「くっくっく…。馬鹿な奴だ、カイ。超サイヤ人となったこの俺に喧嘩を売るなんてな…」
「黙れ。その凝り固まったプライドごと地面に埋めてやる…」
俺もベジータも、超サイヤ人となって睨み合う。
こうなった原因は、ラボで立ち往生していた時に俺とベジータが対立したからだ。
ベジータは人造人間と戦いたい。だけど俺は壊せるなら人造人間を壊したい。しかも悟飯とトランクスから未来がめちゃくちゃになったことも聞いていたから、なおのこと事前に倒せるなら倒しておきたい。
二人が来たときにブルマさんが事前に壊すことを提案していたけど、本当なら俺もそれに賛同したかった。強いやつと戦いたい心もあるけど、それ以上に世界がぶっ壊れる方が俺は嫌だ。
だけど、もしものことも考えてみんなで鍛錬をしたかったからあの場では何も言わなかった。
そしてベジータが苛立ち紛れに吐き捨てた。「そんな臆病者だから未来のカイも死んだんだろう」って。
我慢できなかった。俺を馬鹿にする程度ならどうでもいい。底が知れるからだ。なのにこいつは、俺ではなく未来で悟飯たちに希望をつなげようと命を懸けて戦った俺を侮辱した。
人造人間をみんなに任せて、俺はベジータが絶対に人造人間に勝てないと宣言して森に誘い込んだ。
ふてぶてしい顔で着いてきたベジータだけど、その動きに淀みはない。
…本当ならあの場にいた方がいい。だけど、それ以上にベジータへの怒りが大きかった。命を燃やしてまで戦った未来の俺を笑った、コイツへの怒りが。
「……ッ」
「ふ……!」
鳥が木から飛び立った瞬間、ベジータと肘をぶつけ合い、力比べをする。俺もベジータも一歩たりとも引きはせず、力量自体が釣り合ってることを指示していた。
実際、どれだけ力を入れて押し勝とうとしてもまるで壁とぶつかってるみたいに動かない。けどそれはベジータの方も同じのようだった。
「ちっ…!最下級戦士の貴様が、俺と互角だと…!」
「お前よりも深い戦いを通ってきた自負はある!」
地面を抉りながら放たれた蹴りを避け、上から振り下ろされた拳を回避しながらつかみ取り、近くの木に叩きつける。 木々が倒れる音がしたかと思えば、木々の合間を縫って気弾が飛んでくるので空中に避難。行き場を失った気弾が岩山を崩し、爆発を起こす。
そして下からベジータの突進が向かってきたのを防御しようと腕を交差すると、前からの衝撃ではなく後ろからの衝撃が飛んできた。落ちながら確認すると、位置的に俺の背中めがけて肘を振り下ろしたようだ。自分が上じゃないと気に食わないってか?なら落としてやるよ…!
「ぶっ飛べ!」
「なにぃ!?」
上空にベジータがいるのをいいことに、気弾を複数投げつけて連続爆破。一個は命中したのがわかるが、それ以外は迎撃されてしまった。
爆炎が視界を覆ったのを煩わしく思って腕で払うと、気を最小限まで消したベジータが目の前に現れた。その構えは完全に俺の腹をアッパーで狙っており、まずいと思ったけどすぐに切り替えてカウンターを狙う。
予想通り俺の腹にベジータの拳が叩き込まれ、息が吐きだされるのをベジータが鼻で笑ったのが分かった。だけどその表情は急変し、すぐに離脱しようとする。けれどもう遅い。俺の両腕はすでにベジータの背中まで回っている。
離れようとベジータが藻掻くけどまったくびくともしない。さっきの力比べで俺とお前の力量は同じだってわかってるからな。蹴りができない距離で掴んじまえば、俺が離すまでお前は藻掻くことしかできない…!
