カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

83 / 153
78話 怠惰あるいは到達

 

 ……10ターン目。

 

 それは、早いデッキなら、もうレジェンダリーカードの勝利条件が整い、勝負が決まる時間帯だ。

 

 しかし、雪菜ちゃんの【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】のコストはその前の9ターン目までに下げきれず、そして、奈々実先輩の【侵食の大地】もまた、カウントをまだ稼ぎきれてはいない。

 

 ……けれど、既に雪菜ちゃんのレジェンダリーカードのコストは10まで下がり切ったし、奈々実先輩のレジェンダリーカードのカウントもまた、残り19と、多くはない。

 

 決着がつくのも、もう、すぐのことだろう。

 

 

 ボクとしては、どちらかと言えば、雪菜ちゃんに勝って欲しいと思っているし、状況も悪くはないと思っているけれど。

 

 どちらが勝つと思うか、と、色眼鏡なしで予想するとしたら、正直、どちらとも言えないと、答えざるを得ない。

 

 ──強いて言うなら、2人の手札次第、といったところだろうか。

 

 

 奈々実先輩のターンが始まり、そして、ターン開始時。

 

 ……ついに、とでも言うべきなのか。

 ようやく、【侵食の大地】の効果によって、大型のエンティティが、盤面へと現れた。

 

 コスト6の【ホワイトウルフ】が1枚と、コスト3の【原生の幼樹】が2枚、それからコスト1の【原生の捕食者】1枚と、一応、コスト0の【ひび割れた氷塊】が1枚で、雪菜ちゃんの盤面のエンティティのコストの合計は、13。

 

 コストが変動する特殊なカードがあるならともかくとして、そうでないなら、今出てきたのが、奈々実先輩のデッキの、最もコストの高いカード、ということになるだろう。

 

 

 ……そうして、出てきたのは。

 まるで、眠れる竜を思わせるような威圧感を放つ、巨大な、存在だった。

 

 ──これまでに出てきたどの【原生の侵食】のエンティティのものよりも、鋭く発達した鉤爪に、強靭な体躯。そして、まるで金属のような光沢を持つ、硬質の外殻。

 

 それは、まさに、ただひたすらに、シンプルな『強さ』を体現したかのような、そんなものだった。

 

 

 【怠惰の原生アケーディア】

 コスト6。エンティティ。攻撃力8、体力4《分類:原生の侵食》

 お互いの盤面で破壊された《分類:原生の侵食》を持つエンティティの合計が20枚以上でないなら、これはカードの効果で出現できない。

 これは攻撃できない。

 これが盤面にあるなら、自分のターン中、カードの効果によって自分の盤面にエンティティが出現するたびに、それの召喚時効果を働かせる。

 召喚時、自分のデッキからランダムな《分類:原生の侵食》を持つマジックを1枚手札に加える。

 自分のターン開始時、これが『これは攻撃できない』効果を持っているなら、これは『これは攻撃できない』を失い、これが『これは攻撃できない』効果を持っていないなら、これは『これは攻撃できない』を持つ。

 自分のターン終了時、自分の盤面に【適応した捕食者】1枚を出現させる。その後、これ以外の自分の盤面のエンティティ全てに、『防衛』を付与する。

 

 

 単純なステータスの高さと、そして、『出現』効果の価値を大きく高める、効果によって出現したエンティティの召喚時効果を働かせる効果。

 

 その代償としてか、2ターンに1度しか攻撃することができないようだけれど、次のターンには攻撃できるのだから、ここではあまり意味のないデメリットだ。

 

 

 ……わかりやすく、シンプルに強いカード。

 一言で言うなら、そんなところじゃないだろうか。

 

 

 このタイミングでこういうカードが出てきたのは、大きな意味を持ちそうだ。

 

 ──だって、次のターン、雪菜ちゃんは多少無理をしてでも【銀世界の主エターナルブリザードドラゴン】を出して、その次のターンに盤面を《分類:氷晶の銀世界》で埋めるプランを取るのが、最速の勝ち筋なのに。

 

 そこに、『盤面に残したら負けるカード』があったら、一度勝ち筋を諦めて、盤面の処理に回らざるを得なくなる。

 

 ……もちろん、攻撃力8が1枚だけなら、残して即負け、とはならないだろうから。あとは、ここからどれだけ盤面にエンティティが出てくるかが、勝負の分かれ目になるんじゃあないだろうか。

