「カカロット、どういうことだ!何故カイのやつに行かせる!」
「そうカッカしねぇでくれよベジータ。ちゃんと兄ちゃんとも相談したんだしさ」
「そ、そうだったのか悟空!?じゃあなんで言わなかったんだよ!」
「本来だったら勝つつもりだったんだよ。だから悟空も言わずにいたのさ」
「…では、二人の悟飯も冷静なのはどういうことだ」
悟空が全員のもとに戻り、質問攻めにされるのを落ち着いた表情で見る者たちがいた。一人は指名された孫海。残りの二人は、悟空の息子の悟飯の二人だった。
この三人は悟空が降参の宣言をした時から慌てることなく、静かに悟空の行動を見守っていた。
「あぁ、それは単純に悟飯たちも居たからだな」
「なんだと?ではいつのタイミングで相談したというんだ」
「そうだぞカカロット!俺たちは精神と時の部屋に入ったりしていたから時間はバラバラだし、そもそもブロリーと戦って相談する時間なんてなかったはずだ!」
「なーに言ってんだ兄ちゃん。オラ達でピクニックに行った時があっただろ!」
「ぴ、ピクニック?そういえば、悟飯さんも一緒に行っていたような…」
トランクスがそこに思い至ったときに、悟空が口を開く。それは、パラガスが襲来する前の日のピクニックの釣りの時間のことだった。
◇◆◇◆◇
「…で、俺に相談ってなんだ?悟空」
「…実はなぁ、オラ、セルと戦ってから降参しようかなって思ってんだ」
「ど、どういうつもりですかお父さん?!もしお父さんが負けたら、誰も勝てないんじゃ…!」
「いや、オラも勝つつもりで挑むさ。だけど多分、あいつはオラよりもずっと強いと思う。ベジータや兄ちゃんたち、ナッパたちよりも…」
「そ、そんな…。じゃあオレとトランクスが過去に来ても、未来は変わらないってことですか…」
「いや、そういうわけじゃねぇよ?オラその後に違うやつに戦ってもらおうって考えてたんだ。その違うやつってのが、悟飯。オメェらのことだ」
「ぼ、僕…?未来の僕ならわかるんですが…」
「いや、オレも納得はいってないです。なんで父さんはオレとこっちのオレを指名しようと…?」
「…精神と時の部屋で悟飯と一緒に修行をしてて気づいたんだ。悟飯の中にはオラたちを思いっきり凌駕する凄ぇパワーが眠ってるって。まだ経験が積みきれてない今の悟飯でそうなら、兄ちゃんと修行した未来の悟飯も一緒のはずだ。ならセルと戦ってオラが実力を測ってから交代して悟飯に任せればいい。そう思ったんだ。あいつがどんなことをするかわかんねぇけど、悟飯の怒りが爆発すれば絶対にセルに勝てる」
「…僕たちが、セルに勝てる…?」
「で、でも父さん、ならなんで海おじさんにも相談しようとしたんですか?今の話じゃ、オレとこっちのオレだけしか出ていませんよ…」
「…オラはさ、戦うのが大好きだ。だから悟飯がもっと強くなるなら嬉しいし、それでセルに勝ってくれるならもっといいんだ。…でも悟飯は、戦うのが嫌いだろ?」
「ッ!!」
「…っ」
「なら悟飯に任せちまうと、嫌な気持ちにしちまうと思ったんだ。それはオラ、嫌だからさ。…兄ちゃんを呼んだのは、今の状態なら兄ちゃんもセルに勝てる。そうだろ?」
「「えっ!?」」
「…いつ気づいた?」
「兄ちゃんがオラたちと合流した時。あの時兄ちゃん、一瞬一瞬でそれが表に出ることはなかったけど、体ん中の気の操作が見たことある動きしてたからな」
「…隠してたつもりだったんだけどな?よく気づいたな」
「…ほ、ほんとだ。海おじさんの気が、少し違う流れをしてる…!」
「もしオラの予想通りなら、兄ちゃんはセルに勝てる。ホントは悟飯に任せて、オラたちが戦わなくなったあとのことを任せられるようにしたいけど…。それは今じゃないって思ったんだ。だからさ兄ちゃん、オラが降参したときは、兄ちゃんが代わりに戦ってくれねぇか?」
「―――任せとけ、このために練習してきたからな」
◇◆◇◆◇
「―――もし、悟飯が戦えたら悟飯に任せてたと思う。でも悟飯は嫌だもんな」
「…は、はい…」
『……』
全員の目が二人の悟飯に注目する。ピッコロやトランクスは確かに悟飯の爆発力はすごいが、あのセルを倒せるほど?と驚いているし、ベジータはガキである悟飯が自分以上のポテンシャルを持っていることに驚愕を隠せない。
「じゃあ兄ちゃん、頼んだぜ」
「あぁ、行ってくる」
「っ待ってくれ海!お前の秘策ってのは、なんなんだ!?」
