機動戦士ガンダム 異世界から来た日本兵   作:モッチー7

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第6話:住民の護り方

逮捕されてジャービスと言う犯人の言い訳を論破するのが趣味の巡査部長の言い分に激怒しつつある千紫進(せんしすすむ)

それに対して多国籍連盟軍の将校は千紫が語る軍事の必要性を大袈裟に称賛した。

「素晴らしい。君は人類の敵から地球を護る為に命を賭けてくれるのか?」

対するジャービスは、舌打ちしながら将校を侮辱する。

「何が人類の敵だ。お前達が恩知らずな事をしたのが、そもそもの発端だろ?」

それを聞いた将校は笑い飛ばした。

「ハハハハ。君は警察の癖にアインヘリヤルの危険性がまるで解っていない様だね。調査不足だなぁー」

「調査不足はそっちだろ。誰が何の為にアインヘリヤルを作った?誰のお陰で俺達がアニアーラに暮らせる様になったと思ってんだ?」

将校に反論しようとするジャービスの言動に焦る千紫。

「ば、馬鹿!そのお方は、鬼畜ペペロニアン王国から地球を守ろうと頑張ってる多国籍連盟軍―――」

「ペペロニアン王国が鬼畜?正体を表したな?ロシアや中国に同情するフリをする偽日本人」

ジャービスが行った勘違いに絶句する千紫。

「……この俺が……偽日本人だと……」

蒼褪める千紫に対して、ジャービスは駄目押しの言葉を言い放った。

「ロシアや中国が何時日本を侵略するか判らないと不安がっておきながら、ロシアや中国から本土を奪ったペペロニアン王国を敵国だと罵る―――」

「違う!俺が言いたいのは―――」

「なにも違わないさ。お前はペペロニアン王国を宥める事を諦めたんだ。外交を捨てたんだよ」

「祖国を侵略した敵国と和平交渉をしろだと?お前はアホか!この世間知らず!」

対するジャービスは、千紫の屁理屈など聞く耳持たぬと言わんばかりに、最初にすべき質問を行った。

「で、お前の出身国と生年月日は?」

ジャービスに『偽日本人』と呼ばれた千紫は、その質問の意図に畏怖を感じた。

「……どう言う意味だよ……」

「文字通りの意味だ。俺はお前が日本人以外だと言う事しか知らん。お前がアニアーラ歴何年に生まれたのかも知らんし、お前が日本以外で生まれ育った事は解っているが、お前はどの国の人間かまでは知らん」

それを聞いた将校が呆れながら千紫を擁護した。

「酷い言い方だな?それじゃまるで、日本人がペペロニアン王国の危険性を訴えてはいけないと言っている様な―――」

が、ジャービスは聞く耳を持たない。

「貴様ら多国籍連盟軍の敵はどっちだ?ペペロニアンか?それともアインヘリヤルか?」

一方の将校は千紫と違って冷静かつ冷淡に答えた。

「両方だよ。我々多国籍連盟軍は、アインヘリヤルと言う悪しき人類の敵から地球を護る為に戦っている」

「……恩知らずが」

 

何時までもアインヘリヤルへの恩を仇で返す行為に関する会話を続けても堂々巡りだと感じたジャービスは、千紫への質問を変えた。

「で、君は大昔に起こってしまった『太平洋戦争』について―――」

その途端、千紫は自分が日本の8月を嫌う理由を思い出してしまった。

 

『軍隊は国を守るどころか、沖縄すら守れなかった。住民をスパイ扱いし、邪魔者として扱った。戦争の準備はしてはいけない。軍隊は住民を守るためではなく、戦うためにあるのだから』

『戦後生まれの人達が、戦争について正確に知る必要があります。一度始めたら戦争は止められない。大切なのは戦争を始めない事です』

『戦争で傷を負った広島の人達が生き延びた姿から、学ぶ事が多かった。平和とは日々、私達の努力で築かれていくものだと発信し続けたい』

『平和だと油断していたら、世の中は戦争をする方へ流れる。大人になっても、戦争には絶対反対だと叫び続けて欲しい。次は皆さんが平和を守っていって欲しい』

『演習は本番に直結する実戦訓練だ。民間地での訓練は住民を危険にさらす。中国から攻撃される理由がない中で、なぜ先に攻撃を準備するのか。アメリカの戦略に巻き込まれている』

