※香澄視点です。
時間が経つのは、あっという間でして。
……夏休みの日も進んでいき。
気が付けば、もう、バーベキューの日に、なっていました。
それで、集合場所として指定されていた場所に、あたしは雪菜さんや有栖さんと一緒に、電車などを使って向かいました。
……ちなみに、駅まで送ってもらう時に、お母さんに、どこの浜なのかを聞かれて、プリントに書いてあった場所の名前を言ったところ、聞いたことがない場所だと言われました。
……それで、調べてみますと。
どうやら、そこは、私有地……と、言いますか。
水無川さんのお家の、プライベートなビーチ……だそうです。
……それから、そして、今。
あたしたちは、到着早々水着に着替え、着替えやタオルなどを休憩スペースのようなところに置き、砂浜に来ています。
──もちろん、これは少し前に、みんなで買いに行って選んだ水着です。
……えっと、ちなみに、と、言いますか。
雪菜さんは、ひらひらとした装飾の多い、水着を着ていまして、その、シュッとした体型とマッチしているような感じの。……いわゆる、清楚?というのでしょうか。とにかく、そういった感じの雰囲気で。
それから有栖さんは、飾り付けが少なめのシンプル寄りな水着に、上から丈の短い上着のようなものを羽織っていて。店員さんいわく、ボーイッシュな雰囲気でとても似合っている……とのことです。
そして、あたしは。
装飾が多めで可愛らしい雰囲気の、ビキニをベースとした水着を着ていまして、それから、大きめのリボンが印象的な麦わら帽子を被っています。
……何と言いますか。
こういった、おしゃれなデザインの……そして、こういった、肌を見せる部分の多い水着は。自分だったらあまり選ばないような衣服ですので、着ていてなんだか不思議な気分です。
「おー……1年ずだー!思ってたより早かったねー」
──あたしたちに気付き、声をかけてきたのは奈々実さんでした。
ちなみに。
その、奈々実さんはと言いますと。
──かなりシンプルな、水着を着ています。
具体的にどうシンプルかと言いますと、シンプルな、ビキニ水着です。
……これは、後から聞いたお話なのですが。
同人活動をする際に、鏡に写った自分自身をイラストの参考とすることがあるらしく、それ用に買った、やや露出の多い刺激的な水着……なのだそうです。
他に水着を持っていなかったので、それを着ることにした、とのことですが。
確かに、中々にインパクトのある水着ですね……。
……それで、水着のデザインは、まあ……いいのですが。
──本当に気になるのは、首から下げた立派なカメラです。
一眼レフ……と、言うのでしょうか。お高いものだと思いますが、海に持ってきて大丈夫なのでしょうか。
そして、そもそも。
そのカメラはいったい、何のために……?
「……あ、おはようございます。えっと、奈々実さんもその……お早い、ですね……」
あたしが、困惑しながら、言葉を返しますと。
「……あー、これ?……これはねー……折角みんな水着を着てくるんだしー……作品制作の参考にしたいなー……って。──ちなみに、撮ってもいい?」
あたしの視線に気がついた様子で、カメラについての説明をしてくれ、そして、撮影の許可を求めてきました。
「……あ、えっと、あたしは……その、大丈夫です」
……それで、あたしが、つい反射的にそう返しますと。
「ボクも問題ないよ……です!」
「私も……大丈夫です」
有栖さんと雪菜さんも続き、奈々実さんが「ありがとう!じゃあ、早速まずは1枚、撮るねー!」と、安心したような表情でカメラを構えてきましたので。
……あたしは咄嗟にピースをして、写真に写りました。
……。
あとは、それから。
「おー!3人ともおっはようじゃな!」
「──おはようございます」
水無川さんと天柄さんが、こちらに気付いたようで、少し遠くから、手を振ってきました。
……それで、えっと、水無川さんは。
普段はネコミミみたいな三角形が付いたヘッドホンをしていますが、ここは海辺なので、流石に今日は付けていないようです。
ただ、その代わり……なのでしょうか。
……ネコミミ付きのキャップを、被っています。
