カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



67話 疲労あるいは脱力

 

 何とも言えない終わりにはなってしまいましたが、イベントを、終えまして。

 

 ……あたしたちはホテルへと戻ってきていました。

 

 

 「……今日は、色々大変だったねー」

 

 部屋に戻り、各自ようやくリラックスできたところで、有栖さんが、しみじみと言いました。

 

 

 「……今日の試合、ネットで色々言われてるみたいね。八百長とか、なんとか」

 

 

 それから、部屋に着いてからスマホを見ていた雪菜さんが、そんなことを言い出しました。

 

 ……釣られるようにあたしも見てみますと、SNSではかなり荒れているようです。

 

 

 「……ネット上では、普通に見られるらしいわね」

 

 

 何故か、雪菜さんはちらりとあたしの方に目を向けてから、そんなことを口にしました。

 

 それを聞いて、有栖さんは何やらスマホを操作したと思いましたら……。

 

 

 「……本当だ。なんか、損したような……変な気分だね。……あの現象は、現地に行っていたボクたちにしか起こってなかったんだとすると……まあ、八百長疑惑が出てくるのも、仕方がないって、ことになるのかな」

 

 

 「……まあ、ただそれはそれで釈然としない話よね」

 

 

 ……えっと、お2人がなんのお話をされているのか、あたしにはよくわかりませんが。

 

 あたしの知らない中で、あの場で何かが起こっていた、ということなのでしょうか……?

 

 

 「……えっと、その……何か、あったんですか……?」

 

 まあ、あたしって鈍臭いので、いつもだったら、そういうこともあるかなーと思って、気にしないことにするところだとは思うのですが……。

 

 

 ……なんとなく、不思議と今日はそれが少し嫌だなあと思ってしまいましたので、思わず口を挟んでしまいました。

 

 

 ……しかし、有栖さんも雪菜さんも、その言葉に少し困ってしまったようで、お互いに顔を見合わせてしまいました。

 

 

 「……最後の試合、というか、朽木選手の試合、なんだけど。見てて、こう……具合が悪くなるような感じとか、なかった?」

 

 

 顔を見合わせた後、口を開いたのは、有栖さんでした。

 

 

 「……えっと、そう、ですね……言われてみれば、あった、ような……?」

 

 

 ……具合が悪くなる、とはどういうことなのでしょう。

 

 書いてある文章の量が他のデッキのものよりやや多めだったので、全カードの効果把握は早々に諦めることにはなってしまいましたが、そのくらいで、強いて言うなら、あまりの情報量に目が回りそうだった、という感じでしょうか。

 

 

 「……会場にいた全員、か、どうかはわからないけれど。少なくとも私たちは、あのカードが視界に入るだけで頭が痛かったわ」

 

 

 雪菜さんが、お話を補足してくださいましたが、いまいちよくわかりません。

 

 ……いえ、なにを言っているのかわからない、と言いますか、その、そんなことがあるのでしょうか、というのが今の気持ちです。

 

 

 寝るのも少し遅かったですし、ただ単純にお2人が揃って体調を崩していた、というお話ではないのでしょうか……?

 

 ただ、わざわざそういうお話が出てくる、ということは、それがあったのが普通、ということで、あたしの方がおかしい、ということなのでしょう。

 

 

 ……まあ、そんなことを言われましても、ということではあります。

 

 

 「……まあ、そういうのがなかったなら、それはそれで、その方がいいんじゃないかな?」

 

 有栖さんが、肩をすくめて、言いました。

 

 

 ……なんだか少しだけモヤモヤしますが、まあ、仕方がないことですし。

 多分、そういうこととしておくのが、良さそうです。

 

 

 「……はあ、なんて言うか、ちょっと疲れたわ。そんなことより、温泉でも行きましょう」

 

 

 ……そう、ですね。

 

 あたしも、その、色々あったせいか少し疲れたような気がしますので、同じく、そうしたい気持ちがあります。

 

 

 「そうだねー。流石にボクも、だいぶ疲れたかも」

 

 

 ……そうして、温泉にゆったりと浸かりまして。

 それから、夜ご飯の時間に、なりました。

 

 

