ベジータとブロリーを星に残し、地球に帰還した悟空。先程までいた場所に移動したものの、どこか違和感を覚えた。
違和感の正体を探るためにあたりを見回し…それに気づいた。
「魔人ブウの破片が、無い…!」
すぐさま気を探ってみると、予想通り魔人ブウの気配を感じる。しかも、さっきまでいなかったはずのバビディの気配まで感じる。自分が来る頃には、ベジータによって殺されていたはずなのに。
「!!クリリンとピッコロ、それに天津飯の気を感じる!そうか、ダーブラが死んだからもとに戻ったんだ…三人なら何か知ってるかもしんねぇ…!」
一先ずその場を後にし、天界へと瞬間移動をする悟空であった。
◇◆◇◆◇
「…なんてことだ…悟飯だけじゃなく界王神様もやられちまってたなんて…」
「魔人ブウの強さは界王神様が恐れていた通り、想像を絶するものだ…ブロリーの一撃を喰らい粉々になったかと思っていたが、なんともなかったように再生した。このまま放っておけば本当に間違いなく地球人はおろか、宇宙中の生物はすべて消えて無くなる」
天界に戻り、三人とデンデから現在の状況を聞いた悟空は今だ避けられていない危機を知った。さすがの悟空でも焦っているようで、その顔には冷や汗が流れている。
「でもよ悟空、お前が生きててくれてたのは幸いだ…魔人ブウを倒せるのはお前だけだよ!ベジータはブロリーを倒すために居ないし、海は…海は…ッ」
「…はっきり言おう。無理だ、オラには倒せねぇ…」
『え…!?』
「あの時のブロリーは、今のオラを凌駕していた…その一撃を喰らっても魔人ブウはへっちゃらだったんだろ?わりぃがどうやっても勝てねぇ」
「そんな…」
「くっそ~…!兄ちゃんか悟飯のどっちかが生きてたら何とかなってたかもしんねぇのに…!なんで急に兄ちゃんは死んじまったんだ…」
「わからん…俺と天津飯が見ても、魂だけが綺麗さっぱりと無くなっていた」
「あぁ…体中を確認しても、怪我も無ければ違和感もなかった。ピッコロの言う通り、魂だけがそこに無い体になっていた。それに、多対一でも魔人ブウには勝てないように思うが…」
「いやそうじゃなくて、フュージョンを使うんだ」
悟空以外の全員にフュージョン?とハテナが浮かぶ。唯一デンデのみはその言葉からあることを思い出した。フュージョンは地球から遠く離れた星に住むメタモル星人という存在が得意とする技だということを。
口から洩れたその気づきは悟空にも届き、どういう経緯でフュージョンを学んだかが語られた。
「教えてもらってから兄ちゃんと試したんだけどよ、信じられねぇぐらいに強くなったんだ!何回か失敗しちまったけどな…。でも成功したときは、ブロリーなんか目じゃないくらいにパワーアップできる!」
「そうか…!悟飯か海が生きていればお前とフュージョンして…魔人ブウと戦えたということか!」
「なら、早くあの世に行って二人のどちらかと来れば…!」
「それなんだけどよ…なんでか知んねぇが、あの世に瞬間移動しようと思っても出来ねぇんだ。さっきから気を探ってんだけどな…」
「な、なんだって!?」
「…そういえばあの時、ベジータによってバビディは消し炭になっていたはずだ。なのに孫たちが消えたときには、傷一つ無く魔人ブウと合流していた…」
「そうだピッコロ!あの時バビディは
「そうなってくると、二人を連れてくることはできないかもしれん…振り出しに戻ってしまったな…」
五人の間に沈痛な空気が流れ出す。ナッパとラディッツにフュージョンをしてもらうことも考えたが、肝心のナッパもベジータの暴走に巻き込まれて気絶してしまったようで、吹き飛んでしまい行方知れずだ。
ふとポポの脳裏にあることが浮かぶ。もしかすると、今の逆境を覆せるかもしれない策が。
「中で寝ている二人…悟天とトランクスは 力も大きさもほとんどそっくり。できないのか?フュージョン」
言葉となって出てきたその提案はその場にいた全員の耳へ届き、一瞬の空白が生まれる。そして再起動したときには喜びが生まれた。
「い、いいぞミスターポポ!その手だ!その手があった!!クリリンと天津飯はみんなを頼んだ!ピッコロ、二人を起こしに行くぞ!」
「わかった!すぐにみんなを連れてくる!」
「行くぞクリリン!バレるわけにはいかん以上、気は消していくんだ!」
