じ、次回こそは雑話に……!
『覚えの無い記憶』
―――夢を見る。夢を観る。夢を視る………。
『ちびっこなら!コテンパンに伸して、ぐっしゃぐしゃに踏んづけて!こう、ペラッペラにして―――』
『承知した……』
見たことのない神龍の目が光り輝き、大切な弟が縮む。そのすぐ近くには、ヨボヨボになっているものの見覚えのある小悪党たちが呆けている。
『あのドラゴンボールを一年以内に集めないと、願いを叶えた星が消滅してしまうんじゃ~!』
『えぇっ!?』
少し大人びた悟飯とビーデルさんと少し年を取ったチチさん、見覚えのない少女が界王様の言葉に驚いている。
また夢が続く、夢が広がる。星を渡り、銀河を渡り、宇宙を渡り……究極のドラゴンボールを集めていく。行く先々の星々に住む人々と心を交わし、時に拳を交わし、「ギル」と呼ばれた丸っこいロボと共に機械でできた惑星に辿り着き――
『これも、マシンミュータントなの……!?』
『これこそ最強のマシンミュータント……いや、ネオマシンミュータント、ベビーだ!!』
サイヤ人に対する凄まじい怨念を持つ、身の毛もよだつ怪物を見た。
『追憶』
「――――は、ああっ!?」
「あ、おじさん!お父さーん、海おじさんが起きたよー!」
「ほんとか悟天!っ兄ちゃん!よかった、ちゃんと目が覚めたみてぇだな……」
「ご、悟空……それに、他のみんなも……」
見覚えのある天井と腹が減ってくる匂いを感じながら飛び起きてしばしの間呆けていると、悟天が悟空と共に戻ってきた。その少し奥では、こちらを心配しながら夕食か何かの準備をしているみんなが見える。
先程まで見ていた夢がフラッシュバックし、自然に悟空の頭を撫でるようにして現実を確認する。……いつもの悟空だ。ちっちゃくなってないし、道着だっていつもの山吹色をした亀仙流のものだ。
「……今のは……」
「どうしたんだ兄ちゃん、急にオラの頭撫でだして。けどまぁ、急にドラゴンボールに追いかけまわされたと思ったらぶっ倒れちまったからな。混乱するのも仕方ねぇか」
「ッそうだ、あのドラゴンボールは!?究極のドラゴンボールって言われてたあれは……」
「貴様と衝突したかと思えば、影も跡形もなく無くなっていた。トランクスと悟天が一緒に探したが、地上にも神殿にもありはしなかった」
香ばしい匂いを伴いながらベジータがやってくる。料理を学んでいたことでもあったのか、エプロンを着けているけど特に違和感は無い。それよりも俺が驚いたのは……
「……ベジータの髭が無くなってる……!?」
「……貴様、ふざけてるのか。貴様の分の飯を抜いてやってもいいんだぞ」
「おいおいカイ、いきなり何言ってやがんだ?ベジータの髭なんて今まで見たことがあったかよ」
「サイヤ人の中でもナッパ程度しか髭は生やしていない。俺と親父ならまだわかるが、ベジータが髭を生やすイメージが持てないな……」
「……そう、だよな……」
夢との差異に狼狽えてしまうが、あの記憶がただの妄想とは思えなかった。妄想にしては少しばかり現実性が強かったし、最後に見たあの生命体……マシンミュータントって言われてたっけ?あれから感じた怨念は、今も思い出せるほどに強かった。妄想だからって、こんなにも頭に残るものなんかな……?
