カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



73話 憤怒あるいは影

 

 お互いの盤面に【ひび割れた氷塊】が2枚ずつ設置された状態で、奈々実さんの6ターン目となりました。

 

 ……『相手のターン開始時』なので、雪菜さんの【ひび割れた氷塊】だけが、1ずつのダメージを受けました。

 

 それと同時に、奈々実さんの領域に設置された【侵食の大地】は、自分のターン開始時に発動する効果によって、相手の盤面のエンティティのコストの合計値以下で、コストの最も高いランダムな《分類:原生の侵食》を持つエンティティを1枚デッキから出現させる、というものを持っているのですが……。

 

 ──【ひび割れた氷塊】のコストは0なので、その効果は、不発に終わります。

 

 ……奈々実さんは、ターンの初めにカードを引いて、手札のカードの枚数は、合計で8枚になりました。

 

 

 「……うーん、6ターン目かぁー……どれにしようかなー」

 

 

 使えるコストは6と、大分多くなってきましたし、盤面には、攻撃力が0のエンティティがお互いに2枚ずつ存在しているだけ……ということで。

 そこには、処理を強要するような圧力もありません。

 

 ──つまり、かなり自由度の高いターン、ということになりますが。

 だからこそ、色々な選択肢があり悩ましい……と、いうことでしょうか。

 

 ひとしきり考えた後、奈々実さんは一度、目を閉じて、そして、手札のカードの1枚に、触れました。

 

 

 もちろん、これは奈々実さんが目をつぶって使うカードを適当に選んだ、ということではありません。……おそらく、きっと。

 

 

 「うん、よし。まぁ、これでいっかー……」

 

 ……迷った末に、奈々実さんがコストを6支払い、エンティティカードの召喚を行いますと。

 

 そこに現れたのは、【原生の捕食者】と、おおよその形状に類似した点は見られるものの。全く別の存在と言い切れるほどに……異質な雰囲気を纏っていました。

 

 

 ──例えば、その鉤爪は、より鋭く強靭なものとなり。

 身体の大きさも、数倍と言えるでしょう。

 

 ……ただ、1番の違いは、そういった、幼体と成体の違いと思われるような差異ではなく。

 

 最も目を引くのは、身体の各所に浮き上がる、たくさんの顔でしょう。

 

 ……あ、いえ、えっと。

 顔、とは言いましたが、それは人の顔、ではありません。……その、【原生の捕食者】の、顔に相当するであろう部位、というような感じです。

 

 ……まあ、どちらにせよ中々にインパクトのある外見なのは変わりないのですが。

 

 

 ──それから、そして。

 そのエンティティは、盤面に現れると。敵味方の両方に、【原生の捕食者】を、2枚ずつ出現させました。

 

 【憤怒の原生イーラ】

 コスト6。エンティティ。攻撃力4、体力5《分類:原生の侵食》

 お互いの盤面で破壊された《分類:原生の侵食》を持つエンティティの合計が20枚以上でないなら、これはカードの効果で出現できない。

 『猛進』

 自分の盤面のエンティティが破壊された時、これの攻撃力を+1する。

 自分のターン中、これがダメージを受けて破壊されなかったなら、自分の体力を最大まで回復し、相手の盤面のランダムなエンティティ1枚に3ダメージを与える。

 召喚時、お互いの盤面に【原生の捕食者】2枚を出現させ、自分の手札に【相食む原生】を1枚加える。

 自分のターン終了時、お互いの盤面の全てのエンティティに1ダメージを与える。

 

 

 ……あとは、自身の盤面にエンティティが召喚によって現れたことにより、【侵食の大地】の、『被破壊時、自分の盤面に【原生の捕食者】1枚を出現させる』を付与する効果が働きまして。

 

 ──【憤怒の原生イーラ】1枚に、被破壊時効果が付与されました。

 

 

 ……そう言えば、【侵食の大地】の被破壊時効果付与は、お互いのソーサラーのエンティティ召喚時に起動するので、先ほどのターンに雪菜さんが召喚していた【ホワイトウルフ】にも付与されていたのですが……それは手札に戻ったため、被破壊時効果は発動しませんでしたね。

 

 

 やることがあまりなくて、とりあえず【ひび割れた氷塊】を出して【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】のコストを下げる動きを狙ったのかなあとか思って見ていたのですが。

 

 今になって、ようやく、あれが結構、意味のある行動だったのだということがわかりました……。

 

 

 「んー。じゃあ、ターンを終わるねー」

 

 

 奈々実さんが何でもないように気軽な口調でそういうと同時に。

 