「…だが二人がフュージョンを完成させるまではかなり時間がかかりそうだ…それまでの間に、相当な数の人間が魔人ブウの犠牲になってしまうだろう。もしかしたら絶滅いや、地球が消滅するかもしれん…。これは賭けだ、堪えねばならんぞ…」
「もし絶滅させられてもオメェ達とドラゴンボールがあればもとに戻ることが出来る!それにもしもの時は、オラが魔人ブウの相手をして時間を稼ぐさ」
◇◆◇◆◇
天界に別行動をしていたボージャック一味を除いた皆を避難させ、バビディたちによる地球滅亡までの五日間のタイムリミットを告げられた後のこと。悟空はピッコロと共に悟天とトランクスにも事情を説明していた。
海が死に、悟飯も殺され、ベジータも己のプライドと命を懸けた戦いに赴いたことでいないという事実を知り、二人はその瞳から大きな涙を流した。
「う、うそだ…海さんが、死んだなんて…!」
「うわ~~ん兄ちゃんが死んじゃった~~~!!」
「泣くな!そんなヒマはねぇぞ!!悔しかったら新しい技を覚えて仇を撃て!!わかったな!!」
「う、うぅぅ…ぐす」
「う~!お父さんは悲しくないの!?兄ちゃんが、海おじさんが死んじゃったのに…!」
「…悲しいさ。それに悔しいさ。ホントならオラが仇を撃ってやりたいくらいだ」
「孫…」
「厳しいようだが、いつここがバビディにバレるかわかんねぇんだ。すぐに修行を始めんぞ。オメェらが負けちまったらドラゴンボールで生き返らせることもできんし、そのままみんなお陀仏だ」
「精神と時の部屋を使うか?悟天とトランクスなら丸々二日間使える」
「いや、まだ使わなくていい。この先使うかも知んねぇからな。それに二人なら短時間でフュージョンを身に着けれそうだ。どうだ、いけるか二人とも?」
「…パパも魔人ブウみたいなやばい敵と戦ってるんだ。オレだって地球を守れるってことをパパに示したい…!」
「ボクも頑張らないと、兄ちゃんとおじさんは死んだままだもんね…絶対に負けたくない!」
「よし、その調子だ!今からピッコロと実演してみっから、よーく見とくんだぞ…!」
「「はい!」」
◇◆◇◆◇
ドラゴンレーダーを西の都から取りに行くために悟空が魔人ブウ相手に時間稼ぎを行い、この世で初めて超サイヤ人3となった後のこと。例え死んだとしても蘇ることを理解した魔人ブウによって魂を残したまま石へと変化し、バビディが海に沈められた。例えばの話になるが、地球が丸ごと吹っ飛んだりしない限りは地獄に行くこともこの世で悪事を働くこともできないだろう。
そしてバビディという指示者が居なくなり、人々を虐殺し始めたブウを天界で察知したピッコロと悟空は、おのずと悟空の超サイヤ人3についての話になった。それは、超サイヤ人3ならば魔人ブウを倒せたのではないかというものだった。
しかし対する悟空からの返答は否だった。当然疑問に思うピッコロに、悟空は話し始めた。
「あの超サイヤ人3はあの世じゃないと長持ちしないんだ。時間が存在するこの世じゃすぐにヘロヘロになっちまう。さっきも隠しちゃいたけど、結構ギリギリだったんだ」
「なんだと…!?ならば本当に、お前では倒せないということなのか…」
「多分五分五分の戦いになると思う。さすがのオラでも、あの天才相手じゃちと厳しいかな。…それに多分、オラが勝ててもあいつはすぐに復活すると思う。死んだはずのバビディが生き返るのを見るに、な…」
「―――まさか、あの世とこの世の境界線がめちゃくちゃになってしまったのか!?もしそうなら、バビディが生き返った理由にも見当がつく…!」
「悟天たちにフュージョンをもう少し教えたら、一度占いババのところに行ってみようと思う。もしかすっと、占いババなら何か知ってるかも知んねぇからな。その間はピッコロが教えてやってくれ!」
「わかった。すぐに解決しなければ永遠に魔人ブウが蘇る事態になるからな…任せてくれ」
二人にフュージョンを教え、デンデによって回復した悟空は早速占いババのもとへ向かった。着いた場所は占いババの住む宮殿だったが、魔人ブウの影響によって人の姿は一切ない。
「ぬおっ孫悟空!」
「久しぶりだな婆ちゃん!あの世に行ってなかったんだな」
「仕方なかろう。あの世とこの世の境がめちゃくちゃになっておる原因を見つけるまでは行くことはできん」
「やっぱりそうなのか…。どうしたもんかな…ん?」
