ドラゴンボール ~もう一人の兄~   作:龍玉

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孫悟飯という恩人

 

 

 

相手の選手が占いババ様に頼んで、戦う場所を中から外に変更した。

 

 

 その後ろを俺達は並んで進んでいるのだけど、みんなは思いも思いに喋っているなか、俺だけずっと黙ったままだ。

 

それを不思議にプーアルやウパが見ている。

 

 

「海さん?どうしたんですか、ずっと黙っちゃったままですけど…」

 

「どうしたの、いつもはもうちょっとみんなと喋ってる気がするけど…あ!僕のこと触る?よくワシャワシャしてるし」

 

 

「……あぁ、うん。また今度お願い…」

 

 

黙る理由は、最後の選手のことでだ。

 

あの服、声、気配。すべて、すべてあの時の悟飯さんだ。

 

 でも…悟飯さんは、もう亡くなっている。今でもお墓へ行くから忘れることもない。それに悟飯さんの肉体はすでに火葬したから、間違っても実体は存在しない。でも足音はちゃんと聞こえる…。

 

…ドラゴンボールか?ここ最近ではなくて、悟飯さんが亡くなって、ブルマさん達と出会う間なら、叶えることはできると思う。けどな…。

 

 

「ブルマさんブルマさん」

 

 

「ん?どうしたの海くん」

 

 

「ドラゴンボールで死者蘇生をするときって、すでに火葬した人とかでもできるんですかね」

 

 

「火葬、てことはもう肉体がない人よね?うーん…。難しいんじゃないかしら。生き返る肉体がなかったら、蘇っても骨だけ人間とかになると思うし」

 

 

「……ですよね」

 

 

やっぱり、じっ様じゃ、ないのかな…。

 

 

「悟空、ちょっといいか?」

 

 

「?どうしたの兄ちゃん。腹へったんか?」

 

 

「いや全然。そうじゃなくてさ、悟空はあの人のこと、どう思う?」

 

 

「あいつのこと?うーん…なんか、いい匂いがする!なんていうか、嬉しい匂いだ」

 

 

「悟空お前、さっきと同じこと言ってるけど一体なんなんだ?その嬉しい匂いって」

 

 

「嬉しい匂いは嬉しい匂いだ」

 

 

じゃあやっぱり、あの人は…でも確証が、持てない。

 

 

 

「ババ様」

 

 

「む?なんじゃ」

 

 

「いえ、お礼をと思いまして。まさかこのような機会を戴けるとは思っておりませんじゃ」

 

 

「ほっほっほ!それはこっちのセリフじゃ。お前さんからよく聞いておった者たちの戦いが見れるのじゃからのう」

 

 

「ほっほっほ。…自慢の孫たちですじゃ」

 

 

 

…あ、ヤッベ。集中しすぎて何言ってたか聞いてなかった。

………よし。まだ確信には至ってないけど、悟空にこれだけは言っておこう。

 

 

 

「悟空」

 

「ん?なぁに兄ちゃん」

 

 

「あの人が誰か、今も分かんない…だけど悟空。この試合、めいいっぱい楽しんでこい!多分、二度とない機会だ」

 

 

「??…わかった!」

 

 

 

もしも、もしも俺の疑念が正しかったら…ちょっとだけ、悟空に嫉妬してしまうな。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

戦いが始まった。これに勝てば、ドラゴンボールの在り処を教えて貰える。

 

 

 だけど最後の人なだけあって、今までの人とは練度がまるで違う。悟空のスピードは桃白白でも追いつくか否かってものなのに、悟空のアッパーカットを避けてそのまま地面に投げ倒した。まるで最初から知ってたみたいに。

 悟空の飛び蹴りも掴んで投げ飛ばして、地面スレスレを飛んで悟空を吹っ飛ばした。でも悟空も受け身をとり、同じ飛び方同じ飛び蹴りでお返しをする。

 

…強い。

 

 

「むぅ…あやつ、悟空といい勝負をしておる。わしですら悟空の動きを捉えることはできんというのに…」

 

 

「まるで、悟空の動きを最初から知ってたみたいですね…」

 

 

「…?海くん?」

 

 

「…………」

 

 

 相手の動きを見る。意識だけを、彼にのみ集中させる。

 一挙一投足を見逃さないように。それが示すものを、頭で組み合わせていくために。

 

 

 

(こいつ、さっき戦ったやつや兄ちゃんが戦ったのとは全然違う…!気配も、動きも…。でもなんか、いつもより楽しいや…!)

