ドラゴンボール ~もう一人の兄~   作:龍玉

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帰還

 

 

星が爆発直前の収束をはじめ、すでに4分が経った。

 

超サイヤ人となった悟空とフリーザの戦いは終わりを迎え、悟空の勝利に至った。

 

 しかし悟空の焦りは止まらない。今にもナメック星が爆発しようとするからだ。いくら自身が強くなったからと言って、地球に生身で戻るなんてことはできない。

 帰るには、宇宙船が必要なのだ。

 

「たのむ、間に合ってくれーッ!!」

 

 全力で空を駆け抜けてフリーザが乗ってきたであろう宇宙船に着く。すぐさまコックピットに乗り込むが、そのスイッチはうんともすんとも言わず、ついには地割れに飲み込まれて宇宙船がマグマに落ちていく。

 

その周りに、飛び立てる宇宙船もなければドラゴンボールもない。

 

詰み。爆発。二つの言葉が悟空の脳裏をよぎる。

 

「……爆発する…」

 

 すでに残り時間は1分を切っている。今から乗ってきた宇宙船に戻ろうとしても、飛び立つ途中で爆発に飲み込まれるのがわかってしまう。

 地球に帰ることが、できない。

 

「ッちくしょおおぉぉぉぉッッ!!」

 

 曇天に覆われた空に慟哭するも、何も意味をなさないそれは星の異常気象に飲まれてしまい、誰かに届くこともなかった。

 

 

 

―――悟空、こっちだ

 

「――えっ?」

 

 

 不意に聞こえた声。懐かしく、温かい。見ると、薄ぼんやりとした誰かがそこにいた。気配もなければ、そこに誰かがいるという確信もない。だというのにそこにいるという考えが生まれていた。

 

 微笑みかける"それ"は、音もなく悟空の反対側へ飛んでいく。

 慌てて追いかけると、飛んでいた先に見覚えのあるボールがあった。

 

―――あれならすぐに飛べる。早くしろ、間に合わなくなるぞ?

 

「った、助かった…。サンキュ、…は?」

 

 サイヤ人が乗ってきた宇宙船に案内されたと察し、お礼を言おうとするも振り向いた先には誰もいない。

 もとからいないのだから当然ではあるが、だとしても幻覚だったとは思えなかった。

そして、聞こえたその声は。

 

 

「……サンキュー、兄ちゃん」

 

 

確かに自身の兄、海のものだった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 そのころ、地球では。生き残っていたギニュー特戦隊とのひと悶着があったものの、ベジータ達による介錯により痛み無く地獄に送ることができたあと。

 地球に蘇って転移したナメック星人たちに事情を説明し、最長老の座が継承されることとなった。

 

「――これが、地球に皆が蘇って転移した経緯だ。ムーリ、お前が次の最長老となるのだ。同化した最長老の記憶から考えると、次はお前だと決まっていたようだ」

 

「は…はい」

 

「石となったドラゴンボールも、これで輝きを取り戻しまたその力を取り戻す…。しかし何故海殿がいない?ベジータに殺されてしまったツーリ長老たちも生き返っているのに、彼だけがいないとは…」

 

「確かに、なぜカイのやつが居ない。貴様らと一緒にいなかったことから大方フリーザに殺されたんだろうが、それでもドラゴンボールで復活するだろう」

 

「……兄貴は、蘇れない」

 

『なっ!?』

 

「何言ってんだラディッツ!ドラゴンボールはどんな願いでも叶えられるんだろう!なんでカイのやつだけのけ者なんだ!?」

 

「海が昔、言ってたんだ。『俺は魂が欠けてるらしくて、この世でしか生きれないんだ』って…」

 

「そ、そんな…それじゃほんとに海君は、消えちゃったってわけ…?」

 

 事情を知る者たちが俯き、クリリンが静かに頷く。

 思わずブルマの口から、「パンジちゃんになんて言ったら…」と漏れてしまい、より空気が重くなる。

 

 また悟空の話にもなり、今もフリーザと戦っているだろうという予測が語られた。伝説の戦士、超サイヤ人になったという話とともに。

 

 そしてヤムチャからの連絡が入り、悟空がナメック星とともに爆発したという知らせが届く。悟空はすでに一度死んでいる、つまり悟空も海と同じで蘇ることができない。

 より一層空気が重くなったとき、デンデがあることに気づく。

 

「あの、地球のドラゴンボールでは何度も蘇らせることができないんですか?」

 

「え?うん…」

 

「もしかしてデンデ、ナメック星のドラゴンボールは何度でも蘇らせれるのか!?」

 

「は、はい。自然死でなければ何度でも…」

 

「じゃ、じゃあ今からでも悟空を蘇らせられるんじゃ…!?」

 

―――それは無理じゃ…。悟空を蘇らせても、蘇るのは魂のあるナメック星のあった場所。蘇っても肉体は宇宙に放り出され、生き延びることはできん。あそこは儂の担当区域外じゃ。どうにもならん…。

 

 

「…そ、そんな」

 

 八方ふさがり。全員にその言葉が脳裏に浮かぶ。

 そこに少し苛立った様子でベジータが口を開く。

 

「少しは頭を使ったらどうだ。その魂だか知らんがナメック星から地球に移動させて生き返らせたらいいだろう。たぶんな…」

 

