カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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連続投稿なので初投稿です


2話 懺悔あるいは冗長な言い訳

 

 ──どうしてこんなことになったのかは、正直なところ、今でもわかっていません。

 

 本棚の上に置かれた、金色の盃が目に入り、あたしはバツが悪くて、思わず目を逸らしました。

 

 あの日。

 気がついたら、あたしの首にはずっしりと重い金色のメダルがかかっていて。

 それで、きっとこれは夢なんだって思えば、一枚の紙があって。達筆な誰かが書いたのか、そういうフォントで文字を入力したのかも判別がつかないその紙──賞状には、たしかにそこには、なんの冗談か『マジカル☆スピカ』の文字があって……。

 

 それは、きっと悪夢だったんだと思います。

 いえ、わかっています。あたしはきっと、そう思いたかったんです。

 

 ……そして、今でも心のどこかでそうであってほしいと思っているんです。

 

 『マジカル☆スピカ』って何ですか!?バカなんですか??

 誰です?そんな名前であんな有名な大会に出て……。

 

 ……。

 

 ……あ、いえ、その。失礼しました。取り乱してしまいました。

 

 有名になってしまったその『マジカル☆スピカ』さんですが、どうやらまだその正体は掴めていないそうです。

 なんでも、その『全国大会』出場以前に彼女が対戦していた記録がないらしいのです。

 

 いや、まあ、その、あたしなんですけれども。

 

 ……あ、いえ。別に『マジカル☆スピカ』というのは本名なのではなく、これはあくまで謎のテンションによって生み出されたニックネーム的なものであって、本名としては『雲田香澄(くもだかすみ)』という両親からいただいた名前がきちんとあるのですが……まあ、それはそれとして、です。

 

 バレてないのは不幸中の幸いと言いますか、あんな名前であんな風にみんなの前でやりたい放題やってたのと今のあたしが紐付けられたりなんてしようものなら、きっと家から一歩も出られなくなってしまうことでしょう。

 

 実のところ、あたしはあれ以前に、まともにカードバトルをしたことがありませんでした。

 

 特に深い理由があるわけではなく、単に一緒にバトルできる友達がいなかったんです。

 

 まあ、そうですよね。

 バトルである以上、1人でなんて成立しません。

 

 とは言え、あたしは特にそのことに対して辛いだとか悲しいといった気持ちは、あまりなかったのですが。

 

 ──両親には、そのことで心配をかけてしまっていたみたいでして。

 

 きっと、あたしがあのカードバトルを観戦することがそれなりに好きだったことも、きっとそう感じさせてしまったことに関して無関係ではないのでしょう。

 

 『大会』のチラシをぼーっと見ていたあたしに、「興味があるのか?」と聞かれて、その意味が「出たいのか」というものであったことに気がついたのは、「うん」って答えた後でした。

 

 ……まあ、そこまではいいんです。

 

 初戦で敗退して、記念出場で終わっていれば、きっと全てが丸く収まって、こんなことにはなっていなかったんです。

 

 

 えっと、突然話は変わりますが、あたしには『前世の記憶』というものがあります。

 

 具体的にどう生きていたのかとか、前世の親や友達の顔とか、名前とかは覚えていないのですが──あ、もしかしたら友達の記憶に関してはいなかっただけかもしれませんが……ともかくとして、『人生』というものが2週目であることは紛れもない事実です。

 

 その『一週目の人生』を歩んだ世界に、『ソーサラー』やら『ファントムビルド』やらそういったものはなかったので、情報的なアドバンテージはそんなにないかもしれませんが、あたしのある種の『罪悪感』は、ほかの場所にあります。

 

 かつてチラッと読んだ、『ライトノベル』なるもので見たのですが、なんでも『前世の記憶がある人』というのは、なんらかの『チート』なるものを所持しているのが常なのだとかで。

 正直記憶だけでも充分アドバンテージなのにどうしてそこに上乗せするんだろうと思わないわけではありませんが、それが常識というのなら、きっとそうなのでしょう。

 

 そして、あたしは、とても苦しいことに、その『チート』というものに心当たりがありました。

 

 ここでまたお話が戻ってくるのですが、あたしは『全国大会』において、どのように戦っていたのか、あまりよく覚えていません。

 なんと言いますか、夢の中の出来事のような、と言いますか、あるいはお酒を飲んで酔っ払っていた時にやらかしたことを後から醒めたあとで思い返しているような……とにかくそんな感じなのです。