 

 

 

(むぅ…やはり強くなっておるのう。たたき落として渾身の飛び蹴りを喰らわしたというのに、跳ね返されてしもうた。ならば…)

 

 

 

「ほっほっほ。やはり動きの癖までは直せなんだ。お前さんも、海ものう」

 

 

「え…?オラと兄ちゃんのこと、知ってんのか?」

 

 

「当たり前じゃろう。忘れるわけがないわい…。さぁて、ちょっとだけお前さん達のこと、驚かしてやろうかの?」

 

 

「え、その構え…!?」

 

 

「か…め…は…め…!」

 

 

「なんじゃと!?」

 

「ま、まさか…!」

 

「そんな、嘘だろ!?」

 

「……ッ!!!」

 

 

 

「撃たせるかぁぁぁ!!って、え!?」

 

 

「ほっほっほ。残像じゃよ」

 

 

「まずい!?」

 

 

「ヤッベッ!!?」

 

 

 

「もう遅いわい!波ァァァァァァ!!

 

 

 

「ッ!かめはめ、波ァァァ!!」

 

 

 

 悟空と相手のかめはめ波が衝突し、拮抗する。だけど悟空咄嗟のかめはめ波だから、少し不利だ。

 

それに、あの技は……!

 

 

 ギリギリ持ち直した悟空のかめはめ波と相手のかめはめ波が限界を迎え、中心で爆発を起こす。

 

瞬間、爆炎が2人を包み込み―――悟空の驚く声が聞こえた。

 

 

「ほうれ!!」

 

 

「わぁぁぁぁ!?」

 

 

「ご、悟空の尻尾を掴んで振り回してやがる!?」

 

「まずい!悟空は尻尾を捕まれると…!」

 

 

「う、うへぇ…!?お、オラまだ尻尾は弱ぇんだよ〜!?」

 

 

「ほっほっほ。海と一緒に頑張ってるようじゃが、まだまだ克服には遠いようじゃの!そぉれ!!大回転じゃ!!」

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「ご、悟空のやつ、尻尾が弱点なのか!?」

 

「あぁ、俺達と牛魔王の娘、あとは海ぐらいしか知らないと思ってたけど…なぁ海?……海?」

 

 

「海くん?どうしたの?」

 

 

「……すみません、今はちょっと、喋れないです…」

 

 

「―――そうか、そういうことか!ふっふっふ、あやつは最初から知っておったのだ。悟空の弱点も、どのように動くかもの」

 

 

「えっ!?」

「なんですって!?」

 

 

「海の反応で確信できたわい。あやつは悟空と海の死んだ祖父、孫悟飯じゃ!!」

 

 

「…孫、悟飯。亀仙人さまの、一番弟子の…!」

 

「海くんが喋れないのは、そういうことだったのね…」

 

 

「ほっほっほ!はようなんとかせんと、このまま投げ飛ばしてしまうぞ!」

 

「うへぇうへぇうへぇ…!?」

 

 

 

―――ぶちっ!!

 

 

「「「「「あっ」」」」」

 

「ありゃ…!?」

 

「いってえぇぇぇ!?」

 

 

…今なんかブチッていった?

 

 

 思わず顔を上げると、尻尾が千切れてひぃーひぃー言ってる悟空と、尻尾を握りしめてポカンとしてる相手――悟飯のじっ様がいた。

 

あちゃぁ…。

 

 

「や、やってくれたなぁ…!!今度はオラの番だ!!」

 

 

「…ほっほっほ。いや、わしの降参じゃ」

 

「へっ?」

 

 

「大きくなったの、悟空よ。お前さんとこうして戦うと、お前さんと海が作ってくれた誕生日ケーキの味を今でも思い出せるわい。あのケーキは本当に美味かったのう」

 

 

「……ま、まさか…!?」

 

 

 

「そうじゃよ悟空。わしじゃよ、孫悟飯じゃよ」

 

 

 

 狐面を外し、その素顔が見える。その顔は、小さい頃にいつも見ていた悟飯のじっ様の顔だった。

 

…少し、前が見えない。何故か滲んで見える。俺ってこんなに弱かったかなぁ…?

 

 

「じ、じいちゃん…!じいちゃーん!!」

 

 

「わったった!?これ、急に顔に飛びつくな!倒れてしまったらどうするんじゃ!」

 

「うえぇぇん…!!」

 

「これこれ、泣くやつがおるか」

 

 

 

悟空が、飛びつくのが見える。とても、嬉しいそうだった。

 

 

「ほれ、海」

 

 

「えっ」

 

 

「どうしたんじゃ。せっかく会えたんじゃ、もっと近くにきてお前さんたちの話を聞かせておくれ」

 

 

「………ぅん」

 

 

「ほっほっほ…よく頑張ったのう。悟空がこんなに元気なのも、お前さんがいたおかげじゃ」

 

 

「そんなこと、ないです…。じっ様がいてくれなかったら、俺達…おれたち…!!ぐすっ」

 

 

 

 