「そ、そうよ!あんた少しは良いこと言うじゃん!」

 

 早速ナメック星人たちに頼み、ポルンガを使うこととなった。神龍とは異な造形、それ以上に巨大な龍と思わしき存在が現れ空が急激に暗くなる。

 ドラゴンボールに呪文を唱えたときに発生する暗い空だ。

 

「うは~…本場のドラゴンボールってこんなにでかいの!?」

 

「ほー!こいつが願いを叶えてくれんのか!おい見ろよベジータ!」

 

「やかましい!俺に絡むんじゃない!」

 

「…何してんだあそこ?」

 

「ナッパがベジータに並びそうになって嬉しくなったんだと」

 

 無事に呼び出すことが成功し、ナメック星人たちから願いを譲ってもらうことができたため、ついに悟空の魂を呼び出そうとする。すると、誰かの焦った声が聞こえてきた。

 

 

―――お前たち、待ってくれ!海の魂も呼び出してくれ!

 

「っこの声、神様!?」

 

「どういうことだ、カイは蘇れないんだろう」

 

―――ミスターポポが神龍から、海があの世に行くことができるという話を聞いたらしいのだ。もしかしたらあやつも蘇れるかもしれん!

 

「なんだって!?」

 

「じゃ、じゃあ早速呼びましょうよ!」

 

「デンデ、お願い!」

 

「了解しました!」

 

デンデにより、ポルンガに願いが聞き届けられた。その赤い瞳が光り、ポルンガが頷く。

 

 

―――孫海というものの魂をここに呼び寄せた。だが孫悟空というものの魂を呼び出すことはできない。拒否された

 

「拒否されたってまさか、悟空は生きてるのか!?」

 

『やったああぁぁ!!』

 

 歓喜に包まれるブルマたちは、そのままの勢いで二つ目の願いを使い、孫海を蘇らせることとなった。

 

 

風を切ったかのような音ともに、その姿が現れる。

 

 山吹色の道着、サイヤ人にしては珍しく降りてはいるが一切変化のない髪形、悟空のように安心感を抱かせる存在感。

 

それは確かに、この世から消えてしまいもう会うことのできないと思われていた男。

 

 

「…………ぅえっ?え?あれなんで俺、ここに…」

 

『海いいいいぃぃぃっ!!!』

 

「うぼおあっ!!?」

 

「兄貴、蘇ったか…そうか…!」

 

「…うるさい奴らだ…」

 

「へっへっへ、まぁいいじゃねぇか」

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

なんで俺生き返ってんの????

 

 俺悟空が飛び立つの見送ってからあの世に行こうとしてそっからの記憶ないんだけど、なんで地球にいるんだよなんで蘇ってんだよ。

 マジでなんで…???

 あとなんだこのでっけぇ神龍みたいなの。

 

―――消えた肉体と服は特別サービスで元通りにした

 

「怖い顔していいことするじゃない!よーし今度はついに…!」

 

 

 困惑している間にことが進んでいき、どうやら悟空を呼び出そうしたらしい。が、悟空に拒否されてしまったみたいだ。

 ポルンガというらしいこの神龍は3つ願いを叶えてくれるらしくて、一つ目で俺の魂を地球に呼びだし、二つ目で俺を蘇生したとのこと。そして締めに悟空を地球に呼び出そうとしたのが現在の状況だということをクリリン達から伝えられた。

 

 そ、そうだったのか…。てかほんとになんで俺蘇れてんだ?あの世に向かおうとしてからの記憶がないから、あの世との境で消えかけたのか…?いやでも蘇ってるからあの世に行けてるんだよな…。

 

 その後、3つ目の願いはナメック星人の人々が自分たちでも住みやすい星に移住するのを願い、ポルンガとともに消えていった。

 そっか、ナメック星は吹っ飛んじゃったから…。

 

 

 結局俺が蘇れた理由はわからないままだったけど、また地球に帰ることができた。

 あとは悟空が帰ってくれば、色んな人が増えたけど地球での暮らしが帰ってくる。…それに、悟空が生き残ったということはフリーザが死んだということ。

 

 俺がずっと不安だった、いつ来るかわからない危機が去ったあとの暮らしをついに過ごせる。

 あぁ、肩の荷が下りた気分だ…。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 ある銀河のとある星。遠くから見ると自然にあふれたように見えるその星は、命が微塵も感じられない星と化していた。

 

 

「なにっ!?我ら栄光の血を引くフリーザが、下等生物のサイヤ人に殺された…?」

 

「は、はい。信じがたいことですが…。地球から来たという、孫悟空というサイヤ人に」

 

 唯一生きている存在は、たったの四人、一人は緑の肌を、一人は茶色の肌、一人は紫のウエットスーツを着た美丈夫。そして最後の一人は、()()()()に酷似した姿をしていた。

 

 

「…愚かなフリーザめ。いくら甘さがあったとしても、たかが猿ごときに…」

 

(――まさか、超サイヤ人…!?)

 

「サウザー!!」

 

「はっ!!」

 

 

 

 

「直ちに地球へ出発!サイヤ人を根絶やしにし、その星を徹底的に壊滅させる!!…この惑星のようにな」

 

 

 

 

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