「とりあえず、さっさと飯食っちまおうぜ!オラ腹減っちまったぁ」
「今日は俺達が取った野菜と肉をふんだんに使われてるらしいからな、どんな飯が出るのかが楽しみだ」
「ちっ、貴様らのために作ったんじゃないからな。そこは履き違えるんじゃないぞ」
「わーってるよベジータ!ほらチビども、先に母ちゃん達の手伝いに行ってこい!」
「「「はーい」」」
「カイ!気分が悪ぃようだったら無理して食うんじゃねぇぞ!代わりに俺らが食ってやっからな!がはははは!」
「あ、それは許さんからな!?俺も腹減ってんだよ!」
どうやら神殿の外でBBQをしているみたいで、どんどん肉と野菜が鉄網に敷かれていく。これを逃したら他のやつらに先越されちまう!さっき見た夢は、今度ピッコロやデンデに相談することを決めながら、パンジやチチさん、ベジータと共に肉を焼いていくのだった。
(……またこれか。あのベビーって言われてたやつと出会ったあとなのかね?……?いやここ、地球じゃねぇか)
家に帰り、明日ピッコロ達に相談しようと眠りにつくと、またあの夢が始まった。暗い地球を映しているようで、悟空達の姿は無い。まだ宇宙にいるのかもしれない。今回の夢はさっきと違い、何故か吹き荒ぶ風を直に感じる。それに……
(歩ける。白昼夢ってやつか?夢ってことが分かってるからなんか?)
せっかく歩けるなら、と少し散歩してみる。特に違和感はない。本当に起きたままここにいる雰囲気すら感じる。
(あれ?悟飯とベジータと……あれ悟天か?デカくなってんなー……なんだ?)
もう少し先まで歩くと、見覚えのある三人が見えた。一回目で見た悟飯と髭が剃られたベジータ、背が悟飯並みに伸びている悟天らしき姿が確認できるも、何故か辺り一帯がボロボロだ。さらに言うなら、ベジータの様子が可笑しい。
(この、気は……ベビー!?なんでベジータから!?いや、ベジータだけじゃない……!!)
「とうとう手に入れたぞ……!」
飛び立っていく三人……いや、ベビーの姿を呆然と見ていると、遠くの方で何かが動くのが見えた。ここにベジータ達以外の誰かがいたのか?そう考えて確認して見ると、そこにいたのは……黒いジャージを着ている、俺だった。
(も、もう一人の俺がいる!?けど俺にこんな記憶は無いぞ!?)
「……悟空達が言ってたベビーは、生きていた……!!こ、このままじゃ他のみんなも……!!ッ!!」
すぐさま木陰を飛び出し、瞬間移動する俺。それに合わせるように光景が変わり、どこかの開けた場所となっていた。時間も経過しているようで、先程まで夜だったのに昼になっている。広場にはベビーらしき姿にブルマさん、トランクスや悟天に悟飯もいる。全員、どこか正気を失った目をしていた。ただ見ているだけで、凄まじい嫌悪感を感じる。
ふと不思議に思うことがあった。悟天や悟飯の姿は見えるのに、ナッパやラディッツ、パンジやリンの姿が見えない。悟飯たちのように洗脳されているのならば、ここにいるはずなのに。
「さぁ、邪魔な猿どもは片づけた!我が故郷、ツフル星を蘇らせるぞ!!」
辺り一帯でベビーを囲んでいた歓声を上げ、ベビーの名前を尊敬の念を込めたコールをし始めた。すでに地球は、ベビーの手に渡っていたのか……。
「ベビー様、こちらを……」
(デンデ……!それにあれは、究極ドラゴンボール!?あいつ、あれで願いを叶える気か!)
