カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※雪菜視点です。



77話 条件あるいは道筋

 

 10度目の、ターンがこちらへと移る。

 

 私のレジェンダリーカードである、【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】のコストはまだ12でありコストが下がるタイミングが自分のターン終了時であることや、コスト減算後の最小値が10であることを考えると、最速で召喚するにしても、あと1ターンの時間を要する。

 

 一方で、奈々実先輩の方……【侵食の大地】もまた、破壊された《分類:原生の侵食》を持つエンティティのカウントが38であることから、もう少し時間がかかることも予想できる。

 

 【ひび割れた氷塊】による盤面のロックや、フィールドカードが出てきてからはあまり自分の盤面のエンティティの合計コストが高いコストにならないように立ち回ってきたことが功を奏しているのは確かだけれど、その上で、どちらが早くゴールに到達するかは今のところ不明瞭である。

 

 

 つまり、ここまでしてなお、こちらの方が早い……とは言い切れないのだ。

 

 ──そして、その上で。

 今、出てきたカード。

 

 

 ……【色欲の原生ルクスリア】。

 私が今回の合流試合に備えて情報を集めた際は、あれは少し違う効果のカードだった。

 

 主に……というか、違っていた点は、相手のターン開始時の効果。

 

 私が知るあのカードは、相手のターン開始時、お互いの盤面に【原生の幼樹】を2枚ずつ出現させるのではなく、【原生の捕食者】を2枚ずつ出現させるカードだったはずだ。

 

 ……まあ、情報が古かった、ということなのはわかっている。

 

 私が参考にしたのは、2年前の大会の時のもの、だったから。

 単に、その時と比べて、カードの能力が成長した、ということなのだろう。

 

 

 ……けれど、問題なのは。

 この違いが、試合の展開に大きな影響を与えかねないものだということ。

 

 自分の盤面への押し付け効果とは言え、自分のターン開始時に、【原生の捕食者】が出てくるのなら、正直、あまり問題はない。

 

 『猛進』を持っているし体力も1だから、盤面に当てて破壊してしまえば良い。

 

 しかし、【原生の幼樹】だと、そうもいかない。

 

 【原生の幼樹】は、『猛進』を持っていないから、能動的に盤面から排除したいなら、自壊効果に頼る必要が出てくる。

 

 ……一応、今のターン開始時にもまた手札に加えた、【銀の双眸】の効果で、2のダメージを与えることはできるけれど、自壊までするには、1つにつき2枚使う必要が出てくるし、1枚のコストは2だから、1枚盤面からどかす為だけに、コストを4消費する必要がある。

 

 

 それで、つまり。

 【原生の幼樹】をこちらの盤面に出されると中々盤面から消すことができない、ということだ。

 

 ……そして、それの何が困るかというと。

 

 私のレジェンダリーカードである、【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】の勝利効果を満たすためには、自分のターン終了時に、お互いの盤面が《分類:氷晶の銀世界》を持つカードで埋まっている必要が、ある。

 

 コストを下げる必要がある上で条件を満たさなければならない為、勝利効果までの道筋はやや険しいけれど、その代わりと言うべきか。

 効果の発動が『自分のターン終了時』だから、条件さえ事前に整えられればそのターンの内に解決できるのは、強みと言えるだろう。

 

 ……それで、話を戻すと。

 勝利効果の条件を考えると、盤面にエンティティを押し付ける効果が恒常的に発生するのは、都合が悪い。

 

 それも、任意で除去しずらいとなれば、尚更だ。

 

 

 ……私のデッキには、相手の盤面のカードに《分類:氷晶の銀世界》を付与できるカードは毎ターン供給される【銀の抱擁】と、デッキに3枚ある、【ダイヤモンド・ダスト】の2種類があるけれど。

 

 自分の盤面のエンティティに《分類:氷晶の銀世界》を付与できるカードは、デッキに3枚の、【ダイヤモンド・ダスト】のみである。

 

 ──そして、それは既に2枚使用済みであり、残りの1枚は、デッキの中にある。

 

 

 ……一応、ここで【色欲の原生ルクスリア】を処理することで、恒常的にこちらに【原生の幼樹】が押し付けられることは、一旦なくなる……けれど。

 

 そこで気になるのは、奈々実先輩があのカードを今ここで出してきたのが、そこまで読んで、ここまでそのカードの情報を伏せてきたということなのか、あるいは、単に、【侵食の大地】のカウント稼ぎに都合が良かったから出したというだけなのか、ということ。

 

 

 ……もし、それが前者であるなら……。

 気が付けば、私は。

 無意識的に、何かを読み取ろうとでも思ったのか。

 

 ──奈々実先輩の顔へと、真っ直ぐに視線を向けていた。

 

 

 「……むむぅ……急に見つめられると照れちゃうなー」

 

 

 ……奈々実先輩が、わざとらしくそう言うので。

 私は、無言で視線を逸らした。

 

 ──さて、どうするか。

 手札の、9枚のカードを見て、考える。

 

 

 ……おそらく、今回の行動は、奈々実先輩にとっても、リスクのある行動だ。

 

 例えば、もしも、私の手札に3枚目の【ダイヤモンド・ダスト】があったなら。

 

 そして、【侵食の大地】のカウントが、次のターンで、稼ぎきれなかったなら。

 

 そしたら、このターン、【色欲の原生ルクスリア】を処理せずに残しておいて、それから、次のターンに、私が【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】を出して……。

 

 【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】の体力が50あって、破壊効果への耐性もあることを考えると。

 

 少なくとも、私の知る奈々実さんのデッキでは、これを破壊することはできないから、その次のターン、【色欲の原生ルクスリア】の効果で埋まった盤面に、【ダイヤモンド・ダスト】を使用するだけで、こちらの勝利条件を満たすことができる。

