機動戦士ガンダム 異世界から来た日本兵   作:モッチー7

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第4話:地位に自由を奪われるな!

千紫がいるアニアーラにある多国籍連盟軍秘密工場から試作モビルスーツを強奪したジョニーが、威風堂々とペペロニアン王国軍宇宙基地『メビウス』に到着した。

「今日も大活躍の様だな?赤い高速」

皮肉雑じりに迎えたのは、メビウス統制官のイ・マダ准将である。

「ではさっそく……その御自慢の盗品の高性能の披露会と行こうか」

だが、ジョニーは溜息を吐きながら残念そうに答えた。

「それについては……御期待に応えかねますわ……」

「何かね?その……歯切れの悪い返事は?」

ジョニーは観念したかの様に答える。

「この機体、貴方方が期待する程の高性能は、ありませんわ」

ジョニーのガッカリがいまいち理解出来ないイ・マダ。

「期待出来ない?この機体は、我々が使用しているモビルスーツに対応する為に開発された試作機では?」

「わたくしも乗る直前まではそう思ってましたの?でも、この子の運動性能と操縦性の評価は……良くて『劣悪』ですわ」

せっかく強奪したモビルスーツの酷評にドン引きするイ・マダ。

「劣悪?多国籍連盟軍だって馬鹿じゃないだろ」

 

だが、数日後……

「ジョニー……例の盗品の話だが……」

ジョニーは溜息混じりに皮肉を言う。

「だからおっしゃったでしょ?その機体には期待するなと」

返す言葉が無いイ・マダだが、それでも解体や試運転で得た結果を告げる義務が有る。

「先ずは褒める点だが……あの機体の装甲は過剰に頑丈だ」

「頑丈?」

「ああ……スペースチタニウムの上から人工ダイヤモンドコーティングを施されている」

その報告に、驚きを隠せないジョニー。

「スペースチタニウム!?あの鋼鉄の10倍もの強度を持つアレの事、ですわよね?」

「そうだ。しかもその上に人工ダイヤモンドコーティングだ。奴らも奮発した、と視るのが妥当だろう」

だが……

「後、背部の巨大なスラスターのお陰で高い航空性能を誇っている……」

ここでイ・マダの台詞が止まった事に、呆れて頭を抱えるジョニー。

「例の機体の素晴らしい部分は以上ですの?」

「……ああ……装甲と航空性能以外は……我々のベーオウルフの方が勝ってる。本当に……意味が解らん!」

ジョニーは、この機体に別の意図があるのではないかと考え……1つの推測に辿り着く。

「もしかして」

「なんだ?」

「この機体は、わたくし達に多国籍連盟軍がモビルスーツを開発していると勘違いさせつつ、スペースチタニウムと人工ダイヤモンドコーティングの相乗効果を得る為の実験を行う……それが目的ではなくて?」

「では……スペースチタニウムで造った戦闘機が奴らの本命だと?」

「その可能性は、今はまだ否定しない方が良いですわ」

 

千紫は自分の無能さに呆然となっていた。

知らなかったとは言え、みすみす敵国ペペロニアン王国の超有名エースのジョニー・トランボを取り逃がし、しかも友軍である多国籍連盟軍が秘密裏に開発していたモビルスーツは奪われた挙句……

「やめろ?貴方、本当は戦争が御嫌いなのではなくて?」

敵国のエースに非現実的反戦主義者と勘違いされてしまったのだ……

悔しかった……

それ以上に……惨めだった……

(俺は……何の為に自衛隊員に成ったんだ……戦えないのであれば……)

そう思いながらも、千紫の足は宇宙港が有るアニアーラエントランスに向かっていた。

だが……

「避難用の船はまだ来ないのか!?」

「俺達を何時までこんな危険な場所に閉じ込めておく心算だ!?」

「このアニアーラには多国籍連盟軍の秘密工場が在るって話じゃないか!?そんな危険物の隣に住めるか!」

「またペペロニアン王国が来るかもしれないんだぞ!早く船を出せ!」

避難用の宇宙船を求める住民達でごった返していた。

「皆さん、落ち着て居住区に―――」

「あんな危険な場所に行ける訳ないだろ!」

「多国籍連盟軍の犬め!そこをどけ!」

「本はと言えば多国籍連盟軍が余計な事をし過ぎたからだろうが!」

「多国籍連盟軍さえいなければ……多国籍連盟軍のせいだ!」

避難用の船を求める声は、時間が経つにつれペペロニアン王国と懸命に戦う多国籍連盟軍への誹謗中傷へと変わっていく様を観て、千紫は沖縄県民の在日アメリカ軍基地への恩知らずな無礼の数々を思い出していた……

