「本物のドワーフの魔剣、か……」
ワクワクしながら、樽を運ぶ銃也。そうして電話を取った。
「爺や、迎えに来て欲しいんだけど」
その後すぐに、迎えの車が来て銃也は樽を車に乗せる。
早速飴を舌で転がしながら、ニマニマ。
自分の剣は帰ってゆっくり選ぶつもりだ。
飴を舐めるほど、剣からの気配が強くなってくる。
まるで自分を選べ、いや自分だと誘っているかのようだ。
「銃也坊ちゃん。またそんなに買ったんですか? しかも無断外泊などと」
「あはは。俺が貰ったのはこのうちの一本だけ。後は売る用だよ。あ、そうだ。俺、就職したから」
「はああああああああ!?」
爺やの叫びが、空へと消えた。
早速父に連絡をして、時間を取ってもらう。
俺の就職の連絡が行ったらしく、父はすぐに時間を取ってくれた。
待っている間に、もちろん自分の剣は確保した。
「というわけで、父上、剣を買いませんか?」
「はぁ。勉強の為に他の企業に就職することは構わん。いい心掛けだ。しかし、時代は銃だ。それに、勉強だって必要だ」
「勉強は通信教育で続けます。今の時代、だいたいの資格は通信教育で取れますし、原点はずらしたくない。信長テクノロジーに膝を折るのもごめんです」
あそこの息子の信成とは同級生で、バッチバチなのだ。
絶対負けない。でもあいつに勝つのに、まともな方法では無理なのだ。
「その企業はその価値がある所なのか」
「間違いなくあります」
「……そこまで言うなら、剣を見せてみろ」
そうして訓練所に移動して、樽の中の抜き身の剣を一つ取る。
「ほぅ。言うだけあって中々の腕前のようだ……」
剣を振る。的は凍った。
「的を凍らせる銃など珍しくもない。だが、個人でこれをなすとはな」
「父上……耄碌しましたか? この剣の真髄はそこではないですよ。それとも見ないふりですか?」
「……次の剣をみようか」
とても丁寧に剣を脇に避け、次の剣を取った。一通り試した後に、汗をダラダラと流した。
「や、やるではないか。全部買おう」
「飴がおまけにつきます。ぜひご賞味ください。後、剣は1人一振りしか売りません。父上に売るのは一振りだけです。飴を舐めた後に剣を選ぶと相性のいい剣が選べるとのことです」
「ほぅ?」
「坊っちゃま、お毒見させていただきます」
護衛の青木が飴を噛み砕くと、苦しみ出した。
「これは!? 毒か!?」
「時間を掛けて舐めずに噛み砕くから……。死にはしないと思います。落ち着いて、体を休めてください」
「暑い。暑い……!!」
そうして、青木は体から冷気を吹き出す。
しばらくバタバタして、冷気を操る特異体質に目覚めたという事だった。
彼は、父上が最初に振った冷気系統の剣を選んだ。剣が吸い付くように馴染むらしい。選び終わったらすぐに研究所の人に連れられて行ったけど。
そうこうしているうちに呼んでいた友人の京も来た。この銃の時代、愚直に剣を振るう友人だ。一族揃ってお得意さんでもある。
「緊急ってなんや? 銃也。討伐隊休んででもこいって普通やないで」
「魔剣売る会社に就職したんだ。ドワーフ工房妖精宴っていうの。ってことで剣を買って。買え❤️」
「魔剣?」
「これ全部試し振りして、この飴舐めて、もう一回試し振りして」
「うっわ、雷!? どういう仕組みで出てるんや、これ。怪獣由来やないな?」
「そう、全くの新技術。怪獣には通用しないだろうけど、コレクトアイテムって事で一つ。これから販売する新商品の為に、今からお金貯めとけよー?」
その時、父が我に帰った。
「銃也。その飴も刀も剣も全部買う。買うぞー!」
「1人一振りでーす。それに売りに行く相手もう決めてるんですよ。宣伝も兼ねてるんで、あっちこちで売るつもりです。要らないなら次の候補に回しますよ」
そして、俺は信長テクノロジーにも売りに行った。
「ふむ。ベンチャーで修行をするか」
「はい。ドワーフ工房妖精宴は世界に羽ばたく会社となるでしょう」
「面白い。ならばオーダーしよう。この織田信輝に相応しき刀を用意せよ。こんな数打ちでなくな」
「!! それが数打ちだとお気づきになるとは……」
侮れない男である。流石不可能はないと思われた天下無双の同級生が恐れていた社長。
「わかりました。社長にお伝えします」
「銃也! 僕にも剣を売ってくれないか。剣を売った奴にしか飴くれないんだろ」
「いいけど、魔法が必ず使えるようになるとは限らないぞ」
「魔法? なんだそれ。同調率が上がるんだろう? 僕は討伐隊に入りたいんだ。その飴で同調率が上がるって聞いた」
「何それ怖ぁ……。噛むのは御法度、劇薬だからな。あと、二個は食うなよ。1日は大人しくしとけ」
「わかった」
そんなわけで、爺やの協力もあり、深夜には売り終わって帰る事ができたのだった。1日であちこち行くのはコネゴリ押しと爺やの送迎オプション付きでもめちゃくちゃ大変だった。爺やには後で何か用意しないとな。めちゃくちゃ助かった。
「ただいま帰社しましたー。全部売って帰りました」
社長の刀さんは、掃除をしていた。
「おう、おかえり。タイムカードまだ用意してねんだわ。とりあえず自分で記録しといてくれ」
「わかりました」
そうして、俺はお金を運んで領収書を渡す。
ちゃんと、売れた剣の写真もそれぞれの領収書にくっつけている。
「オーダーメイドの注文もあったので、要望書を置いておきますね」
「ふむふむ。使えるじゃないかお前さん。これで色々買えるな。まずは引越しか。でも要望書はまだはえーな……。希望者にこっちの整理券を配ってくれねーか。まあ、それは明日ってことで、飯にするか」
2人でカップラーメンを啜る。
「そんで、お前、営業も経営も鍛治も戦闘もしたいって言ってたな。販売はまあ才能を示したわけだし、次は仕入れをしてみるか。その前に、引っ越しと書類仕事と改装工事の相談だがな」
「何でも挑戦してみたいです」
「若い頃はそれでこそよ。弟子の使ってた部屋を用意した。良けりゃそこを使ってくれ」
俺は軽く工房を案内されて、用意されたベッドで眠った。
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