ドラゴンボール ~もう一人の兄~   作:龍玉

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サイヤ人の王子

 

 数多の星が煌めき、月のような衛星が地上を照らす星の一部分が巨大な爆発で欠けていく。山脈が崩れ、崩壊していく隙間を黄金の光が過ぎ去った。それに緑色の光が追従し、さらなる破壊をもたらしていく。

 

「アトミックブラストッッ!!」

 

「ぬぅンッ!!―――ハハハ、何かしたか?」

 

「ちぃっ!化け物が、あざ一つで耐え切るとは…!」

 

 スパークが迸る黄金の光を身にまとう存在はサイヤ人の王子ベジータ。追いかける緑の光は伝説の超サイヤ人2へと変身したブロリー。

 双方ともに星一つ破壊するなど容易いパワーを一方へ向けるが、ベジータからの攻撃の旗色は悪い。ベジータからの攻撃ではブロリーの防御を突破することは困難であり、まともにダメージが入るとすれば格闘戦しかないだろう。

 その程度のことはベジータも理解している。だが脳裏に過るのは新惑星ベジータでの攻防戦。いや攻防戦と呼ぶことのできない蹂躙は、ベジータに接近戦の手段を取らせることを躊躇わせていた。

 

 かといって気功波を放ったとて、先ほどのようにかき消されるか純粋な防御で防がれるのがオチだ。悟空が居なくなってから始まった戦いだが、今だに防戦一方の状態のまま追われている。

 

「今度はこちらの番だ…ハアァァァァッッ!!」

 

「ッなんて馬鹿デカい気弾だ!?避けるしか―――!」

 

「死ねええぇぇぇッ!!!」

 

「ぐうぅぅぅぅぅ!!!」

 

 オーバースロー気味に投げつけられた気弾の爆破に巻き込まれ、立ち上る煙に飲まれるベジータ。一瞬のうちに消えたベジータの気配に笑いの止まらないブロリーは、悪意の方向を地球へと向ける。

 

「フハハハハハ!いくらか強くなったようだが、所詮雑魚は雑魚のままだったか…。カカロットォ…次は貴様を殺してやる…!」

 

 惑星ベジータが吹き飛んだ時のように体の周りにバリアーを張り、地球へ向かおうとするときにブロリーはあることに気づいた。

 死体が無い。あの強さだ、例え耐え切れず死んだとしても体の一部ぐらいは残るはずだ。だというのに衣服の欠片すら残っていない。それが意味することはただ一つ…

 

奴は生きている。

 

 疑問が確信に変わる瞬間、バリアを突き破った一撃がブロリーの頬へと突き刺さる。振りぬいた拳をもう片方の手と合わせながらブロリーの胴体と密着させ、0距離からの一撃を放つ。

 

「ギャリック砲ッ!!!」

 

「ぐおおおッ!?ッ貴様ァ…!!」

 

「ハァ…ハァ…い、一か八かの賭けに勝ったというのに、この程度で終わりなどなんの冗談だ…!」

 

 ブロリーの気弾が着弾して煙があたりに立ち込めた瞬間に気を消し去り、死んだふりを行ったことでブロリーの油断を誘い、奇襲に成功したベジータ。しかしその顔は晴れたものではなかった。

 ブロリーのバリアを破るため行ったのは、いつぞやの海が行っていた気の全集中をすることによる攻撃だった。気を消し、ブロリーの意識が地球に向いた瞬間に両足のみに気を集中させることで凄まじい跳躍力を発揮することを可能としたことでブロリーに気づかれる前に接近することが出来た。

 そしてすぐさま腕へと気を移動させてバリアーを破壊しながら攻撃、0距離からのギャリック砲を叩き込んだ。

 この一瞬の内で行った気の操作の難易度は、海でも困難と言わざるを得ない。なんせ超サイヤ人2によって爆増した全ての気を足から腕へ、気功波を放つなどやったことが無いほどに無理難題だ。

