突然の殺害宣言を言い放ち、眼光無き瞳で悟空を見ていたブロリーがその体の周辺に薄い気をバリアのように纏わせながらこちらに突進してくる。
どう考えても捕まれば地面とキスするのが予測できる右腕を悟飯と共に悟空が避けた瞬間に俺とラディッツ、ナッパの同時攻撃が加えられる。
すでに俺もそうだが、ナッパもラディッツも超サイヤ人に覚醒していた。
後で聞いた話だが、ラディッツは俺が死んだときに何もできず、クウラが来たときも戦力になれなかった悔しさと怒りが、ナッパはすでに悟飯も覚醒し、残りのサイヤ人であるナッパのみ超サイヤ人になれていないというみんなに置いていかれている自分自身に対しての怒りが爆発したことで超サイヤ人に至ったらしい。
ラディッツはその長髪すべてが金色に輝いているものの、さすがに多すぎるのか逆立ってはいない。そもそも髪の毛がないナッパは代わりに髭が急激に伸びており、サンタクロースみたいになっている。本人には絶対に言えないなこれ。
…そんな二人と俺の攻撃だが、まるで手ごたえがない。その屈強な肉体という鎧に阻まれ、薄皮一枚分も押し込めている気がしないのだ。
いくら伝説とはいえ、こんなにも差があるもんなんか…!?
…いや、響いている感覚はした。つまりただただこいつがタフすぎるだけなんだ。それこそナッパ以上に…!
一撃が軽いなら手数で勝負と言わんばかりに三人で攻撃を続けるものの、攻撃全部をそのでかい図体のどこから出るんだと思いたくなる素早さですべて回避し、俺の腹、ラディッツの側頭部、ナッパの脇に一撃ずつ叩き込んできた。
重い。ただただ重く、そして何より体へのダメージがバカにならない。スピードを殺してパワーを上げる超サイヤ人の形態に、スピードを上乗せしてパワーとスピードを掛け合わせたみたいな威力をしている。
すでに俺とラディッツは膝をついたし、ナッパはギリギリで耐えたが口の端に唾液が漏れている。
「お、えぇ…!」
「ぐっ…あ、頭が、ぐらぐらしやがる…!」
「ぐお、おぉぉ…!!」
「どうした、もう終わりか?」
「兄ちゃーん!!」
「ッもっと遠くに行け!ここじゃ場所が悪い!」
「簡単に逃がすと思うなよ…」
空中を飛んでいた悟空めがけて胸に気弾をキープさせた状態のままブロリーが飛んでいく。その一発だけで悟飯も悟空も傷だらけになっていき、あいつと俺たちの戦闘力の差を明らかにしていく。
ギリギリ立ち直り、ラディッツとナッパと共に悟空たちのもとに向かおうとしたときに気づいた。あのベジータが戦意喪失している。フリーザの時以来だ。
「…殺される…みんな、殺される…!あいつは、伝説の超サイヤ人なんだ…!」
「ふっ。純粋なサイヤ人であるお前だけが、本能的にブロリーの強大さと極悪さをキャッチできたようだな。だが、もう遅い…。ブロリーが俺のコントロールから外れ伝説の超サイヤ人となってしまった以上、俺とブロリーで全宇宙を支配しようとした俺の計画も、何もかもおしまいだ。
地球は勿論、宇宙をすべて破壊しなければ、ブロリーは収まらない…」
そしてパラガスは、ベジータに執着していた訳を話し始めた。その根幹にある原因は、サイヤ人の王であるベジータの親父がブロリーの潜在能力を恐れ排除しようとしたからだった。そしてパラガスが『お助け下さい!』と懇願しても、ベジータ王は拒否し、二人をゴミのように捨てた、とのこと…。
……全部ベジータの親父が悪いじゃねぇか!!くそったれが、何余計なことしてくれてんだマジで!?
ただでさえセルのことでいっぱいいっぱいな状況だってのに、親の罪のせいで今の俺達にまで被害を拡大すんじゃねぇよッ!!
というかマジで余計なことしなけりゃあの化け物生まれてこなかっただろ…!
なんならフリーザの野郎のせいでもあるぞ、あいつが惑星ベジータぶっ壊さなけりゃブロリーの潜在パワーも覚醒しないで済んだのに…!