 

 

 ……ターン開始時のドローをして、奈々実先輩が、手札のカードに触れて、口を開く。

 

 「……ううん、とりあえず、【原生の繁茂】かなー」

 

 ……コストを3使って使用された、そのマジックカードの効果により。

 お互いの盤面の全てのエンティティに、被破壊時、自分の盤面に【原生の捕食者】を1枚出現させる効果が、付与される。

 

 ──そして、コストが4以上のエンティティカード……つまり、雪菜ちゃんの【ホワイトウルフ】とついさっき出てきた【怠惰の原生アケーディア】を除く全てのエンティティが破壊されて。そこに、【原生の捕食者】が、現れた。

 

 ……このカードは、さっきのターンに破壊された、【色欲の原生ルクスリア】が、手札に加えたカード、だったと思う。

 

 この効果だけで、もう、破壊された《分類:原生の侵食》を持つエンティティのカウントが、一気に6も進んだ。

 

 ……そして。

 

 

 「うーん、じゃあ……こっちの【原生の捕食者】3枚で、そっちの【原生の捕食者】3枚に攻撃するよー」

 

 ──両盤面、3枚ずつの相打ちが発生したことで、さらに、カウントは6進み、53。

 

 「でー……あとは、残った1枚の【原生の捕食者】で、【ホワイトウルフ】に攻撃するよー」

 

 ……そして、さらに、相打ち。

 

 【ホワイトウルフ】は、召喚した時に【侵食の大地】の効果によって付与されたものと、先ほど【原生の繁茂】の効果によって付与されたものの2つがあるから……。

 

 ──【ホワイトウルフ】の破壊と同時に。

 雪菜ちゃんの盤面に、【原生の捕食者】が、2枚現れた。

 

 「ううん、と。よし、じゃあ最後に、【色欲の原生ルクスリア】を召喚するよー」

 

 ……盤面を指さしながら、ひとつ、ふたつ……と、奈々実先輩が、数えて。

 そうして選ばれ、出てきたのは、【色欲の原生ルクスリア】だった。

 

 ──その召喚時効果により、盤面に【飛来する原生】と、【適応した捕食者】が現れて。

 そして、【怠惰の原生アケーディア】の効果によって、『カードの効果によって自分の盤面にエンティティが出現するたびに、それの召喚時効果を働かせる』から……。

 

 ……最終的に、盤面に現れたのは。

 【色欲の原生ルクスリア】が1枚と、【飛来する原生】が1枚、それから【適応した捕食者】が1枚。……そして、そこに追加で、【適応した捕食者】の召喚時効果、『お互いの盤面に【原生の捕食者】を1枚出現させる』が働いたことで、1枚ずつの、【原生の捕食者】が、現れた。

 

 ──そして、それから、【飛来する原生】、【原生の捕食者】、【飛来する原生】、【適応した捕食者】……という順番で、盤面にぶつかることで、雪菜ちゃんの盤面に出てきた、合計4枚の【原生の捕食者】を全て破壊して。

 

 「うん、じゃあー……これで、ターンを終わるよー」

 

 奈々実先輩が、ターンの終了を、宣言した。

 

 ……そして、ターン終了時。

 【怠惰の原生アケーディア】が、盤面に【適応した捕食者】を1枚出現させ、それからそれの召喚時効果を働かせて、【色欲の原生ルクスリア】が、『自分の盤面の《分類:原生の侵食》を持つコスト4以下のエンティティ全てを破壊』するから……。

 

 つまり、ここで、【適応した捕食者】2枚と、【原生の捕食者】が1枚破壊された。

 

 

 ……と、いうことは。

 破壊された《分類:原生の侵食》を持つエンティティのカウントは。

 

 

 合計が、今、63になった。

 

 

 ──これから、また再び、雪菜ちゃんにターンは回る。……けれど。

 次の奈々実先輩のターン開始時には、【侵食の大地】が勝利効果を発揮する。

 

 盤面に残ったらどうとか、そんなものは、もう関係がない。

 

 

 ……雪菜ちゃんは、次のターンに勝てなければ。

 もう、その時点で、勝敗が確定する。

 

 

 ──これは、もう、そういう状況に、なったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。