 

 そして、【色欲の原生ルクスリア】は、効果を見たところ、攻撃力を加算するような効果はないから、放置したところで、体力を削られるリスクには直結しない。

 

 だから、もし私の手札に3枚目の【ダイヤモンド・ダスト】があるとした場合、奈々実先輩の【色欲の原生ルクスリア】の効果は、むしろこちらの利となるのだ。

 

 

 ……しかし、残念なことに。

 

 今、私の手札には、3枚目の【ダイヤモンド・ダスト】はない。

 

 ただ、だからと言って、【色欲の原生ルクスリア】を無理矢理にでも処理したとした場合、向こう側の視点から見たら、それはこっちの手札に【ダイヤモンド・ダスト】が無いことを明かすようなものだろう。

 

 ただでさえ、前のターンに、余ったコストで【銀の抱擁】を使わずに温存したことで、そこまで予想されていてもおかしくないというのに。

 

 

 ……だからと言って、ブラフのために敢えて残すのも、リスクだろう。

 

 あれが盤面にあるままにしておくことで、遅めに考えても、次の次のターンには、【侵食の大地】のカウントが達成されてしまう。

 

 そして、カウントを早めるだけでなく。

 

 ……先ほどからも繰り返していることではあるが、こちらの勝利条件が遠のくことにもなってしまう。

 

 

 ──なら、もう、道はひとつしかない、だろう。

 手札が透けるリスクを承知で、【色欲の原生ルクスリア】の処理を行う。

 そして、もしまた再度【色欲の原生ルクスリア】が再度出てきたら、次の次のターンまでに、【ダイヤモンド・ダスト】を引くことを祈るだけ。

 

 もしも2枚目の【色欲の原生ルクスリア】が出てこなかったら……その時は、予定通り【ひび割れた氷塊】でお互いの盤面を埋めればいいというだけのこと。

 

 ただ、【色欲の原生ルクスリア】の盤面へのエンティティ押し付け効果が『相手のターン開始時』だったことで、【侵食の大地】の、『お互いのソーサラーは、自分のターン中に自分の盤面に《分類:原生の侵食》を持つエンティティを出現させるたびに自分の体力を1回復する』効果により、体力が4回復して19になった……とは言え、それで体力に余裕がある、というわけでもないので。

 

 相手側のダメージソースも、できるだけ減らす必要もあるだろう。

 

 

 ……そして、今の向こうの盤面はと言うと。

 

 攻撃力4の、【飛来する原生】が1枚と、【色欲の原生ルクスリア】もまた、1枚。それから、【原生の幼樹】が2枚と、ターン開始時にダメージを受けて、体力が2になった【ひび割れた氷塊】。

 

 

 「……まずは、【原生の捕食者】1枚で【飛来する原生】に攻撃します」

 

 私の盤面に押し付けられた【原生の捕食者】と、【飛来する捕食者】がぶつかり合い、相打ちに終わる。

 

 ……そして、【飛来する原生】は、自分の盤面に【原生の捕食者】がいなければ被破壊時効果が機能しない。

 

 そのため、これでようやく、盤面から排除することができた。

 

 「……次に、もう1枚の【原生の捕食者】で、【色欲の原生ルクスリア】に攻撃します」

 

 【色欲の原生ルクスリア】は、攻撃力が0なので、この戦闘では、どちらも破壊はされず。これで、【色欲の原生ルクスリア】の体力は、6になった。

 

 「……それから、【銀の双眸】1枚で、こちらの【原生の幼樹】と【色欲の原生ルクスリア】を選択します」

 

 ……これで、2ダメージ。

 

 

 「……手札から、【ホワイトウルフ】を召喚して、そのまま【色欲の原生ルクスリア】に攻撃します」

 

 ──【侵食の大地】が、こちらの召喚に反応して、被破壊時効果の付与を行うが。これで、【色欲の原生ルクスリア】の破壊は、できた。

 

 その証に、とでも言うべきか。

 被破壊時効果によって、そこに【原生の捕食者】が1枚、出現した。

 

 ──ただ、それによって、【侵食の大地】のカウントが、41にまで進んだ、ということでもあるけれど。

 それについては、仕方のないことだ。

 

 ……それどころか、むしろ、カウントの進行は抑えられている方だろう。

 

 

 ……それで。

 残りコストは、2。

 

 向こうの盤面の《分類:氷晶の銀世界》を持つエンティティは【ひび割れた氷塊】1枚で、これだけだと【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】のコストを10まで下げきれないから……。

 

 「……【銀の抱擁】で【原生の捕食者】を選択します」

 

 【原生の捕食者】に《分類:氷晶の銀世界》を付与した上で、攻撃できない状態を付与する。

 

 「……これで、ターンを終わります」

 

 

 ……そして、ターン終了時。

 私の盤面の【原生の幼樹】は、盤面が満杯なので【原生の捕食者】を出現させることはできず。

 【ホワイトウルフ】のターン終了時効果も、『このエンティティが攻撃していなかったなら』という条件が満たせていないため、発動せず。

 

 手札の【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】のコストが最低値である10まで下がり切り、そして、【吹き荒れる銀世界】の効果で向こうの【原生の幼樹】が、2と1の、合計3のダメージを受けて。

 

 ……それでようやく、ターンが完全に終了する。

 あとは、向こうが、どう出てくるか。

 

 ──これは、あくまで交流試合であり、必ず勝たなければならない試合というわけではない。

 

 

 けれど。

 

 

 ……有栖や、香澄に追いつくために。

 

 あるいは、そうでなくても……せめて、胸を張って並び立てるように。

 私は、この試合で、勝ちたいと。

 

 ──そんな風に、強く、思っていたのだった。

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