カードのテキストが長すぎます!   作:ピンノ

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※香澄視点です。



85話 憂鬱あるいは明朗

 

 ……終業式が、終わりまして。

 明日から、夏休みが始まります。

 

 夏休みそのものは、とても楽しみにしていたものであり、すごく嬉しいのですが。

 

 ──3点だけ。

 考えるだけで、お腹が痛くなってしまいそうなことが、あります。

 

 

 ……えっと、まずは、夏休みが終わってから、大体何週間か経った頃に、体育祭なるものが開催されるそうで、その準備に、生徒会も関わる必要があるということ、です。

 

 ──ただ、体育祭の準備において、主に中心となるのは、各クラスの中から2〜3人ずつを集めた体育祭実行委員、と呼ばれる人たちであり……あたしたちは、その補助的な役割……どころか、ほとんど名前だけ貸し出しているようなものなのだそうなので……これは、3つの中では、比較的気が楽な方です。

 

 

 ……それから、次が。

 その体育祭で、運営そのものにあまり深く関わらないのに、生徒会が名前を出す必要のある理由にも繋がるものなのですが。

 

 ──体育祭の競技の中に、『ファントムビルド』が、含まれているのだそうです。

 

 走ったり声を出したりといったことをするわけでもないのに、何故それが含まれているのか、あたしは強く疑問を持っていますが。学校全体としては、そうではないようで。

 

 一種の、風物詩というか、象徴的なものというか……とにかく、そんな感じの扱いで、伝統的にも、外すにはよほどな理由が必要になる……といったものなのだそうです。

 

 

 ……そして、3つ目は。

 

 やはり、『レジェンダリーカップU18』の存在です。

 

 まだ言っているのか、と、思われてしまうかも知れませんが、あたしは、未だに自分が『ファントムビルド』でバトルした時に、『フルオート』とでも言うべき現象によって勝てていることが、自分自身の実力だとは思えていません。

 

 もっとも、なんだかんだとこれまで流されて、気付けばこの数ヶ月だけで色々な人とバトルをしたような気はします。

 それに、生徒会への加入など、それによる恩恵だけは今のところ全部受け入れているような状態ですので。

 

 ──側からすれば、何を言っているのか、というお話にはなってしまうかと思いますが……。

 

 公的な場、と、私的な場とでは、心持ちが、なんとなく違うのです。

 

 ずるいことをしている、という、自覚は、どちらにもあるのですが、それによる影響……みたいなものを自然と意識してしまうからか、それが、大会や行事などの場だと思うと。

 

 「断固として拒否しなければ」という、強い使命感のようなものさえ、湧いてくるような気分です。

 

 

 ……まあ、それでもいざとなったら流されてしまいそうな気がしているので、それを考えるだけで、お腹が……。

 

 ……。

 

 ……えっと、これはきっと、不安ではなく。

 あたしの強い意志が、仮病をするための準備をしているのでしょう。

 

 ──と、そう解釈することで。

 あたしは、どうにか、そんな不安を抑えている状態でもありますが。

 

 

 ……しかし、やはり。

 話はぐるりと回って戻ってきますが。

 

 こんなあたしでも、やはり夏休みは、楽しみにしていたもので間違いありません。

 

 その楽しみの、具体的な1つとしまして……。

 

 

 ……。

 

 「──ふうん、あんた、随分と早いのね」

 

 

 ……あたしが、ショッピングモールの待ち合わせ場所に、待ち合わせ時間の大体30分前くらいに到着しますと。

 

 既にそこにいた雪菜さんが、スマホから顔を上げつつ、そんな言葉を投げかけてきました。

 

 ──言葉を無視するようで申し訳ないのですが、つい気になって、ちらり、と。

 

 ……あたしがそのスマートフォンに視線を向けますと。

 そこにはモバイルバッテリーに繋がっているらしき線が伸びていました。

 

 ……えっと、では、そう言う雪菜さんは、いつからここにいたというのでしょうか……?