悟空が頭を悩ましていた時のことだった。あの世でもこの世でもない、遠いどこかから悟飯の気配を感じたのだ。とても遠く、ただ宇宙船で行こうとしても着くことのできないだろう位置ではあるが、瞬間移動であれば向かうことが出来るだろう。
「悟飯、死んでなかったんか…!よし、婆ちゃん!多分ラディッツ兄ちゃんが後で来ると思うから、二人であの世に向かってくれ!オラは悟飯のところに向かってみる!」
「な、なんと!?孫悟飯の気配がないものじゃから死んでしもうたと思っておったが、生きておったのか…!あいわかった、気を付けて行くんじゃぞ!」
「頼んだぜ、婆ちゃん!」
◇◆◇◆◇
時を少しさかのぼり、悟空が超サイヤ人3へと変身したときのこと。
空がグミのような物体で覆いつくされ、どこか不気味さを覚える世界となった地獄の一区画に、一人の男性がうつ伏せになって寝ていた。しかし不思議なことに、傷も無ければ顔色が悪くもなっていない至って健康な状態にも関わらず、起きる気配がない。
寝息も立てずに眠り、瞼も閉じたまま時間が過ぎる…不意に、地面が揺れた。今の地獄で起きた揺れでない。この世にて悟空が超サイヤ人3へと変身し、そのエネルギーがあの世にまで届いて揺らしたのだ。
そしてその揺れは、覚えのあるエネルギーは倒れた男性にも届き、呻くような声と共に瞼を開けた。
「………ご、くう……。……ッ!?」
脳が覚醒した瞬間に飛び起き、すぐさま臨戦態勢を取る。しかしあたりに害意を向ける存在も無ければ、心配するような存在もない。
だが飛び起きた男性―――孫海は自身を取り巻く異様な空気を感じ取った。
「ここは…!?地獄なの、か…?えらく様変わりしたな…。それにしても、さっきのエネルギーは悟空か…」
周りの状況も確認し終わり、自分の現状についても確認する。至って健康的で傷一つ無いが、それは目に映る部分のみ。
本来なら海は魂だけの状態であの世に来ることはできない。己が生まれてこれるようにする代償として魂を削り、この世からあの世に魂だけで移動できないからだ。
だというのに海の肉体は魂のみの状態となっている。肉体自体はあるが、この世から移動したときの肉体ではない。閻魔大王の計らいによって手にしたあの世での肉体だ。
それにどこか、大切なものが抜け落ちたような感覚もある。
「…とりあえず、閻魔のおっちゃんのところに行くか。現世のこととかなんで俺が地獄にいるとかは閻魔のおっちゃんが知ってるだろうし。瞬間移動で行くか…ん?」
気が感じられない。いや、感じるには感じるが、とても弱弱しいものとなっている。しかも瞬間移動しようにもうまく移動できない。色んなところにランダムに飛ぶ状態となっていた。
仕方がないので飛行で閻魔大王の宮殿に向かうことにした海。ひたすら上へと飛ぶうちにビーズを通り抜け、雲を突き抜けた。そして目にしたのは…ビーズのような何かの膜に覆われた閻魔大王の宮殿の姿だった。
「なんだこれ…まさかこれのせいで閻魔のおっちゃんの気が弱弱しく感じられたのか?」
『―――海、来てくれたか!』
「閻魔のおっちゃん!?これ今どういう状況なんだ!?それに、なんで俺地獄にいるんだ!」
『実はな、スピリッツ・ロンダリング装置という機械が故障したことで地獄でため込まれていた悪の気が解放されてしまい、鬼の一人に憑りついてあの世とこの世の法則をぐちゃぐちゃにしてしまったのじゃ!咄嗟にお前さんを地獄に引っ張ってきたのはよかったんじゃが、封印に近い状態では完全に持ってくることが出来ず、お前さんの魂だけしか引っ張ってこれなかった…!現世では魔人ブウが暴れ、死人が復活する大混乱が起きておる!』
「なんだって…!?悟空は、ベジータは!?それに悟飯達も…!」
閻魔大王が言うには、全員無事に生き延びているらしい。ベジータは復活したブロリーと一騎打ちをするため別の星に、悟飯は瀕死だったが、界王神たちによって回復してパワーアップを図っているとのこと。そして悟空は悟天たちにフュージョンを教えた後、悟飯の気配を感じたためそちらに向かったとのこと。
「そうか、みんな無事なのか…!」
『じゃが法則がめちゃくちゃなままじゃと、魔人ブウを倒してもまた蘇ってしまう!地獄から抜け出した悪人の一部はボージャック一味によって送り返されておるが、また抜け出してしまう!それに罪なき者たちの魂は地獄に来ることはなくとも、あの世とこの世の境で留まったままじゃ!いつ飽和するかもわからん、今すぐ宮殿の上にいる者を倒してくれ!』