「さぁ、死の恐怖を味わいながら、ブロリーに八つ裂きにされるがいい。ふふッ!」
「あの野郎…!」
「ナッパ、あんな雑魚は放っておけ!今はカカロットのもとに急ぐぞ!」
「あいつ相手に瞬間移動したら、何も見えてない状況で攻撃を喰らいそうだから飛んでいくぞ!」
心の折れたベジータをほったらかしにして飛び上がり、悟空のもとへ向かう。その時だった。
誰かの悲鳴が、誰かの絶望が、誰かの命が理不尽に消え去ったのを感じる。大勢の命が消えた…。
「ハハハハハッ!お前たちが戦う意思を見せなければ、俺はこの星を破壊尽くすだけだぁ…!!」
「ッ許せねぇ…!」
気付けば、廃墟の傍で悟空たちの気が立ち上るのを感じた。
「!あっちだ、急ぐぞ!」
「「おう!」」
三人で固まって廃墟に向かうと、すでに悟空たちとブロリーが向き合っていた。すぐそばに降り立ち、同じように構えを取る。
「やっと戦う気になったようだがその程度のパワーで俺を倒せると思っているのか?」
「はは、ブロリー。驚いたぞ!兄ちゃんたちとナッパが攻撃してんのにまったく気にしねぇもんな。…じゃあ第二ラウンドはじめっか…!」
すると、すぐそばでじっ様と逃げてきた人たちが崖から落ちてきて山を作った。クリリンがうまく逃がそうとしてくれたみたいだが、運悪くここに来てしまったようだ。
というかじっ様全然酔ってんじゃねぇか。しかもブロリーのことブロッコリーとか言ってるし。
…待て、ブロリーのやつあの人たちのこと見てねぇか…!?
「…惑星シャモから連れてこられた奴隷どもか…!いつかは自分たちの惑星に帰りたいと、星を眺めていたな…。いつかは帰れるといいなぁ…!!」
「ッ!?やめろー!ブロリーッ!!」
アンダースローで投げられた気弾はシャモ星から連れてこられた人のところへ向かったかと思えば、その軌道を曲げて空へと向かっていく。
「あ…シャモ星…」
その向かう先に何があるのかは薄々感づいていたけど、明言されてしまえばこの後何が起こるかは一目瞭然だった。
「全員伏せろッ!あれをぶった切るッ!!」
「ッ!悟飯!!」
「お父さん!?」
今出せる気をすべて右手に集め、ブロリーの気弾に被るように思いっきり振りかぶる。
―――ガガガガガガッッ!!
何もない場所で引っかかった部分を全力で振り下ろし、滞空する気がその場にできあがった。気合で維持してるけど、少しでも力を緩めると一気に解放されるだろう。
気円斬から発想を得た技だ、効果がないってことは絶対に無い!!
「大ッ!切ッ!!断ッ!!!」
完全に振り下ろしきった瞬間に維持を止めると、ドワオッ!という音と共に滞空していた気が発射され、まるで世界がずれたような光景が広がる。それがもとに戻った瞬間、ブロリーの気弾が軌道を曲げられて近くにあった別の星に衝突する。
閃光がそこから広がり、響き渡ったのは、星が爆発した音。
…あっぶねぇ!?今ので完全に切ること出来なかったって、もしかめはめ波撃っても意味なかった可能性大じゃねぇか!どんなパワーとエネルギーしてんだよ…!
