ドラゴンボール ~もう一人の兄~   作:龍玉

49 / 104
時間稼ぎ

 

 

 悟空から地面に下ろされ、ともにフリーザへ目をやる。

 俺と悟空は同等程度の実力まで上がっている。だから片方が10倍で挑んでもさっきの二の舞となるのが目に見えている。

 

……悟空の言う通り、勝てる気がしない。こんなやつが不老不死を望んでたとか、ぞっとしない話だな…。もうナメック星のドラゴンボールが使えなくなっててよかった、かな。

 

 

「兄ちゃん、あいつは今で50%しか使ってないらしいんだ。オラはハッタリだって思いてぇけど…」

 

「…こんなときに嘘をつくようなやつとは思えん。つまり、本当に今で50%なんだろうな…」

 

「へへへ…。わ、笑えねぇ話だな…」

 

 

 どこか嫌そうに悟空が笑う。それに釣られて、俺も思わず笑ってしまう。だけど乾いた笑いしか出なかった。

 

…20倍で突撃するか?いやそれで痛手を与えられなかったらどうする…。かといって10倍で話にならないんだ、二人で20倍で突っ込む方がまだマシか…!

 

「なぁ兄ちゃん、まだ動けっか?」

 

「あ?そりゃあ俺はただ吹っ飛んじまっただけだし…」

 

「ならさ、ちょっと時間稼ぎを頼みたいんだ。…あいつに、元気玉をぶつける…!」

 

「!!そうか、周りの星の元気をもらえればもしかしたら行けるかも…!」

 

 

「どうしたんだい?二人で遺言でも交わしてたのかな」

 

 

 いける、もし元気玉を最大まで溜めてあいつに直撃させられれば、ワンチャンだけれどあいつを倒せる!

 だったら出し惜しみなんてしてられない…!最初っから20倍だ!

 

 

「違うね、今度は俺の番ってだけだ!界王拳ッ!!20倍だあああぁぁぁぁッ!!」

 

「!?急に圧力が、増した…!?」

 

「頼んだぞ、兄ちゃん…!」

 

 

 悟空が両手を上にあげる直前に飛び出し、フリーザの頬を殴り飛ばす。吹き飛んだフリーザに追いつき、今度は両足で上空に弾き飛ばす。三度目は気合を込めた圧力でフリーザを吹き飛ばして距離を取り、片手に全力で気を集めていく。

 

少しでもこっちに集中させるなら、これはあいつによく効くだろ…!

 

 

「タイラントッ!!ランサアアアアァァァ!!!」

 

「その技は―――!?」

 

 

 片手から放った気功波がフリーザに直撃して大爆発を起こす。着弾する直前、あいつ片手で防いでやがったか!?

 やっぱりハッタリなんかじゃなかったんだ…!二人で突撃して無駄に体力を使わなくてよかったと思うべきか…。

 

 爆炎が晴れ、その中から片手を突き出したフリーザが現れる。予想通り、大きなダメージを負っていない。

 

「ッッ貴ッ様ァッ…!つくづくあのサイヤ人を想起させる野郎だ!!」

 

「へへへ…当たり前だろ。俺はそのサイヤ人、バーダックの息子だ!!どうした、今まで反抗してくるやつが居なかったから苛立ちが止まらねぇか!?」

 

「――殺してやるぞ、このゴミムシが!!!」

 

 

 さっきまで悟空と戦っていた時とは比べ物にもならないスピードでフリーザが突っ込んでくる。目で追うのはさっきの時点で諦め、今はただ予測だけでフリーザの一撃一撃を防ぐ。

 

 しかしただの突進だけで防御を崩され、頭上からの足の振り下ろしをもろに喰らう。たった一撃を喰らっただけで界王拳が解けてしまい、叩きつけられた衝撃で意識が朦朧とする。

 

「ぐ、あ…」

 

「どうやらドーピングのような技でパワーを増しているようだね…。やはりたかがサイヤ人といえど、生かしておくわけにはいかない…。死ね――ぐう!?」

 

 

「フリーザー!!!」

 

「ッ!!ベジータ、ナッパにピッコロ…!?」

 

 

 拳が振り下ろされる瞬間、フリーザめがけてピッコロたちの気功波が放たれた。三発まとめてフリーザに命中し、吹っ飛んでいく。

 

俺のそばに三人が降り立ち、いつでも防御できるように構えを取っている。

 

 

「カイ!貴様、何か策があってフリーザに突撃したんだろ!何を企んでる!!」

 

「ッ!今は、とにかく時間を稼いでくれ!!ワンチャンだけど、フリーザを倒せるかもしれない!」

 

「悟飯たちが言っていたのはそれか。だが俺達では今の不意打ちが限界だ…!」

 

「くそったれ…本気の一撃だってのに、効いてる気がしねぇぜ…」

 

 何とか立ちあがり、界王拳を練り直す。悟空は…もう元気玉自体はできてるのか!だけど、まだ足りてないのか…!?