「あらら、孫くんたちが泣くなんて…」

 

 

「無理もないさ。悟空はまだまだ子供だし、海もあの人が亡くなってからずっと一人で悟空を見守ってたんだしな。我慢してた部分も我慢できなくなるさ」

 

 

「よかったですね、悟空さん、海さん…」

 

 

 

 

 泣き止むまで、じっ様の服にしがみついていた。なんとか喋れるようになって、悟空と一緒に色んな話をした。

 墓の前ではなく、今度は、じっ様本人と。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 じっ様と色んな話をした。野菜が色んな人に食べてもらえたことや、悟空達がドラゴンボールを探しに行ったり、桃白白と戦ったり、天下一武道会に今度挑戦しようとすることになったり…。本当に、色んな話をした。

 

 じっ様の家で料理するためちょっと改築したことを話すと、笑って許してくれた。今は俺達が使ってる家なのだから、好きに使えばいいって。

 

 じっ様がこの場にいれる理由は、占いババ様のおかげらしい。もともとじっ様はアンニンという人に雇われていたらしいのだが、占いババ様に会うことがあり、その度に俺達の話をしていたとのこと。それで占いババ様が興味をもち、俺達が来るのがわかったのでじっ様を5人目の選手として呼んだとのこと。

 

 余談だが、俺や悟空がたまに供えている野菜や料理はじっ様のもとに届いてるらしく、じっ様の上司の人と一緒に食べてくれてるらしい。上司の人にはかなり人気らしいから、また送ってほしいと言われた。やったぜ、今度からもうちょっと多めに送ろっと!

 

 それと悟空や俺みたいに尻尾が生えた5人組がこの前訪ねてきたらしく、昔の俺や赤ん坊のカカロットの話をして帰ったらしい。獄卒として働いてるらしく、地獄から来てた人達とのこと。また、その手には俺が作った料理を持っていたらしい。

…そっか、トーマさん達にも届いてるのか。よかった。あと獄卒って本当にいるんだな。

 

 でもそこに悟空似の人や、猫みたいな目をした人はいなかったらしい。…なんで父さん達は居ないんだ?

 

 

「では、わしはあの世に帰ろうと思います。悟空と海の元気な様子も見れたので、満足できましたのじゃ」

 

 

「そっか、悟飯さんはあの世に帰らないといけないのか」

 

「そうか…悟飯よ、あの世でも元気にな。お前さんに元気に、というのもおかしいかもしれんがな」

 

 

「バイバイじいちゃん!オラ、もっと強くなってじいちゃんに報告するよ!会えて嬉しかった!」

 

「じっ様、俺ももっといろんな人に会って、もっと見識を深めようと思います。会えて、そしてこうやってもう一度話ができて、本当に嬉しかったです。…また、あの世で!」

 

 

「ほっほっほ!うむ、またあの世でな」

 

 

 

 じっ様がみんなに一礼して、フッと消える。あの世に帰ったのだろう。

……あぁ、嬉しいなぁ…。もう二度と会えないと、話せないと思ってたのに、こんなにも笑って驚いて喋れるなんて…!

 今なら桃白白にも一人で勝てそうだ!

 

 

「さて、約束通りドラゴンボールを探そうかね。ほいほいほいのほいさっさーっ。…ふむ?動いてるようじゃの?こっちの方向の200キロ先から近づいておるの」

 

 

「動いてるって?それにこれは、車じゃないか」

 

 

「嘘でしょ!?ドラゴンレーダーに映らないなんて…」

 

「ババ様、もう少し運転席を拡大してくれませんか?」

 

「うむ、あいわかった。どれどれ…なんじゃこやつら?」

 

「「「「「ピラフ一味だ!」」」」」

 

はーん…アイツらか。この前悟空達のことを殺そうとした…。

 

「悟空?」

 

「ん?なんだ兄ちゃん、オラあいつらのとこに行こうと思ってんだけど…わっ!?」

 

 

?なんで驚くんだよ?

 

 

「あぁいや、ちょっとお礼参りに行ってくるから待っといてほしいんだけど、いいか?」

 

 

「わ、わかった!だから兄ちゃん、怖い顔やめてくれよ!」

 

 

…あ、顔が強張ってたのか。失敗失敗…てかみんなも一塊になってるし、そんなに怖かったのかな。

 まぁ、大丈夫かな。さぁて、行くとしようかな…。

 

 

 

 





カイは悟空のように純粋で優しいんですが、身内や仲間に手を出されるのが逆鱗となっています。バーダックとギネの死が恐らく他殺によるものだと見抜いているので、尚の事そこには神経質です。
理性が飛ぶくらいキレるまでいかない場合は、バーダック似の笑う顔をしながら静かにキレるため、見た人はかなり怖がります。
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