満足げに頷いたベビーが地面に置かれたドラゴンボールの前に立ち、神龍を呼び出そうとした瞬間だった。一筋の光がベビーに命中し、地面に置かれていたドラゴンボールを布で包んだかと思うとカプセルの中へと収納した。その仕立て人は、先程まで姿の見えなかった俺だった。
「ッ貴様ァッ!!あの禿頭と長髪のサル共と死んだはずだ、何故ここにいる!!!」
「ラディッツとナッパは、俺を生かすために死んだ!!だからここにいるだけだ!!お前にこのドラゴンボールは使わせない……!!一から探すんだな!」
「ッこの、野蛮な猿ごときがあああああああッッ!!!!」
「その猿に一杯食わされたお前は、それ以下ってことだ!!あばよ!!」
捨て台詞を吐き捨てて飛んだ場所はどこかの山奥のようで、人がいるような形跡はなかった。荒い息も気にせず、カプセルを取り出して中に入っているものを確認する。やはりというべきか究極ドラゴンボールがあったが、それだけじゃなく普通の
(この俺もずっと四星球を持ってたのか……)
「……ラディッツ、ナッパ……!くそ……っ」
握りしめた拳から血が垂れだしたとき、俺の脳内に何かの記憶が流れ込んだ。寄生を免れたパンとリンがどこかの星に避難した姿、ベビーによって倒されたピッコロと悟空、母さんを庇ったことで倒れた父さんと看病をする母さんと16号、ボロボロになった状態で覆いかぶさるラディッツとナッパの隙間から漏れ出す光、崩れたビル街と倒れ伏す二人……。
ただ、立ち尽くしてしまう。記憶の中にはいつの間にか生き返ったターレスとクウラにブロリーもいたが、三人とも正気じゃなかった。ブウとサタン、パンと呼ばれていた少女やラディッツやナッパに父さん母さん、悟空しか地球には味方がいない状況に言葉が出なかった。ベジータも悟飯も悟天も、みんなベビーに洗脳されていた。
(……薄々、考えていた……もしかしたら今見てる光景は全部、未来の話なんじゃないかって……だけどこれは、あんまりだろ……)
超サイヤ人3となった俺とラディッツ、ナッパの三人でもベビー達には勝てなかった。フュージョンしようにも相手はおらず、いたとしてもその相手が本当に味方かわからない。地獄としか形容しようがなかった。
だけど俺は諦めていなかった。握りしめた手を緩和させ、遠くの方から感じるどす黒い怨念のような気に目をやる。
「今は、身を隠すしかない。揃わないドラゴンボールを探させるので、いくら時間を稼げるか……」
(あっそうか。カプセルの中にドラゴンボールがあったら、レーダーでも見つけられない……)
静かに山の中へと姿を消していく俺の姿を見送ると、また景色が移り変わる。残骸となったビルがそこら中に転がり、何かしらの都が戦いの場となったことがわかる。
何かが地面へと落ちた。金色だった髪が解け、胸元からドラゴンボールが零れ落ちる。
「ようやく追い詰めたぞ、孫海……!どこまでもオレ様の神経を逆撫でしやがって……だが、律儀にドラゴンボールは持ってきたようだな……」
「は、ははは……お前への、情けだ……!がはっ!」
「情けだと……!?」
「お前の記憶を、逃げてる最中に読んだ……。サイヤ人が、お前の星を滅ぼしたのは事実……だからお前が俺達サイヤ人を恨むのは、至極当然だ。だが、関係のない地球の人々を寄生して支配しようとしたことは絶対に許さねぇ……!」
「戯言を……」
「そうさ、戯言さ……そして今の俺じゃ、お前は殺せない。だから決めたのさ……!例え負けたとしても、お前に一矢報いるために……!」
「……まさか、ドラゴンボールを使ってオレの故郷を蘇らせるために、ドラゴンボールを渡してきたというのか?俺に情けを掛けるために……!」
「はは、はははは……!言っただろ、サイヤ人を恨むのは仕方ないが、関係のない人々を巻き込んだことは許さねぇって……!お前が誰かに殺されるその時まで、お前の内には俺からの情けがあったという事実が残る……!それは今のお前にとって、恨んでいたサイヤ人から情けを掛けられるのはどれだけの屈辱だろうなぁ……!?」
「減らず口をォ……!」
「せ、精々、三日天下を楽しむがいい、さ……」
仰向けとなった俺が気絶すると、姿が大きく変わったベビーが止めを刺そうとする。だけど途中でやめたかと思えば、落ちていたドラゴンボールを拾って背を向ける。倒れる俺を一瞥して舌打ちすると、どこかへと飛んで行った。
超サイヤ人3のその先の姿となった悟空によってベビーが消し飛ばされ、地球へと帰還した後の景色に変化する。目の前では、地球消滅を避けることが出来たために究極ドラゴンボールを破壊しようとするピッコロを説得しようとする俺がいた。例え地球を消滅させてしまうものだとしても、ドラゴンボール自体に罪は無い。自分がドラゴンボールを守ることを約束するから破壊しないで欲しいとピッコロに頼み込んでいた。ベビーから究極ドラゴンボールを守り切っていた実績もあったため、ピッコロも渋々了承するのを見つつ、夢の中なのに考えに耽っていた。
(悟空のケツに尻尾の名残があんのか……じゃあ無理矢理引っ張ったらまた尻尾が生えんのかね?)
