ドラゴンボール ~もう一人の兄~   作:龍玉

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異常事態

 

 少年の部の試合が始まり、悟天とトランクスの試合が始まった。それまでに力の差がわからない選手が二人にボコされて隣にいたおばさんが発狂する場面があったものの、予定調和というべきほどに決勝まで進んだ。ぶっちゃけあの二人以外に強い子供ってリンかアラレちゃんぐらいだと思うけど…いや待てアラレちゃんって今何歳だ?…考えんとこ。

 

 ちびっこ二人に応援を投げかけるリンを見ながら、ふと疑問に思ったことがあった。

 

「そういやベジータ、トランクスはどんな修行してたんだ?悟天は俺達と一緒に修行してたけどさ」

 

「トランクスは俺が重力室にいると勝手に入ってくる。何度も入ってるうちにあいつも慣れてきたようだ」

 

「は~…トランクスのやつ、まだまだちびっこだってのにもう重力室に入れてんのか!悟天はどこまで行けっかな」

 

「少なくとも、トランクスより軽い重力でギブアップするだろうけどな…」

 

うわっ凄い自慢気。未来のトランクスが来てからトランクスに構うことが多くなったってブルマさんが言ってたけど、親の気持ちってやつが強くなってきたのかね。トランクスがベジータに追いつこうって頑張ってるのもあるんだろうけど。

 

 試合の方へ目をやると、悟天が上空からの突撃をするもトランクスが超サイヤ人になりつつあらぬ方向へ飛んでいった悟天に攻撃することでそのまま場外判定になった。悟天が超サイヤ人になったトランクスに不満げだったけど、おもちゃが貰えるって聞いて気分を治したようだ。

 

 その後、サタンとの試合となったトランクスが軽いパンチで吹っ飛んだサタンに唖然とする一場面があったものの、無事少年の部がトランクスの勝利という形で終了した。

…なんか、ベジータが悟空だけじゃなく俺にまでドヤ顔を向けてくる。なんだよ、「悟天に勝利できたのなら貴様の息子にも負けんぞ、トランクスは」って言いたそうだな…。腹立ったから額にМ書いてやろうかテメェ。

 

「兄ちゃーん飯食いに行こうぜー!……二人して何してんだ?」

 

「んー?ベジータにちょっとな」

 

「貴様、その手に持ったペンはなんだ!?何故俺の額めがけて振り下ろそうとする!」

 

「腹立ったから」

 

「何がだ!?」

 

「おい兄貴、そろそろ行くぞ!俺達が全部食っちまうぞ」

 

 クッソ綺麗に避けやがる。かすりもしなかったな…まぁ別にいい。試合でぶっ飛ばしてやればいいしな。そう思ってベジータに威嚇すると鼻で笑われた。キレそう。

 

 そんなこともありながら、昼休憩に入った。昔の料理は骨付き肉だけだったけど、最近の天下一武道会ではラーメンとかステーキとか手の込んだ料理が出てくるようになったみたいだ。

 18号とピッコロは飯を食わないから二人の前に皿の山が積み上がるのを見つつ、みんなと一緒にどんどん料理を腹へと詰め込んでいく。後から来たビーデルさんが料理を書き込んでいく俺たちの姿を見て呆然としてる。修行の時も見たはずだけど、他の面子も同じくらい食ってるからまた驚いてんのかな。

 

 飯も食い終わり、くじ引きの時間になったようなので会場に向かうことになった。すると目の前に、見たことのない肌をした二人が立っていた。…いや、立っていたというのは正しくない。片方は宙に浮いていた。

 思わず天津飯を見る。もし地球で舞空術をできるとするなら鶴仙流を収めた武闘家ぐらいだ。だけど天津飯も訝し気な視線を二人に向けている。…それもそうか、鶴仙流は鶴兄弟と天津飯と餃子だけの筈だし、他の誰かが修めているなんて聞いたことがない。

 

「こんにちは。あなたが孫悟空さんですね?」

 

「な、なぜオラのことを…?」

 

「噂を聞いたことがありましてね…一度手合わせしてみたいと思っていたんですよ。そしてあなたが…孫海さんですね?」

 

「…そうだけど」

 