 あ、えっと、補足ですが、あたしは未成年なので、お酒はまだ飲んだことはありません。

 ですので、もしかしたらお酒を飲んで酔っ払うという感覚について少し解像度の低い部分はあるかもしれませんが……。

 

 あっと、お話が脱線してしまいました。ごめんなさい。

 

 つまり、何が言いたいかと言いますと、この状態こそがいわゆる『チート』というものなのではないかと思うわけです。

 ソーシャルゲームで例えるなら、『オート』、あるいは『フルオート』で進行するバトルのようなものでしょうか。

 

 あたしは、少し前に『カードバトルを観戦するのが好きだ』とお話ししたかと思いますが、あたしはきっと皆さんが思う以上にカジュアルです。

 

 ……と言うのも、あたしにはカードの効果がよくわかりません。

 

 よくわからない、というのは決して『なんらかの理由によって正常に認識できない』と言うわけではなく、単に長くて複雑すぎて……つまりよくわからないのです。

 そして、よくわからないので、ビデオ映像とかで同じ試合を繰り返し繰り返し見て、ようやく理解できる、と言うそんな有様なのです。

 

 そうですね。

 例えば、ですが。

 

 【開闢の兆し・アルケー】

 コスト0。エンティティ。レジェンダリー。攻撃力10、体力10《分類:なし》

 手札のこのカードは召喚できない。

 自分のターン終了時、手札かデッキにあるこのカードのコストが10以上なら、コストを+10する。

 自分のターン開始時、自分の使用可能コスト最大値が10であり、このカードのコストが50以上なら、デッキか手札にあるこのカードは盤面のエンティティ全てを破壊して出現し、自分のコスト全てを消費する。

 このエンティティは攻撃できない。

 このエンティティは破壊されない。

 このエンティティは除外されない。

 このエンティティは対象として選択されない。

 このカードが盤面にあるなら、自分と相手はカードを引くことができず、カードを山札から引く効果が働いた時、そのカードは手札ではなく墓所へと加える。

 自分のターン終了時、自分の手札のカードを全てを捨て、《開闢の宣告》を1枚を手札に加える。

 【開闢の宣告】

 コスト10。マジック。ファントム。《分類:なし》

 盤面と領域のカード全てを破壊する。

 その後、このバトルに勝利する。

 

 以上があたしのカードの1枚、【アルケー】の効果です。

 まあ、腰を据えてしっかりと読み込めば理解はできるかもしれませんが、これが初見で何枚も何枚も飛んでくるのが実際の試合です。

 なにせ『デッキ』というものが魔法のような何かによって作り出されるものであるため、人によって違うものができる、という理屈なのだそうですが、だからといってこんな文章量のものを──あるいは、これの倍もある文章量のものを初見で見て、どう対処するかを固める、なんて、あたしには、人間業でないように見えるんです。

 

 しかし、きっとそれができるように、常日頃から練習してきているのが皆さんであって、逆に、『無理だ』『難しい』と、勝手に投げ出しているのがあたしなんです。

 

 ……弁明をするのであれば、あたしはあの『全国大会』以前にまともにカードバトルをしたことがなかった、ということが言い分になるでしょうか。

 

 ──だからこそ起こってしまった、『チート』なんて言うものが自分にあるだなんて夢にも思っていなかったが故の、不幸な事故、とそう呼ぶことはできないものでしょうか。

 

 

 ……いえ、ごめんなさい。きっと、それは叶わないでしょう。

 というより、あまりにムシのいいお話と言えるかと思います。

 

 あたしは、既にこのハリボテの力を利用して、高校に推薦入学を決めてしまったんです。

 何をやってもダメなあたしは、当然のように学力も足りなくて、けれど両親をがっかりさせるのも嫌だったあたしは、ついこのような手に出てしまいました。

 

 だから、その……ごめんなさい。

 そして、こんなあたしですが、どうか見捨てないでいただけると、とても嬉しく思います。




追記(2025/8/12)

実のところ、【アルケー】は、単体では出せないカードとなっており、別カードのギミックが必須となっています。これ出せなくない……?と思った方は正しいので、まあそういうものかと思って読み進めていただければ幸いです。
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