「宮殿の上…あそこか!わかった、すぐ向かう!」
さらに上へと向かえば確かに何かの気配を感じる。とても強く、強大な気配が…。
「…なんだこの気。下手したら超サイヤ人3以上かもしれないぞ…」
「ジャネンバ~!」
「うわあっ!?」
向かううちに気配の前にまで来ていたようで、海に気づいた何かが声を上げた。
その正体は体全体がクリームに近い黄色の体表をした存在で、薄い笑みを浮かべてジャネンバジャネンバと言っていた。
少し子供のような精神性をしているのか、驚く海の姿を見てけらけらと笑っている。
「ジャネンバジャネンバ~」
「お前が地獄をめちゃくちゃにした張本人だな…よーし、こっちに来やがれ!ここじゃ戦いづらいからな!」
「ジャネンバジャネンバ?ジャネンバー!」
「ジャネンバ…それがお前の名前か?まぁいいや、ほーら鬼さんこちら、手の鳴る方へー!」
地獄へと落下しながら手を鳴らすと、ジャネンバは近くのビーズを集めて集合体に変え、山のようなビーズと共に落下していった。
一足先に地面へと降りていた海がぎょっとするのと同時にビーズが弾け飛び、落ちたジャネンバが地面をゴロゴロと転がる。
満足したのか座り込んだジャネンバが近くの岩に手をやると、光が煌めき小さなジャネンバへと変身した。
「……はぁっ!?なんでもありかよ!」
「ジャネンバジャネンバ!」
『ジャネンバ~!』
こちらへと向かってくる小さなジャネンバ達。あと少しで海に手が届く…ことはなく。凄まじいスピードと威力で全員が上空へと蹴り飛ばされ、止めを刺すかのように一体一体に気功波が放たれた。
小さなジャネンバ達が消失するのを見たジャネンバが立ち上がって手を下ろすと、空に浮かぶビーズが海目掛けて落ちていく。
回避する間もなく閉じ込められた海目掛け、加速しながらダッシュしていくジャネンバ。
それを察知した海の「げぇっ!?」という声がかき消されるほどの衝撃を放ちながら衝突したジャネンバ。上空へと吹き飛んでいくビーズを見てまたけらけらと笑うが、死角から放たれた気功波によって吹き飛んで転がっていった。
転がる際中、波紋のようななにかを生み出しながら体の突起部分を光らせていく。そして回転を掛けながら突起物から放たれた気弾は波紋へと沈み込み、一つのビーズへと集中砲火が行われた。
「げほっげほっ!あんの野郎…!なんで気を消してた俺の場所がわかったんだ?まさか俺の行動が読めてるとかか…」
「ジャネンバ!」
「くっそー!こうなったら、か~め~は~め~…波アアアァァァァッ!!」
「ン~!ジャネンバ!」
「うえぇっ!?」
海がかめはめ波を放つと同時のことだった。ジャネンバが手のひらを広げ、そこにそのまま映し出したかのような海が現れ、同等以上のかめはめ波を放った。驚く海目掛けてジャネンバのかめはめ波が衝突し、黒焦げになった海が煙を吐く。驚愕する海の脳裏に魔法使いという言葉が浮かんだ。
「ケラケラケラケラ!」
「ちくしょー…!こうなったら短期決戦だ。ハアアアアアアアッ!!」
一気に気を解放し、上昇させていく。魂だけの状態だからこそできるそれは超サイヤ人としての壁を容易く超えていき、超サイヤ人3へと変身する。
「オー!ジャネンバジャネンバ」
凄まじい変化に感動した様子のジャネンバが拍手する中、冷徹なまでにジャネンバを見つめる海。その目は、どうやってジャネンバを倒すかしか考えていなかった。
「まさか魔人ブウ以外にこの姿になるとは思ってなかったな…。だけど、勝負は超短期決戦で終わらせてやる!行くぞジャネンバ!!」
「ジャネンバジャネンバ!!」
◇◆◇◆◇
海が超サイヤ人3に変身したころ。また別の地獄の一区画に、何かが吹き飛ぶ音が響いた。
岩山へ飛んでいくギニュー特戦隊を横目に、フリーザはその仕立て人を忌々し気に見つめる。常人ならば耐えることのできない激怒した視線を向けられた存在は、バカにするように鼻で笑った。
「二度と会うことはないと思っていましたが…まさかもう一度会うことになるとは思いませんでしたよ…!」
言葉もなく、もう一度戦う姿勢を取る誰か。その額には、
次回はベジータとブロリーの戦いです。