ドラゴンボール ~もう一人の兄~   作:龍玉

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大会終わり!

 

『入社(強制)』

 

 天下一大武道大会が終わった。決勝戦は本来の銀河戦士がいなくなったことやなんやらが関係して有耶無耶になったけど、サタンがなんとかしたという形に収まった。

 そして現在、クリリン達が産業組合サイヤの経営する病院で入院している間に、俺はボージャック達の雇用の準備を進めていた。

 

 あの後一味を気絶させたはいいものの、そこからトドメを刺すという気分に全員がならなかったのでボージャック達は全員生きている。

 ベジータは超サイヤ人2の維持に成功できて満足したみたいでボージャック達の生死に興味を示さなかったし、悟空もわざわざ殺す必要がないんじゃないかと言っていた。クリリン達にも聞いてみたけど、負けたまんまじゃ悔しいからリベンジしたいって燃えてる感じで反対は出なかった。

 まぁ最悪の場合は俺達で止められるって分かってるしな。

 というわけで、ボージャック一味をうちの社員として雇用することにした。所謂保護観察というやつだ。このことを本人達に伝えるのは全員気絶したまんまだから起きてからになるけど…別に大丈夫だろう。

 

 それに通常の超サイヤ人じゃ勝てない奴らなんだ。修行相手にはもってこいじゃないか?搦手の超能力も使えるし。

 まぁ問題は、アイツラに何させるかだなぁ…。農業はできるかわかんないし、だったら何か別のことやってもらいたいから…俳優でもやってもらうか?映画業にも手を出したくもあるし。全員声もいいからできんじゃね?

 

「――というわけで、ボージャック達には映画俳優をやってもらおうと思います!」

 

「頭がおかしいんじゃないかお前」

「確認しておくが、俺達とボージャック様はお前たちを殺そうとしたんだぞ…」

「我らを治療し、あげくの果てには自分の企業に雇用して俳優とやらをさせようとは…」

「理解できん」

「あんた本当に社長なのかい?楽観的すぎやしないか」

 

「ひっでぇ言われよう」

 

 一味のいる病室で俺達側で考えたことを伝えるとボロクソに言われた。悲しい…。

 しかしこの程度で諦めるものか。少しずつ飯とか酒で懐柔していって地球に染まっていってもらうからな…。その道中で罪悪感が芽生えるかもしんないけどそこはあれだ、コラテラルダメージってやつだ。

 

◇◆◇◆◇

 

『誇り』

 

 未来の悟飯たちが未来へ帰り、ボージャック一味を料理とかその他諸々で懐柔し始めてから少し経った頃。俺はじい様と鶴仙流一派のみんなを連れて占いババ様のもとにやってきた。

 天下一大武道大会が終わって時間ができたので占いババ様に報告すると、「弟と鶴仙人たちをつれてきてちょ」と言われたので5人と一緒に来たのだ。

 呼んだ五人は全員快諾してくれたものの、俺もなんで呼ばれたのかは詳しく知らないという状況に首をかしげている。そりゃそうだよな、だって俺も「俺に感謝したい人がいる」ってことぐらいしか聞いてないし。

 

「おーい姉ちゃーん!久しぶりじゃの~!」

 

「おぉ来たのか。他のものもいるようじゃな」

 

「お久しぶりです!」

「「こんにちは」」

「「どうも」」

 

「のう姉ちゃん。なんで海だけじゃなくわし等も呼んだんじゃ?皆目見当つかんのじゃが…」

 

「そう疑問に思わんでも、すぐにわかるわい」

 

 そういうといつものように水晶玉に乗ったまま移動する占いババ様。付いて行った先は、子供の時に戦った舞台だった。あの時と変わらない舞台に少し懐かしさを感じていると、入り口から一人の男性が出てきた。どうやら占いババ様が呼んだ人らしい。…なんでかじっ様の時みたいにキツネの面を被ってる。もしかして誰かの知り合いか?

 

「さて、折角来たのじゃから試合をしてもらおうかの!弟、お前さんが戦うんじゃ」

 

「わしがか?呼ばれた海ではなく?」

 

「そうじゃ。こちらもそれを望んでおるんじゃよ」

 

 占いババ様がそういうと、口を開かない男性が肯首する。どうやら本当にじい様と戦いたがっているらしい。

 じい様も納得したらしく、舞台で男性と向き合う。すでに俺たちは舞台袖に降りているから観戦するつもりだ。相手はかなり武術に長けてる人みたいだから、ちゃんと勉強しておきたい。

 

「それでは、よろしくお願いします…」

 

「……」

 

 言葉はないものの、そのお辞儀をもって挨拶を返す男性。そして共にお辞儀を終え、構えを取り………風が舞った。

 

「むぅ…?!」

 

「……ッ!」

 

「亀が回避に移った!?」

 

「まさかあの男、今の亀と遣り合えるというのか…!?」

 

「…白白様。恐らく違うと思われます」

 

「「なにっ!?」」

 

「あの男性、先んじてパンチを放つことでじい様の動きを潰しながら蹴りを放った。でもスピード自体はじい様の方が上だったんだよ」

 

「つまりあの者は、亀の動きを完全に予測して攻撃を放ったということか…!」

 

「すごいね天さん!それだけ先読みが上手いってことだね!」

 