セルのもとへ行こうとする海を呼び止めたクリリンに体を向け、笑みを浮かべる海。その顔は、いたずら好きな子供のようだった。
「ひ・み・つ!見てからのお楽しみってな!」
「え、えぇ…??」
崖から飛び上がってセルの前に立った海。傍から見ても海とセルの実力は同じなように見えるし、本当にセルが力を隠しているのならセルの方が断然有利だ。
「…孫悟空の言っていることが本当とは思えないな。どう考えても貴様と孫悟空の実力は拮抗している。なんなら孫悟空の方が少し上な気もする…」
「それは間違ってねぇよ?それでも俺がお前に勝てるってだけさ…」
「ほざけ…!」
共に構えを取り、相手を見つめる。第二回戦が始まろうとしていた。
◇◆◇◆◇
セルの指先が灯り、一度俺の命を奪ったフリーザの光線が複数回飛んできた。といってもただのあいさつ代わりのようで、簡単に弾くことができた。
お返しに気円斬を投げかけてわざと回避させる。一気に近づき、膝蹴りを鳩尾へ叩き込んだ。さすがに疲労があったようで防御はできておらず、呻く声が下から聞こえてきた。
「よっこら、しょっ!」
「ぐおおっ!?」
追撃に両腕を振り下ろして地面に叩きつけ、バウンドした瞬間に背中に掌底を叩きつける。また距離が離れたと思うと、セルが目の前に現れて裏拳を脇に喰らってしまって今度は俺から呻く声が漏れてしまった。空中で態勢を整えた瞬間にセルの蹴りが頬をかすめ、血が一滴顎まで流れた。
「…やはりお前は孫悟空と同じレベルに達している。だが奴ほどのパワーはない。なぜ貴様を孫悟空は指名した?」
「…さすがにこれ以上体力を消費すると負けちまうから、俺も奥の手を切る―――前に、クリリン!仙豆くれ!」
「えっ!?お、おう!」
投げ渡された仙豆をキャッチし、しげしげと眺める。こう考えるとほんと仙豆って凄ぇよな~。病気までは治らんだろうけど、傷であれば絶対に治しちまうもんな。
というわけで~??
「ほれ、セル。仙豆だ、食え」
「は?」
『はぁッ?!』
「おい兄貴、何してんだ!兄貴が食うように仙豆をもらったんじゃないのか!?」
「違ぇよ?セルにやるために貰ったんだ」
「…孫海、気でも狂ったのか?私が仙豆を食えば、お前の勝利は遠のくのだぞ」
「別に構わんよ。それにお前が完全回復しても
「あの馬鹿…!セルの野郎に塩を送ってどうなる!あの野郎に同意したくはないが、気でも狂ったんだろう…!」
「か、海さん…!」
めちゃくちゃ嫌そうな顔でセルが仙豆を食い、疲労感がすべてなくなったのが確認できた。しかもさっき以上の気を解放してこちらを見据えている。
「貴様のその減らず口を消すために、私は本気を出すとしよう。これが孫悟空が感じた私の隠していたパワーだ…!」
「な、なんだこの気は…!?これが、セルの本気…!!」
「地球全体が、震えているみたいだ…」
「…へへ、やっぱあいつ、凄ぇやつだな…」
「く、くそったれ…!」
「海おじさん、頑張って…!」
「気張れよ、カイ…!」
…うん、行けそうだ。さすがに時間が足りるかわかんねぇけど、それは仙豆を渡す前も同じだし変わんねぇな。
「…すごいな、ほんと。勝てる気がしないな」
「なんだ、さっきまでの威勢はどうした?ホラでも吹きたかったのか!フフフ…ハッハッハッ!!」
「―――だけど、それは普通にやったらの話だ」
「…なに?」
セルの気に当てられて少し震える体を抑え、体中の気を制御する。超サイヤ人となってからずっと制御するのが困難だったそれは、なんども練習期間を積むことで可能とした。
「――セル、俺はずっと悩んでた。もしも超サイヤ人のパワーだけで勝てない相手が現れたとき、どうすればいいんだろうって」
「……」
「俺は考えたよ。ただ超サイヤ人のパワーだけで戦おうとするから間に合わないんだって。当たり前だよな?超サイヤ人の壁を越えようとするのに、どれだけ時間がかかるかわかんないもん。そして思いついたんだ。今ある技術を複合させれば、なんとかなるんじゃないかって」
「――まさか、孫海貴様っ!?」
「やっと気付いたか…ッ。だけど、もう遅い…!お前はこれを知っていても、組み合わせる練習なんて、してないもんな…ッ!!」
俺でも実際に組み合わせるのは試せてない。あまりにも負担が大きすぎるから、怪我によって時間のロスが発生する。精神と時の部屋においてそれは絶対に避けたかった。だから肉体と気の制御を今までずっと鍛えていた。おかげで確信できたよ。今なら、できる!
