暗い。痛い。だるい。そんな気分の中、目が覚めた。
「こ、こは……。…っ!悟空!それに、悟飯も…!」
「ぐ、うう…に、兄ちゃん…!?それに、みんなも…」
悟空と悟飯以外にも、ベジータと未来の悟飯が似たような機器に繋がれて空中につるされていた。
なんとか外そうと藻掻こうとするけれど、左足の痛みがそれを中断させる。
…そうだ、あのあと強化メタルクウラの大群と戦って、その時に左足を砕かれたんだ…!それをきっかけにみんなも追い詰められて、最後は全員が地に伏せた…。くっそぉ…地上のみんなは大丈夫なのか…!?
待て、まずここはどこだ?見覚えが無いぞこんなところ。…いや、メタルクウラがここに連れてきたはずだ。ならここは、あいつらの本拠地のビッグゲテスターか…!ならあいつの本体も居るはず…!
「く、クウラァ!どこに居やがる…!」
―――フッフッフ…お前たちの目の前にいるのが俺だ
「ッ!?で、デカい…!」
「お前が、クウラの本体…!」
二人の悟飯が驚いているように、俺も驚愕していた。目の前にいたクウラは昔の面影を無くし、顔のみとなっていた。しかもケーブルや部品で構成されており、唯一その右目から頬にかけて残る皮膚だけが、あの時のクウラであることを証明するパーツとなっていた。
「貴様、他のメタルクウラはどうした…!」
―――安心しろ、今ここにはいない。もっとも、今頃は地上に残っているサイヤ人と地球人を甚振っているところだろうがな…
「な、なんだって…!?」
機械的な音と共にクウラの目が光り、ウィンドウらしきものが映し出された。そこに映っていたのは、今も地球で戦うみんなの姿だった。
「クリリン!」
「ヤムチャさん!天津飯さん!」
「ッ!ぴ、ピッコロさんも…!」
「あの馬鹿どもも…!」
「じっ様たち、16号…!」
皆、すでに満身創痍の状態だった。全員で円陣を組んだ状態で四方八方から飛んでくる気弾を防御しており、一瞬の隙をついて攻撃を繰り出していく。だが相手は少しの傷も修復することのできる存在で、全くの有効打にもならない。
唯一対抗策となる魔封波も常に警戒されている状態で、じっ様たちを優先的に攻撃対象に入れていることが分かった。事実、16号が三人の盾となっていなかったら、すでに重傷は確定している状態だった。
―――クックック…!やはり最後まで抵抗するようだな。そうでなくては面白くない…!
「ッオレ達を、どうするつもりだ…!」
―――その桁外れな超サイヤ人の生命エネルギーをすべてもらう。特筆して戦闘力の高かったお前たち五人からな…
「なに!?ッ!?うおおああああああッ!?」
「うああああああああッ!!?」
「ああ、ああああああ!?」
「ぐううううううッ!?」
「ぐうううう!!クウ、ラァッ!!っがあああああッ!?」
―――これからメタル超サイヤ人として何万人と持つことが出来るのだ!エネルギーの尽きることのない、無限の兵隊をだ…!そして孫海、貴様は俺の最側近として、いつまでも戦い続けてもらうぞ…!ハッハッハッ!!
ぐうううう!?あ、あの野郎!!ただでさえ、気を使い果たしてるのに…!?皆の悲鳴が、空間に木霊している。その事実を認識して、より一層焦っちまう。まずい、他の四人も、耐えれるかわかんねぇ…!?い、意識が…!
―――いいぞ!もっとだ、もっと吸い取れ!!ハッハッハッハッハッハッ!!
