※香澄視点です。
……とりあえず、効果は置いておきまして。
今しがた朽木選手の手札に加わった2枚のカードは、【千の貌の化身】というエンティティカードと、【窮極たる銀の鍵】というマジックカード……みたいです。
そして、盤面へと出現したエンティティは【灰色の織り手】という、コスト2の、攻撃力0、体力1のエンティティのようでした。
何やら出現時に発動する効果を持っているみたいですが……相手の盤面に作用するものだったためか、今回は不発だったみたいです。
何を考えているのかいまいちよくわからないような笑みを浮かべ、朽木選手は、そのまま、【窮極たる銀の鍵】を、使用しました。
……これは、見かけ上は何の効果もないように見えたので、効果の把握を後回しにしていたため、後から録画を見返したことで分かったことではあるのですが。
──そのマジックカードの効果は、自分の手札のカードのコストを変動させる、というものでした。
……具体的には、自分の手札のカードを2枚を選んで、片方のコストを+1、もう片方を-1するという、コスト1の、カードです。
そして、それから、さらに。
……盤面に、【千の貌の化身】が、コスト1で召喚されまして。
その効果によって、朽木選手はカードを引き……そして、1枚をデッキへと戻しました。
……ちなみに、何枚かのカードの効果を読むことを諦めたことで、少しだけ余裕が生まれたので、効果を読んでみますと……。
【千の貌の化身】
コスト1。エンティティ。ファントム。攻撃力1、体力1《分類:外神の狂瀾》
召喚時、カードを1枚引いて、そのコストを+1する。その後、自分の手札のカードを1枚デッキに戻す。
被破壊時、手札に既に公開されている【這い寄る無貌ナイアーラトテップ】があるなら、それのコストを-1する(最小値0。複数枚あるなら、それら全て)。その時、既にコストが0の【這い寄る無貌ナイアーラトテップ】があるなら、それを手札から盤面に出現させる。
自分のターン終了時、お互いの盤面の、これを除いた中で最もコストの低いエンティティ1枚を破壊する。
……えっと、召喚時効果の、カードを1枚引く、という効果自体は無難に強そうですが、デッキに戻す、というのと、引いたカードのコストを+1する、というのが、難しそうです。
……ですが、このカードは、どうやら【這い寄る無貌ナイアーラトテップ】が手札で公開された状態で存在し続ける限り毎ターン生成されるようですので。
デメリットがあること自体は、妥当に思えます。
……えっと、あとは、それから……。
あたしが、そんなことを考えていると、どうやら、ターンの終了が宣言されたようで。
……ターン終了時。
コストが0の、【白痴の魔王アザトース】が破壊され……。
それは、手札へと加わっていきました。
……えっと。その……おそらく効果が複雑すぎて、頭を使い過ぎるせいなのではないか、と思いますが。
何だか、あれらのカードを見ていると、頭が痛くなってくるような……そんな、気がします。
……しかし、そんなことは、言い訳にしかならないでしょう。
そんなことを言って、理解を完全に放棄する、というのでは。
今までと、何も変わりません。
……そして、そんなことを、考えている間にも、当然、時間は進みます。
……気が付けば。
凪宮選手の2ターン目が、今から始まる、ところでした。
……試合の状況が既に不利だと判断しているのか、あるいは別な理由か、凪宮選手は、険しく顔を顰めながら、朽木選手の方を見ており、そして、当の朽木選手は、焦点の定まらない目つきで、未だに、ニタニタと笑っています。
そんな、2人による対照的な睨み合いの絵図は、凪宮選手がため息をついて、カードを引いたことで、終わりました。
……そして。
──凪宮さんが、引いたカードにそのまま手を触れて。
手札の公開を宣言した、ようです。
公開されたのは、【智慧の戦神オーディン】というカードで、こちらは、ターン開始時に、コスト1のそこそこ強めのエンティティカードを生成してくれるカードです。
そして、あとは、おまけで『神速』も持っていますし、多分、かなり強い部類のカード……ではないかと、思います。
……それで、えっと。
一応、効果の全体像としては、こんな感じです。
【智慧の戦神オーディン】
コスト7。エンティティ。攻撃力7、体力8《分類:戦神の黄昏》
『神速』
自分のターン中、これが手札にあるなら任意のタイミングで公開してよい。
自分のターン開始時、手札にあるこのカードが既に公開されているなら、【ヴァルハラの勇士】を1枚手札に加える。
召喚時、手札のカードを2枚除外し、その後、手札に【ヴァルハラの勇士】を2枚加えた後、自分の手札にある全ての【ヴァルハラの勇士】のコストを0にする。