「…なるほど、二人とも素晴らしい魂をしている。あの方が言っていた通りでしたね」

 

「あの方…?」

 

「それではお先に」

 

 気になる言葉を残し、連れ立っていた人と共に会場へ向かう彼。ピッコロも悟空も、彼が誰かわかってない様子だ。

…なんか不思議な人だったな。特に気を消しているようには思えなかったけど気を感じられなかった。それに、昔あった紫の猫さんに似ているような気が…戦えば分かるか。

 

「それでは皆さん、名前をお呼びするので呼ばれた方からくじを引いてください」

 

「神様仏様デンデ様、頼むから初戦にこいつらと当たりませんように…」

 

「神様といってもデンデだぞ…」

 

「というか神様デンデ様って、同じこと二回も言ってんじゃねぇか」

 

「それではアイウエオ順で呼びます。え~とまずは…キビト選手!」

 

「…7だ」

 

「それでは次に―――」

 

 順々に呼ばれ、全員の番号が決まった。

 1番にクリリン、2番に天津飯、3番に俺、4番にスポポビッチ、5番にビーデルさん、6番にナッパ、7番にさっきの二人の片割れ、8番に悟飯、9番にさっきの二人の浮いてた方、10番にピッコロ、11番に悟空、12番にベジータ、13番にラディッツ、14番にヤムー、15番に18号、最後にサタンとなった。

 

 初戦かつ対戦相手が天津飯なことに手と膝をついて嘆くクリリンがいたものの、時間は無常にも進んで二人の試合が始まった。

 

「クリリン!ヤムチャは野球の試合が入っていたから修行が出来なくて出場しなかったが、俺たちは試合を楽しむとしよう」

 

「そりゃそうだけど、初戦に天津飯はキツイよ…負けるつもりはないけどさ」

 

「フッ。いい心構えだ。俺も鶴仙人様からお前たちに負けるなと言われていてな。勝たせてもらう!」

 

「おとうさーん!頑張ってー!」

 

「クリリーン!天津はーん!どっちも頑張れよー!」

 

 クリリンの娘さんとヤムチャの応援が聞こえる中、二人が戦い始める。二人とも最初から10倍界王拳で勢いをつけているようで、天津飯のラッシュを防ぐクリリンから響く打撃音が重い。

 

「…そういえばベジータ、聞きたいことがあってさ」

 

「なんだカイ。手短に言え」

 

「さっきのシンってやつの雰囲気がさ?昔惑星ベジータであった紫の猫さんに似てんだよ。なんか知らない?」

 

「…紫の、猫?」

 

…?なんかベジータの様子が変だな。

 

「その、猫とやらは…肩に特徴的な模様の着いた衣服をつけていたか?」

 

「あー…?付けてた気がするけど」

 

「…ッ!!何故お前が、破壊神ビルスと…!?」

 

「破壊神ビルス…?」

 

 それっきりベジータは黙りこくり、何も言わなくなった。…忘れたそうにしてるから、もう聞かないでおくか…。

 それより、破壊神か…となるとシンってやつはなんかの神様ってことか?シンってのも神だから…納得はいくけど、じゃあなんでそんな奴が天下一武道会に来てんだ?

 

…もしかして、この大会になんかあんのか?

 

◇◆◇◆◇

 

 天津飯のかめはめ波を跳ね返す技を利用したクリリンの拡散かめはめ波の雨あられやそれをさらに利用してもう一人の天津飯を死角に隠した攻防戦の結果、二対一の形を作り出した天津飯が勝利した。

 二人ともボロボロの状態になったので、天津飯にはランチさん、クリリンには18号が看病していたっけ。

 もう俺の試合の番だから今はどうなのかわからんけど。

 

『第二試合、孫海選手対スポポビッチ選手ーっ!!』

 

わああああああっ!!