◇◆◇◆◇
いつまでも続くと思われていた絶叫が途切れ、静寂が空間に満ちる。
機器に繋がれていた五人の戦士の顔に生気は無く、目は虚ろで、耐えようと噛みしめていた口の跡が痛々しい。何人かは口の端から涎が垂れており、その壮絶さを示していた。
―――フッフッフ…。吸いきったようだな。超サイヤ人のエネルギーがこれほどとは…ゲロの科学力によって作られた永久エネルギー炉をオーバーヒートさせてしまうほどだったとは、予想外の代物だった。これ以上続けてしまうとこちらが危ないところだった
リスクを考慮して死の一歩手前まで吸収することを取りやめることにしたクウラは、目の前にぶら下がっている五人の戦士を視界に入れてほくそ笑む。もしもこの五人の誰かが生き残り、己に復讐しようとしても勝つ可能性はもう0なのだから。
彼らを打ちのめした強化メタルクウラだけでなく、自身と同等の力を持ったメタル超サイヤ人がそのころには製造されており、しかもその兵力に有限という言葉は存在しない。
そうだ、星一つを覆いつくすほどの兵をクウラはすでに手に入れた。例えばこれが破壊神や魔人ブウといった理外の存在でなければ勝つことは絶対に不可能。
勝利が決まったような状況にクウラは高笑いを上げたくなった。しかし油断はできない。目の前にいる存在は死の一歩手前だろうと這い上がってリベンジを果たす戦闘民族の血が流れる者たち。
機器を外し、あとは遊び心で作った案内ロボに任せればいいだろう。他の仲間も同じように切り刻んでしまえばいい。
クウラは機甲戦隊に任務を任せるために思考を回していた頃を思い出しながら、考えが後処理の方へ寄ってしまう。
だから、これは彼の甘さではなく、几帳面ともいえる部分だった。彼は一つ、戦士たちに約束をしていた。それを彼は忘れることがなかった。
それは、クウラと戦士たちの戦いが始まる直前に彼が決めた、口約束。『セルを爆破した方法は貴様らを倒した後に教えてやろう』、というものだった。
―――あぁ、言い忘れていたな。俺がセルを爆破できたのは、やつがこの時代のセルを回収していたからだ。人造人間を回収するときに、もしものことを考えてポッドの中にいたセルに爆弾を細工していたのだ。まさか未来のセルが腹の中に入れるとは思っていなかったがな…
ピクリと、二人の手が動く。しかし気のせいとも取れるその動きに、クウラは気づかない。そして機器を戦士たちから離そうとした――――その時だった。
二人の悟飯がそのケーブルを掴み、エネルギーを逆流させ始めた。
―――!?なんだ、まだ残っているというのか!?それに回路はもう閉じたはず…いや、違う。これは、まさか…!!
「―――く、う………!!」
「貴様が、セルを……!」
「「ッッ殺したのかアアアアッッ!!!」」
―――まずい――――!!??
二人から放たれた気によって周りの壁が砕け散り、気絶していた三人のサイヤ人が自由の身となって地面に落下した。しかし二人はそれに留まらず、ビッグゲテスターをオーバーヒートさせようとどこまでも立ち上り続ける気を機器から流し込み続けた。
油断を決してしないよう、常に意識を五人に集中させていたクウラは即座に行動に移った。まず流れ込み続ける機器の回路をメタルクウラを製造するための部門に流れるように細工、永久エネルギー炉が貯蓄用タンクとなって時間稼ぎをすることを狙う。
そして地上にいるメタルクウラ達の行動規範の設定。おそらく永久エネルギー炉でもこの気の奔流に耐えることが出来ず、爆発してあふれ出した気によってこのビッグゲテスターが壊滅することが予測される。その余波によって何体のメタルクウラが壊れるかは不明だが、少しでも全滅を避けるために全機体をオートモードに移行させて回路を遮断する。中枢部がダメージを負ってしまえば自壊する機体はあるだろうし命令が出来なければ木偶の棒となってしまうだろうが、完全に自立させてしまえば生き残ったメタルクウラが地球に残った戦士を仕留められるだろう。
そして最後に気を宇宙空間へ放出することで被害を逸らす、と考えたとき、エネルギー炉が爆発しビッグゲテスターが大破した。幸いコアである自分が生きる限りはギリギリで持つだろうが、復旧まではいくら時間がかかるかわからない。
―――っメタルクウラは……くそっ、30体ほどか!人造人間も、20数体…!大半が余波を喰らったか…!まさか、お前たち二人によって形勢を逆転させられるとはな…!