 しかしベジータはそれを成功させた。培った経験と有り余るほどの才能をフル稼働させ、永遠のライバルである悟空以上の芸当をこなした。

 

 それでも、目の前の悪魔に致命傷を与えるまではいかなかった。バリアーによって威力が減衰したというのもあるが、何よりブロリー自身のタフさによって耐えられた。

 そして致命傷とまではいかずとも有効打を与えた結果、ブロリーの怒りが爆発する。

 

「ウオオオオオオッッ!!」

 

「なんだ、と…まだ上があるというのか…!?」

 

「気が高まる…溢れる…!ハアアアアアアアッ!!」

 

 すぐに距離を取った意味を無くすほどの圧がベジータにぶつかり、その体を地面へと強引に下ろす。

 すぐさまブロリーに目を向けたベジータが目にしたのは、ブロリーのどこまでも上がり続ける気を放出したことで飛散し、星を少しずつ滅ぼしていく光景だった。

 戦う前に存在した美しい景色が千切れるように崩れ去り、遠くで瞬いていたであろう星が爆散して宙を焼いていく。フリーザによる星の破壊が可愛く見えるほどだった。

 

 しかしベジータは冷静に、「これはチャンスだ」と思考する。

 今のブロリーは溢れる気を吐き出そうとしているため積極的にこちらに来ることはない。といっても吐き出し終わった後はよりパワーアップした状態で殺しに来るだろうことは簡単に予測できる。

 かといってノーマーク状態の現状を利用しない手はない。今すぐこちらも限界を超えるべきだ。

 

 カカロットとカイが至ったという、超サイヤ人を超えた超サイヤ人をさらに超えた超サイヤ人へ至るために…。

 

「―――俺はいつまでも二番手、三番手に甘んじる気は無い。いずれやつらを抜き去り、最強へと至る…そのためにブロリー、俺は貴様に負け続けるわけにはいかん!ハアアアアアアアアアアアッ!!

 

 爆発し続ける四方に負けないほどの気を解放し、さらにさらに上げ続ける。その上がり続ける気に呼応するかのようにベジータの肉体が進化していく。

 

ァァアアアアアアァァァァッ!!ハアアアアアァァァァッッ!!!

 

纏う気をより重圧に、より強固に、より強力に練り上げていった影響は髪の毛へと及び、その長さをぐんぐん伸ばしていく。いつしか眉毛が消失し、より悪人に近い顔になる。

 

「ッダアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

 臨界点に達した気によって辺り一帯に巻き散らされていた気弾がかき消され、浮かんでいたブロリーにまで衝撃が届いた。

 衝撃を合図にするかのようにブロリーの気も臨界点に達し、同等程度の衝撃を空中で放つ。

 限界を突破したというのに、やっと同じ土俵に立っただけだということを示唆するかのようなその衝撃を浴びながらベジータは笑みを浮かべる。バビディによって引き出されたとはいえ、自身に眠る力は格上だと思っていたブロリーにも通用すると理解したことでサイヤ人の血が騒いだためだった。

 

「…ついに、ついに俺は至った。カカロット達のいる次元に…ブロリー、貴様が居る強さの次元に…!!」

 

「フゥー…フゥー…!ベジータァ…ッ!!」

 

「この時を待っていた…貴様という恐怖を叩き潰し、王子としての俺を取り戻すこの時を!!」

 

「ベジータアアアアァァァッッ!!!」

 

「ブロリイイイイィィィッッ!!!」

 

 気の解放によって吹き飛んだ地面の欠片を吹き飛ばしながら空へと昇るベジータと、周りに存在した大気に穴を開けながらベジータへ突っ込むブロリー。光すら置いて行かんばかりの速度で突撃し、突き立てた拳同士がぶつかり合って衝撃波を拡散させた。

 

 先手を打ったのはベジータだった。重なったブロリーの拳を蹴り上げながら仰け反り、驚いた様子のブロリーの顔面目掛けて頭突きを放つ。

 しかし勢いを付けたヘッドバットを受け止めたブロリーのカウンターのヘッドバットを貰い、逆に吹き飛ばされるベジータ。

 態勢を整えた瞬間を狙いすました急降下キックをつかみ取り、何回転もしながら地面へと叩きつけたことで地盤が歪み、岩盤が山のように連なっていく。

 

