった印象は、あります。

 

 

 ……あたしが、小さく頷くと、奈々実さんは「だよねぇ」と、のんびりと同意しました。

 

 

 「……まー、普段自分たちがどれだけ複雑なことをカードが勝手にやってくれてるのか知るっていう意味では、一度はやってみるのがいいのかもだけど……」

 

 

 奈々実さんは、話をしながら、チョコレートケーキにスプーンを立てて、掬い取り、口の中へと運びます。

 

 

 「……何回もやるようなものじゃないよねー……。あれって、実在のソーサラーの『グッズ』としての側面があるから売れてるだけで……カードゲームのカードとして見るならー……ちょっとー……っていう感じかなあ」

 

 

 あくびを交え、話をしつつ、デザートを食し……。

 

 奈々実さんの前にたくさん並んでいたお皿のうちの1つが、空になりました。

 

 

 ……えっと、それで。

 『イミテーション』が、ゲームとしてはイマイチ、という視点は、言われてみれば、確かに、と、思います。

 

 

 「『イミテーション』の大会、いつも同じデッキばっかり優勝してるしー……使用率の偏りもちょっと、ねー……」

 

 

 ……『イミテーション』の、ゲームとしての欠点は、考えれば考えるほど、湧いて出てくるようです。

 

 

 「……まあ、よーするにー……『イミテーション』と、『ファントムビルド』って、感覚として全然違うよねーってことが言いたかったんだけどー」

 

 

 次の皿に手をつける……前に、大きなあくびが、飛び出しました。

 

 

 「『ファントムビルド』の知識を身につけるならー……多分実戦が1番手っ取り早いけど……『イミテーション』はちょっと……だけど、『ファントムビルド』は相手が偏っちゃうからー……個人メタ……個人への対策ばっかりが身につきやすいのが……問題かなあって思うんだよねえ」

 

 

 ……なるほど、です。

 知識をつけて、強くなるという視点で考えると、その2つには欠点がある、と……。

 

 

 ……ですが、では、どうしたらいいのでしょうか。

 

 2つを適度に組み合わせる……とか、でしょうか……?

 

 

 奈々実さんの言葉を受けて、あたしが、そんな感じのことを言うと、奈々実さんは、ふるふると首を横に振りました。

 

 

 「うーんと、『イミテーション』は、うちとしては……そもそも論外。なんだよねー……。それで、『ファントムビルド』は、相手の偏りを抜きにしても、1回負けると、体力をだいぶ消耗しちゃうからー……連続でやるには、香澄ちゃんが1度も負けない前提だとしてもー……たくさんのソーサラーを集める必要が出てくるねー……」

 

 

 ……確かに、バトルが終わると、雪菜さんや有栖さんは、疲れからか膝をついていましたし、例外的なものだとは思いますが……不審者の方に至っては、意識不明になっていました。

 

 

 ……あと、そういう仮定でのお話、ということはわかるのですが、練習を積むという話なのに、勝つ前提なのは、なんとなく、変な感じです。

 

 

 いえ、まあ……たまたま、あたしの場合は、その状況が当てはまりそうな感じはありますが……。

 

 

 ……であれば、つまり。この方法は、理論的に破綻している……と、いうことなのでしょう。

 

 

 それを抜きにしても、『ファントムビルド』をやっていると、結局いつもの『フルオート』現象が起こるので……あたしの今の、『実力を結果に追い付かせる』という意味での練習とは、合わないと思います。

 

 

 「そこでー……これっ!」

 

 じゃーん、と言いながら、奈々実さんが取り出したのは……スマホでした。

 

 

 「デジタルなら、複雑な処理は、全部実際の『ファントムビルド』みたいに自動でやってくれるようにできるよねー」

 

 

 ……「うちもお絵描きする時はもっぱらデジタルだよー」なんていう補足もありましたが、それは置いておきまして、確かに、言われてみれば、そうです。

 

 

 「……まあ、『イミテーション』と違って、手元にカードが手に入らない以上……対戦を重視することになるけどー……。そうすると今度は『イミテーション』以上にゲームバランスが問題になってくるしー……過去有名になったソーサラーの数は莫大だけどどのくらい実在するのか、とかも問題になってくるからー……それで、今まで出てこなかったんだけどねー……」

 

 

 ……なるほど、です。

 デジタルカードゲームとして出すにも、色々と、考える必要のある点が多い、ということなんですね……。

 

 

 「で、これは、その問題を一先ず解決した試作品ー……!」

 

 

 ……お話によると、それは、生徒会長の水無川さんのお爺さんが社長をつとめている会社の、現在開発中のデジタルゲームの試作品だそうです。

 

 

 対戦機能はあくまでサブとして……。

 メインは、ストーリーモードなどで戦うNPC戦らしく、ゲーム中にNPCの強さを細かく調整できるなど……とにかく、そこに力を入れているそうで。

 

 ……ストーリーに関係なくできる、単純なNPC戦も、かなり充実しているみたいです。

 

 ただ、収録されているデッキは、あまり多くなく、昔の有名な人のデッキが10種類程度、だそうです。

 

 

 「……まだ、正式な発売はちょっと先だけどー……テストプレイをほのっち経由でお願いされたんだよねー……。まだデータを集める必要自体はあるみたいだからー……アンケートに答えることが条件になっちゃうけど、不特定多数相手じゃなければデータ渡してもいいって言われてるしー……。いるー?」

 

 

 ……ちなみに、ほのっち、というのは、水無川さんのことだそうです。

 

 それで、このお話は、正直、とても、ありがたいお話です。

 

 

 デジタルで、相手がNPCなら、いつでもどこでもできますし、繰り返せば、『ファントムビルド』への知識も、つきそうな感じがします。

 

 

 「……えっと、その、よ、よろしければ……」

 

 

 「ん、おっけー……」

 

 

 いつの間にか、すっかりデザートも飲み物も空になったテーブルの上に、奈々実さんが、スマホを持った手を差し出してきます。

 

 

 「無線でデータ送れるからー……。うちと由依っちとほのっちも、特別に、データ渡せる権利を会社からもらってる形だからー……香澄っちが同じような感じで他の1年ずにデータ渡すことは、できないだろうけどー……」

 

 

 あたしも同じようにスマホを取り出して、テーブルの上に載せるような形で近づけると。

 

 ……データのやり取りが始まり、数分で、あたしのスマホに、アプリが増えました。

 

 アイコンはシンプルな単色で、アプリ名にも、(β版)と書いてあります。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 「……その、今日は……本当に、いろいろ、ありがとうございました……」

 

 

 ……カフェを出て、少し喋りながら歩き、分かれ道に着きまして。

 

 

 ここで、進む方向が違うみたいなので。

 あたしは、改めての、お礼を伝えていました。

 

 

 ……カフェのデザートはとても美味しかったですし、相談に乗っていただくことができたのも、とても助かりました。

 

 いただいたゲームについても、お家に帰ったら、ぜひ、早速やってみたいです。

 

 

 「ううん、いいのいいのー。そもそもが昨日のお礼兼お詫びだしー。それに、元々、香澄っちとは喋ってみたいって思ってたしー。……ゲームについては、まあ、どっちかと言うと、うちより、ほのっちにお礼を言うべきかもだけどー……」

 

 

 奈々実さんは、そう言いながら、あくびをしつつ、優しい笑顔を、向けてきました。

 

 

 「──むしろ、うちの方こそ、ありがとうねー……」

 

 

 ……こうして、あたしと奈々実さんは手を振り合って。

 

 分かれ道を、それぞれの帰り道へと、進んだのでした。

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