──ちなみに、以前。
水無川さんに、どうしてネコミミを付けるのかと聞いたことがありますが。
……本人は、教えてくれませんでした。
……ただ、しかし。その代わりに。
横から突然天柄さんが、「本人がネコミミ好きだから付けているのです」と、教えてくれました。
それから、なぜ好きなのかは……単純にかわいいから、だそうです。
……もちろん、これも本人から聞いたことではありませんが。
ただ、その場にいた本人は、否定せず。
天柄さんに、その尖った二つの三角形で、頭突きを喰らわせていましたので。
……おそらく嘘ではないのだろうと、思っています。
「──いやー、まだ2年のやつらは来てないからのう……まあ、適当にくつろいでておくれ」
……そして、その水無川さんの、正面の辺りに立つ、天柄さんはと、言いますと。
──それは、大分前、屋内での地方大会で見かけた時のように。
彼女は、アロハシャツを着ていて、それから、星型のサングラスをかけています。
ただ、あの時と違って、髪が結ばれていたり、側頭部の辺りに南国風のお花の髪飾りが付いていたりしているからなのか。それともあるいは、以前のようなミスマッチさがないおかげか。
……なんだか、以前見た時と同じような格好のはずなのに、以前と比べて、かなり、おしゃれに見えます。
……えっと、それで。
そんなお2人が今、何をしているのかと言いますと。
どうやら、砂浜で『ファントムビルド』をしているようです。
……『ファントムビルド』のカードは、紙ではなく。そもそも、物理的な物体でもないので、確かに、海でもできます。
しかし、なんと言いますか、こう……あたしとしては、その様子は少し不思議な光景に映りました。
「えへへー……。いやあー資料集めが捗るねぇ〜」
……それから、先程声をかけてきていた奈々実さんはと言いますと。
色々な角度から、あたしたちにカメラを向けて。
……すごくたくさん、写真を撮っているようです。
「──随分、写真を撮るんですね……?」
……とりあえず、どうしたものかと困り果てながら。
あたしが思考を停止して曖昧な笑いを浮かべて棒立ちしていましたら。
──雪菜さんが、遠慮しつつも、突っ込みました。
「やー……それはそう、なんだけどねー……。こう、水着って、あんまり見る機会ないしー……特に、みんなが色々と趣向の違うかわいい水着を着てるのもー……参考資料としてすごくいいんだよねー。参考資料の種類なんて、多ければ多いほどいいからねー」
……。
その、絵を描く人って、大変なんですね……。
……ただ、えっと。
それはそれとして、あまり撮られるとさすがに恥ずかしいので、もう少しだけ控えめにしていただけると、嬉しいかも……?なのですが……。
「……あの、えっと。……あたしたちを元にして、これから何かを描くっていう感じ、ですか……?」
……あたしが、自分自身をちらりと見下ろしたり、隣の2人にも、ふっと目を向けたりしつつ尋ねますと。
「それがねー……今年の分はもう完成済みだからー……。これは来年の同人誌用、になるかなー」
──本当に資料にするつもりなんだ……と、なんだか少し複雑なような、なんとも言えない気持ちになりましたが。
……それから、また。
少しだけ、時間が経過しまして。
……バトルを終えて、負けた天柄さんが不本意そうに、走って自動販売機の方へと向かって行ったり。
それから、ひとしきり写真を撮って満足したらしき奈々実さんが、思い出したように、巨大なクーラーボックスを持って来まして、そこに入っている飲み物を、配り始めたり。
戻って来た天柄さんが、持って来た飲み物を、持ったまま、固まってしまったり……。
……そんな感じで、その間も、色々とありましたが。
気が付けば、無事、2年生の方々も、集まっていました。
──えっと、こうして、揃ってみますと。
それなりに知った顔ばかりなのに。
……みんなが、いつもと全然違う格好をしているので。
なんだか、新鮮で、それだけでとても面白いもの、ですね。
その……非日常感、と、言いますか。
……ほんの少しだけ。奈々実さんがたくさん写真を撮る気持ちも、分かったような気がします。