 

「孫海って、産業組合サイヤの社長さんじゃねぇか!あんなに若いのか!?」

 

「あそこのお肉と野菜、本当においしいのよね!それに安いから財布に優しいし!」

 

「…スポポビッチのやつ、ずいぶん人が変わったな…」

 

「あぁ、予選の時に見たときはあいつだってわからなかったぜ」

 

 前よりも人の数が増えてるのもあり、俺のことを知ってる人が多いみたいだ。あと若いって、こう見えて俺もうおっさんだけどな。サイヤ人だから若く見えるだけで。

…それと、相手選手の人が変わった、ねぇ…。さっきから異様に息が荒いし、額のМ字から邪悪な気配を感じる。…嫌な予感がするな。

 

『孫海選手は産業組合サイヤの社長でありながら、22、23回大会にて準優勝と優勝を手にした孫悟空選手相手に五分五分の戦いを繰り広げた超実力者です!対しますスポポビッチ選手は、前回大会の一回戦で敗退しましたがイメージチェンジをして再挑戦です!』

 

「フ~!フ~!」

 

「……」

 

『それでは、始めてください!!』

 

「よろしくお願いします」

 

「がああぁぁぁあああ!!」

 

 試合が始まった途端に飛びかかってくるスポポビッチを蹴り飛ばし、武舞台の端まで追いやる。クリーンヒットしたはずだけど、すんなり立ち上がった。…やっぱりおかしいな。今の一撃、ただ鍛えてるだけのやつだったら気絶するパワーを込めた。なのにへっちゃらすぎる…。

 

「ぐあああーっ!!」

 

「っとと」

 

 懲りずに飛びかかってくるのを三角飛びで避けつつ後頭部目掛けて気弾を放つ。今度はもっと強めに撃ったけど…。

 

『おーっと孫海選手の攻撃を後頭部でモロに喰らってしまったスポポビッチ選手!しかし平然と立ち上がりました!なんというタフさでしょう…!』

 

「フー!フー!フー!」

 

「…お前、何者だ」

 

 

「おい、ラディッツ…」

 

「あぁ…今の兄貴の一撃は、一般人に撃つには過剰すぎるくらいだ」

 

「だが相手は平然と立ち上がった…俺の目から見ても、何かを仕掛けた様子はなかった」

 

「ね、ねぇ悟飯君。君のおじさんは大丈夫なの…?」

 

「多分、そこは大丈夫…おじさん、本気で戦うなら今の僕じゃ勝てないぐらいに強いから。でも相手がおかしいのは確かだ」

 

「…兄ちゃんも分かってるみたいだ。あのスポポビッチってやつ、さっきから兄ちゃんの一撃を喰らってんのにへっちゃらすぎるし、生気そのものが感じられねぇ…」

 

 どうすっかな、多分界王拳でも使えば一撃でぶっ飛ばせる。でもそれだと、コイツから感じられる吐き気がするぐらいの邪気の正体がわからねぇ…。

…待てよ?もしかしてこいつ死んでんのか?それかほぼ死体に近い状態か…それを誰かが利用しているだとするなら、コイツのタフさも理解できる。死んでるんだったらダメージも糞もないだろうし。というかこうじゃないと理解できん、あの一撃を喰らって平然としてる理由が…。

 よし決めた。骨折ってみよう。そん時の反応見て確かめよう。これで再生するようだったらマジで死んでんだろうし、やばさが他のみんなにも伝えられる。よーし!

 

「おいスポポビッチ。お前、棄権する気は?」

 

「あぁ?あるわけないだろ…!」

 

「そうかよ…じゃあ寝とけ」

 

「はっ―――?」

 

 一気に近づき、頬をかなり強めにぶん殴る。衝撃でぶっ飛びながら首が二回転三回転し、ついに動かなくなった。

 

「うわー!?こ、殺しちまった!?」

 

「な、なんてこと…」

 

「か、海!なんでそんなことしたんだ!?もし死んじまってたら反則なんだぞ!?」

 

「大丈夫だよクリリン。殺してねぇ」

 

「な、なんだって…!?」

 

「…ほら、さっさと立てよスポポビッチ。いつまで寝てんだ」

 

 声を掛ければ、絶対に死んでる状態なのに一人でに立ち上がり、捻じれた首をもとに戻していくスポポビッチ。会場から悲鳴が上がるのを聞きながら一人確信に至る。こいつやっぱりそうだ。誰かが細工した状態でここに来てんだ。でも、いったい誰が…。

 