 餃子がそう言うも、天津飯は黙りこくったまま試合を注視している。何度か口を開こうとしているのを見るに、確信が得られない状態だから返事ができないってとこかな。

 実際、俺も先読みじゃないと思ってる。感覚的な話だけど…先読みなら、ほんの少しでも視線がじい様の手とか足とかに向くはずだ。いくら面でわかりづらくても首の動きを見ればそれぐらいわかる。でもあの人は一切首を動かさずじい様だけを見ている。動きというより、じい様の様子を見ているような…。

 

 俺達が考察している間に試合は終わりへと突入していたようで、じい様が足払いをかけて態勢を崩した瞬間に首元へ肘鉄を放った。

 でもそれは寸止めだったようで、男性が吹っ飛ぶ様子はない。男性側はその寸止めを認識していたのか、構えを解いてじい様を見ていた。

 そのじい様は、肩を震わせながら相手を見ていた。

 

「…わしもかなり年を取り、すでに我が弟子たちへ次の時代を託した身…。されど、耄碌した覚えはありませぬ…!」

 

「…」

 

「戦っているうちに気づきましたのじゃ。この動きと戦い方を、わしは知っていると…。

…そうでしょう、武泰斗様…!」

 

「「なんじゃと!?」」

 

「「「武泰斗様?」」」

 

「…ふっ。息災のようで嬉しいぞ、亀」

 

 じい様がそう言うと武泰斗様と言われた男性が仮面を取り、素顔を晒した。その顔からはどこか厳格な雰囲気がありながらも、静かな森のような優しさを感じた。そして何より、その立ち振る舞いからは拳法の達人であることもわかる。じい様たちの様子を見るに、二人の師匠なんだろうか。

 そう考えていると、武泰斗さんに呼ばれた。どうやらお礼を言いたいらしく、近くに来てほしいらしい。他のみんなと共に傍へ行くと、武泰斗さんに頭を下げられた。

 

「え、ちょっ…!?」

 

「「先生!?」」

 

「…海殿、あなたへ感謝したい。海殿が居て下さらねば、亀と鶴の亀裂は埋まらなかった…」

 

「わ、わかりましたから、頭上げてください!それに、亀裂って…」

 

「…儂はあの世で見ておりました。ピッコロ大魔王が海の底に沈められた時も、復活した時も、そして空からの脅威が襲い掛かってきた時も…」

 

 頭を上げた武泰斗さんから語られたのは、彼があの世に行ってからも見守っていたということだった。それはじい様たちの亀裂から始まり、クウラがやってきた今に至るまで…。

 武泰斗さんはその最中に起きたじい様と鶴仙人の融和と、三人が地上でメタルクウラ相手に死力を振り絞り抗った姿を見て涙を流し、二人が力を合わせるきっかけとなった俺にお礼を言いたくなって占いババ様に相談したんだとか。そして占いババ様がじい様も呼ぼうと考えた結果、じっ様のように顔を隠して試合へ臨んだ。

 

「亀、そして鶴よ。お主ら二人はあの悪夢と言える戦いに希望を捨てず、例えその身を削ろうとしても地球の為に戦った…。儂は嬉しかった。一度分かたれた亀と鶴が共に力を合わせ、誰一人として死なせずに耐えきるという偉業を果たしたのだからな…」

 

「先生…」

 

「……」

 

「?兄者、どうかしたのか」

 

「…先生、申し訳ありませんでした…!」

 

「「鶴仙人様!?」」

 

「鶴…!?」

 

 二度と会えないと思っていた人と再会できた喜びが浮かんでいたかと思うと、鶴仙人から堰を切ったように謝罪の言葉が飛び出した。

 その表情は後悔に塗れ、懺悔する人のように青くなっていた。

 

「わしは先生がピッコロ大魔王を封印し、平穏が訪れたときにその心を腐らせてしまった…!先生の教えを忘れ、力だけを追求して桃白白達を巻き込んで道理を外れるような生き方をしてしまったのです…!わしは、先生に向ける顔が無い…!」

 

「鶴…」

 

「兄者…」

 

「~~ッ武泰斗様!どうか鶴仙人様をお許しください!」

 

「ぼ、僕たち鶴仙人様が居なかったら、生きていくことなんてできなかったんです!」

 

「武泰斗様、わしからも頼みたい。兄者はわしと共に心を入れ替え、無幸の人々を助けるための修行を積んできたのです。どうか…」

 

 俺とじい様が見守る中、天津飯たちが鶴仙人を庇っている間も武泰斗さんは優しい目を鶴仙人に向けていた。それは確かに弟子に向ける師匠の目で、慈しみも含んでいるようにも思えた。

 

「鶴よ、謝ることはない。確かにお主は人の道理を外すような生き方をしただろう。だがお主は確かに心を入れ替え、過去の生き方に苦しみ、悩んだ。そしてその力を正しい方向へ使い、人々を救った。十分に償いはしたはずだ…よく頑張ったのう、鶴よ…」

 

「ッッ!せんぜい…!!うっ、うぅっ…!」

 

 我慢が出来なくなったのか、サングラスの下から濁流と見間違える量の涙が溢れてきた。嗚咽が響き、その背中を摩る天津飯達のように武泰斗さんも近くで膝をつき、その肩に手を置いた。その顔は、弟子の成長に喜ぶ師匠の顔だった。

 

「鶴よ、よかったの…」

 

 俺の隣で小さく呟くじい様。そのサングラスからも、一滴の涙が流れたように見えた。

 

 




次回、魔人ブウ編。
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