 

 

 ……あたしは、そんなことを思いながら。

 しかし、それを口に出すことはせず。

 

 「……あはは、えっと、その……混んだら大変かなと思いまして、ちょっとだけ早く来ちゃいました……えっと、その……ですが、ちょっと待たせちゃいました……?」

 

 ……とりあえず、あたしは、ただ、曖昧に笑って、誤魔化しつつ。

 しかし誤魔化しきれなかった自分自身の問いが、ほんの少しだけ、言葉として、漏れ出てしまいました。

 

 「──そう。私も……えーっと、混んだら大変だから。……そう、混んだら、大変だから……ほんのちょびっとだけ、早めに来たけど……ほ、ほとんど、今来たところみたいなものなんだから、待たせた、とか……思わないでよね!」

 

 ……あたしがの言葉に対して、雪菜さんは。

 

 おそらく気遣いと、それから照れ隠しが……変な割合で混ざって、とても奇な言葉遣いになってしまいました。

 

 ……。

 

 ……あたしも雪菜さんも黙り込んでしまい、なんとも言えない空気になってしまいました。が。

 

 「……お、2人とも早いねー!ボクも早めに出たつもりだったのに……まさかビリになるとは思わなかったよ」

 

 ちょうどいいタイミングで、有栖さんがやって来ました。

 

 ──その、えっと……。

 ……今更ですが、雪菜さんも、有栖さんも、とてもおしゃれな格好をしていますね……。

 

 雪菜さんは、青や白といった、寒色を主軸とした涼しげな雰囲気の服装でまとめつつも、ちょっとした小物類を、所々に。ごちゃっとしないくらいの丁度いいバランスで配置していて……。

 なんと言いますか、全体的に。鮮やかでありつつも上品……と、いった、雰囲気です。

 

 それから、有栖さんはと言いますと。

 派手目な柄の入った、袖の短い服に、丈の短い、紺色のパンツ──と言うと、なんだか誤解が発生しそうなので……紺色の、ズボン。と、いった感じでして。

 お腹を出していることもあってか、こう……活発で元気そうな印象を受けるような……そんな気がします。

 

 ……それに比べて、あたしはと言いますと。

 お母さんがこの前買って来た、半袖の服に、気持ち丈の短い、スカート……といった、感じの服装です。

 

 ──もちろん、あたし自身、おしゃれにはまるで詳しくありませんので。

 先程の、雪菜さんや有栖さんの服装についてのイメージは……もっと、こう……色々な工夫が込められているのを汲み取れていない自覚が、ありますが。

 

 ……しかし、あたしのなんの工夫もない服装が、お2人に並ぶと、悪い意味で、「浮く」ということは。

 

 ……残念ながら、さすがのあたしでも、分かります。

 

 

 「よーし!じゃあさっそくショッピング開始だね!……ただ、ボクとしては、夏服のレパートリーを増やしたい気持ちもあるからー。先に服を見たいんだけど、いいかな?」

 

 「……まあ、そうね。私も、ちょうど、服もついでに買おうかと思ってたところよ」

 

 ……ほんの一瞬、お2人の目線が、あたしの方……と言うより、あたしの着ている服の方へと向いて、またさっと戻りましたが。

 

 あたしは、それに気付きつつも。

 ……自分からそこに触れる勇気は無かったので、気が付かなかったことにしました。

 

 ……。

 

 ……そうして、夏の服を見たり、着せ替え人形みたいになったり、逆に、お2人が色々な服を着ているところを見たり、しまして。

 

 ──これ、と決めて、イメージチェンジをした頃には。

 ……すっかり、お昼になってしまっていました。

 

 それで、せっかくなので、と言うこともあり。お昼をフードコートで、食べました。

 

 ……通常の飲食店よりも、やや割高のお値段ではありましたが。

 それぞれ、好きなものを買って、食べたり。それから、たこ焼きなどの、分けられるものを、少しだけ、分け合ったりすることができましたので、なんだが、楽しい、お昼になりました。

 

 ……それから、ようやく。

 

 たくさんの回り道を経て。

 本題の水着選びや、バーベキューの日に向けた、その他のお買い物が、始まりました。

 

 ……まあ、もっとも。

 本題、とは言っても、午前中と、やることはあまり変わらないのですが……。

 

 ……あーでもない、こーでもない、と、言いながら、ショッピングモールの中で、色々なお店をぐるぐるぐるぐると、回り。

 

 とりあえず、それぞれ、選び合いまして。

 

 

 ……これで、みんなで海でバーベキューを楽しむ準備を、整えることができました。

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