カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



72話 繁茂あるいは種子

 

 5ターン目。

 

 2枚と1枚のカードが手札に加わり、雪菜さんの手札のカードの枚数は8枚になりました。

 

 「……コスト1で、【ホワイトラット】を召喚します」

 

 雪菜さんが召喚したのは、小さな、白いネズミでした。

 ──一言に、ネズミ、とは言いますが、薄汚いようなイメージはなく。

 その真っ白な体毛と、小さなフォルムは……むしろ、雪の妖精と言っても違和感がないくらいに、思えます。

 

 ……カードの性能を見ても、実際、攻撃力は0で、体力も2と……いかにも小型、といった感じのエンティティです。

 

 ただし、能力として『不可視』を持っていますし、攻撃時に、戦闘相手の攻撃力を無条件で-1する効果もありますので──シンプルで、分かりやすい、ピンポイントを狙い澄ましたような役割を感じるカードです。

 

 ……なんて。

 どうでしょうか。

 

 なんだか、まるで詳しい人が言いそうなコメントができたのではないでしょうか……?

 

 

 ──と、そんな風に、あたしが余計なことを考えている間にも、試合は当然、進んでいきます。

 

 

 「……コストを4使って、【ダイヤモンド・ダスト】を使用、します」

 

 ──その瞬間。

 雪菜さんのフィールドカードによって展開されていた吹雪が、少しばかり勢いを弱めたように見え。

 

 そしてなんだか、幻想的な光を放ったように、感じました。

 

 

 【ダイヤモンド・ダスト】

 コスト4。マジック。《分類:氷晶の銀世界》

 自分の手札の《分類:氷晶の銀世界》を持つコスト3以下のカード2枚を選択し、前者と同じカードを1枚生成して手札に加え、後者を捨てる。その後、自分の盤面に【ひび割れた氷塊】を1枚出現させる。それから、お互いの盤面の《分類:氷晶の銀世界》を持つエンティティすべての攻撃力を-1、体力を+1し、《分類:氷晶の銀世界》を持たないお互いの盤面のエンティティ全てに《分類:氷晶の銀世界》を付与する。

 

 

 ……そして、小さな光が失せて、再び猛吹雪の景色が戻ってくると。

 雪菜さんの盤面に、生き物でも機械でもない……ただの氷の塊が、ポツンと出現していました。

 

 

 ──ついさっき効果で現れたエンティティ……【ひび割れた氷塊】は、2の体力を持つものの、攻撃力が0で、『防衛』などの防御系能力を持っているわけでもない上に、相手のターン開始時に毎ターン1のダメージを受ける……という効果を持つ、エンティティです。

 

 普通に考えれば、こんなものが盤面に出てきたところでデメリットでしかありません。

 しかし、今すぐには関係のない話ですが。一応、《分類:氷晶の銀世界》を持っていますので、【吹き荒れる銀世界】のダメージを増やせる可能性もあります。

 

 ──後は、こちらは《分類》の関係のないお話にはなってしまいますが、『不可視』持ちの【ホワイトラット】を出していることを考えると、もし仮に奈々実さんがランダム対象のカードで【ホワイトラット】の処理をすることを狙うのなら、ハズレの的が1枚できた……ということにもなる、のではないでしょうか。

 

 

 ……それで、えっと。

 

 大きな変化はそれが1番でしたが、よくよく見てみれば、それ以外にも盤面に変化はありまして。

 

 雪菜さんの盤面の【ホワイトモンキー】と【ホワイトラット】、【ひび割れた氷塊】……そして、奈々実さんの盤面の【原生の幼樹】に、氷の鎧のような……氷の塊が、付いていました。

 

 ──もちろん、鎧、と言えば、なんだか強そうな感じがしますが。

 あれは……それと同時に、動きを縛る枷のようなものでもあるようです。

 

 えっと、【ホワイトラット】と【ひび割れた氷塊】は元から0なので置いておきますが……。

 

 なんと、【ホワイトモンキー】の攻撃力が0、【原生の幼樹】の攻撃力が1に、それぞれ、低下しています。

 

 

 ……そして、それから。

 先程のターン終了時に出現した2枚の【原生の捕食者】にも、氷が微かに纏わりついて……つまり、《分類:氷晶の銀世界》が付与された形になりまして。

 

 

 「……ターンを終わります」

 

 宣言と共に、雪菜さんの手札の【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】のコストが-3されて、24になりました。

 

