ロケットスタートの反動でガクンガクン揺れる視界が収まり、ようやく周りが見えるようになった。どうやらレールの先にあったトンネルを通ってバトルゾーンに向かうようで、他の三人もいるのが見えた。
悟空と悟飯はホログラムの映像を楽しんでいるけど、ベジータは落ち着いた様子でホログラムを見ていた。
俺も同じようにホログラムを見ていると、トンネルを抜けたようで火山のような場所にたどり着いた。
というか機体の制御が効かない状態で着いたから溶岩に落ちそうになったぞ!安全性がなってないんじゃないか?
「そもそもなんで本物の溶岩があんだよ、掘り当てでもしたのか?」
思わず溢れた本音を垂れ流しながらバトルゾーンを散策する。まずは銀河戦士を倒してからエレベーターに乗らないといけないため、探す必要があるんだよな。だけど奴さん、どうやら気を消す技術を身につけているようで島全体を集中して探しているけどそれらしき気配が見当たらない。悟空達の気配はあるんだけど…。
と、ここでようやく人影が見えた。溶岩の煙で見えなくなってるけど、確かにそこにいる。
「あんたが俺の相手か!気を消せるやつが俺達以外にいるなんて知らなかったな」
「………」
「…?なぁ、なんで返事も無いんだ。テレビで見た時は明るかった印象があんだけど…」
近づくにつれて煙が晴れ、相手の容貌が確認できるようになった。
まず確認できたのはその特徴的なオレンジの髪だった。腰まで伸ばされたその髪はその姿によく合っているように感じた。さらにその肌は青い色をしていて、地球の人間とは考えづらいものだった。
テレビで見た4人の誰とも合わないその姿に、足が立ち止まる。
「…あんた、誰だ」
「ヘラー一族が一人、ザンギャ」
名乗りを上げたザンギャという女性は軽やかな動きで浮かび上がり、見かけによらない威力のパンチを放ってくる。
両腕で防いだものの、次に放たれたハイキックは防げず横にあった岩壁に叩きつけられた。
思ったよりもやるな、彼女。普通に闘ってたら負けるかもな…。
というより、ヘラー一族?聞いたことない……あ、いやあるわ!界王様がなんか言ってた気がするぞ。えーとなんて言ってたっけ…。確か、あの世で修業している時に―――
◇◆◇◆◇
『悟空、海!まずいことになった…』
『どうしたんだ界王様!いつも青い顔がもっと青くなってんぞ!』
『なんです界王様、俺今地獄の魂洗浄機ってやつの見学に行ってたんですけど…』
『そんなものは置いておくんじゃ!ボージャック一味が復活してしもうたんじゃ…!』
『『ボージャック一味?』』
『その昔、ボージャック一味というヘラー一族で構成された者たちが銀河を荒らしまわったことがあった。その恐ろしさから、わしら界王によって銀河の果てに封印された存在じゃったんじゃが、伝説の超サイヤ人が南の銀河を破壊しつくしたことで、南の銀河にあったその星が破壊されてしまったんじゃ…。今さっき南の界王から伝えられたことが本当ならば、ボージャック一味は地球を目指して進んでいたらしい』
『そんな凄ぇやつが地球に向かってんのか!?』
『その一味は今どこに?』
『わからん…南の界王率いる討伐隊を再起不能に追い込んでからは、行方知らずなのじゃ。もしかすると、すでに地球に潜伏している可能性がある…』
◇◆◇◆◇
―――こうだった、かな?となると目の前のザンギャって人は、そのヘラー一味のメンバー…。いつ銀河戦士と入れ替わったんだ。
こうなってくると、他のみんなのもとにもヘラー一族がいるもんだと思った方がいいな。
「何しに来たかは知らんけど、負けてやるつもりはないぞ!ハアアッ!!」
「へぇ?髪が金色に…超サイヤ人ってやつかい?」
超サイヤ人へと変わってザンギャへ拳を振るう。バックステップで回避されるが、構わずラッシュを仕掛けていく。しかしどれも回避されるか攻撃を逸らされるかで本人には命中せず、返す刀でアッパーを貰ってしまった。
今度はこっちが距離を取ると紫色に光る糸らしきものがあたりに張り巡らされる。どう考えてもやばい。近くを通っただけで肌がチリチリする感覚がするし。
あの糸がザンギャの武器だとするとこの閉鎖空間で戦うのきついな?いくら超サイヤ人2に成れたとしても…。もっと広い場所に行きたいし、壁ぶち破ってとなりのゾーンに行くか!
