「兄ちゃんのこと?」
それは真夜中のことだった。
悟空はブルマとともに旅を続け、その道中でウーロンをこらしめヤムチャと戦うなど紆余曲折ありながらもドラゴンボールを6つ集めていった。
しかし同じくドラゴンボールを探していたピラフ一味につかまり、ドラゴンボールによって世界征服が成し遂げられんとしていた。
結局ウーロンがギャルのパンティを望んだことにより阻止されたが、怒り狂ったピラフにより鋼鉄でできた部屋に閉じ込められてしまった。
一緒に閉じ込められたヤムチャでも突破できない部屋に立ち往生したとき、ふとブルマが悟空に聞いた。
「そういえば、悟空のお兄さんってどんな人なの?わたしパパとママからしか聞いたことがないのよね」
ブルマと海は時間がすれ違うばかりであったことがなく、悟空と海の家に行ったときにはじめて彼を見た。
悟空と違い髪の毛は降りていて、キリッとしたときの悟空のような眼をしているがどこか優しさを感じ、背は悟空と同じぐらいで尻尾が生えていた。悟空から年齢を聞いたとき、自分よりも数歳年上なのはとてもびっくりした。
閉じ込められて暇になり、ふと頭をよぎったので聞いてみようと考えたのだ。
「悟空の兄?俺も初めて聞いたな」
「俺もあったことねえなぁ。なあ悟空、お前の兄ちゃんについて教えてくれよ!」
ヤムチャとウーロンも興味を示し、悟空に問いかける。悟空は少し考えたと思うと、口を開いた。
「オラ実は頭にでっかい怪我があってさ。それのせいで赤ちゃんの時のこと全然覚えてねえんだよなぁ。だけど兄ちゃんはそんときよりも前からずっとオラのこと見守ってくれてたんだよな」
「頭に怪我?ちょっと見せてくれない?」
「ほら、ここだよ。もう傷はふさがってるみてぇだけどな」
「……うわ、ほんとだおっきい傷。みんなに見てもらっていいかしら?」
「別に構わねぇけど」
悟空以外の全員がその傷を確認し、その話が本当であることを確認したところで悟空が続ける。
「オラの兄ちゃん、海っていうんだ。カイって言い方もあるらしいけど…兄ちゃんはそん時から全然変わんねえなぁ。いつもオラの組手相手になってくれるし、優しいんだ。じいちゃんが死んじまった時、オラのこと慰めてくれたし…。それに一緒に飯も作ってくれんだ!兄ちゃんの飯は本当にうめえんだぞ!」
「へ~。あんたがそんなに言うなら私も食べてみたいわね。ていうかカイと海って、どっちも同じ言い方じゃない」
「ボクも食べてみたいな~」
ご飯の話になり、全員の腹から音がなる。この話はやめにしよう。
「それにオラ、兄ちゃんに一回も勝ったことねえんだ。死んじゃったじいちゃんも兄ちゃんのことよく強くなったなぁてほめてたっけ。兄ちゃんがここに居たら、こんな壁と天井なんかすぐ壊しまうんだけどなぁ」
「悟空が一度も勝てたことがない!?」
「うそでしょ!?それに孫悟飯さんがそんなに褒めるなんて…」
「と、というかその兄ちゃん、この壁とか天井壊せんのかよ…?ば、バケモンじゃねえか…」
「世界は広いんだなぁ…」
「本当に強ぇんだぞ!オラがまだ5歳ぐらいの時、たおぱいぱい?ってやつのことボッコボコにしたって聞いたし。兄ちゃんだけずるいや!」
「「「「桃白白ぃぃ!!??」」」」
思わず悟空以外の全員が飛び上がる。その名はあまりにも有名な殺し屋の名前だった。
その殺し屋は非常に冷酷無比な性格で、少しでも怒らせれば次の瞬間には死んでいるといわれるほどの存在。それを悟空の兄はボコボコにした。話が本当なら、悟空の兄はどれだけ強いというのだろうか。
「お、おい悟空!本当にお前の兄貴は桃白白に勝ったのか!?嘘じゃないのか!?」
「嘘じゃねぇぞ?兄ちゃんあんとき珍しく怒ってたからちゃんと覚えてるもん。それにわざと殺さないでおいたとか言ってたしな。怒った兄ちゃん、ちょっとだけ怖かったっけ」