『な、な、なんと首がもとに戻りました…!一体どうなってるんでしょうか…!!』

 

「はー!はー!はー……!」

 

 息が上がってきたようだ。いくら細工されてても、さすがに首複数回転はきつかったみたいだな。

 さっさとけりつけちまおう。

 

「あばよ」

 

「がっ…!?」

 

 顔面目掛けて飛び蹴りを放ち、場外へと飛ばす。舞空術を使おうとしていたけどさすがにスピードが付いていたようで、そのまま壁に衝突した。

 

『じょ、場外!第二試合、孫海選手の勝利!!』

 

 おかしな場面があったものの、試合が終わったことで歓声が立ち上がる。…俺の勝ちではあるけど、謎が残ったままだな…。大会が終わるまでは、周囲の警戒は途切らせないままにしとこう。

 

◇◆◇◆◇

 

 次の試合ではナッパがビーデルさんのサンドバックとなった。ビーデルさんの技がいくつも叩きつけられるものの、ナッパは涼しい顔のままだ。ついには膝をついたビーデルさんにナッパが気合砲を放ち、ナッパの勝利となった。

 若干ナッパめがけてブーイングが飛んでいたので青筋を立てたナッパだったけど、応援に来てたバイオレットさんと話してるうちに顔が綻び始めたので大丈夫だろう。

 

 そしてキビトという選手と悟飯の試合が始まり…事件が起きた。

 二人が何かを話していたと思うと、突然悟飯が超サイヤ人2になった。何故、と思っていると突然スポポビッチ達が変な機械を持って悟飯に襲いかかった。元々、あいつらが変なことしてるのはわかってたから隠れていたけど、まさかすぐに行動に移すとは思ってなかった。

 なんでか悟空たちの方にシンって人がいるのを横目に悟飯を助けようとした瞬間、上空から急に圧力を感じた。

 そちらに目を向けると、そこに見たことのない()()()()()()が居た。

 一瞬ピッコロかと思ったけど、その額にМ字があるのを見てすぐに考えなおす。あいつ、スポポビッチの仲間だ。

 

「くっくっく…死ね!ダークネスブラスターッ!!」

 

「ッうっそだろ!?」

 

 すぐさま超サイヤ人に変身して飛んできた光線を弾き飛ばす!あっぶねぇなんだ今の!?地球に当たったらぶっ壊れたかもしんねぇ…!

 

「スラッグ、エネルギーは取れた!さっさと帰るぞ!」

 

「フン、予想以上に簡単だったな」

 

…くっそ、スポポビッチ達がスラッグとかいうやつと一緒に逃げるのを見るしかない。悟飯が大丈夫かわかってないし、サタンに頼みたいことが出来たから追うことが出来ない…!

…?悟飯の気が復活した?まさかあのキビトってやつ、デンデみたいに回復できんのか!なら…!

 

「マーク!」

 

「うおわぁびっくりした!?か、海さん!?どうしてここに―――」

 

「そんなことはどうでもいい!今すぐ天下一武道会の中止を運営さんに頼んでくれ!お前ならできるだろ!?」

 

「ちゅ、中止ですか!?なんで急に…」

 

「セルゲームの時、俺達を殺しに来たやつが居ただろ?あいつみたいなのがまた来たんだ…!何とかする間になにかあったら不味いから、ここにいた人たちに逃げてほしいんだ!」

 

「な、なんだって…!?わかりました、頼んできます!あ、海さん名前は…」

 

「出していい!頼んだ!」

 

 よし、これで地球がぶっ壊れるようなことがあっても大会は後で続きができる!心置きなくやれるぜ…!

 

(兄ちゃん、こっち来れるか?今、バビディってやつのところまで来てんだけど…)

 

(!悟空か!わかった、こっちの用事は済んだからすぐに向かう!)

 

 くそったれ、普通の天下一武道会ができるって思ってたのに!やんなるぜホント!

 

 




一方セルは…

「…オルゴールが増えた。まだ一個目も開けられていないというのに…」


「くそ、なんだあの気持ち悪い斑点模様のやつは…!あれではオルゴールが取れん…!」


(それと気持ちの悪い気配に塗れたジジィも付いてきた…)
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