【悲報】転生ドワーフ、常識を忘れる   作:かりん2022

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本当に悪魔だったとは思わなかった(隊長視点)

僕は天才だ。

天才じゃなきゃいけないんだ。

何故なら、本当の天才から、助けられた命だから。

 

姑息な怪獣から救われたあの日から、ガムシャラに頑張って、天才の名を欲しいままにした。

足りない。足りない。まだ全然足りない。

最強を嘯きつつ、更なる力を求め続けた。

力をくれるなら、悪魔に魂だって売ってやる。

兵器を作ってくれる信長テクノロジーに媚びを売るのだってその一つ。

信成は才能はないけど、ないなりに努力してた。

とはいえ、そんな奴どこにだっているから、そんなの評価の対象にはならないけど。

努力は当たり前。要は結果が出せるかだ。

戦闘力はないけど、信成の財力と頭脳は結果を出した。

研究で力になるなら、媚を売らない理由はない。

だから、子供相手だけど、訓練も手伝ってやった。

 

それが。

 

「ふっざけんなドーピングで100%!?? 僕もその飴使わせろ! どれだけ血反吐吐く思いで鍛えてると思ってるんだ」

 

 僕は媚を売ることを忘れて錯乱する。

 0%が100%だぞ!? 無からパーフェクトだぞ? ふざけてんのかまじで。

 オロオロする信成にさらに腹が立つ。

 

「あ、あの! 精一杯頑張ります! よろしくお願いします!」

 

 努力すんのは当たり前なんだよ!!!!! なめてんのかこの世界。

 しかし、違いは一目瞭然だった。

 僕のスーツが、信成を恐れているのがわかる。なんだこれ。こんなの初めてだ。

 

「いいか、力ってのは使いこなせなきゃ意味がない! とことんしごいてやる!」

「了!!!」

 

 というわけで、反対を押し切って信成を実戦に出す。

 なんかの間違いやインチキなら暴いてやる。

 しかし、自分が一番わかっていた。インチキではないって。

 

 ドーピングではあるかもだけどな!!!

 

 怪獣を前にした信成は、よりによって剣をスッポ抜かして錯乱して怪獣を素手でぶん殴った。とはいえスーツは着てるけど。

 

 それで、怪獣はすっ飛んでって爆発した。

 

 思わず、僕は固まる。なんだこれ。

 

 ポカンとしていると、信成は言った。

 

「なんか、こっちになんかいます」

 

 そして、信成は走っていく。慌ててついていくと、怪獣がいた。

 

「あっちにも。こっちにも、これ、怪獣の気配か!」

「はぁぁ!?」

 

 信成は、研究の成果もあげた。怪獣の組織の性質がわかるようになったのだという。

 

 どんなドーピングなんだよ!!!

 

 当然、討伐隊でも会議になった。

 

 そこに、銃也が話を持ってきた。

 

「討伐隊の皆さんに、飴を配る代わりに協力していただきたいんです! 討伐っぽい仕事です!」

 

 それはすぐに会議に挙げられた。

 

「0を100にするなら、同調率が低い隊員を中心に選べば全体の底上げになるんじゃないか? 98が100になるより、0が100の方がいいだろう」

「は? ふざけてんの?」

「全体の底上げのためだ」

「なんだよそれ、それこそ横暴だろ! 才能を認めないことがすでに馬鹿げてる」

「必ず100になるとは限らんだろう。才能をすでに証明している人間に投資をする方が確実だ」

 

 喧々轟々の言い争い。

 

「半々じゃだめですか? ベテラン全員引き抜くのも日本の防衛的にどうかと思いますし、当社としてはやる気があって運動ができて長時間の肉体労働が可能なら誰でもいいですし、交代でも勿論構いません。ただ、チームの中に飴を使った人を1人は必ず入れていただきたいですし、今のところ、飴は上限300個は動かせないです。在庫がそれだけなので」

「僕は隊長権限として、飴を要求する」

「まあ、若くて才能のあるものから選抜するのは悪くはあるまい。とりあえず、100人選ぼう。幹部で志願者で若ければ無条件で選んでもよかろう」

 

 そうして、僕は飴を手に入れた。

 舐める。

 

 体が熱くなる。

 

 まるで、体内の殻が溶けるような……。

 スーツの声が聞こえる……。

 うるっさいな!? スーツの機嫌がわかる。自分のも人のも!

 なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ。

 

 それを飲み込む間も無く、悪魔に魂を売った僕は言われるがままに完全武装で肉体労働現場に着いた。

 銃也達がバタバタと準備をする。

 

「あっ 準備に時間掛かるんで、もう始めてて大丈夫ですよ。地図がこれです。この扉に入って、地下10階のこの位置の岩の化け物をこの鶴嘴で襲って、落ちた欠片をこの鞄に入れて戻ってきて下さい。自信なかったら偵察だけしてきてもいいですよ。後で引率します。とりあえず、初日は一日50キロ取ってきてくれたら後の余った時間は全部お土産探しに使って大丈夫です。やばかったらこれ使って下さい」

「あ? 引率なんて必要ないね」

「初日からめちゃくちゃ飛ばすやん……」

 

 そうして、僕は地図と鶴嘴と鞄、それともしもの時に使うらしい石を持って進む。

 ゴブリンがいた。

 

「隊長……これってやっぱり、ダンジョンちゃいます?」

「隊長、やっちゃいます?」

「飴食っただろ。腹括れ。後、信成。目的地は地下10階だぞ。いちいち倒してたら時間が取れない。スルーだスルー」

「腹はくくっとるけどぉ」

 

 僕は地図に書かれていた通り、魔物達をスルーしていった。

 そして、ついに地下10階で闊歩するゴーレムを発見する。

 