「つーわけで移動させてもらうな!」
「ちぃっ!逃がすか!」
気弾で壁を爆破して開けた空間に飛び込むと、後ろからザンギャが追ってきた。何が目的かは知らないけど、よからぬことを考えてんのは確かだな。銀河中を荒らしたって話だし。
…というか、この街はなんだ?一昔前の建築物っぽいけど…。
「カイ、なぜ貴様がここにいる」
「って、ベジータ?ここに来てたのか!」
声を掛けられたので後ろを見ると、そこにベジータは立っていた。その足元にはザンギャのような服装をした少し白めの肌色をした男が倒れていた。恐らくだが、ベジータの相手の銀河戦士に成り代わったヘラー一族だろう。
息の根は…まだ止まってない。止めを刺す直前で来たみたいだ。
……というか、ザンギャが付いてこなくなったな?急にどうしたんだ……。
「ベジータ、さっさとそいつをどかしやれ。そいつの親玉がどこかに居る筈だ」
「ほう……こいつの親玉がいるのか。ならそいつは俺がぶっ殺してやる!」
「やれるものならな…」
「「!?」」
ナチュラルに会話に入ってきた男がベジータを蹴り飛ばし、俺めがけて気功波を放ってきた。幸い防御態勢は取れていたから、家の中に突っ込むことで衝撃を少し軽減できた。
でもこいつ、ザンギャ以上のパワーを持っていやがる……。ベジータは大丈夫か?もろに蹴りが入ってたけど……。
「あ!兄ちゃん!」
「おじさん!」
「悟空、悟飯!二人もここに来てたのか!」
屋根を吹っ飛ばして外へ出ると、悟空と悟飯が共にさっきの男と睨み合っていたところに飛び出したようだ。
少し遠くの方からベジータも戻ってきてこっちは四人になったけど、向こうは五人で集まっている。その中心はさっきの男……多分ボージャックその人だ。他の4人よりも巨体で、笑みを浮かべるその顔は何処かの海賊のように思える。
いつの間にか意識を取り戻した剣士も含めた部下らしき4人がボージャックに頭を下げるのを見れば、確かな関係性があるのがわかる。
さっき、不意打ちとはいえ超サイヤ人だったベジータがやられたのを見るに、超サイヤ人2じゃないと戦うのは少しきついな。それにあの糸のこともある。集団戦は向こうに分があると見た。ボージャックを誰が相手するかだな……。
「小僧、地球は良い星だな…」
「オメェら、界王様が言ってたボージャック一味ってやつだな!ここに何しに来た!」
「たった今から地球をボージャック様が支配されるのだ」
「何だと…?」
「ボージャック様は銀河で敵なし!」
「銀河の中で最も美しい北の銀河、その中でも最高の星である地球…」
「ボージャック様こそ、この星を支配する人に相応しい。逆らうものは…殺すのみだ」
剣士らしき一人がそう言うと、ボージャックが抱えていた何かが投げ渡された。それを見た悟空と悟飯の息を飲む声に釣られて、様子を確認すると……そこには、クリリンとヤムチャ、天津飯にピッコロが気絶した状態で倒れていた。
「そいつらはついさっき挑んできた奴らでな。つい興が乗って、全員まとめて伸してやった」
「ッボージャック…!絶対に許さねぇ!!三人とも、行くぞ!!」
「はいっ!」
「あぁ」
「勝手にしろ…!」
未来の悟飯たちがいないのが気にかかるけど、今は目の前のこいつらを倒すのが最優先だ!気合入れていくぜ!
◇◆◇◆◇
サイヤ人達が超サイヤ人へと変化して飛び出すと、すでに戦闘態勢に入っていたボージャック一味はそれぞれ別方向へと散開する。散らばった一味に対してサイヤ人もそれぞれがそれぞれの相手へと向かい、格闘戦を仕掛けていく。
ブージンは悟飯、ビドーは悟空、ザンギャは海、ボージャックにはベジータが戦い始める。唯一残ったゴクアがボージャックへの助力に向かおうとした瞬間、ゴクアの直感が何かを察知した。振り向きざまに剣を振りぬけば、真後ろから放たれた気弾を切り裂くこととなった。
さて何が来たのかと思えば、そこには二つの人影があった。一つは巨漢で髪が無く、もう一つは足にまで届きそうな長髪の男。
実は未来の悟飯たちが観客の人の安全を確保しようと奔走していたのを手伝っていたために、一足遅れて駆け付けたラディッツとナッパだった。
すでにその姿は黄金のオーラを纏い、いつでも戦えることが理解できる。
「なるほど、俺の相手はお前たちか」
「みたいだな。おいラディッツ、俺が前に出るからお前がやっちまえ」
「あいよ…」
ところ変わってベジータとボージャックの戦い。不意打ちを貰いダメージを負っているとはいえ、戦闘における天才であるベジータは自身とボージャックの間にある差というものを冷静に分析していた。
現在は拮抗した戦いとなっているが、目の前の存在は本気を出していない。そしてその本気が出てくるとなると、超サイヤ人のままの自分では太刀打ちできない可能性がある。
故に、今ベジータに求められるものはただ一つ。準決勝にて海が見せた、超サイヤ人2の維持をものにするしかない。
そう結論付けたベジータは笑みを浮かべる。そこには勝利への道の容易さへの笑いと、己は絶対に壁を超えるという自負が感じられた。
それを感じ取ったボージャックは嫌な予感が脳裏をよぎる。確かにダメージを負い、自分よりも戦闘力の劣るはずの目の前の存在に余裕が削られていくのを感じる。