攻撃時、自分の墓所にあるカードをランダムに1枚除外し、自分の盤面の【ヴァルハラの勇士】全ての攻撃力を+1する。
被破壊時、これは墓所に加わらず、除外される。
……改めて見てみましても、単純にステータスが高いのと、その上で、『神速』効果持ちであるというのが、その、わかりやすく、強そうな感じがします。
……それで、このカードが手札に加えたりする、【ヴァルハラの勇士】というカードはと言いますと……。
【ヴァルハラの勇士】
コスト1。エンティティ。攻撃力1、体力1《分類:戦神の黄昏》
『猛進』
召喚時、ランダムな自分の墓所のカードを1枚除外し、これの体力を+1する。
攻撃時、これの攻撃力を+1する。
コスト1で召喚できる、『猛進』次のエンティティです。
……コストが1なので、当然といえば当然ですが、攻撃力や体力が、相応に、低いです。
……が、しかし、召喚時や攻撃時に+1する効果を加味しますと。
むしろ、攻撃力や体力が両方1のまま、ということはほとんどありませんので、極めてコストパフォーマンスの良いカード……と、言えると思います。
……えっと、それから。
凪宮選手は、朽木選手のフィールドカードの効果を利用したようで、自分の体力に2のダメージを、受けました。
……そして。
凪宮選手は、コストを2支払い、手札から、エンティティを、召喚しました。
……そしてそれは、本来は、3コストのカードでした。
ですので、朽木選手のフィールドカードの効果によって、追加で、1のダメージを、受けます。
……コストが、変動しているカード。
……ということは、つまり、おそらく。
先程フィールド効果を使ったのは、このカードのためだったのでしょう。
……召喚時効果も合わせて、盤面に、長い槍を持った天使のようなヒト型のエンティティが、2枚、現れます。
【戦乙女ワルキューレ】
コスト3。エンティティ。攻撃力2、体力1《分類:戦神の黄昏》
『猛進』
『挺身』
これが相手のエンティティを破壊した時、それを墓所へと加えずにゲームから除外し、自分の手札に【ヴァルハラの勇士】を1枚加える。
召喚時、自分の手札のカード1枚を選択し、それをゲームから除外する。その後、自分の盤面に【戦乙女ワルキューレ】を1枚出現させる。
……そして、その時。
盤面に2枚の【戦乙女ワルキューレ】が、姿を現した、その瞬間。
──巨大な一本の大樹によって、世界が……覆われました。
【世界樹ユグドラシル】
コスト0。フィールド。《分類:戦神の黄昏》
自分のターン中、自分のカードが除外されたなら、デッキにあるこれは領域へと設置される。お互いのソーサラーは、自分のターン中1度まで、自分の墓所にあるカードを1枚除外して良い。この効果でカードが除外された時、そのソーサラーは、カードを1枚引き、2回復する。
お互いのソーサラーは、自分のカードを除外するたびに、自分の領域にあるフィールドのコストを+1する。
自分のターン終了時、これのコストが元のコストと異なるコストであるなら、その差分の半分の値(端数切り捨て)だけダメージを、相手の盤面のエンティティとソーサラーに、古いエンティティから順に割り振って与え、その後、これのコストが10以上であったなら、自分の手札に【終末の劫火スルト】を1枚加えて、これは破壊される。
被破壊時、コスト0の【世界樹ユグドラシル】を自分の領域に設置する。
……突然このカードが出てきたのは、【戦乙女ワルキューレ】の召喚時効果で、手札のカードを除外したから、でしょう。
……そして、【終末の劫火スルト】は、その、いわゆる、出せば次のターン勝ちのカードです。
挙動としては、あたしのデッキの、【アルケー】に近く、召喚時に、コスト10の勝利効果マジックを手札に加える……と、いうものです。
出てくるかどうかは分かりませんし、どうせ出てくるにしても当分先なので、一旦置いておきまして。
……勝利効果を持つカードを生成するカード。
つまり、これは、レジェンダリーのカード、ということです。
ただ、凪宮選手は、このターンだけで、合計3のダメージを受けています。
レジェンダリーのカードを出すことができたのは大きいかも知れませんが、朽木選手の盤面にいるのは攻撃力が1のエンティティと0のエンティティなので、もう1ターン待ったほうが安全だったような気はしますが……。
まあ、あたしの意見なんていうものよりも、プロの判断の方が正確でしょうし……試合を早めた方がいいという判断をした、ということなのでしょう。
……しかし、対する朽木選手の笑みは消える様子はなく。
そのまま奇妙な不気味さを引きずり、試合は、進んでいくようでした。