ドラゴンボール ~もう一人の兄~   作:龍玉

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蘇る恐怖

 

 海が気絶した一方そのころ。悟天とトランクスを追っていたベジータは、バビディの宇宙船の中に入ってから破壊して出ることでショートカットを行ったことで短時間で移動した。そして魔人ブウが悟天とトランクスの二人によってその腹に大穴を開けながら岩山へと吹き飛んでいく姿を見た。

 

「くっ、遅かったか…!…あいつは…」

 

「な、なんだあのチビどもは…?」

 

「よう」

 

「!!??」

 

 呆然としていたバビディの後ろへ忍び寄って声をかけてみれば、面白いほどにうろたえた。当たり前だろう、洗脳して捨て駒にでもしようとしていた存在が自身のすぐそばにいたのだから。

 対するベジータは、まさか自分の手で引導を渡せるとは思ってもみなかった。先ほどダーブラが死んだため、復活したピッコロ辺りがすでに殺したものだと思っていたからだ。

 

「テメェは絶対に許さん。今ここで殺してやる…!」

 

「ひ、ひぃっ!?い、いいのか!?今ここでボクを殺せば、魔人ブウを封印できる存在はいなくなる…!そうなったら魔人ブウは永遠に破壊し続ける…!それでもいいのか…!」

 

「そんなこと、オレの知ったことではない!そもそも、お前が居ても同じことだろう」

 

「……ッブ、ブウ―――!!」

 

「ビッグバン・アタックッッ!!!」

 

「ぎいやああああああ!!??」

 

 粉々に吹き飛んでいくバビディを一瞥し、今度こそ悟天とトランクスのもとへと向かう。二人はこちらへと歩いてくる魔人ブウを迎え撃とうと構えを取っており、近づくベジータに気づいていなかった。

 

 少し悩んだベジータだったが、次の瞬間には二人の首元へ手刀を叩き込むことで気絶させた。唯一トランクスだけはその動きを察知し、すんでのところで耐えた。

 

「うっ!?」

 

「ッ!?パ、パ…?なんで…」

 

「お前たちを殺させないためだ。例えオレでもやつに勝てるかは怪しい…」

 

「で、でも僕も一緒に戦えば…!」

 

「…トランクス、元気でな。ブルマを、ママを大切にな…」

 

「えっ……がっ!?」

 

 自分の攻撃に耐え、さらに共に戦うと宣言した息子に喜びを覚えながらも今度こそ気絶させ、魔人ブウを睨みつける。

すぐそばに降り立ったピッコロがベジータの意図を察し、二人を抱きかかえた。

 

「二人を連れて遠くに逃げろ。もうすぐカカロットとカイがここに来るはずだ。その時の余波に巻き込みたくない。…頼んだぞ、ピッコロ」

 

「う、うむ…死ぬなよ、ベジータ」

 

「……フン」

 

 ピッコロが見えなくなったころ、ベジータのすぐそばに悟空が瞬間移動で現れた。やっと来たかという思いで悟空を見たベジータは、見たことのない悟空の表情に疑問を覚えた。

さらにもう一つ、違和感を感じる。カカロットはさっきまでカイと共にいたはずでは?何故カイが居ない。

 

「カカロット、なんだその顔は。それにカイが居ないのは…」

 

「…兄ちゃんが、死んだ」

 

「なんだと…!?」

 

 悟空から語られたのは、海の異変だった。

 曰く、ベジータを追いかけようとした瞬間に海が地面に伏せてしまい、瞬きをする頃には海は物言わぬ死体となっていたらしい。

さらに不思議なことに、海の魂が消える瞬間、何故か海の体からさらに()()()()()()()()を感じたらしいのだ。

 

「遅れちまったのは、兄ちゃんの体を天界に持って行ってたからだ。もし巻き込まれちまったらナメック星のドラゴンボールでも蘇らせれねぇかもしれなかったからな…」

 

「カイが突然死などふざけた話だ…!そもそもあいつはさっきまでオレと戦うほどに元気が溢れていたんだぞ…!」

 

「だけど死んじまったんはホントの話だ。オラだって信じたくねぇよ、こんなやばいときに兄ちゃんも死んじまうなんてさ。だけどもうどうしようもねぇ…!ベジータ、超サイヤ人3にはなれっか!?」

 

「…わからん。まだ感覚を掴んだ覚えがない…」

 

「っこうなったらオラがやるしかねぇか…!でもあの世じゃねぇから超サイヤ人3のままでいるのは無理だかんな、倒しきれるか…」

 

「おそらくだが、やつは不死身だ。維持が無理だというなら避けるべきだろう」

 

「くっそ~!兄ちゃんが生きてたらフュージョンで片付けれんのに…!ベジータは嫌がんだろうし…」

 

「当たり前だ!貴様らとナッパ達のフュージョンとやらの練習をオレは見ていたんだ、やるわけがないだろう!」

 

「だよな…」

 

「おまえたち、さっきのチビの仲間か?」

 

「「!!」」

 

 先ほどまで大穴が開いていた胴体がポンッ!という可愛いらしい音共に無傷の状態に戻った。

 そして糸目のように見えていた目が薄く開かれ、無邪気な悪意を滲ませた視線を悟空とベジータに向けていた。

 

「お前たちみんな、食べちゃお~!」

 

「くそったれ!カカロット、一か八かだ!超サイヤ人3で一気に…?」

 