「僕たちのパワーを、舐めたからだ…」
「……ここで、お前は終わりだ。もう何もできやしない」
―――フン、それはどうかな。今も地球のメタルクウラは戦い続けている!お前たちの仲間が生き残るとは思えんがな
「なんだと…!」
「待ってくれ、こっちのオレ。セルが言っていた。このビッグゲテスターが壊れたとき、地球にいたメタルクウラも共に吹っ飛んだって…なら目の前のこいつを倒せば…!!」
「地球も、何とかなる…!」
―――そう簡単に行くと思うな、と言いたいが…あの孫悟空と孫海の息子で甥の貴様らだ。油断は決してできん。その自信と共に、徹底的に磨り潰してくれるわッ!!
クウラがビッグゲテスターから部品を引き出してより機械的な姿を見せたとき、孫悟空と孫海、ベジータの三人が目覚めた。しかしその体はすでに限界を迎え、立つことすらままならない。
されど意地を見せた三人は、瞳を翡翠に、髪を金色に染め上げてクウラを睨みつける。どこまでも徹底抗戦であることをその在り方が示していた。
―――やはり我が一族の前に立ちはだかるのは、サイヤ人以外ありえんということか…。いいだろう。貴様らまとめて、消し炭にしてくれる!!
「行くぞ、こっちのオレ」
「行こう、未来の僕」
言葉少なに、二人は同じ動きを取る。右半身を後ろに引き、腰で両手を合わせ、全身の気を集中させる。
「かぁ……めぇ……!」
両の手の間に灼熱を思わせる光が出現し、光がどんどん増していく。
―――俺はあの時と違う。二度目は、決してあってはならないッ!!!
「はぁ……めぇ……!!」
光が、最高潮に達する。
―――吹っ飛べエエエエエエエェェェェッッ!!!
「波アアァァァァァァッッ!!!」
一筋の破壊光線と二本のかめはめ波が衝突し、火花を散らす。片方が押せばもう一方が押し返す。しかし決着はすぐにはつかなかった。
クウラの余力がある様子と対照的に、二人の悟飯の顔には焦りと冷や汗が見受けられた。
限界を超えた怒りによって覚醒し、今の自分たちを遥かに凌ぐパワーを得た二人の力にしてはあまりにもおかしいと思った三人のサイヤ人。違和感の状態に気づいたのは悟空だった。
「…そうか、クウラのやつにエネルギーを吸い取られすぎたんだ!気絶するぐらいに吸い取られちまったから、完全なパワーを出し切れないんだ…!」
「つまり、すべてのパワーを出し切る体力が悟飯たちには無い、ということか…!?」
「なら、俺達のエネルギーを―――!!っが、ああ!?」
「うわあああッ!?」
「ぐ、ううううう!?」
―――そう簡単にさせると思うなよ…!
「お父、さん…!」
「ベジー、タさん、海おじさ、ん…!」
残り少ないエネルギーを渡そうとした三人の体にケーブルが巻き付き、その体を締め付ける。すでにボロボロだった体からは血が染み出し、巻き付くケーブルに垂れて地面に滴り落ちる。
三人を助けようにもクウラから放たれる破壊光線に耐えることで精いっぱいの二人が歯噛みするも、現状が好転することはない。
そして、ついに拮抗していた光線の押し合いの戦況がクウラに傾き始めた。光線同士の中心点で押し合う衝突部分が悟飯たちのもとへ近づき、少しずつ、少しずつクウラの光線が太く強くなっていく。
クウラの血反吐を吐くような声と、二人の悟飯の食いしばる声が響き渡り―――臨界点を超えた光線同士の爆発によって、ついに二人の悟飯が吹き飛ばされた。
―――ハァッ!ハァッ!か、勝ったぞ…。俺は、貴様らに勝利した!ハッハッハッハッハッ!!さぁ、止めを刺してやる!!
