※香澄視点です。
68話 交流あるいは調整
また、学校が始まりました。
別に、長期休暇とかではなく、ただのちょっとした連休でしかなかったのですが……なんだか、そうは思えないくらいに濃い出来事を体験したような、そんな気がします。
……えっと、それで。
今は授業を終えた、放課後です。
なんでも、書類や諸々の手続きの準備が整ったとのことで、今日から正式に生徒会に入ることになります。
……と、言いつつも、ちょっと名前を書いたり書類を受け取ったりしたくらいで、特に、大変なことがあったりするわけでもなく、あっさりしたものでした。
それで、あっさり済んだ諸々の手続きはともかくとしまして。
気になるのは、生徒会のメンバーです。
3年生は、水無川さんと、天柄さんと、奈々実さんの3人で、少し前から知っていましたが、2年生のメンバーとは、今日が初対面です。
「てことで、ウチは
「……で、僕が妹の
天岳姉妹は、いわゆる双子だそうで、顔立ちがすごくそっくりでしたが、間違えられるのが嫌だから、とか何とかで……今はわかりやすいように、舞さんの方が少し髪の毛を短くしたりしているそうです。
「……双子なのにお姉さんだけ方言なの、珍しいですね」
──お2人の挨拶に、思わず、といった様子で。
雪菜さんが口を開きました。
……たしかに、言われてみれば。あたしも、少し気になります。
「あ、えっと、な……」
雪菜さんの疑問に、何やら言い淀む理音さんでしたが。
「──お姉ちゃんのは、方言というよりインターネットスラング……みたいなものなんだ。中途半端な方言みたいで気になるかもだけど、これはこれで僕たちの区別がつきやすくなる要素、とでも思ってほしい」
「……て、ことやで。何か、ちゃんと説明するとめっちゃ恥ずかしいな……」
「それはもう、大分今さらだよ。お姉ちゃん……」
……何だか、少し気まずいような感じの雰囲気になってしまいましたが。
──そんな中であるにも関わらず。
何も気にしていないように、口を開く先輩がいました。
「……私は
──その人……宙羽さんは。少し、無口な感じのイメージの方でした。
まあ、あたしに言えたことではないかもですが……。
……と、まあ、そういった感じで。
初対面の2年生メンバーとの挨拶も済みまして。
「よし、じゃあ1年生の代表者1名とわしら上級生の中から1名とで、交流試合をするぞ!……まあ、と言ってもただの交流試合じゃし、勝った負けたで何かあるわけではないんじゃけどね」
「……本当はねー、生徒会への応募者がー……生徒会に相応しいかどうかを試すためにバトルして確かめるのが習わしなんだけどー……『全国中学生大会』やら先日の先生とのバトルやらで実力はもう確認済みだからー……今回はちょっと順序とか意味合いとかが変わっちゃったんだよねー……」
「……と、いうことです。こちらは事前に話し合って奈々実さんが代表として出る形です。……会長は負けるかもしれないからと日和りましたが、ご容赦ください」
「──えっ、わしそんなこと言ってなかったよね?むしろ会長が出ない方がとか言ってたのお前じゃよね?!」
何だか途中で漫才みたいなものが始まってしまいましたが……どうしましょう。
……自然と、あたしたち3人の視線が、ぶつかりました。
「──もし差し支えなければ、こちらとしましては、雪菜さんに出ていただきたいと、考えています」
……漫才を終えて、天柄さんが、そう言いました。
「……雲田さんは、つい最近月城先生に勝っていますし、夢園さんは以前に大会でバトルをしています。……つまり、実力を見るという観点で。現状、雪菜さんだけが、こちらとしては実力を確かめられていない形になります」
そこに、「……もっとも、先日の全国大会の結果については承知していますし、疑っているというわけでもありませんが……」との補足も、続きました。
……まあ、あたしとしては、積極的にバトルをしたい、という気持ちがあるわけでもありませんし、それで問題ありませんし、有栖さんも、雪菜さんも、納得したようではあります。
「……はい、わかりました」
「うん!わかっ、りました。まあ、ボクも生徒会の上級生とバトルはしてみたかった、ですけど……」
雪菜さんは素直に頷きましたが、とは言え、それはそれとして有栖さんは、上級生とバトルがしたいようではありますが……。
