「上だ悟空!」
「うぐぅ…!?ッづああ!!」
「がは…!?」
見境なく暴れるベジータのアームハンマーを悟空が貰ってしまい、伏せる瞬間に手を地面に突き立てて軸とし、体を回転させてベジータを蹴り飛ばした。だけど悟空が態勢を整えたときにはすでにベジータも持ち直しており、今度は俺目掛けてビッグバンアタックを放ってきた。
俺に当たる瞬間、瞬間移動で回避して死角に移動してベジータを踏みつける。たたらを踏んだベジータへ悟空が突撃して頭突きを放ち、すっ飛んでいく姿へ気弾を連射して動きを阻害していく。
悟飯たちが下に行ってからどれだけ経っただろうか。ベジータが復活する気配はいまだ無い。
ダメージを負ってしまえばブウが復活することはわかっている。けれど、今のベジータとの戦いでダメージを抑えるというのは無理な話だった。
当初俺たちは超サイヤ人2の状態で戦っているとは言え、暴走している状態ならばベジータの機転の速さと溢れる才能を駆使したサイヤ人らしい戦い方はできないと思っていた。その予想は正しかったものの、今まで以上のスピードとパワーを振り回し、しかも本能で動いているのかこっちの攻撃が躱されることも多かった。今だって攻撃が当たったのはかなりギリギリだった。
一番まずいのは、どれだけ攻撃を加えても動きが鈍る気配がしない。恐らく暴走していることでダメージを無視して動くことが出来てしまっている。スポポピッチと似たような感じだ。
例え超サイヤ人3になったとしても、今のベジータ相手にどれだけパワーが続くかわからない。少しでも時間稼ぎに徹されれば自滅は確実だ。
これがもしベジータの意識がある状態なら超サイヤ人3になっても全然よかった。ベジータが超サイヤ人3を相手にして時間稼ぎに徹するとは思えないし、そうなれば無理やり押さえつけることだってできた。
マジでバビディが余計なことをしたせいでこうなってるんだよくそったれ。さっきから殴って蹴ってぶん投げてを繰り返してるのに一向にベジータの意識が戻ってくる気がしない!ここにラディッツが居たらな…!
「がああああッ!!」
「っ気弾を無理やり突破して、くっ!」
「こっちだベジータ!」
「ハアアアッ!!」
「ぐぅぅッ!!」
気弾の連射を中止して空中へ退避した悟空と交代し、掴もうとしてきたベジータとぶつかって睨み合う。苛立ったのか頭突きを放ってくるので、咄嗟に後ろへ仰け反りながら体を倒しつつ蹴りを放って上空へベジータを飛ばした。
そのタイミングを狙い撃つように悟空がドロップキックをベジータに浴びせてもう一度距離を取る。
もうさっさと倒れてくれと願うものの、またベジータが唸りながらも立ち上がった。
「はあ…!はあ…!ベジータのやつ、ここまで鍛えてたんか…!オラ達だってあの世で修業してたのに…」
「バビディの魔術のせいだ。本当ならもう少し先に身に着くであろう潜在能力を引き出された状態のまま、ゾンビみたいに戦えるようになってんだ。最悪の場合、ベジータを殺すしかない…」
「そ、そんな…」
「悟空さーん!」
「海おじちゃーん!」
「!?この声は…トランクス!?それに悟天も!」
「あいつらなんでこんなところに来てんだ!?」
ベジータと睨み合っていると、背後から聞いたことのある声が二人分聞こえてきた。もしやと思い確認すると、案の定悟天とトランクスのちびっ子二人。リンがいないのは、パンジを守ってくれてるからか?
ていうか、そんなことは置いとかねぇと!今来たら不味い!!
「と、トランクスくん、あれって君のお父さんじゃ…」
「ほ、ホントだ、パパだ…なんで悟空さんと海さんと、戦っているんだ…?」
「悟天!トランクス!今すぐ離れろー!!ベジータが悪い魔術に掛かったせいで暴走しちまってるんだ!お前らも巻き添えに―――」
「う、ぐううううっ!?」
「っなんだ!?ベジータが、苦しんで…」
ベジータがトランクスを視界に入れた瞬間、さっきまでの様子と打って変わって苦しみ始めた。頭を抑え込んで、ついに膝立ちへと態勢を崩した。
…もしかして、トランクスに気づいたことでベジータの意識が強くなって魔術に対してより拮抗し始めたから、か…?もしそれが本当なら…!