『鹿児島県の場合は特に民間の施設を使っての訓練が多いと言う事だったので、民間の施設を使うと言う事はやっぱり民間が標的になると言う事にも繋がるのでこれは許す事は出来ないなと。1人も戦争による被害者が出ない様にお互い仲良く暮らせる世の中を作っていきたいなと言う事で取り組んでおります』

 

途端、千紫は怒り狂いながら叫んでいた。

「やめろおぉーーーーー!売国奴の様な鬼畜老害と同じ事を言うなあぁーーーーー!」

その途端、ジャービスは心底呆れた。

「正体を表したな?」

「それはこっちの台詞だ!中国軍の脅威を否定し、『攻撃される理由が無い』とする前提は現実を無視した危険な楽観論であり、国民の安全保障意識とかけ離れている!平時においての基地と戦力整備、各国との連携を高める訓練―――」

「そういう貴様こそ、勝利や支配の美しさに溺れただけの右派系活動家……いや、殺人犯予備軍だ。本気で住民を危険から守る気概が感じん」

「貴様も軍隊が国を護らないなどと言う―――」

「まるで、『反戦団体は自分の家のドアに鍵をかけずに開けっ放しにしている馬鹿』とでも言いたそうだな?どの道、強盗や猛獣に侵入されたら鍵もセキリュティも何の意味も無いぜ?……戦争に負けると言う事は、自宅に無数の強盗殺人鬼を招き入れるって事なんだよ」

見かねた将校は千紫に助け舟を出す。

「その危険な強盗や通り魔を一掃すれば良いだけの話ではないのか?」

ジャービスは頭を抱えた。

 

形勢不利を悟ったジャービスは、また話題を変えた。

「それに、軍事以外にも住民の役に立つ方法は、山ほど在るんだよ」

「軍事以外に国を守る方法だと?お前は馬鹿か?」

「人の話は正しく聴け。俺が言ったのは国家を護る方法じゃない。住民を喜ばせる方法だ。例えば、アーバンベア対策とか、強盗の発生を阻止する方法とか、危険運転撲滅とか、ペットの延命とか、親しい者の苦難や自殺を阻止するとか、物価安推進とか、安月給や高額重税から逃れる方法とか、育児苦を軽減する方法とかな」

千紫はジャービスの反戦・厭戦姿勢に心底呆れた。

「お前は……どうしてそこまでして、軍事の大切さを正しく理解する事を拒むと言う愚行を繰り返す?」

が、ジャービスは悪びれも無くしれっと言った。

「言葉通りさ。市民の本当の興味は『自分達の人生が安泰になるか否か』だけ。誰だって『納得出来ない無駄死に』は嫌なんだよ。だから、アンタの言う敵国の事情までは頭が回らないのさ」

そして、ジャービスは将校の方に敵意の視線を送りながら言い分を紡ぐ。

「ま、自国の政治の良し悪しや、自分の人生に直結する政治家達の善悪の判断基準には、物凄く興味が有り過ぎるが、ね!」

それはまるで、多国籍連盟軍に向かって言っている様に視えた。

「お前……何でそこまで多国籍連盟軍に対して恩を仇で返す事しかしないんだ」

「その答え……」

と言いかけて、自分が言いかけた答えに矛盾点が山ほどある事に気付いて、咄嗟に言い方を変えるジャービス。

「危ない危ない!危うく、多国籍連盟軍から恩を貰ったと勘違いする所だった!多国籍連盟軍から仇を貰った憶えは星の数ほどあるがな」

「ふざけるな!誰がペペロニアン王国の侵略行為から―――」

「それ、ペペロニアン王国軍の本土侵入を阻止出来なかったロシアや中国で暮らす住民の前で言えるのか?ペペロニアン王国に立て籠もられたロシア本土か中国本土に取り残された難民にとって、今の生活は『いつ自分を殺すか判らない強盗殺人鬼達』との同棲生活だぞ?そんな連中が、ペペロニアン王国に負けた多国籍連盟軍を信用すると、本気で思っているのか?」