本来なら自殺行為のそれは、この状況におけるあまりにも大きすぎるジョーカーとなる!!
最悪の場合身体中から血を吹き出しながらセルと戦うことを考えてたから心底安心したぜ!!
「行くぞセルゥッ!!」
「待て、早まるな!!」
「かっ、界ィッ!王ッ!!けえええぇえんッッ!!」
超サイヤ人のオーラが紅に染まり、あたり一帯の山が気の解放によって粉々になった。さっき以上のセルの気すら追い越したパワーの反動がすぐさま俺の体に襲いかかる。少しずつ、少しずつ腕や足に筋肉痛のような痛みが発生してきた。これを続けようものなら、自滅するのは目に見えている。
多分だけど、耐えれる時間はそこまでない。今もかなりキツイ…!
だけど、これなら勝てる!!
「短期決戦だ!何もできないと思っとけよオマエッ!!」
「ッは、速い!?」
赤い尾を引きながら飛び上がり、セルの眼前に移動した瞬間に死角から蹴りを放つ。結構深く入ったな、今ので怯んでくれたら御の字なんだけど……立ち上がったか。
もう一度セルへ突っ込むと今度は手刀で反撃してきたので、セルの頭上へ飛び上がりながらその腕を掴み、一回転しながら地面に叩きつける。
「が、はッッ!?」
「もうい、っちょッ!」
掴んだまま今度は逆方向に叩きつけ、また逆方向に叩きつけていく。何度も何度も地面に叩きつけたせいで地面が砕けていくし、しかも地割れが起きてきた。けどかなりセルにはダメージを与えられてる!ならこのまま、上空に投げつけてしまうか!
「ぐおおっ…!!――貴、様ァ…ッ!」
「ハァッ、ハァッ…!」
「か、海の言ってた秘策は、あれのことか!」
「凄まじいパワーだ…!だがあれでは、長期戦に持ち込まれれば自滅してしまうぞ!」
「あの野郎、ずっとこれを隠してきたのか…!確かに秘策といえる…」
「…兄ちゃん、気付いたっぽいな」
「え?お父さん、どういうことですか…?」
「へへへ…秘密!」
「父さん、海おじさんの真似ですか?」
(く、くくく…まさか超サイヤ人と界王拳を組み合わせるとはな…!私でも自殺行為だと考え忌避する行いをその鍛錬によって成功させるとは、やはり孫悟空とは別ベクトルの天才!もしこのままかめはめ波で攻撃しようものなら、負けることは明白だ…)
…空中で静止しているな。かめはめ波でも用意してんのか?…やらないでほしいな。戦ったおかげで、あいつの
「ふ、フッフッフ…!さすがは孫海、まさか貴様がここまでやれるとは思ってなかったぞ…!」
「ハァッ…ハァッ…ふう…。どうした急に褒めだして?勝つのをあきらめたのか?」
「いや、いや…。ここで戦いを終わらせるだけのことだ…!――ぐ!ぐぐ、オオオオオオオッ!!」
「!?」
「せ、セルの右腕が、でっかくなり始めたぞ!?」
「な、なんて強さだ…。ただ見ているだけだというのに、震えが…!」
「カイのやつ、どうやってあれを攻略するって言うんだ…!」
「負けるなよ、兄貴…!」
…かなりデカいな。まともに喰らえば、反動も相まって一撃KOだな。だけどデカいくてパワーが凄いってことは、デメリットもあるよな?