しかも、今の星の衝突でまた大勢の悲鳴が聞こえたのもわかった。それでも満足したようで、ブロリーは高笑いを上げていた。
「…ふっふっふ…ハッハッハッハッ…!ウアハハハハハッ!!」
「…あ…悪魔だ…」
「あんな奴を放っておいたら、全宇宙が破壊尽くされてしまう…!」
「っ絶対に勝たなきゃなんねぇ!!」
瞬時に散開し、俺と未来の悟飯、ナッパとラディッツが空中から、悟空と悟飯にトランクスが地上から攻める形になる。もう一度さっきの気弾を作ろうとした瞬間、俺めがけて緑の気弾が投げつけられて近くの高速道路らしき場所で衝突、爆発した。普通に痛い。
そしてその間にもブロリーはラディッツをこん棒代わりにしてナッパともどもぶっ飛ばし、トランクスをラリアットで空中から蹴りを放とうとする未来の悟飯を巻きこんで壁にぶつけていた。
「ふっふっふ!カカロット!息子は可愛いかぁ?」
悟空が悟飯を逃がす間にブロリーに突撃し、悟空と組み合った瞬間を狙って顔面にストレートを叩き込む。それに連なるように悟空の膝蹴りが顎に命中したにも関わらず、ブロリーによって悟空が持ち上げられて崖に蹴り飛ばされた。
すぐさま回避を取ろうとした俺めがけて今度はビーム状の気弾が放たれて近くにあった山まで吹っ飛ばされる。しかも爆発付きだから、服がボロボロになって上半身が裸になってしまった。
「がは…ぐ、ううぅぅ…っ」
無理やり落ちて来た岩石を砕いてどかして悟飯が逃げた方向に目をやると、悟飯がビルに衝突して気絶し、悟空とトランクスがもう一度ラリアットでビルを粉砕しながら連れていかれるのが見えた。
「っ悟飯…!」
「うああああぁぁぁっ!?」
「あっちもか!?」
体中に打撲の跡が残った未来の悟飯が同じくビルに衝突し、気絶した。ナッパとラディッツの姿も見えないってことは、二人も気絶してるんだろう。
すぐに立ち上がろうとするものの、体が言うことを聞かず、そのまま倒れこむ。
すでに体が限界を迎えていた。
辺りが緑色の爆発をなんども起こし、星がボロボロになっていく様が目に入る。なんとか座る姿勢に入ったとき、覚えのある気がすぐそばまで来ていた。
「海、食え。仙豆だ」
「ッピッコロ…!た、助かった…」
「どうやら他のやつもやられたようだな、仙豆を持っておいてくれ。俺は孫のやつと悟飯たちに食わせてくる」
「なら俺はラディッツとナッパと、トランクスかな…」
ブロリーは…なんか笑ってる。何してんだ?
「また一匹虫けらが死にに来たか…」
「ふん。化け物め、好きにしろ…」
「何言ってんのピッコロ…」
「…俺がばけもの?違う…!俺は悪魔だ…!」
あいつもあいつで何言ってんだ。
えーとラディッツは…いた。死にかけてんな、瞬間移動ですぐに行かないと…!
「ラディッツ!仙豆だ!」
「…うっ…く、おお…。た、助かったぜ、兄貴…」
次は、ナッパ!
「ナッパ、仙豆だ!」
「あ、ありがとよ…死ぬとこだったぜ…」
「トランクスも近くにいるな。ナッパはラディッツと合流しててくれ!」
「…は、あッ!?か、海さん…ありがとうございます…!」
よし、向こうも回復したみたいだな…。この人数でかからないと、まともに戦えない化け物だ。さっさとけりつけないと蹂躙されておしまいだな!