「は、離せッ!!」
「離すもんか…!一遍頭を冷やしやがれッ!!」
上空に飛びあがり、ベジータの体を上下逆に反転させて一気に落下する。
落下音が耳元に鳴り響いた数秒後、地震かと思えるほどの振動と轟音があたりに響き渡る。周りにいた鳥たちが逃げるのが見えて少し罪悪感が沸いてしまう。ごめんな。
その場を少し離れて様子を見ると、ベジータが足だけ出た状態でクレーターの中に埋もれていた。無様な姿だ。さっきまで王子だなんだとほざいていたやつの姿とは思えん。
「どうしたベジータ!最下級戦士の俺に負ける程度で、人造人間に勝てると思ってるのか!?それともその自慢の逆立った髪で畑仕事でもしてるのか?」
「っっ!!黙れえええぇぇぇッッ!!」
地面から頭を抜いて逆上したベジータから気功波が放たれ、目の前でバリアを作り出して防ぐ。つい最近悟空とラディッツにナッパ、悟飯とピッコロの六人で修業していた時に編み出した技だ。かなり便利で、界王拳を使った状態のかめはめ波なら余裕で耐えれる高性能。まぁ俺の技量と気に依存するけどな。
余談だが、どこまで耐えれるか試すために悟空のかめはめ波とラディッツのサタデークラッシュ、ナッパの超魔口砲、悟飯の魔閃光、ピッコロの魔貫光殺砲の総攻撃を受けたことがあった。1秒耐えたか?なんて思った瞬間にバリィン!という音と共に砕け散り、結果的に大重症とアフロの髪形になる結果となった。アフロは風呂に入って髪を洗ったら元に戻ってパンジにいじられた。こしょばかった。
気功波を耐えきってバリアを解いた瞬間、煙を裂いて手刀が現れて俺の首に一撃を入れる。
衝撃に耐えることができずに転がり、体中が土でまみれる。あの数瞬の間に距離を詰め、バリアが解かれるのを待ってたのか…。
「貴ッ様アアァァァ…ッ!この超ベジータ様をコケにしやがって!!超サイヤ人になったなら、超エリートである俺は貴様もカカロットも大きく突き放すほどの強さを得られるはずなんだぞ…!」
「ぺっ…事実を言っただけだ。それに、たかだか血筋だけで強さが決まるわけじゃ―――あ?この気は…トランクスと、悟飯?」
「なんだと?」
確かに今、向こう側でトランクスと悟飯が気を爆発させて超サイヤ人になったはず…。なのに気を解いていない…。
「そうか、人造人間どもか!貴様はあとでボロ雑巾にしてやるぞ、カイ!」
「あっ待て!」
「邪魔だ、どけッ!!」
「うぐうぇッ…!?」
ベジータを捕まえようとしたら、思いっきり腹に膝蹴り叩き込まれちまった…。蹲っているうちにベジータが向こうに行ってしまい、戦闘が始まる。
「っはやく、行かないと…!」
◆◇◆◇◆
咳き込みながら向かうと、そこには傷が増えたベジータ、それを守るように構えを取っているみんな、そして悟飯が言っていた人造人間二人と知らない人造人間がいた。
人造人間からはゲロのように気を感じない。
「ん?…あれは、孫海か」
「そのようだ…」
「あ、兄貴!なんでベジータと一緒に来なかったんだ!?」
「追いかけようとしたらこいつに不意打ちされたんだよ…。ふざけんなよお前…!」
「ちっ。そのまま眠っていればよかったものを…」
こいつまじで…。
「あんた、やるじゃないか。向こうで続きをしましょ?」
「舐めた口ききやがって…」
「ベジータさん、無茶だ!そいつはエネルギーが尽きないんですよ!」
「大人の悟飯の言う通りだ。ベジータ、お前のスタミナは有限だが、そいつのスタミナは無限だ。じり貧で貴様が殺されて終いだ…」
「黙っていろ!俺一人でこいつらを片付けてやる、貴様らは手を出すんじゃないぞ!」
「と、父さん…ッ!」
そしてベジータと18号の戦いが始まり、本気を出し始めた18号によってベジータが押され始めた。さっきまで俺とやり合ってたんだ、今まで持ってたのが不思議なくらいだ。