「トランクス!こっちに来てくれ!ベジータをもとに戻せるかもしれない!」
「え?え?え!?」
「―――そういうことか!よし、悟天はオラとだ!」
「わっお父さん!?」
「トランクス、いいか!?今のベジータを戻すにはお前じゃなきゃ無理だ!時間があるならベジータが自力で戻るのを待ってもよかったけど、そんなこと言ってられない…!」
「お、オレが…?」
「そうだ、お前じゃなきゃベジータを助けるのが間に合わない!よく聞いてくれ、今から俺と悟空で無防備な時間を作り出す。その瞬間にベジータに近づいて、抱き着くなりなんなりしてベジータに呼びかけるんだ!0距離でトランクスの声を聞けば、あいつの勢いも増す…!」
「…ッ。オレが無理なら、不味いってことだよね…わかった、海さん頑張って…!」
トランクスの頭を撫でることで返事を返し、悟天と並び立った悟空の横まで飛び上がる。ベジータは…やっぱりさっきの一瞬だけじゃ足りないみたいだ。苦しそうではあるけど、また立ち上がった。
やっぱりトランクスが近づけるかどうかが肝だな…!
「悟天、オメェはオラ達より前に行かないようにするんだ。まだオメェのパワーじゃ今のベジータの攻撃に耐えれねぇからな」
「う~!ボクだって強くなったのにー…!」
「はは、仕方ねぇさ。俺達でも今のベジータの攻撃はしんどいんだから、耐えれる奴なんているかどうかも怪しい。…よし、行くぞ二人とも!!」
「あぁ!」
「うん!」
「ぐああああ…!」
ベジータへ飛びかかり、悟天の気弾でパンチを妨害された瞬間を縫うように腕で腕を絡めとり、捻りながら顔へとパンチを放つ。
すぐさま俺へ反撃しようとするベジータだけど、今度は逆方向から悟空が近づいて俺のように腕で腕を絡めとったことで何もできなくなった。
「「ふんっ!!」」
「がああ…!?」
悟空と共に背中に手を回し、両腕と胴体が逆方向になるように前へと押し出す。さすがのベジータでもこの状態からの脱出は困難なようで、ギチギチと体の節々から音が鳴り始めた。
その一瞬を隙と見たトランクスが近づき、ベジータに抱き着いた。
「パパっ!!頑張って、悪い魔術なんかに負けないで!!」
「ッ!!う、おお…!?と、トランクス…」
「パパ…!」
様子が変わったのを確認して腕を離すとぎこちない動きではあるものの、ベジータが優しくトランクスを抱いた。
さっきまでの暴れっぷりが嘘のように静まり、強く、強くトランクスを抱きしめるベジータ。
「…パパ?」
「…お前が生まれてから、こうやって抱いてやることが一度もなかったな…」
「パパ、もとに戻ったんだ…!」
「いや、まだ完全じゃない…カカロット、トランクスを連れて少し離れてろ。この胸糞悪い魔術とやらを完全に消し去る…!!」
「!!ベジータ…!わかった!」
トランクスと共に少し距離を取り、ベジータを見守る。すでに目の光がもとに戻った様子からは、暴走する危険性が無くなったことがわかる。
そして十分な距離を取ったことを確認し、ベジータが気を解放し続ける。
「ハアアアアアアアッッ!!ぁぁああああああッッ!!」
「っやっぱりパパは凄いや…!」
「あぁ。例え魔術が無くとも、俺達以上の力を付けてただろうな」
「ふふん、お父さんも負けてないもんね!」
「ん、オラか?そうだな、まだまだベジータに負けるつもりは無ぇぞ」
高まり続ける気によって少しベジータの髪が変化するように見えたころ、ついに額にあったМのマークが消え去った。それに気づいたベジータは少しずつ気を縮小させ、超サイヤ人の状態に戻った。
「…ちっ!気に食わん話だ。あの野郎の魔術でオレの力の底上げをされるなんてな」
「「「ベジータ(さーん)!」」」
「パパー!」
「…お前たち、世話をかけた」
「ベジータが感謝した…!?」
「馬鹿にしてるのか貴様」
「はは!でも兄ちゃんの言ってることオラもわかんなぁ~。オラたちにベジータが感謝してるとこ思い浮かばねぇもん!」
「よーしいいだろう今から貴様ら二人を地面に埋めてやる覚悟しろ!!」
「「わー!?」」
「…パパって悟空さんと海さんが相手の時、あんな感じだったんだ…」
「仲いいな~」
「………あれ?なんか忘れてるような…」
その瞬間、身に覚えのない気が遠い場所から感じ取れた。とても巨大で、普通の気とは違う異質なものだったそれは、すぐ近くにいたダーブラらしき気に近づいて…!?