 

「……貴様らハエどもが、まだいたのか…」

 

「ッッ!!来るぞ!!」

 

「「「ッ!!」」」

 

 

「死ねッッ!!!」

 

 

 暴力的な圧力とともに風が吹き荒れ、凄まじいスピードでナッパが蹴り飛ばされる。すぐさま拳を叩き込もうとするベジータを尻尾の一突きで捌き、ぎりぎり放つことのできたピッコロの魔貫光殺砲を腕の一振りでピッコロもろとも吹き飛ばす。

 そしてもう一度放ったタイラントランサーを煩わしそうに受け止め、逆流させるほどのエネルギーで俺を吹き飛ばした。

 界王拳の反動もあり、俺はもうまともに動くことができなくなった。

 

 止めを刺そうと浮かび上がり、その指にどす黒いエネルギー球を作り出したフリーザだったが、狙撃でもしたのかと思う距離から気弾がフリーザを襲う。

 

クリリンと悟飯だ…!

 

「―――ハエどもが、まったく人をイライラさせるのが上手いやつらだ…。ッッ!!もうこんな星はいらん!!貴様ら諸共、宇宙の藻屑になるがいいッ!!!」

 

 

 青筋を立ててブチぎれるフリーザ。だけど、もう俺たちがしたかったことは済んでいる…!

 

 

「よしッ!!できたぞ!!!」

 

 

「なっ!?なんだあれは、太陽…!?いや違うッそうか貴様ら、このために…!」

 

「やれーーー!!!」

 

 

 

「行ッけええええぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

「ッ伏せろー!!」

 

 地球の時とは比べ物にならない大きさの元気玉がフリーザめがけて振り下ろされ、押し返そうとフリーザが踏ん張っているが、それでも元気玉はナメック星めがけて落ち続け―――着弾する。

 

 

「こ、こんなものッ!こんなもので、このフリーザがぁぁぁぁ――――!!」

 

 

 踏ん張ることのできない衝撃が全員を襲うのがわかる。俺をナッパがベジータごと伏せさせたおかげで、吹き飛ぶことはなかった。

 

 

そして目の前を閃光が覆いつくし―――静けさが、耳を支配した。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

(がぼぼぼぼ、ごぶっ)

 

 

 元気玉が海面に大きな穴を作ったことで、海流が生まれて俺たちを巻き込んだ。今はその海流に流されかけたところをナッパが捕まえてくれて、陸に上がるところだ。

 さっきからやばいときにナッパに助けてもらってるな…。

 

「おいおい、大丈夫かカイ!」

 

「っぶはっ!?さ、サンキューナッパ…」

 

「げほっげほっ…お、俺がナッパに助けられるとは…無様だ…」

 

 

無様とか言ってる場合じゃなかったろベジータ…。全員すでにボロボロなんだしさ…。

 

「海ー!」

「海おじさーん!!」

 

「あぁ、悟飯、クリリン…」

 

 悟空に肩を貸して飛んでくるピッコロとともに、悟飯とクリリンがそばに降り立ち、俺の肩を持ってくれる。助かる~…。

 

「さぁ、帰るか。オラの乗ってきた宇宙船なら5日で帰れる。ベジータ達も一緒に来いよ!」

 

「ちっ…俺は貴様らの厄介にはならん」

 

「そう言うなよベジータ、俺は地球に行くぜ」

 

「ナッパ貴様、毒されたか…!」

 

「とにかく、一旦全員で帰るか…ブルマさんのこと忘れてるけど」

 

「あっ…!そうだ、ブルマさんのこと忘れてた!」

 

「そ、そういやブルマも来てたっけ…」

 