◇◆◇◆◇
地上にて。ついにメタルクウラ達の包囲網によって二人のサイヤ人が気絶し、界王拳の反動によってクリリンたちが立つこともままならなくなった。ピッコロはその再生力を活用して盾となりつつ何度もその鋼の肉体を削り続けていたが、ついに限界を迎えてサイヤ人達が連なった山に倒れ伏した。
残った人造人間16号もその体から部品が垣間見え、いつ機能を停止してしまってもおかしくはない。常にメタルクウラの最優先標的となっていた亀仙人たちもその足で立つことはできていても、連続で魔封波を放ったことによる反動によってまともに動くことが出来ずにいた。後一回でも魔封波を放てば、誰か一人は死んでしまうことだろう。
「つ、鶴の…まだ、行けるかの…?」
「げ、限界じゃよ…あと一度放てるか、どうか…」
「亀のも、兄者も、よく耐えておる…。儂らだけで一体、何体を封印したのだろうか…」
「さすがは、武の達人と呼ばれた仙人と、肩を並べたものたちだ…。あなたたちが居なければ、おそらく持久戦に持ち込むこともできなかった…」
「まさか通常の超サイヤ人に届くことのできない戦闘力を持った者が、ここまでやるとはな…。貴様らを警戒するあまり、かなりの時間を稼がれてしまった。さらに言えば、何体ものメタルクウラと人造人間の動きを封じられてしまった。この戦いにおけるキーマンは貴様らだったようだな」
メタルクウラのその言葉に嘘はなかった。超サイヤ人となり壁を越えた悟空とそれを追い越そうと限界に挑戦し続けるベジータ。誰よりも可能性を秘めた潜在するパワーを持つ悟飯たちと超サイヤ人と界王拳を組み合わせるという自殺行為まがいの技を技術へ昇華させた海だったからこそその鋼の肉体を消し飛ばすことに成功した。
さらに言うなら、その相手は一体ずつのメタルクウラと人造人間だったからこそそのパワーを集中させて破壊できた。
今目の前にいるのは何十体ものメタルクウラと人造人間であり、例え五人がいたとしても一体破壊できるかどうか。
一人も死なず、気絶したものたちを庇いながら持久戦に挑み続けることが出来たのは、格上殺しを可能とする魔封波を何度も使用可能とした亀仙人たちがいたからこそだった。絶対に攻撃が三人に向かないように身を挺した他の戦士の活躍があったのも間違いではない。
もしも彼らが合流しなければ、メタルクウラ達はその頑丈性と不死身まがいの再生能力を使ったごり押しで一人一人仕留めていた。
「孫悟飯たちのエネルギーによって本体との連携を取ることが出来なくなったとしても、今この場で貴様らを倒すことは容易い。まずは亀仙人、貴様から捕えさせてもらおう…!」
「ぐっ…!万事、休すか…」
「「亀の――!!」」
「武天老師――!!」
「貴様らは動くな!」
ついに庇うことが出来なくなり、鶴仙人たちに攻撃が届いてしまった。そして16号もまた耐えることが出来ず、倒れ伏す。
「つ、鶴の!桃白白!16号…!!くぅぅぅッ…だがこれで終わりはしない…!儂の最後の魔封波で、一人でも連れて行く―――!!」
そして残った亀仙人がその命を賭し、最後の魔封波を放とうとした。
その時だった。衝撃波を放とうとしたメタルクウラ達が、
◇◆◇◆◇
それは、止めを刺そうとその瞳に全エネルギーを集中させて放とうとしたクウラにも伝わった。
あまりにも不可思議だった。メタルクウラ達のシグナルが少しずつ消えていき、感じられなくなることはさっきからあった。おそらくそれは魔封波によるものだと予測できる。
しかし今感じたのは何かによって破壊されたシグナルの消え方だった。しかも8つ同時に。もしもメタルクウラを破壊できるとすれば、目の前の戦士たちレベルのものでなければ不可能。
ならば、いったい誰が?その疑問は口に出て戦士たちの耳に届いた。
―――貴様ら、どうやってメタルクウラを破壊した!?まさかドラゴンボールを使い、トランクスを…!?
「は…?」
「どういうことだ…?メタルクウラを、破壊した?」
急にクウラの耳に届いた事実によって、ケーブルの締め付ける力が緩んだ瞬間だった。
何かが瞬間移動によって現れる音が聞こえ、気円斬らしきものが三人を縛るケーブルを切り飛ばした。
―――何っ!?
「「「!?」」」
「「皆さん!!」」
「やぁ諸君、遅れて申し訳ない。ガラクタ掃除に手間取ってしまってね…」
全員が目を向けた先にあったのは、体中にスパークを起こして仁王立つ、完全体セルの姿だった。