17号が加勢したら自分も動くと宣言してもトランクスは我慢できず、ベジータのもとへ向かってしまった。それに続いてみんなも加勢し、人造人間たちと戦い始める。
俺は、動くことができなかった。俺も向かおうとした瞬間、目の前に一切動かなかった大男の人造人間が立ちふさがったからだ。
その目は静かに、あの二人以上にロボットじみている。
「…お前、誰だ。なんでみんなを通して、俺だけ止める」
「俺は、人造人間16号。俺の目的は、孫悟空と孫海を倒すことだ。最優先事項は孫悟空の打倒だが、お前も標的に入っている…」
「…ッ!」
言うな否や俺を持ち上げて空高く投げ飛ばし、目の前に現れたかと思うとたったの一発で崖ごと砕きながら俺を殴打してきた。
たったの一撃。たったの一撃で意識が途絶えそうになり、超サイヤ人が解ける。さっきまで殴り合っていたベジータと比べても、まるで重みが違う。速さも違えば、精度も違う。
体の筋肉が緩和し、泥のように眠りたくなる意識をギリギリで保ちながら目を開けて、現状を確認する。
悟飯も、トランクスも、ベジータもラディッツもナッパもピッコロも天津飯も倒れていて…俺は何故か16号の肩に背負われていた。はい???
「…俺達の戦いのせいで小鳥たちが逃げてしまった。申し訳がない…」
「小鳥…?」
「ねぇここ滅多に車なんか通らないよ。もう少しにぎやかなところまで飛んでいこうよ」
「…あと16号。なんで孫海を背負っているんだ?」
「この男は鳥たちが逃げてしまったときに謝っていた。だから気に入った」
「それで背負ってるってわけ?別に殺せって言ってるわけじゃないけどさ」
待って?待って??そんな普通なことを理由で背負われてんの?てかこいつら、殺気がない。悟空を殺すために生まれたんじゃないのか…?
「げほっ…お、お前ら、俺達を殺す気じゃ…?」
「あぁ…あの爺がそんなことを言ってたな。別にどうでもいいさ。孫悟空を探すのも目標が欲しかっただけだし、ただのゲーム感覚だしな。地球で一番強いんだろう?孫悟空は」
「俺がお前を生かしているのも、お前が自然を愛している。それだけのことだ。孫悟空を倒せば、共に始末する」
「そ、そうか…」
「でもあんた、その恰好恥ずかしくないのかい?大の大人が大人に俵担ぎで運ばれてるって」
「恥ずかしいに決まってんだろ早く下ろしてくれ???」
「嫌だ」
「おいこいつめんどくさいぞ!!」
「アハハハハ!面白いじゃないか、当分はそのままでいいんじゃない?ねぇ17号?」
17号は後ろを向いてるけど若干肩が震えている。つまり助けてくれない。おいこら楽しんでんじゃねぇぞ!!
俺がなんとか離れようと暴れていると、クリリンが三人を止めようと声をかけてきた。それでも人造人間たちは止まらず、18号がクリリンにキスをしたかと思うと俺を連れてそのままクリリンのもとから去っていった。
……いや下ろしてくんね?仙豆貰ったから元気いっぱいだし今すぐ暴れてやるぞ??
……待って待って待って16号待って背負ったまま腕で締め付けないでくれゲロ吐きそうになる。わかったわかった暴れないってば痛い痛い痛い。
おいこら18号お前俺の髪の毛イジくんじゃねぇ!「ホントに変わらないんだねぇ」じゃねぇよぐるぐるすんな!!
頼む17号何もしないって約束するから18号止めてくれよ。え?車が欲しい?別にあるけど…え?くれ?
……………やらんけどあとで返せよお前。
おいこら俺も乗せんじゃねぇよ16号と18号で俺を挟むんじゃねぇ!!狭ッ苦しい!!主に16号!!
書いてたらなぜか途中から海がいじられるようになってしまいました。ごめんね海。でも書いてて楽しかったから後悔はしてないです。