 全員から戦うときのような空気が薄れ、宇宙船に向かおうとする。といっても全員ボロボロだからまともに飛ぶことできんけど…。

 

 

「この星も、ボロボロになってしまった。最長老の座を誰かに託し、ポルンガにもとに戻してもらおう…」

 

「あ、そっか。ピッコロが最長老様と同化したからポルンガが使えないのか…」

 

「そ、そうだったのか!?じゃあ地球のドラゴンボールじゃないとすぐにはみんなを生き返らせられないのか…」

 

 そういうことになる。まぁでもこの会話は界王様に聞こえてるだろうから、向こうが何とかしてくれるだろ。

 

「はぁー。仇もとれたし、やっと地球に帰れる。濃い一日だったな…」

 

「そうだ、な…………あ…」

 

「?クリリン?」

 

「――――ふ、フリーザ…」

 

「………は?」

 

 

クリリンが震えた声とともに、少し先の岩山を指さす。

 

 

 

 

 

そこには、ボロボロになった―――

 

 

 

「ふ、フリーザだああああああ!!!」

 

 

 

 意識がそちらに向いた瞬間、ピッコロに光線が放たれる。胸を貫かれて倒れる姿が、見えた。

 そしてナッパとベジータめがけて紫の光が瞬いたと思うと、二人が爆風とともに吹き飛び海に消えた。

 

「ぴ、ピッコロさん…!?」

 

「ナッパ!!ベジータぁ!!」

 

 

「今のは…死ぬかと思った…。このフリーザ様がだぞ…」

 

 

「逃げろオメェ達!!早くブルマのもとに逃げて、オラたちの乗ってきた宇宙船で地球に行け!!」

 

「な、なに言ってんだよ悟空…!そんなこと言ったって…!」

 

「いいから早く逃げろ!邪魔なんだよ、みんなそろって死にたいのか!!!」

 

 うろたえるクリリンめがけて悟空と叫ぶけど、まだ整理がついてないのかクリリンも悟飯も逃げようとしない…!もう俺と悟空で戦いたくても、周りを気にして戦う余裕は無いんだよ!

 

「逃がすと思ってるのか…?一匹残らず生かしては帰さんぞ…!!ダメージを喰らっていても貴様らごとき始末するのはわけではないぞ!!」

 

「ッ!クリリン!!」

 

「うあっ!?」

 

 フリーザから放たれた一粒の光をクリリンを殴り飛ばし、ギリギリで回避する。標的を失った光が海の向こうで爆発を起こすのが見えた。

 あれを喰らってたら、内側から爆散してたぞ…!

 

「ちっ。サイヤ人が、余計なことを…!」

 

「あ、あぁ……」

 

「ちくしょう…!兄ちゃん行けるか!?」

 

「………」

 

「…兄ちゃん?」

 

力加減ができず、クリリンが吹っ飛んで気絶するのを一瞥し、フリーザを見る。

 

 お、俺と悟空で、あいつにとどめを刺せるとは、思えない。もう俺も悟空もボロボロだ。20倍界王拳で突っ込んでもまともな戦い方はできないだろうな…。

 このままじゃ悟飯もクリリンも、悟空も俺も無駄死にとなるだろう。

 

……。なら、少しでも抗うか…。

 

 

「悟空」

 

「な、なんだ?」

 

「あとは、任せた」

 

「っ!?に、兄ちゃん何する気だ!!」

 

 

 悟空に一言残し、フリーザに突撃する。界王拳を使う俺を止めようとする悟空を引き離し、少しでも遠くに行こうとフリーザに抱き着く。

 

 俺から離れようとするフリーザのパンチやキックも無理やり耐え、空へと向かう。何度も叩き込まれる拳や足が体にめり込み、口から何度も息が漏れた。だけど、絶対に離さない!

 

 俺がすることは、ただ一つ。フリーザに界王拳で突っ込み、自爆する。体中の気を無理やり増幅させることで、増幅する気に耐え切れなかった体から発生する気の放出でこいつを殺す!!

 もしも、もしも俺が死んでもこいつを殺せなかったとしとも!自爆覚悟の爆発だったらこいつもタダでは済まない!なら悟空たちでも何とかなるかもしれねぇ…!

 

「き、貴様何を!?」

 

「ハハハ!一緒に逝こうぜ、フリーザ!!」

 

「ま、まさか―――!?」

 

できるだけ遠くに、そして上空へ。もう悟空もクリリンたちも見えないここなら…!