 今日も、昨日と同じくバイキング形式で、同じ会場でのご飯ですが、パッと見たところ、少しだけメニューが違っているようです。

 

 

 昨日は、雪菜さんが食べていましたが、あたしたちはご飯の方ばかり食べてお腹がいっぱいになり、あまり食べることができなかったので、今度は、スイーツの方を重点的に食べてみたいなと、思います。

 

 

 ……その一方で、雪菜さんは、昨日のことを気にしているのか、少し多めにご飯系を持ってきたようです。

 

 ううん、目の前で見ると、やはりミニラーメンや焼きそば、寿司なんかは食べてもいいかな……と言う気持ちになってしまいます。

 

 炭水化物……もとい主食って、やっぱりなんだかんだ美味しいですよね……。

 

 

 だから、人は自制しないと肥え太るわけでして。

 

 ……あたしも、昨日の温泉の後に雪菜さんに言われたことを考えると、もう少し運動なりなんなりして、すらっとしたスタイル作りでも目指してみるべきなのでしょうか……?

 

 

 ……しかし、だからと言って今日食べるのを少なくする……というのも、せっかくのバイキング形式が勿体ないような気持ちがあります。

 

 まあ、そうですね……。

 

 炭水化物は気持ち控えめにして、昨日はあまり選ばなかった、野菜を気持ち多めにピックして……それからデザートに入ることにしましょうか。

 

 野菜は原価が少し高めなので、食べ放題系で元を取るなら鉄板だというお話もありますし……勿体ない、ということは、ないはず……です。

 

 

 ……。

 

 

 ……と、まあそんなこんなで色々と無駄なことを考えたりしながらの夜ご飯でしたが、案外、サラダ系もきちんと美味しかったですし、デザート系も、思っていた以上に種類が多く、昨日とはまた別な楽しみ方ができて、とても良かったです。

 

 

 ……それから、ホテル内のお土産コーナーで軽く家族や自分へのお土産を買ってみたり、UFOキャッチャーで遊べるスペースがあったので、景品を狙ってお金を無駄遣いしたりしてまして。

 

 

 ……気がつけば、普通に楽しいひと時を、3人で過ごしていたのでした。

 

 

 ……そして、部屋に戻りまして。

 歯を磨いたりといった諸々を済ませましたので。

 

 布団に、横になります。

 

 

 ……なんだか、あっという間で、名残惜しい気持ちが、強いです。

 

 

 「……まあ、最後はよく分かんない感じになっちゃったけど、さ。今日、楽しかったね」

 

 

 何となく、寝転がったまま、顔を動かした先にいた有栖さんが、そんなことを言ってきました。

 

 

 「……そうね。参考になる試合もいくつかあったし……あ、あんたたちと、こうして過ごした時間も……その……。……やっぱりナシ!なんでもないわ」

 

 

 あたしの視線の先に入り込むように、雪菜さんが、あたしと有栖さんの間の布団に入りながら、途中で顔を赤くしながら、そんなことを言いました。

 

 

 ……そう、ですね。

 

 

 ……確かに、今日のイベントの最後の方は、思ってもいなかったような終わり方で、複雑な気持ちがないと言えば、嘘にはなってしまいますが。

 

 

 「……はい。えっと、その、あたしも……今日は、いえ、昨日も、今日も……その、とても楽しかった、です」

 

 

 ……そうして、そんな感じの話をしまして。

 

 それから少しばかりおしゃべりをした後、あたしたちは電気を消して、瞼を閉じました。

 

 

 ……。

 

 

 ……そして、朝になりました。

 

 つまり、非日常は終わり、日常が帰ってきます。

 

 

 ……学校のお勉強、既に着いていけていないですが、大丈夫でしょうか。

 そういえば生徒会に入るということになってしまいましたが、うまくやっていけるでしょうか。

 

 生徒会といえば、あたしや奈々実さんが遭遇した不審者の方は、結局何だったのでしょうか。

 

 

 ……そんな風に、不安は沢山あります。

 その、なんだか、最後のやつだけ少し方向性が違うような気はしますが……。

 

 

 ……まあ、それでも。

 

 

 ……少なくとも今は、あたしは1人じゃない、と、いうことに。

 ちょっとだけ、何だか、不思議な安心感が、ありました。

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