「一番槍行きます!」

 

 信成が鶴嘴を思いっきり振る。

 ゴンっと音がして、ゴーレムが消えて岩が残った。

 

「これを砕いて鞄に入れて往復か、大変そう……あっ隊長! なんか鞄に入れても全然重くならないです! どんどん入る!」

「マジかよ、マジックバックじゃん。じゃあこっからガンガン素材回収していくぞ。役立つものがあるかも」

「なんやゲームみたいやなぁ。自分、金属っぽいの狙ってくるわ」

 

 ゴーレムを種類ごとに50キロぐらいずつ狩って、十階から攻略しながら登っていく。薬草とかも勿論採取対象だ。というか飴の材料かもしれないのでそっちがメインまである。

 

 戻ると指揮所が出来ており、温かい濡れタオルを用意してくれていた。

 瞬く間に鞄が回収されていく。

 早速お風呂に入って食事をもらう。

 

 ダンジョンの扉前には物資が山と積んでおり、研究者達がそれの確認をしていた。

 

「さすが隊長です! いろんな素材がこんなにっ あ、十分に休んだら交代して下さいね。次の交代の時までには、物資リスト作っておきます!」

「この物資って何?」

「実は、鍛治師さんのしきたりで、新人鍛治師は先輩鍛治師の倉庫から物資を貰える代わりに、その倉庫をすっからかんにして綺麗に掃除してから、自分の後輩に渡す物資を用意しないといけないらしいんです。そんなわけで、飴の作り方とかも銃也さんがしっかり習うみたいですよ。しかもいらないものは二束三文で売って貰えるそうです。代わりにがっつり後援することになりましたが」

「フゥン。装備、よくなりそう?」

「各社共に飛躍を確約してくれました」

「各社?」

「信長テクノロジーと妖刀テクノロジーと妖精宴で提携を結んでました」

「強くなれるんなら、僕としては文句ないね」

 

 そして、僕は討伐隊に戻った。

 急に強くなって突出する隊員が多くなり、僕は久々に隊長らしい仕事……統率に集中する事になった。

 自分の新しい実力と折り合いをつかせるのに、スーツの機嫌を感じ取れる力は役だった。機嫌がわかるぐらいだから場所も把握してるし、破損状態もわかる。

 スーツに耳を澄ませ、実力を引き上げることも覚えた。

 そしたら100%を突破していた。

 

 100%より上があるなら、ベテランに渡すことも意味がある、という話になったので僕は隊内の実力者から感謝された。

 

 しかし、正直スーツと武器の力を引き出せるようになったものの、これは元の力の延長。異世界のドワーフなんてものが現れたんだ。こんなもんじゃないはず。どこでもいいから、はよ僕の新しい武器作れ。

 

 そんなある日、ドワーフ親方が怪獣の核を手に入れに行くといった。

 怪獣狩りは素人のはず。素人2人と新人に任せるわけにはいかないし、剣を作る為だというなら僕も剣を注文してる。

 僕は3人に着いていくことにした。

 

 そして今、ここである。

 

「未来ーっ! 頼む! 逃げろ、逃げろよ!」

「いやっ 私、もう逃げ回るのは嫌だよ、お兄ちゃん!」

 

 僕らの目の前には、兄弟の人に酷似した怪獣がいた。

 人にそっくりっていうのも困惑ポイントだけど、ドワーフが人外殺害常習犯っぽいのも困惑ポイントである。同じお兄ちゃんである銃也は泣きながら助命嘆願している。

 

「僕が持ってる剣は?」

「そりゃ吸血鬼をぶっ殺して剣にしたもんだ」

 

 異世界も結構殺伐としてるなぁ……。

 ドワーフ親方はすぐにでも核を抉り出す気満々である。

 

 僕も力を得る為なら手段は選ばないつもりだ。だが、多分、にいちゃん……僕を助けてくれた天才は、この必死にもがく兄弟を殺しただろうか。

 いや、きっと。

 

 僕はため息をついて、ドワーフ親方に取引を申し出た。

 

「おい、お前ら人殺したか」

「殺してない! だってそうしたら、未来に顔向けできないじゃないか!」

「わ、私はお兄ちゃんから殺しちゃダメだって……」

「はぁぁ。じゃあ、仕方ないね。こんな小物相手に後味悪い真似したくないもん。討伐隊の方でもっと立派な核を用意させるから、ここは引いてもらえないかな」

「うーん。キャッチアンドリリースか」

「リリースはしない」

「まあ、まだ核小さそうだしなぁ。信輝さんに渡すのにこんな小物はなぁ」

「あの人派手好きだし、子供を剣にしたってなるとケチつかない?」

「つくかもなぁ。じゃあ、ちょっと面倒だが大物狙うかぁ」

「大物?」

「東京の地下深くにデカブツが眠ってるからよ。地震を起こさないように眠った状態のままスッと暗殺して核を回収しようかと」

「……それ失敗したら東京壊滅する?」

「起きたらどのみち壊滅だろ。今サクッと倒した方が早い」

「そっち成功させよう! ね!? 子供に手を出さなくてもさぁ!」

「正気か、天秤にかかってるのは日本だぞ」

「成功率どれくらい?」

「手順間違わなきゃ100%だわ。時間は掛かるがな。俺は天下一のドワーフよ。似たような事は何度もしてきたわ。神と崇められた龍を罠に嵌めて剣にしたりなぁ!」

「うわぁ、嫌な信頼……」

 

 その後、大怪獣暗殺プロジェクトが立ち上がった。

 眠らせたまま暗殺して、主要部分の素材を奪う。

 怪獣相手とはいえ、血も涙もないミッションが始まった。

 




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