『……』
全員、沈黙。考えてみれば悟空が嘘をつくわけもないし、そうなればこの話はそのお兄さんが嘘をついていない限り本当のこととなる。
プーアルが空を仰ぎたくなり、天井をふとみるとそこには満月があった。
「満月だ。きれいだなぁ」
「プーアル…現実逃避がしたいのはわかるが、今は事実を受け止めるしかないんだ」
「ち、違いますよヤムチャ様!?ちょっとお空が見たくなって上をみたら満月があっただけなんですって!」
「それを現実逃避って言うんじゃないかしら…?って、ほんとだ。きれいな満月」
悟空はその話を聞いて、ふとあることを思い出す。あれはたしか、自分が記憶を失ってちょっとしたぐらいのことだ。
「そういえば、ここでも大猿の化け物ってでんのかな?オラ聞いたことねえんだよな」
「大猿の化け物?何よそれ?」
「昔兄ちゃんとじいちゃんが戦った化け物なんだって。じいちゃんは歯が立たなかったらしいけど、兄ちゃんがその化け物のこと退治したんだ。でも兄ちゃんも大けがしたらしいんだよな」
「あの武道の達人の孫悟飯と、お前の兄貴が…!?その怪物、ものすごいやつだな…」
「おう!木とか家とかバラバラにしちゃうんだぜ!」
「てことは、悟空も見たんだろ?どんなやつなんだ、そいつ?」
「オラ寝てたからわかんない」
「精神ずぶとすぎないか?家壊されてたのに寝てるって…」
そこで悟空はもうひとつ思い出す。そういえばそのあと、自身の兄とじいちゃんがなにかを言っていた気がする。
なんだったか…。
「そういえば兄ちゃんとじいちゃん、オラによく言ってったっけ。絶対に満月は見るなよ!って」
その瞬間、部屋にいた悟空以外の全員が悟空とは反対方向のかどっこに逃げ込む。
そしてすぐさま作戦会議。
あれ本当か?多分悟空のやつ…。いやそんな偶然…。見させりゃはっきりするんじゃ?いや私たちが危険でしょ…。
結果、悟空には見させないことになった。そして一つ質問する。そして確信する。
「ご、悟空?あんたのお兄さんが大けがしたとき、満月、みた?」
「オラか?うん。しょんべんしたくて外に出たとき、つい見ちゃった」
悟空はその兄を重症に追い込んだ、大猿の正体であると。
「ちょっと孫くん!絶対にもう満月を見ちゃだめよ!」
思わず口に出た言葉とともに、満月を指さしてしまう。それが致命的だった。
え?という言葉とともに悟空が満月を見てしまったのだ。
しかしブルマたちが慌てるも悟空は平気そうだった。
「…お、脅かしやがって…。なんともないじゃないか」
「そらそうでしょ!そんな偶然あるわけないじゃない」
「???おめぇらなに言ってんだ―――ッ!!!」
ドクン、ドクン
「ちょ、ちょっと孫くん!わるいジョーダンはやめてよ!」
ドクン、ドクン!
「い、いや、冗談じゃなさそうだ…!」
ドクン、ドクン!
――――ガオオォォォォァアアァアアア!!!
大猿が、目覚めた。
◇◆◇◆◇
がばりと起き上がり、ハンモックから降りる。
じっ様と悟空が寝ていたベッドは空いているが、キレイなままの状態だ。
ふとそちら側を一瞥し、すぐに着替える。
胸騒ぎがしていた。あの夜の森の中、感じていた胸騒ぎが。
「悟空……」
ある一定の方向から聞こえてくるのは、聞き覚えがありすぎる雄たけび。修行をしているうちに小さな音も聞き取れるようになり、それに気づいた。
畑の野菜はすでに収穫しきっており、ホイポイカプセルの中にしまってある。お金や大切なものもすでに収納済みだ。すぐに、向かうことができる。
「――――ッ!!」
家を飛び出し、一気に加速する。木々を縫うようにして走り抜け、崖を飛び越えた瞬間に空へと駆け抜ける。
そのスピードはまさにちいさな戦闘機。愛する弟のもとに向かうための超特急だった。
特殊タグ初めて使ったんですが、これであってるんですかね…?