というのも夢の中の悟空が超サイヤ人4なる究極のサイヤ人へと至ったのは、尻尾を生えなおさせてから大猿になり、理性を保つことで超サイヤ人と大猿の力を融合させたのだとか。悟空はパンの呼ぶ声と地球を見たことできっかけを掴み、大猿の姿で理性を取り戻した。
この夢は何故なのかは知らないが、未来の地球を見せているのだと思う。ならば現実の悟空もまた、30年以上は先立って超サイヤ人4に至ることができるはずだ。悟空ならば、自力で理性を保てもするだろう。
(問題は、今の悟空に大猿の変身をする気があるかだな……でもまぁ、超サイヤ人3を超える超サイヤ人の究極系に至れるんだったら、嬉々としてなりそうでもあるか)
いつだったか、悟空は大猿になる気はもう無いと言っていたことがあるが、それは大猿になってしまえば理性が無くなってしまうというデメリットがあったからだ。だけどそれさえ克服できれば、新たなるステージに行けるとなると話は別だろう。
(俺はなるつもりだけど、悟飯とベジータはどうだろうな……二人とも尻尾は無いし、ドラゴンボール使うか尻尾を引っ張るかで無理矢理生やしちまうか?ラディッツ達は切ってないからいいや)
夢の中の俺は超サイヤ人4となった悟空に話を聞きつつ、超サイヤ人4に至るための修行を積んでいくみたいだ。天下一武道会もあるみたいだが、そちらは見送る様子。悟空をおじいちゃんと呼んでいたパンもそうだが、他の面々も同じ感じかね。……あぁいや、ピッコロは地獄で修行をするらしい。たまに地上に帰ってくるとか。
……というか、この夢はいつ終わんだよ。
『我が儘』
ヘルファイター17号ってなんだよ、なんで地獄で17号が作り直されてんだよ、なんで地獄で作ってんのに現実の17号を洗脳できてんだよ……。
しかも超17号とかいうやつとの戦いで俺も黄金の大猿になってるし……そのあとは悟空とパンジの声で苦しみだして、父さんの拳骨喰らったことで理性を保ち、超サイヤ人4に覚醒していた。そして悟空と共に超17号がクリリンと18号によって足止めされている隙を突き、肥大化した体をぶち抜いた。
そして死んでしまった17号を蘇らせるのとボロボロになった地球を元に戻すためにドラゴンボールを集めだしたみんな。だが何故かドラゴンボールに罅が入っており、見ているだけなのに嫌な予感を犇々と感じる。
その予感は正しかった。目の前で現れた神龍はいつもの神龍ではなく、黒く、青肌が目立つ邪悪な龍。ドラゴンボールに溜まっていたマイナスエネルギーというものが限界を迎え、邪悪龍という怪物になってしまったのだとか。
(しかもほっとけば宇宙が滅びるおまけつき。……現実でもむやみやたらに使えなくなったな。使うにしても何かしらの対策を立てねぇと)
あの世とこの世の境がまためちゃくちゃになったかと思えば、ドラゴンボールが敵になるっていう危機がずっと続いている。まだ悟空と俺だけしか超サイヤ人4になれていない現状、夢の中の俺たちは邪悪龍を倒すことでなんとかする方向性にまとまった。
そして紆余曲折ありながらも2(夢の俺が初手から界王拳超サイヤ人4で叩き潰した)、3(パンを不意打ちして人質にしようとしていたことに気づいた悟飯がブチギレた),5(ナッパ、ラディッツ、ベジータの三人衆が撃破)、6(悟空とパンが撃破)、7(俺、悟空、パン、父さん、ターレスの五人で撃破。俺に寄生しようとして自爆した)の邪悪龍が撃破され、四星龍と悟空がタイマンしているのが見える。向こう側は悟飯の頭の上にあったや俺が首から吊り下げていたことも覚えているらしく、俺の姿と共に来ていた悟飯の姿を見て懐かし気にしていた。