「悟空、行くぞ!」
「あぁ!」
俺、未来の悟飯、ピッコロ、悟空の四人で殴り掛かったものの、すべて少しの体の動きで避けられ、終いにはブロリーが伸ばした両腕の回転だけで全員が吹っ飛ばされた。
その隙を狙った悟飯とトランクス、ラディッツとナッパの気功波が放たれたけどまったく効いた様子が無い。
そして降りたブロリーにもう一度接近戦に挑んだピッコロはサッカーボールのように蹴り飛ばされ、締めに気弾をぶつけられて飛ばされた。
しかもついでと言わんばかりにかめはめ波の用意をしていた俺の顔面を掴んで引きずり回し、途中のビルを粉砕しながらピッコロの方へ投げ飛ばしてきやがった。仙豆で回復したのにもうダメージがデカいんだけど…。
…てかベジータまだメンタルブレイクしてたのか。
「もう駄目だ…おしまいだ…!」
「何を寝言言ってる!ふてくされてる暇があるなら戦えッ!」
「き、貴様らにはわからないのか…!?」
「何がサイヤ人の王子だ…!」
そういうとピッコロがベジータの髪を掴んで廃墟まで持っていく。
…こんな状況で言うのもなんだけど、借りてきた猫みたいにベジータが伸びてる姿面白れぇな。写真取れたらよかったのに…。…あ、俺の記憶を映像に転写したら行けるか…?セルゲーム終わったらブリーフさんに頼んでみるか。
っと、ピッコロに付いて行くか。でも連続でビルに叩きつけられたせいでまともに飛ぶことができないな…ピッコロに運んでもらおう。
というわけでピッコロの脇に抱えられて少し息を整えている。やっぱ元魔族なだけあって気の操作が上手いな。飛行の快適さが違う。
廃墟にたどり着いて目に入るのは、みんながブロリーに叩きのめされている姿だった。ナッパを連続で地面に引き倒し、ラディッツは髪を掴んで振り回してビルとぶつけている。二人の悟飯は気弾で爆破し、悟空は純粋なパンチで殴り飛ばしていた。
「…みんな、逃げるんだぁ…勝てるわけがないよ…!」
「どこへ逃げても同じだ!ヤツを倒さなければ、この宇宙は終わりだ!」
「それに、あいつに勝たないとセルとの戦いに行くこともできないしな。勝たないって選択肢は無いも同然だ」
「勝てっこない…やはり伝説の超サイヤ人なんだ…!なぜお前には理解できないんだ、カイ…!」
「そこまで性根が腐っていたとはな…消え失せろ!二度とその面見せるな!!」
「怖いとか考えてる暇があるか?地球で待ってくれてる人も居んのにさ。…お前もいるだろ、ベジータ」
「……ッ!……っ」
…予想以上にダメージがあるな。それだけ純粋なサイヤ人であるベジータにはあいつが恐ろしく見えたんだろう。
まぁ、戦う心の折れたベジータに構ってる暇なんてないから、放っておくけどな。それにあいつ、俺の言葉に反応してたから完全に諦めたわけじゃないだろ。なら絶対に立ち直るはずだ。
「海、行けるか」
「あぁ、助かったよピッコロ。サンキューな。…行くか!」
―――かぁぁぁぁ!めぇぇぇぇ!はぁぁぁ!めぇぇぇぇ!波アアアア!!
「!?悟空のかめはめ波だ!」
「あそこだ!」
向かった場所には、悟空がブロリーに持ち上げられて呆然としている状態だった。
「なんなんだ今のはぁ…」
…あいつ、まさか0距離で悟空のかめはめ波を受けたのにピンピンしてんのか…!?
突っ込む気でいたけど変更だ。こうなったら、未来の悟飯のところに…!
「サイヤ人の王子、ベジータが相手だ!」
「ふんっ!貴様だけは簡単には死なさんぞ…」
あっ!ベジータも復活したのか!?それにあいつ、俺達と同じレベルまで気が膨れ上がってんな…!よし、なら今のうちに…いた!
「悟飯、悟飯!起きてくれ!」
「っう…か、海おじさん…!」
よし、未来の悟飯はまだ意識があるぞ!…っ!?あれは、ベジータか!?
「ふおおぉッ!?」
「もう、おしまいか?」
ベジータがブロリーにラリアットで持っていかれて岩盤にクレーターを作ったのが見えた。そしてベジータも気絶し、地面へと落下していく。
「っベジータさん…!」
「待て悟飯!ラディッツを探してくれ。あと悟空も!あいつらはまだ意識がある!他のみんなは、もう動けないけど…」
ピッコロもさっき倒されてしまった。すでに起きているのは俺達と悟空、ラディッツだけだ。少しだけ思いついたことがあるから、一回作戦会議をしたいんだよな…。
…てか、ブロリーのやつなんであっちに行ったんだ?未来の悟飯がラディッツと悟空のもとに向かったから大丈夫だろうし…念のため付いて行くか…。
…あれパラガスじゃね?
「どこへ行くんだぁ?」
「お、お前と一緒にぃ、ひ、避難する準備だ!!」
「…一人用のポッドでかぁ?」
ブロリーがポッドを持ち上げて圧縮していく。そしてついには中にいたパラガスの気が無くなり、彗星めがけて投げ捨てられた。
…一人用のポッドが一人用の棺桶に早変わりってか。やかましいわ。さっさと悟空のもとに行こう。