千紫が言葉に詰まる。

「大事な事だからもう1度だけ言うぜ。戦争に負けると言う事は、自宅に無数の強盗殺人鬼共を招き入れるって事なんだよ。負ければ、どんな正論を並べたって賊軍扱いなんだよ」

「だからこそ―――」

「だからこそ、戦争の発生を防ぐ『原因療法』である『外交』が重要であって、敵国兵士を狩る為に国民の手を煩わせるだけの『対症療法』だけじゃ、戦争被害の根本的解決にはならない……だろ?」

 

ジャービスの言い分を散々聞かされた多国籍連盟軍将校であったが、だからと言ってここに来た理由は変わらない。

「……まあいい。どの道、彼の身柄を多国籍連盟軍が預かるのは、既に決定事項だからな」

「同気相求……いや、殺人犯同士贔屓か?」

「酷い言い方だね。この間も、人類の敵であるアインヘリヤル討伐の為に毎日大勢の兵隊たちが頑張っているのですぞ―――」

ジャービスが呆れる様に言う。

「そのアインヘリヤルVS多国籍連盟軍さえなければ、死なずに済んだ生命もいたでしょう。何より、自分達や自分達の家族を傷物にしようって言うんだから、多国籍連盟軍を嫌うデモ隊の発生は必然だよ」

とは言え、千紫が多国籍連盟軍に連行されるのは事実である。

「それより、千紫進君は、対ペペロニアン王国戦に弱腰な今の日本政府の性根を正したい……そうだね?」

ジャービスは、その質問の末路の恐ろしさに背中が凍結した。

「お前まさか―――」

が、ジャービスの(意地悪目的の)正論は千紫の耳にはもう届かない。

「そうだ!今の日本は、何時ペペロニアン王国からの侵略を受けてもおかしくない危険な状況だ!」

「いや、だから―――」

「だからこそ!間違った中立を捨て、戦う準備をしなければならない!」

「おい!戦争に負けるがどう言う意味か―――」

最早、ジャービスの反論は完全に無視された。

「だからこそ、日本が間違った中立を辞めて多国籍連盟軍に加盟す為の条件が3つある」

「……訊こうか?」

「おい!」

しかし、千紫と将校の間にはもう、正論満載の反論が入る余地は無かった。

「1つは、非核三原則と言う悪法から日本を解放し、日本の核武装を公式に許可して欲しい!」

「おいーーーーー!」

対する将校は少し困った。

「許可したいのは山々なんだが、アインヘリヤル共が撃ち込んだAAEを何とかしないといかんぞ」

が、千紫は自信満々に答えた。

「やり遂げる!核抑止力を失うと言う事は日本を失うと同じ事だからな!」

ジャービスは千紫の狂人度に圧倒されて閉口してしまった。

「2つ目は、原爆ドームの爆破解体を手伝え。アレがある限り、日本に核兵器が必要不可欠と言う真実を認めぬ狂った老害が跋扈してしまうからな」

「いいだろう。で、3つ目は?」

「日本に、特に沖縄に多国籍連盟軍の駐留基地を沢山造れ!それを日本を護る為の盾とする」

本来なら、「沖縄県を敵に回す気か」とツッコむジャービスであったが、千紫の狂気と狂度がジャービスの想定を大きく超えてしまっていたので、最早どうする事も出来ない。

一方の将校は、千紫の愛国心と戦闘意欲に感心した。

「いいだろう!その条件を全て呑もう!」

こうして……この異世界の日本国は、千紫進と言う危険人物の侵略を受け、坂を転がる玉の様に破滅へと墜ちて逝く事になるのであった……




設定紹介

●多国籍連盟軍
アインヘリヤルの駆除・掃討を目的として誕生した国連内の精鋭特殊部隊。アインヘリヤルに対する嫉妬姿勢、対抗意識が根強い。
核兵器によるアニアーラ住民全滅やプロパガンダ化を目的とした切り捨て・見殺しなど、非人道的な弾圧・戦略も多い事から、ペペロニアン王国や日本国残党などによる抵抗運動も強くなっている。

●ズローダローガ・ジストーキイ(злодорога・Жестокость)
年齢:52歳。性別:男性。
多国籍連盟軍少将。冷徹で非道な性格であり、目的達成の為なら蹂躙や虐殺も厭わない。
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