 【憤怒の原生イーラ】の巨大な鉤爪が地面へと振り下ろされて、盤面上の全てのエンティティが、1のダメージを受けました。

 

 ──雪菜さんの盤面には、すでに体力が1になっていた【ひび割れた氷塊】と、元々体力が1の【原生の捕食者】しか存在していなかったため、その全てが破壊されまして。

 

 奈々実さんの盤面の、【原生の捕食者】も、同じように斃れます。

 

 

 ……それから、【憤怒の原生イーラ】だけは自分自身の、『自分のターン中、これがダメージを受けて破壊されなかったなら、自分の体力を最大まで回復』する効果によって体力が5に戻りまして。

 

 ──2枚の仲間が破壊されたことで、攻撃力が+2されて、6になりました。

 

 

 ……あとは、破壊された合計4枚の【原生の捕食者】により、『破壊された破壊された《分類:原生の侵食》を持つエンティティの合計』が18枚になったことくらいでしょうか。

 

 ──こうして、奈々実さんが、6ターン目を終えましたので。

 7度目の手番が、雪菜さんへと廻ります。

 

 

 ……そして、ターン開始時。

 

 【ひび割れた氷塊】の、『相手のターン開始時』効果により、奈々実さんの盤面の【ひび割れた氷塊】がそれぞれダメージを受けたことで、それらが2枚とも破壊されまして。

 

 それに反応して、【憤怒の原生イーラ】の攻撃力がさらに攻撃力を引き上げて、なんとその攻撃力は8にまで、上昇しました。

 

 

 ──その一方で……。

 雪菜さんの手札に、いつものように3枚のカードが加わりまして。

 

 手札の枚数は、ちょうど10枚に、なりました。

 

 先程のターン、【吹き荒れる銀世界】の効果でカードを3枚捨てたのは、ただ体力を回復したかった、というだけでなく。

 カードが無駄にならないようにするための、調整の意図もあった……と、いうことなのでしょう。

 

 

 「コスト6で、【氷海の影ブラックオルカ】を召喚します。……そして、召喚時効果で、【憤怒の原生イーラ】を選択します」

 

 ──吹雪と、樹海の狭間。

 影に紛れて、うっすらと。……姿を現したのは、黒くて大きな、シャチでした。

 

 ……それは、まるで幽霊のように幽かな存在で。

 その泳ぎは、見ている者を惑わせるような動きで。

 

 

 ……そんな感じで、気がつけば。

 そこには、そのシャチと、氷の塊がひとつ、ポツンと存在しているだけでした。

 

 

 【氷海の影ブラックオルカ】

 コスト6。エンティティ。攻撃力6、体力5《分類:氷晶の銀世界》

 『不可視』

 『拙速』

 このエンティティはソーサラーのみを攻撃の対象とし、攻撃時に『防衛』や『挺身』の効果を受けない。

 召喚時、相手の盤面のエンティティ1枚を手札に戻し、その後、相手の盤面に《ひび割れた氷塊》を1枚出現させる。

 

 

 そう言えば、またも、『手札に戻す』効果で盤面からエンティティがいなくなったので、被破壊時効果が発動しませんでしたね……。

 

 ……まあ、その一方で、今度は【侵食の大地】の効果によって【氷海の影ブラックオルカ】に被破壊時効果が付与されましたが、エンティティの数としては1枚だけの召喚なので、被破壊時効果で稼がれるカウントは1で済みます。

 

 ……あとは、自分の盤面なのである程度コントロールがしやすいのと、『不可視』があって、そもそも破壊されにくいのも、強みでしょうか。

 

 ──コストが6なので、『原生の繁茂』でも破壊されずに済むのも、ポイントかも知れません。

 

 

 「──召喚した【氷海の影ブラックオルカ】で、ソーサラーへと直接攻撃をします」

 

 『拙速』がありますので、さらに、攻撃まで仕掛けて……。

 奈々実さんの体力を、削りに行きました。

 

 

 『拙速』は、出てきたばかりのターンだけ攻撃力が半分になるので、今回通ったダメージは、3のダメージだけでしたが。

 

 もしも盤面に残り続けたなら、かなりの圧力になりそうです。

 

 

 「……これで、ターンを終わります」

 

 ……さらに、雪菜さんは2枚のカードを捨てて、手札の枚数調整と同時に、体力を全快し。

 

 手札の【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】のコストも、1だけではありますが、減算できました。

 

 ──えっと、あたしなんかがあまり偉そうに評価するのもアレですが……。

 

 あたしとしては、あの盤面に対する回答としては、おそらく、かなりいい感じ……だったように、感じました。

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