※香澄視点です。
82話 学期末あるいは期末テスト
学校からの、帰り道。
日が沈み始め、日が高く登っていた時よりは、少しばかり気温が下がっているような、そうでもないような……そんな気がする、ときのことです。
あたしは、今日の生徒会の活動を終え……とは言っても、何かお仕事をした、というわけではなく、生徒会室で先輩や有栖さん、雪菜さんと一緒に期末のテストに向けたお勉強をしていただけではありますが。
それで、課外活動終了の時間となり、下校時刻となりましたので。
雪菜さんと有栖さんと一緒に、学校から出て、帰り道を歩いているところでした。
……なんと言いますか、日に日に、日中の日差しが強まり、気温が高くなっていくのを感じます。
その、教室や生徒会室の中は、空調が効いていて、比較的過ごしやすいですが……廊下や、学校の外は、暑くてつらいです。
……しかも、今年は例年以上に暑くなる見込みとのことで。
最近では、アスファルトに水を撒いたら一瞬でその水が蒸発したり、展示している食品サンプルが溶けていたり……といったような、光景を目にすることもあります。
一昨年や去年ごろも、過去最高の、なんていう言葉をよく耳にしましたので……どうやら、夏の気温というものは、今のところ、右肩上がりでどんどん伸びているようですね。
……えっと、それで。
どうして急に夏の暑さのお話をし始めたかと言いますと。
「……で、結局あんた水着とか持ってんの?」
……それは、今日の生徒会室で、水無川さんの放った言葉が、発端でした。
それは唐突な一言でしたが、なんでも、夏休みになったら、生徒会のメンバーで海に行き、バーベキューをしたい、とのことでして。
そしたら、奈々実さんや、2年生の天岳さん姉妹、有栖さんがノリノリで反応し、凄い勢いで具体的な計画が立てられまして。
それで、海に行くことから、水着が必要になる、というお話が出まして……と、いったような感じです。
雪菜さんの言う通り、あたしは水着なんて持っていません。
強いて言うなら、大分昔に着ていた学校指定のものはありますが、逆に言えば、それしかないですし、それも、今着たらおそらく小さすぎるので、水着が必要になると言うなら、新しく買いに行く必要はあるかと思いますが……。
……あたしに対して、どうせ持っていないだろう、という認識があるのか。
雪菜さんは、つい先ほど、「あんた、どうせ水着とか持ってないんでしょ?」と、聞いてきていたのでした。
いえ、まあ、その、確かに持っていないのですが……。
「……あ、えっと、はい。持ってないです……」
「そ。なら、ちょうど私も新しく買い替えようと思ってたところだし、今度一緒に買い物にでも行かないかしら?」
「──あ、それならじゃあボクも行きたい!」
あたしが質問に答えると、雪菜さんが、買い物に誘ってきて、有栖さんも、そこに便乗しました。
まあ、その、買い物に行くのは、いいのですが。
その、ちょっと、テストが終わってからにしないと、赤点で補習になりかねないのかなぁ、という不安が、ありまして……。
あたしが、そのことを言いますと。
「……まあ、それはそうね。テストで赤点を取るかどうかはともかくとして、テスト前に買い物に行っても買い物に集中できないと思うし、私としても、テストが終わってからにしようとは思ってたわ」
……雪菜さんも、そこは、最初からそうするつもりだったようでした。
……えっと、それで。
今更ですが、本当に、夏の海でバーベキュー、なんてするんでしょうか。
その、バーベキューって、火を使いますし、夏の砂浜、なんて絶対暑いですし。
想像すると、かなり、大変そうな気がします……。
「──どうせだし、花火とかも買っていく?」
「それもありね。……あとは、変わり種でマシュマロとか買っていくのはどう?」
しかし、不安を感じていると同時に、楽しそうに話している有栖さんや雪菜さんの様子を見ていると、なんだか、あたしも、少しだけ、楽しみに感じてくるような、そんな気がします。
……えっと、とりあえず。
夏休みに、補習にならないように、今からきちんと、勉強しないと、ですね……。
……。
……と。
そんなことがありまして。
……そうして、それから、時間は大分経過していきまして。
気が付けばあっという間に、期末のテストの当日になってしまいました。
テスト勉強は、それなりにきちんとしました、が。
……正直、あまり自信は、ありません。
昨日の夜くらいまで、テスト勉強をしながら、たまたまインターネットで見かけた、「ポテトチップスの袋の中に小型テレビを仕込んでカンニングをする方法」を実際にやるかどうか、真剣に悩んでいましたが……。
──朝になって、テスト中にポテトチップスなんて持ち込めるわけがない、ということに気がつきました。
……おそらく、ここ最近、テスト勉強で中々寝られない日が続いていましたので、疲れていたのでしょう。
なんて、まあ、そんなこともありましたが。
昨日は、そんなことを考えながら、朦朧とした意識を途中で手放したようで。むしろ、ここ最近の中では、割と早めに寝ることができたと考えることもできます。
……つまり、逆に。これはこれで、睡眠時間を確保することに繋げることができたと、言えなくもない……のではないでしょうか。
……と、まあ、関係のないお話は、置いておきまして。
えっと、最初は、数学のテスト……ですね。
ちょうど、数学の先生が教室におり、今、テスト用紙を配っています。
──配られたテスト用紙は2枚あり、どうやら、片方が問題用紙、もう片方が回答用紙のようです。
手元に来たら、すぐに裏面にして重なるように、との指示が出ていましたので、その通りに、します。
──あ、でもこれ、よく見たら裏面でも少し問題が透けて見え……。
「……はい、じゃあ、始め」
そうやって、あたしが、どうにか姑息な手を使ってでも赤点を回避できないかと試行錯誤しようとしているうちに、テストが、始まってしまいました。
……と、いったような感じで、そこから、さらに、いざテストが始まれば本当にあっという間で。
数学が終わって、次に現代文の先生が来て、テスト用紙が配られて、テストが終わって、さらに、次の先生が来て……。
そんな日が、およそ1週間ほど、続きまして。
「……よし、これで終わりだ。じゃ、回収するぞ」
最後の教科の、テストが終了しました。
最後の教科……つまり、今回は英語だったのですが、その、英語の先生である、月城先生が、テスト用紙を、回収していきまして。
「じゃあ、来週か再来週くらいには、結果が出るからな。とりあえず、今は……これで終わりだ」
回収し終えた月城先生が、そう言い終わると同時に、授業の終わりのチャイムが鳴りました。
……今日は、これで、授業の日程は、これで終わりです。
強いて言うなら、あとはホームルームがあるくらい、でしょうか。
……なんと言いますか、こう、自由になった!と、言いますか、解放感……と、言いますか。
とにかく、結果はともかくとして、終わったんだな、という気持ちで、いっぱいです。
……そして、それは、あたしだけでは、ないようで。
周りを見渡してみれば、大きく伸びをしている生徒や、テストの内容がどうだった、なんていうお話をしている生徒もいて、その様子はバラバラですが。
……なんだか、みんな、昨日までと比べて、表情が明るいように思えます。
それから、隣の席を見てみれば、雪菜さんも、同じ気分のようでして。
「──はあ、ようやく、終わったわね」
「……はい!えっと、やっと、終わりましたね……」
雪菜さんが、あたしに、笑いかけてきましたので、あたしも、自然と、笑顔で、返しました。
……まだ、夏休みが始まるまでは、もう少し、ありますが。
おおよそ、あと1週間から2週間もすれば、夏休みです。
……なんだか、こうして、間近に迫って来ていることを実感するようになってくると。
夏休みの、ショッピングやバーベキューが、とても、楽しみに、思えてきます……!