なんだ、この馬鹿デカい気は…!?さっき以上に膨れ上がったぞ…!
「っなんてやつだ…ダーブラを瞬殺しやがった!!」
「兄ちゃん、ベジータ!すぐ合流するぞ!あの化け物を出しちまったんはオラたちのせいだ…!悟天とトランクスは早く逃げろ!!」
「い、いやだ!オレ達も戦う!」
「そうだよお父さん!お兄ちゃんも戦ってるんでしょ!ボクたちだけ逃げるなんて嫌だよ!」
「そ、それは……え?」
「…悟飯の気が、感じられなくなった。まさか、悟飯が殺されたのか!?」
そんな馬鹿な、今の悟飯はあの時以上に強くなってんだぞ!?向こうで何が…!
「…兄ちゃんが、死んじゃった?そ、そんなの嘘だ!ボク確かめてくる!」
「あっ!悟天!一人で行くな!」
「くそっ、こうなったら…!カカロット、カイ!早くしろ、今度はあの二人が殺されるぞ!瞬間移動で先回りしろ!」
「分かってる!でも向こうに誰も居ないんだ…!多分ダーブラが死んだから三人とも石から戻ったと思うんだけど、気を消してるみたいで…」
「間の悪いことを…!オレは先に行くぞ!」
「あっベジータ!兄ちゃん、オラ達も…兄ちゃん?」
「………う」
「!?兄ちゃん!?兄ちゃん!どうしたんだ!」
視界がぐるぐるする。地面についてるはずの膝と手の感覚が無い。俺の体の奥底の、とても大事な部分に何かが起こってる。立てない、動けない、何もできない…。
ドサリと地面に伏せてもまだ違和感は拭えない。瞼が落ちていって、視界がだんだん暗くなっていく…。
意識が、薄れていく。
◇◆◇◆◇
東の都の某所にて。一味を引き連れ服やら何やらを買うために出かけていたボージャックの前に、謎の生命体が現れた。
「ギ、ギギ…」
「なんだ貴様、俺に何か用か?」
「―――ギギギッ!!」
会話にならない言葉を交わしたと思えば、
そして生命体の拳がボージャックに命中する――かに見えた。
「ギッ…!?」
「…ボージャック様、この者をどうなさいますか?」
「消せ」
「はっ!」
拳を向けたポーズのまま固まった生命体。よく目を凝らすと見えるのは、紫に光る何かの糸。そしてボージャックの命令を受けたブージンが少し握りしめる力を強めたかと思うと、絡まった糸が急速に縮まり、生命体を微塵切りにした。
そして落ちた生命体の部品を一つ残さず残りのメンバーが消し去り、完全に死んだことを確認したボージャックはうんざりとした様子で周りのビルを見渡す。
ボージャック達がいるのは、多くのビルが立ち並ぶ都の中心部分。そしてそのビルの壁面や屋上に、太陽の光を反射させるメタリックな生命体がうじゃうじゃとボージャック達に視線を投げかけていた。
ここにサイヤ人達が居れば、その姿に違和感を覚えていただろう。そのメタリックな生命体は以前彼らが倒したメタルクウラそのものであるのに、顔の部分がクウラではなく機械の部品が覗いている薄気味悪い顔になっていたのだから。
「…先ほどから俺たちのような気が暴れているのは知っていたが…貴様らも同じ存在か?」
「ボージャック様、どうなさいますか」
「気に入らん。まとめてあの世に送ってやるぞ」
「「「「了解いたしました…」」」」
ボージャック達は知らない。今の地球に、魔人ブウの危機が迫っていることを。
ボージャック達と地球の為に戦う戦士たちは知らない。今の宇宙のあの世とこの世の境がぐちゃぐちゃになっていることを。
敵も味方も知らない。宇宙の悪魔と恐れられた存在が目覚め、限界を超越したことを…。
メタルクウラがメタルクウラじゃなくなってる理由としては、地獄に行ったときに閻魔様がビッグゲテスターとクウラを切り離し、それぞれを一つの生命として裁いたためです。なのでクウラは通常のクウラになって別行動中。