「(名護市辺野古の)新基地建設を中止せよー!」

「安保の負担を沖縄だけに押しつけるなー!」

「悲劇に見舞われた沖縄は何を言っても戦争反対だ!」

その途端、怒りと責任感に支配された千紫は、敵国ペペロニアン王国に逃げる背中を晒しながら味方である多国籍連盟軍への誹謗中傷を行う無責任な住民達に説教を垂れようとした!

だが、

「やめなさい!」

千紫は何者かに後ろから腕を引っ張られた。

「これ以上恐怖心を捨てたら、君も全てを失うぞ」

千紫がイライラしながら振り返ると、そこには力強い視線を有する老人がいた。

その途端、千紫は何故か萎縮してしまった。

「……あんた誰だ?」

「ワシか?ワシは恐怖心と自由を失い過ぎた愚か者じゃよ」

千紫は理解に苦しんだ。

何故恐怖心を失うと自由まで失ってしまうのかを。

「ですが……今戦わなくては、ペペロニアン王国に全てを奪われます!」

それに対し、老人は呆れた様に首を横に振った。

「若いな君は?未だに敵を排除する方法が『蹴落とす』のみとは……」

 

急いでいる筈の千紫は、何故か引き止める老人の話から離れないでいた。

「おぬし、恐怖心と自由をドブに捨ててまで何を護る?」

老人の質問の意図が、千紫には非現実的反戦主義者が語る非現実的綺麗事にしか聴こえなかった。

「じゃあ何か!?敵国に自国の全てを奪われるのを、指を銜えて観ていろと言うのか!?」

それに対し、老人は呆れたかの様に溜息を吐いた。

「やはりな……おぬし、若い頃のワシと同じ過ちを繰り返そうとしている」

「過ちだと?俺はまだ―――」

「最後まで話を聴かんか!」

老人の迫力に完全に気圧されてしまった千紫は渋々ベンチに座った。

「そうじゃ。他人の失敗談はちゃんと聴くべきじゃ」

「で……あんたの敗因ってなんだよ?」

「ワシの敗因?……んー……そうさなぁー……強いて言えば……出世以外の幸福を知らなかった事じゃな?」

 

この老人、若い頃はかなりの出世頭だったらしく、同期最速の出世スピードで40代で既に社長だったらしい。

しかも、それだけでは満足出来なかった彼は、土地買収や他社との合併など、様々な商策を躊躇無く行ってきたらしい。

だが、気付けば誰も彼に就いて行けなくなり、彼は友人と家族を失い、彼の周りは部下と敵のみとなってしまった。

そして……彼は遂に隙を突かれて政敵に蹴落とされて失脚してしまった。しかも、その失脚の首謀者は彼に解雇された元部下であった……

 