 しかし一方で、奈々実さんの盤面には《分類:氷晶の銀世界》を持たないエンティティが存在しないので、【吹き荒れる銀世界】によるダメージ効果は不発となります。

 

 

 ……えっと、あくまで、盤面処理は積極的には行わず。

 着々と、下地を整えていくことに、専念していくつもりみたいです。

 

 

 ──そして、奈々実さんのターンの開始と同時。【ひび割れた氷塊】のひびが深まり、それは、自身の効果によって、1のダメージを受けました。

 

 

 「……なるほどねー。なんていうか、お互いに、相手のペースに合わせるつもりはない……みたいな感じだねー」

 

 

 カードを引きながら、奈々実さんはのんびりとした口調で、おどけたように、そんなことを言いました。

 

 「そうだねー……。まずはうちの盤面のエンティティ3枚全部で、ソーサラーに直接攻撃をするよー」

 

 攻撃力が1の【原生の幼樹】。そして、攻撃時に攻撃力が加算される効果で攻撃力が2になった2枚の【原生の捕食者】により、雪菜さんに、合計で5のダメージが、通ります。

 

 

 「うん、よし。あとは……早さ比べの準備をしよっかー」

 

 奈々実さんは、またもや相変わらずの口調で喋り、目元を細めると。

 ──緩やかに、手札のカードに、手を伸ばします。

 

 

 「──うーん、やっぱり。こういう時はこれだよねー」

 

 

 ……そして、その指先が。

 1枚のカードへと、触れました。

 

 

 「じゃあ、コスト3を使って、【原生の繁茂】を使うよー」

 

 

 ……奈々実さんの力の抜けるような宣言と同時。

 突然、盤面の全てが消し飛びまして……そして、お互いの盤面に、それぞれ3枚ずつの、【原生の捕食者】が、現れました。

 

 【原生の繁茂】

 コスト3。マジック。《分類:原生の侵食》

 お互いの盤面のエンティティ全てに『被破壊時、自分の盤面に【原生の捕食者】1枚を出現させる』を付与し、その後、コスト3以下のお互いの盤面のエンティティ全てを破壊する。カードを2枚引く。

 

 

 ……おまけとばかりに、奈々実さんは2枚のカードを引いて、手札の枚数を8枚にしまして。

 

 「……あとはー、出てきた【原生の捕食者】3枚で向こうの【原生の捕食者】3枚に攻撃したらー……。うん、それでおしまい、だね」

 

 

 奈々実さんがそう言うと同時に、【原生の捕食者】の群れは、まるで鏡合わせのように、それぞれが目の前の【原生の捕食者】へと飛び掛かっていきます。

 

 ……そして、3枚分の攻撃行動が終わる頃には。

 どちらの盤面も、すっかり空に、なっていました。

 

 

 一応、まだ2コスト分が余っていますが……。

 

 ちょうどいいカードが無いのか、そちらは使わず。奈々実さんの5ターン目が、終了します。

 

 

 ……そして。

 ターン終了時。

 

 

 ──荒れ狂う吹雪の中。

 途方もないほどの命の気配を抱えた大自然が、その中に巣食うなにかが犇めく音を響かせて。……そして、瞬く間に、広がりました。

 

 

 ……つまり、『お互いの盤面で破壊された《分類:原生の侵食》を持つエンティティの合計』が14枚……つまり、10枚以上の条件を、満たしましたので。奈々実さんの領域に、フィールドカード──【侵食の大地】が設置された……と、いうことです。

 

 その、まるで、天変地異のような光景に、雪菜さんは、一瞬、怯んだように見えましたが。

 

 ──しかし、すぐに、持ち直したようで。

 いつものようにカードを加えて。……また再び、雪菜さんへと。

 

 

 6度目の主導権が、巡っていきます。

 

 

 「……コスト6で【ホワイトウルフ】を召喚、します」

 

 6ターン目の雪菜さんは、1枚にコストを全て使い切り、大きな白い狼を、召喚しました。

 

 その狼──【ホワイトウルフ】は、効果で自分自身の複製を1枚、盤面へと出現させます。

 

 

 「……ターンを終わります」

 

 

 そして、ターン終了時。

 

 ……2枚の【ホワイトウルフ】は、自身の効果で手札へと帰還し。

 同時に、お互いの盤面へと、【ひび割れた氷塊】を。合計2枚ずつ、出現させます。

 

 ──それから、さらに。

 雪菜さんは【吹き荒れる銀世界】の効果で手札のカードを3枚捨てることで、体力を3回復して、残り体力を23にしまして。

 

 ……【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】のコストを、22まで引き下げました。

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