「――吹っ飛べ!孫海ッ!!」
「来い!セルウウウゥゥゥゥッ!!」
ただそこにあるだけで凄まじいプレッシャーを放つ巨腕が空から落ちてくる。喰らえば一撃のそれに界王拳を体に迸らせて突っ込む。真っすぐ行けば行くほど視界いっぱいに広がる腕を見据え、進んでいく。
「兄貴のやつ、なんで突っ込みやがるんだ!?」
「おじさああああん!?」
俺の額に腕が衝突する―――――瞬間、進行方向が直角に折り曲がって腕がすぐ横を通り過ぎた。
「なっ―――」
「行ッけェッッ!!!」
隙だらけのセルを殴り飛ばし、空を駆ける。飛んでいるセルに追いついてさらに空へと蹴り飛ばす。背面からの攻撃に対応できていないセルが仰向けに空へ上がるのを見ながら、両手に気を溜めていく。
「――かぁぁぁ…めぇぇぇ…!はぁぁぁ…めぇぇぇ…!!」
「―――終わり、か」
「波アアアアアアッ!!!」
セルの放ったかめはめ波を超える大きさの極光が、セルへ飛んでいった。そして光があたりに広がって、その姿を飲み込んでいく―――
「ッや、やったのか!?」
「まだ海のかめはめ波が消え切ってないから、判別つかないぞ…!」
「ッすまん、遅れてしもうた!鶴のと桃白白もこっちに来ておる!」
「武天老師様!今、海がセルを倒してくれました!」
「なんじゃと!?そうか、ならよかっ……まて、セルはまだ生きておるぞ…!?」
『なんだとっ!?』
「…何故だ」
「……」
「何故私を、殺さなかった…!」
かめはめ波がセルの横を通り、宇宙を突き進んでいくのを横目にセルがこちらに聞いてきた。
…まぁさっきまで殺し合ってたやつが情けでもかけてきたんじゃないのって考えるよな普通。まったく情けをかけてるつもりは無いんだけど。
「セル、もう終わりだ。俺がお前を殺す意味はなくなった」
「なんだと…!?」
地面に降り立ち、みんなと合流した。悟空を除いた全員がこちらを訝しげに見ている。なんなら一緒に降りてきたセルも同じ視線をしてるな。…あれ、サタン達は?…吹っ飛んで気絶してらぁ。
「俺さ、お前と戦って思ったんだよ。こいつから悪い気がほとんど感じられないって」
「はぁッ!?本当に言ってるのか海!?」
「だけど海さん、こいつはジンジャータウンの人々を殺してるんですよ!?」
「…トランクスの言っていることは本当だ。私はジンジャータウンの人々を吸収した。何故そんな私を殺さない…」
「カイ貴様、甘ったれたことを言うのならこの場で殺すぞ!」
…悪いこといわんからやめとけよベジータ。さすがに反撃するぞ。
「みんなも不思議に思わなかったか?なんでこいつ、ジンジャータウンの人々だけ吸収してそれ以降は刑務所の悪いやつとか動物だけを吸収してんだよ。非効率じゃないか?」
「た、確かに…」
「そういえばカメハウスでテレビを見てた時も思ったけど、なんでセルはテレビ局の人を殺さなかったんだ?もしフリーザみたいなやつなら、誰彼構わず殺してしまいそうな気もするけど…」
「父さんは、どう思いますか?」
「オラか?うーん…オラもホントは悪いやつじゃねぇんじゃねぇかなって思ってんだよな」
「何を馬鹿なことを…私は貴様を殺すために生まれたんだぞ」
「でもオメェ戦ってるとき殺意がなかったぞ?どっちかっつーと戦ってて楽しいって気持ちの方が強かった気がする」
「…!」
そうなんだよ、あまりにもおかしいんだよ。セルゲームで負けたら地球を破壊するとか降参か死亡しか負けを認めないって言ってんのに、殺すつもりがなかったんだよな。戦っててそれに気づいて俺も殺す気が無くなったんだけど…。
「どいうことだセル!貴様、何が目的だ!!」
「……」
目を閉じて考え込むセル。その姿は何かを迷っているようにも見えたし、決断しようと覚悟を決めている姿にも見えた。
「…さすがに戦いの最中で隠すことは困難だったか。失敗だな…」
「失敗、だって…!?」
「そうだ、失敗だ。だが私の目的自体は達成した…訳を話そう。と、その前に…う、おえ゛ッ」
「ッ!17号、18号!」
ずっと無口だった16号が吐き出された二人に近づき、安否を確かめる。クリリンも共に確認し、双方ともに無事なことが確認できた。
そして二人を吐き出したことで、セルの姿が縮んでいったと思えば、最初の姿に戻った。すでにその姿からさっきまでの圧は感じられない。
みんなが警戒しつつもセルを見守り、その口が開くのを待つ。今までであったことのない存在が目的を話そうとするから、かなり集中している。俺ももちろんそのうちの一人だ。
そして全員からの視線を受け止めながら、セルが口を開いた。