 

「死ね!!フリーザッ!!」

 

「き、貴様あああああああ!!??」

 

 界王拳で増幅させるために練っていた気をさらに加速させたことで体中から光が漏れる。俺自体が爆弾になったようだ…!

 俺が死んでもう悟空たちに会えなかったとしても、少しでもあいつらが生き残れるなら…!!

 

 

この世から消えたってかまわない!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「させるかあッ!!!」

 

「――――が、はっ」

 

 

 

 

 

 爆破の直前、体を、光が貫いた。爆発しようとした気が一気に沈静化し、界王拳も途切れた。

 

いたい。口から、血がでた。おちて、地面についた。

 

 

フリーザもいる。悟空も、悟飯もいる。

 

まにあわなかった。

 

 

「貴様をすぐに殺すべきだったな…!貴様は!!跡形もなく!!死ねえええええええ!!!」

 

「やめろ、フリーザあああああああっ!!!」

 

 

 俺を覆いつくすような光が見えた。もう避けられない。多分、細胞も残さず消えるだろうなぁ…。

…死にたくない。死にたくないけど…どうしようもないだろう。何もできない…。

 

 

 

あぁでも、悟空に。カカロットに、言わなきゃな…。

 

 

 

 

 

「カカロット。元気に、生き延びてくれよ。お前の兄ちゃんの、願いだ」

 

 

 

 

消える前に、言葉にできた。

 

 はは、未練しかないなぁ…。パンジも、置いてけぼりだし。会社でまだまだしたいこと、あるのになぁ。

 

 

 

 

 

 

ばいばい、悟空、ラディッツ。ごめんね、父さん。母さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞ、ギネ」「うん」

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

極光が海を飲み込み、その姿は掻き消える。

 

何も、そこには残っていない。海の気配はどこにも感じられない。

 

 

「あ、あ……海、おじさん…」

 

「くっくっく…お次はガキの方かな…?」

 

 

 

「あぁ…か、海が…」

 

「まさか、海が…!?」

 

「…し、死んだ…炭すら、残さず…」

 

「海……!」

 

 界王星の面々は、皆沈痛な表情を浮かべて黙り込む。

 天津飯も、ヤムチャも、餃子も海が死ぬとは思いもしていなかった。悟空の兄で、どこか悟空のように安心感を抱ける存在が消えたなんて考えたくなかった。

 

そしてそれは、弟達もそうだった。

 

 

「――――あ、にき?」

 

 悟空たちとともに乗ってきた宇宙船に復活したネイルとデンデを運び込み、いつ何が来ても大丈夫なよう意識を張り巡らしていたラディッツは気づく。

 なにか大きな気が発生しフリーザらしき気を上空へ運び、弱弱しくなり、最後には消えた。それは確かに、自身の兄の気だった。

 

「ま、まさか…兄貴が、死んだ…!?ッッ!!」

 

「ら、ラディッツさん!?どこへ!?」

 

「カカロットのもとだ!お前たちはいつでも逃げれるように準備を!!」

 

「は、はい!ラディッツさん、お気をつけて!!」

 

 居てもたってもいられずに飛び出し、今感じられる気のもとへ飛んでいく。ただただ、湧き出る不安を嚙み潰して仲間の安否を祈る。

 

 

そして、目の前で兄の死を見た、悟空は。

 

 

「………ッ」

 

 

 胸の内がぐるぐると渦巻く。マグマのようにぐつぐつと体の内側が煮え立っているように感じる。

 

 昔、ピッコロ大魔王と戦った時とは違う。確実に兄は、死んだ。そして兄だったものは、何も残らなかった。

 兄はもう、この世にいない。

 

 

 

「――――――ゆる、さん」

 

 

 

「よくも…っよくも………っ!!

 

 

 

 不意に、悟空を起点に地面がひび割れる。海面に叩きつけられるように雷が降り注ぎ、大気が揺れ始めた。

 

 

 その場にいるフリーザと悟飯は動きを止め、悟空の異変に気付く。そして思う。何が起こっている?と。

 

誰も動けない中、悟空の体から何かが切れるような音が鳴った。

 

 そして理性が掻き消えたかのような雄たけびが上がり―――悟空の髪が、金色に輝く髪へ変化した。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。