「……ぁ」

 

「どうしたカカロット、何を呑気に―――!?」

 

 瞬間、三人の間に緑に光る気弾が着弾したことで巨大な爆発を起こし、魔人ブウを巻き込みながら破壊を促進させていく。

 

 爆発する直前にベジータを連れて瞬間移動をした悟空は、信じられないものを見る目で上空を見ていた。釣られるようにベジータもそちらを見ると、それはそこにいた。

 

 見覚えのある衣服に、首にかけられた制御装置。薄ぼんやりと光る緑の髪。唯一違う部分は、鳩尾部分から胸元にまで広がった赤黒いあざ。

 新惑星ベジータで戦い、許容量を大きく超える気を叩き込んだことで爆死したと思われていた伝説の超サイヤ人、ブロリーが、そこにいた。

 

「な、なんで、ブロリーがここに…!?」

 

「カカロット貴様、あの時止めを刺していなかったのか!?」

 

「オラ、あいつが爆発したところまでしか見てねぇ…まさかあの状態で生きてたなんて…!」

 

 

「―――カカロット…カカロットォォォォッッ!!」

 

 

「「ぐうううううッ!?」」

 

 昔の比じゃない気の解放をしたかと思うと、さらに気を高めていく。上がり続ける気によって大気の流れが歪み、地球の揺れが激しくなっていく。

 変化が起きたのは、ブロリーの周りにスパークが起きるようになってからだった。スパークの発生が頻発し、ブロリーの髪がより細かく分かれ始める。

 そして臨界点に達した時、爆発するほどの気が二人を襲った。

 悟空とベジータは察した。ブロリーは死なず、そのパワーを跳ね上げた状態でここにやってきた。伝説の超サイヤ人のその先、伝説の超サイヤ人2を携えて。

 

 されど幸運だと言えるのは、魔人ブウが先ほどの一撃で吹っ飛んだことだろう。細胞があたり一帯に散らばっているあたり、再生はしていない。ならば今必要とされる対応は、目の前のブロリーをなんとかすることだ。

 そして悟空はある作戦を思いついた。

 

「ベジータ、今からオラと一緒にあいつを違う星に連れてくぞ!」

 

「違う星だと?…いや、そうか。このまま地球に居させておくと、いつ破壊するかわからないか…」

 

「あぁ。ドラゴンボールも一緒に吹っ飛んじまったら、悟飯も兄ちゃんも生き返んねぇからな。そんじゃ、行くぞ!」

 

「―――何ぃ?」

 

 前もって星を思い浮かべ、ベジータを連れてブロリーとともに瞬間移動した悟空。少し前ならできなかったこの瞬間移動は、海から記憶を読み取る術を教えてもらったことで習得したものだった。海ほど遠くの誰もいない星に飛ぶことはできないが、太陽系のちょっと外ぐらいの星ならば移動可能なそれは、現状もっとも必要な技術だった。

 

 瞬間移動した先は思っていた通り誰も居ない星であり、ずっと夜空が見える神秘的なところだった。海と修行をしていた時に見つけた場所だったので、誰もいないことをいいことに二人で修業をしていた星でもある。

 

「カカロット…わざわざ俺の前に立つとは、余程死にたいと見える…」

 

「へっ、オラそんな死にたがりじゃないさ!ベジータ、今のオラたちの2人がかりなら幾らブロリーでも倒せる!だからオラが時間を稼いでる内に、オメェは超サイヤ人3に―――」

 

「カカロット、お前は先に地球へ戻れ。ブロリーはオレ一人で片付ける」

 

「えっ…!?」

 

「ほう…」

 

 悟空が驚いてベジータを見るも、その決意は固く見えた。

 何故一人でブロリーと戦うと言うのか、先に戦うなんて羨ましいなんて考えていると、ゆっくりとブロリーへ歩き始めるベジータ。呼びかけてもこちらへ戻る気配は無い。

 

「ベジータ、オメェ…!」

 

「いいかカカロット!これはオレのプライドを掛けた戦いなのだ…!」

 

「…!」

 

「あの日…オレは奴のパワーに恐怖し、膝を折った。その事実は拭うことのできないものだ。故に!オレはオレの力だけでヤツを打倒しなければならない…!!そうしなければ、オレは二度とサイヤ人の王子と名乗ることはできない!!」

 

「…わかった。けど、もしも決着が長引いたときはオラも一緒に戦うからな。兄ちゃんの異変のこともあるし、まだなにかあると思うんだ…」

 

「好きにしろ」

 

「…死ぬんじゃねぇぞ、ベジータ」

 

「フン!カカロット、貴様がもう一度ここに来る頃にはすでに戦いが終わっているだろう。さっさと帰るがいい!」

 

 ベジータの武運を祈りながら悟空が瞬間移動で消え、ベジータとブロリーのみの空間が出来上がる。すでにベジータは超サイヤ人となっており、いつでも戦うことが出来る。ブロリーもまた同様で、超サイヤ人2の状態でベジータを睨みつけていた。

 

「さぁ、ここに貴様の墓場を立ててやるぞ、ブロリー!!」

 

「墓場…?違う…ここに何かが残ることはない…!貴様の死と共にこの星は消え去るからだ!!」

 

 破壊の衝動を抑えきれぬ悪魔と、王子としてのプライドを取り戻そうとする戦士の戦いが始まる。

 

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