三星龍とのいざござがありつつ、悟空と四星龍の戦いが一段落すると四星龍は悟空との再戦を誓って飛び立とうとする……その瞬間、四星龍を一本の光が貫く。
「な、に……ッ」
「「四星龍!!」」
「今のは……!?」
再度放たれた一撃が空を駆け、悟空へと向かう。悟飯と俺が向かおうにも遠すぎて、遅すぎて。もう駄目だと思った時、四星龍が悟空へと飛び掛かったかと思うと、その体から血しぶきが舞い上がった。
「がはっ!?」
「四星龍、オメェ……!?」
「孫、悟空……お前と、決着を……つけたかった……」
息絶えた四星龍が四星球へと変わり、むなし気に地面を転がる。そして怒りを滲ませながら拳を握りこんだ悟空が雄たけびを上げて、景色が変わる。
景色が変わって以降は怒涛の展開だった。悟空と悟飯と俺の三人がかりで戦っても最後の邪悪龍、一星龍には勝てず、超サイヤ人4となったベジータが悟空と合体したことで誕生したゴジータが一星龍をボコボコにし、極まりすぎた力で制限時間が短くなって止めを刺しきれず。気でも狂ったのか悟空が四星球を飲み込んだかと思えば四星龍が復活したり、だけど一星龍が上手で四星龍は再び死んでしまって完全体となった一星龍がベジータを殺そうと襲い掛かって……。
そしてベジータを庇った俺と悟空が一星龍のマイナスエネルギーで作り出された一撃を浴びてしまい、地下深くに落ちていった。一星龍が地球全体にマイナスエネルギーを張り巡らしたことで光が入らず、周りは一切見えない闇の中だ。
超サイヤ人4が解けた悟空と俺が横たわっているが、どちらも死に体だ。悟空も、ほぼ死んでいる状態だった。するとうつぶせになっていた俺が動き出す。震える腕で胸元からカプセルを取り出したかと思うと、中から出てきたのはあの究極ドラゴンボールだった。そしてその内の四星球に手をやると、かすれた声で願いを込め始める。
「きゅ、究極ドラゴンボール……!地球の代わりに、俺を、俺を消してもいい……!だから悟空に、一星龍を倒すための時間をくれ……!!頼む……っ!」
願いが届いたのか、それとも応えようとしたのかはわからない。だけど究極ドラゴンボールが淡く光ったかと思うと、いつぞやに見た赤い雷が悟空に当たり、先程までの弱り具合が不気味なほどに消え去った。目を薄く開けた悟空がドラゴンボールに手を掛けて倒れ伏す俺に頷きかけ、両手を天に掲げる。頭上に光が灯ったかと思えばどんどん大きくなり……穴の縁で倒れ伏したベジータがそれを見つけて笑みを浮かべる。
「ふ、ふふふ……はははは……」
「なんだ、死を前にして気でも狂ったのか?」
「ははは……何を馬鹿なことを言ってやがるんだ……貴様の、負けだ……!!」
浮かび上がった悟空の頭上には、フリーザへと投げかけたもの大きさの元気玉が掲げられていた。
「き、貴様、生きていたのか……!?」
「……まだまだ死ねねぇなぁ……オメェを、やっつけるまではな……!!」
「ならば、もう一度死んでしまええええええ!!」
一星龍から何十個もの気弾が放たれ、悟空に当たるかと思われたその時、悟空と気弾の間に誰かが立ちふさがり、バリアーを張って気弾をすべて防いだ。煙が晴れたその先に立っていたのは、先程まで倒れていた筈の超サイヤ人4となった俺の姿だった。