「つまり、ワシは自分の地位と名声に自分の自由と幸福を奪われた……馬鹿なんじゃよ」

確かにこの老人の人生は凄かった。

だが、何故この老人が千紫を現実的主戦主義者から非現実的反戦主義者に変えようとしたのか?千紫はそれが解らなかった。

「で、なんであんたの自慢話を俺に聞かせた?」

その質問に対し、老人は慌てた様に言い放った。

「それは貴様が蹴落とす以外の敵を排除する方法を知らないからじゃ!」

今度は千紫が呆れた。

「じゃあ何か?口だけで敵を停めて魅せろって言う気か?」

「その通りじゃ!」

「……はい?」

「あの頃のワシは非情で惨忍な侵略者だった!悪行への恐怖心を失い、地位や名声の為に人を辞めてしまったのじゃ!……その結果―――」

だが、老人の千紫への説教は、何時の間にか彼らの背後にいた2人組によって中断させられた。

「それをお前が言っても説得力が無いよ」

その途端、老人は観念したかの様に溜息を吐いた。

「どうやら……ワシの今日の自由時間はこれで終わりの様じゃな?」

千紫は訳が解らなかった。

「何だこれ?……どう言う意味だこの展開?」

それに答えたのは、老人を迎えに来た2人組だった。

「君?新聞やニュースを観た事が無いのかね?」

「ニュース!?」

「賄賂、地上げ、詐欺、選挙権買取、誘拐幇助……この罪人の前科を全て言ったら、文字通り日が暮れる」

老人の正体を聴かされた千紫は、恐る恐る老人の方を見た。

が、当の老人は観念したかの様に静かだった。

「そこの刑事の言う通りじゃよ。言ったろ?あの頃のワシは非情で惨忍な侵略者だったと。だから、お前さんがどうしても気になってしまったんじゃ。昔のワシと同じ過ちをしでかすんじゃないかと?……な」

千紫は完全に沈黙した。

「良いかお若いの。ワシの様な惨めな死に方をしたくなければ、恐怖心と自由をドブに捨てるな。地位と名声に自由と幸福を奪われるな!……良いな?」

老人はそれを最後に刑事達に連行されてしまった……

 

千紫は、自分の会社を発展させる為に悪の限りを尽くす侵略者になってしまった男の末路を、ただ力無く見送った……

「……じゃあ何か……自分の国の為に敵を倒す事が……悪行だって……言うのかよ……」

まるで非現実的反戦主義者の魂の叫びの様な末路を魅せ付けられた千紫は、ただ何も出来ずに力無く棒立ちになってしまった……

それでも、千紫はやらなきゃいけない事があるので宇宙港が有るアニアーラエントランスに向かった。

だが、住民達を居住区に推し戻そうとしている警備員達と多国籍連盟軍への誹謗中傷を続ける住民達との口論がまだ続いていた。

「早く出港しろー!多国籍連盟軍と心中するなんてまっぴらごめんだ!」

「せめて、せめて儂の孫達だけでも多国籍連盟軍がいない場所へ往く船に乗せてやっておくれぇー!あの子達は死ぬにはまだ若過ぎるぅー!」

「何でこのアニアーラに多国籍連盟軍が居るんだよ!?あいつらが居るから俺達はペペロニアン王国に殺されかけたんだろうが!」

「多国籍連盟軍なんか、この世からいなくなれえぇーーーーー!」

彼らの言葉は、自分の会社を発展させる為に悪の限りを尽くす侵略者になってしまった男の末路に完全に打ちのめされた千紫の怒りの炎に油を注いだ。

 

国防を目的とした軍事基地増設が悪行だと言うのか?

 

自国に仇なす敵兵を殺す事が悪行だと言うのか?

 

自国を護る為に核兵器の力を借りる事が悪行だと言うのか?

 

敵国と戦う為に新兵器を開発する事が悪行だと言うのか?

 

敵国の軍事基地を攻撃する事が悪行だと言うのか?

 

こいつらは誰だ。こいつらは何だ。恐怖心とはなんだ。反戦とはなんだ。俺のせいなのか。お前達のせいなのか。どうして、なぜ、何の為に、何から逃げ、何を思って、何の権利があって、何様の心算で、何故富国国防の為に戦う軍人達が悪と見做され、何故非現実的反戦は擁護され、何故非現実的反戦主義者の言い分が正解扱いされる。何かが間違ってる。何もかもが歪んでいる。何が、何が、何が、何が。

「でやあぁー!」

怒りと焦りがピークに達した千紫。何故かたまたま近くに有った日本刀で床を斬り裂く姿が痛ましい……




設定紹介

●メビウス
アインヘリヤルがかつて鉱山として利用した小惑星。
ペペロニアン王国が多国籍連盟軍に宣戦布告して以降、軍事基地として改造されてペペロニアン王国本国防衛の要となった。

●イ・マダ
年齢:33歳。性別:男性。
オッタル・ギッレの副官を務める生真面目なエリート将校。階級は准将。普段はポーカーフェイスで物静かだが、趣味の骨董の話になると興奮して話が長くなる。
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