「あー、それについては大丈夫や。なんて言ってもここにいるのは『ファントムビルド』しか取り柄のないような烏合の衆やからな。……てきとーに理由付ければバトルなんていつでもできるやで」
……とのことです。
しか取り柄がない、というのはもちろん冗談だとは思いますが、確かに、言われてみれば生徒会は各学年でバトルが強い人たちが集まることで形成されている組織だと聞いていますし、そう不思議なことでもないのでしょう。
「……えっと、その……去年も、こういうこと、やったんですか?」
「うん、そうだよ。……まあ、去年は今年みたいに事前に決まって、っていう感じじゃなかったから、代表者じゃなくて3人それぞれ、当時の3年生とバトルしたけどね」
あたしが勇気を出して質問をしてみると、舞さんが答えてくださいました。
「……まーとは言っても、今日はそのバトルの日程確認と調整ができればって感じだからー……実際にバトルするのは今日じゃないんだけどねー。……一応学校の伝統のひとつだから、大体育館借りたり、交流試合の告知したり色々しなきゃだしー……そのための事前確認、みたいなー……?」
えっと、書類上は既にあたしたちは生徒会に加入していて、でも本来は『ファントムビルド』の実力を確認する工程があるはずで、それがないから代わりに交流試合っていう形になって……と、いう感じでしょうか……?
ちょっと複雑な形になっていそうな気がするので、ちゃんと理解できている自信はありません……。
「……本当は、交流試合とは言え3人全員ができる形にしたかったのじゃが……まあ、3戦分も日程調整したり手続きしたり……とかってなると面倒じゃからねぇ」
「要するに、お2人にバトルをしていただければ、それで充分です。……ただ、言うまでもないとは思いますが、一応、書類上加入が先に決まっているとは言え、あまり変な試合をされるとこちらとしても対応に困りますので、それなりにしっかりとした試合をしていただきたいところではありますが……」
「……問題ありません。私だって、2人に負けないところを、見せたいと思います」
天柄さんの言葉に、雪菜さんは、まるで睨みつけるかのように、鋭い視線を送りました。
「……心配は必要無さそうですね。すみません、失礼なことを言いました。……当日は、楽しみにしています」
……後は、それから具体的な日程を決めたりしまして。
それからは、自由に生徒会のメンバーと喋る時間……みたいな感じになりました。
「あ、そーだ。ねーねー、香澄っちー。ちょっと前のプロの大型大会の決勝、見たー……?」
……自由に話すと言われても、どうしたら……と、思ったところで。
テーブルの上にあったのり塩味のポテチを食べていた奈々実さんが、急に話しかけてきました。
「あ、はい。えっと、見ました」
「そっかー……。……で、そのことなんだけど……」
奈々実さんが、少し、声を落としました。
……他のメンバーは、それぞれ思い思いに会話をしているようですし、水無川さんや天岳さん姉妹、有栖さんに至っては、いつの間にか対戦型のビデオゲームを始めています。
そちらの方を、ちらりと見て、再びこちらに視線を戻した奈々実さんは、少し真剣な表情でポケットから取り出したグミを1つ口の中に放り込むと。
……食べ終えて飲み込んでから、口を開きました。
「あの、なんだっけー……。えっとー、そうそう、朽木選手ー。なんだけどー……最後になんか喋った時ー……なんか変なこと言ってたよねー……」
「……えっと、変なこと、と、言いますと……。もしかして、『闇のカード』がどうこう、みたいなこと、でしょうか……?」
……確かに、それについては、あたしも少し、気になってはいました。
「そーそー。前に不審者にバトルを挑まれたっていう話をした……というか、実際その場に来てもらった形になったことがあったと思うんだけどー……。その時不審者の人がそんなこと言ってたなーって思ってー……」
「……えっと、その、実を言いますと、あたしも不審者の方とバトルした時、そんなことを言っていたような……気がします」
もしかしたら、何か関連性があるのでしょうか。
……考えてみると、バトル後に倒れるという共通点もありますし、何かあるような気がしないでもありません。
……とは言え、今のあたしたちにはあまり知っていることが多くはないため、首を捻ることしかできず。
最終的に、あたしたちも、ビデオゲームをする皆さんの中に、混ざることにしたのでした。