「き、貴様まで……!?」
「弟とそのライバルが頑張ってんだ、兄貴が体張らなくてなんとする!!悟空、さっさと完成させちまえ!!」
「おう!よーし、宇宙のみんなー!オラに元気を分けてくれーッ!!」
悟空達が絆を結んだ宇宙中から元気が集められ、星一つ分の元気玉が作り出される。集められた元気は辺り一帯のマイナスエネルギーを霧散させ、地球を覆っていたマイナスエネルギーの雲すら消し去っていく。
「サンキュー、宇宙のみんな!―――行くぜ!!」
「ま、待て……!?」
「でりゃあああああああッッ!!!!」
放たれた元気玉は一星龍を消滅させ、地球を抉りながら空へと駆け上って爆散する。光が辺り一帯を覆いつくし、海が色鮮やかに煌めいた。
元気玉を放って地面に倒れた悟空のすぐそばには、罅も以上も無くなったドラゴンボールが七つ揃って転がっていた。
「おじいちゃーん!おじさーん!」
「カイ!カカロットは……!」
「すぐに起きるよ。ラディッツ、他のみんなは大丈夫そ?」
「あぁ、無事だ。そろそろ父さんが避難してた母さんたちを連れてこっちに来るはず……来たみたいだ」
「カイ!カカロットも、よかったぁ……!」
「海さん!」
「うおっとっと……」
パンジや母さんが俺達がいることに安心した様子で近寄って来たかと思うと、パンジが俺に突撃して静かになった。少しだけ怖さを感じる静けさを感じる。すると突然ドラゴンボールが光りだし、神龍が現れた。穴の方からも光が漏れ出し、赤い神龍が現れる。究極ドラゴンボールから現れる究極神龍だ。
『孫悟空、時間だ。孫海、お前もだ』
「あり?もうそんな時間か!兄ちゃん行こうぜ!」
「……あぁ、そうだな」
「待てカカロット、カイ!まだオレとの決着がついてないはず……っ?……お前ら……」
何かに気づいた様子のベジータ。その様子から母さん父さんも何かに気づいたように俺と悟空を見つめ、パンジは不安げにこちらを見ている。漏れ出たように「海、さん……?」と呼ぶ声が聞こえた。俺は悟ったような笑みでパンジを見つめ返し、別れの意味を込めたような仕草をする。どこか、謝るような感情も含めて。
「またどこかで会おうぜ、みんな」
悟空もまた「しーっ」と言いそうな仕草で返事をして神龍に飛び乗り、俺は究極神龍に飛び乗って空へと飛んで行った。地上では父さんやベジータ達がこちらを見上げていた。
悟空と俺が、ピッコロとクリリン、じっ様と別れて雲の上へと昇りゆく。何故か三人との話を聞くことが出来なかった。恐らく未来の俺を通じて夢という形で見ているから、三人と何を離したのかもわかる筈なのに、そこだけ遠巻きに見ているようだった。どこか、「ここは今の俺が聞くべきところじゃない」と言われているようで。
「兄ちゃん、今まであんがとな」
「……こちらこそ。今までありがとよ、悟空。お前がいたから俺も楽しかったし、みんなが楽しかったんだ」
「へへ、そう言われると嬉しくなっちまうな!……そんじゃ、またな兄ちゃん!」
「あぁ、またな」
連れ立つように飛んでいた神龍が離れ、俺に向かって手を振っていた悟空が小さくなっていく。ついには視界から消え、究極神龍と俺だけの世界となる。
「……なぁ神龍、俺の我が儘を聞いてくれねぇか」
神龍は何も答えない。静かに、悠々と空を飛んでいる。