「フッ。お前が何を狙っているかは知らないが、さっさと終わらせてしまうか!!」
「っ来るか!貴様の本気が!!」
何度も打ち合っていた拳が力み、ベジータの防御へと突き刺さるたびにその衣服を引き裂いて肥大化する。そしてターバンとマントが布切れになったころには、変化したボージャックの肌と戦闘力が露わとなった。
ベジータの予測は正しく、通常の超サイヤ人では太刀打ちできない戦闘力をボージャックは秘めていた。しかしベジータは恐れていなければ、動揺もしていない。ただただ笑みを浮かべ、ボージャックを見ている。
「どうした?おかしくなって笑うことしかできないか」
「いや?おかしくなどなっていない。ただただ楽しみなだけだ」
「何…?」
「俺達サイヤ人に、不可能はない。超えることのできない壁があったとしても、砕いて突き進むだけだ!ハアアアアアアアアアッッ!!」
「っ!?なんだ、このパワーは…!?」
ベジータの変化に気づいたのは、他のサイヤ人と一味も同じだった。一味も同じようにその姿を変えて本気を引き出し、結界を作ることで目の前の敵を排除しようとする。
しかしその企みはベジータのように高まる気の放出によって阻害された。それはたった一人のものではなく、何人もの気の高まりが辺り一帯の大気を震わしている。
悟空も、海も、悟飯もベジータが限界を超えようとするのに合わせ、自分たちの限界へと肉体を引き上げていた。
「悟飯、オメェの真の力を見せてやろうぜ!」
「はい!っこれが僕の、本気だ…!!」
勉学に励みながらも海と悟空の三人で修業をすることがあるため、その力の引き出し方を少しずつ身に着けてきた悟飯の体から他のサイヤ人以上の圧が放たれた。
そして悟飯が超サイヤ人2へと変化するのに合わせ、三人のサイヤ人も超サイヤ人2へと至る。ベジータもまた、この土壇場で超サイヤ人2の維持を成功させるのだった。
目の前の存在に動揺が隠せないのはボージャックだけでなく、他の一味も同じだった。当たり前だ。ボージャック以下だろうと思っていた敵が一気にパワーアップしたかと思えば、ボージャックに肩を並べるどころかそれ以上のパワーを発し始めたのだから。
さらに言うと、ボージャック一味は気づいていないがバトルゾーンの入り口には気を消してすぐにでも加勢できるように潜伏している未来の悟飯とトランクスがいる。未来悟飯は超サイヤ人2に至れるし、トランクスはベジータのように超サイヤ人2へと変身することはできていた。
ゴクアが相手をしているラディッツとナッパは超サイヤ人2に変身できずとも、タッグを組んだ二人の厄介度合いは超サイヤ人2に並んでいる。
例え結界を作り直したとしても、抑えきることのできないパワーで強引に突破されるだろう現状。あえて言おう、詰みである。
しかしそれで終わるのであればボージャック一味が銀河で恐れられるわけがない。後ずさりしてしまう部下にアイコンタクトを取り、均衡をこちらへと傾けることを決心する。
そのためにもまずは、一人を確実に削る。ターゲットは……この中でパワーに劣る、ラディッツだった。
空気が凍ったかのように状況が固まり、何かの合図で戦いが再開することをチリチリとピりつく肌で感じるボージャック一味。
いつでも動けるように構えを取るサイヤ人。
合図は、レール上から突進してきたサタンの機体が暴走する音だった。
結界を作り出すべく五人がラディッツに力を向け、サイヤ人がそれぞれの相手へと飛び出す。
このとき、もしもボージャック一味が無事にラディッツを捕えることが出来たのなら、ラディッツは決して軽くはない傷を負っていただろう。そう、無事に捕えることが出来たのなら。
ボージャック一味の不幸は、暴走するサタンの機体がビドーへと突撃したことで結界の生成が遅れてしまったことだ。
一味に走る一瞬のざわめき。勝負はその一瞬の硬直で決まってしまった。
それぞれへと突き刺さる拳、蹴り、気功波。あるいは三つすべて。
ボージャックは自身へと突き刺さったベジータの足を直に感じながら、悔しさと共にその意識を閉ざした。
一方サイヤ人はと言えば。それぞれが相手をした一味が動かなくなったのを確認し、超サイヤ人2の姿を解く。
勝負は決した。地球の戦士の勝利という形で。
「か、勝てた…」
「悟飯、やったな!」
「っ!はい!えへへ…」
「凄いなベジータ、あんな土壇場で超サイヤ人2を維持するなんて…こりゃすぐ次の超サイヤ人にもなれるかもな!」
「舐めるなよカイ。いつまでも貴様とカカロットに負ける俺ではない。いずれ貴様ら諸共抜き去り、俺が一番になる…!」
「おいラディッツ、俺らもうかうかしてらんねぇぞ!クリリンたち巻き込んで鍛えなおすぞ!」
「ふん!言われなくても…!」
天下一大武道大会の決勝はご破算となったが、戦士の顔に後悔はない。さらなる強さを目指して進む。
倒れたボージャック一味を回収して、彼らは帰路に着くのだった。
ボージャック一味は生きてます。
ボージャック達にはバーテンダーとかウェイターとかが合いそうだなと思う自分が居ますが、皆さんはどうでしょうか?