「俺さ、本当に楽しかったんだ。悟空といて、みんなといて……最初は母さんが悟空を俺に託して、それに応えようとして、悟空がいつの間にか俺がいなくても大丈夫なようになってさ。それからパンジと出会って、ずっと悟空とベジータ達と強くなっていって……その全部が、楽しかったんだ。嫌なこともあったけどな」
神龍は答えない。
「俺が消えちまうこと、それに後悔は無い。……だけどさ、やっぱり悲しんでほしくないんだよな。ベジータとか、チチさんとか、パンジとかに。……それに傲慢かもしんないけど、悟空にももっともっと世界を旅してほしいんだ。もっと強くなって、もっといろんな人たちと出会ってさ」
神龍は答えない。
「だから、もしも違う未来を紡いでいる俺がいるなら……こんな未来もあったんだってことを知っててほしいんだ。それだけでいい……くだらない理由かもしんないけどな」
神龍は、何も答えなかった。
「折角なら神龍にも世界を見てほしいな~。俺ん中に入ったりしてさ!」
少しずつ俺の体が崩れていく。尻尾が無くなり、足も徐々に消えていく。不思議なことに、踏ん張るための足が無いのに体の場所は動いてない。
「ま、俺のただの我が儘でしかねぇからほぼ戯言だけどな!ははは!」
下半身が消え、腕も消えていく。
「……あぁ、やっぱり悟空達には悲しんでほしくないなぁ…………………バイバイ、みんな」
ついにすべてが消え、誰がいたかもわからなくなる。
不意に神龍が光ったように感じると、神龍もまた消えていく。静かに、朝焼けに見る夢のように、幻のように。
目が、覚めた。いつもの天井に、隣にはリンがいる。その向こうにはパンジがいた。二人を起こさないように体を起こして風を受けに外に出る。顔を出し始めた太陽の光が目に入り、ちょっと眩しく思う。
……夢を見た。違う世界の俺の視点だったり、俯瞰に近い視点だったりで違いはあったけど、一貫して誰かが紡いだ旅の途中を見ていた。聞くことができないところがあったり別れた悟空の最後が分からなかったりしたけど、唯一俺が消滅したことは確かだった。その最後は、幸せなものだったのだろうか。完全に俺とは言えないから断言はできない。
(でも……でも俺の我が儘は、叶えられたんだな。違う未来を紡ぐらしい俺に託す形で)
消えていった俺と神龍と共に空へと昇った悟空に思いをはせる。今もどこかで、旅をしているのだろうかと。
「海さーん?朝ごはんできたけどー……」
「ん、パンジも起きたか……なら、戻るとしようかね」
朝日に背を向けて家に戻る。挨拶を交わし合って飯を食べ、悟空達に会いに行こう。今俺がするべきことは、違う未来の悟空達のことを伝えることだろうから。
「お前はいつも変わんねぇよなぁ……海も武天老師様も変わんねぇ……。なんか、すっかり俺だけ年食っちまってさ。すっかり変わっちまった……」
「……なぁクリリン、いっちょやんねぇか?」
「おいおいよせよ、今更叶うわけねぇじゃねぇか~」
「いいからいいから!」
「……悟空、お前……」
「じっ様」
「海、まさかお主も……」
「……じっ様、今まで本当にありがとうございました。じい様にも、いつか伝えといてください。俺達は、じい様とじっ様に会えて、本当によかったって……」
「……そうか。元気でな、海、悟空……」
「……はい、武天老師様。あなたも、クリリンも、どうかお元気で」
「……あれ、悟空?おーい悟空!どこ行っちまったんだー!?おーい!」
「……お主たちと出会えたこと、一生忘れんぞ。
そして悟空よ、神龍に伝えておくれ。ドラゴンボールをありがとうとな……」