「ふおおぉッ!?」

 

「フハハハハッ!あの時のように、岩の中で眠ってしまうがいいッ!!」

 

 払いのけられた腕へと体が傾いた隙を狙ったラリアットによって、あの時のように岩盤に叩きつけられる。しかしベジータはあの時のベジータではない。恐怖を知り、挫折を知り、超えるべきライバルを見据えたその瞳は目の前の存在を強く睨みつけた。

 そして自身の顔を掴み、岩盤へと押し込み続ける腕を逆につかみ取り岩盤へと叩きつけた。

 

「グウゥッ!?」

 

「これで終わらんぞ…!デヤアアァァッ!!」

 

「ガアアアアアアッ!?」

 

 叩きつけた衝撃で岩盤が砕け散り、空中へと投げ出されたブロリーへ意趣返しと言わんばかりにラリアットをぶちかまして別の岩盤へと叩きつけた。

 されどブロリーもタダでは終わらず、ベジータを払いのけた瞬間に全力の気弾を投げつける。

 

「ヌアアアッ!!」

 

「チィッ!なら―――ビッグバン・アタックッ!!」

 

 至近距離で衝突して爆発を起こしたことで吹き飛ばされる両者。ブロリーは少し浮き出た丘に、ベジータは少し下に位置する地面に落ちた。

 

「―――カカロットよりも先に、貴様を消し去ってくれるわ…!」

 

 手のひらにソフトボールサイズの気弾を作り出し、握りしめる。漏れ出した光は、その小さな小さな気弾の恐ろしさを周辺に知らしめていた。

 

「―――俺はサイヤ人の王子、ベジータだ…!俺はもう、貴様には負けん!!!」

 

 体をひねり、両手を合わせることで気を集中しやすくさせる。そして体中の気を一点に集めたことで、薄い紫の光が手のひらから漏れ出していく。

 

 共に準備は整い、その時が来るのをまだか、まだかと待ち続け―――揺れる地面によって崩れた岩が転がった。

 

「今楽にしてやる―――!!!」

 

「ギャリック砲!!!ハアアアアアッ!!!」

 

 軽めのスローイングによって投げ出された膨張していく気弾とギャリック砲がぶつかり合い、拮抗状態を作り出した。

 しかし拮抗状態は長く続かなかった。追い打ちとばかりに放たれたブロリーの気弾によって巨大な気弾の勢いが増し、ギャリック砲を押し返し始めたのだ。

ついにはベジータの目前へと迫り始め、地面を抉りだした。

 そしてベジータに着弾する―――瞬間、その顔に笑みが浮かんだ。

 

 諦め?走馬灯?それとも狂ってしまったのだろうか。

 どれも違う。どれも今のベジータに合った言葉ではない。ベジータは目の前の絶望に対し、どこまでも挑戦的で獰猛な笑みを浮かべていた。

 ギャリック砲の構えを解き、もう一度目の前で手を合わせた。

 

「ファイナルッ!!フラアアアアアッッシュッ!!!」

 

「なにぃッ!?ぐ、う…!?うおおおおおおおぉぉぉぉ――――――!!??」

 

 再度放たれた気功波とぶつかり合い、逆転するように押し返していく。

 咄嗟に放たれたブロリーの気弾をかき消しながら気弾ごと突き進み、最後にはブロリーを巻き込むように爆発した。

 

 巨大な爆炎の中から気絶したブロリーが墜落し、砕け散った地面に飲み込まれていく姿を確認したことでやっとベジータも息を吐くことが出来た。

 

「…は、はっはっは…。勝った、ぞ…カカロ、ット…カイ…ブルマ、トランク、ス…!ぐっ―――」

 

 地球に居るであろう者たちを思い浮かべ、ベジータは笑みを零しながら地に伏せた。

 まだ馴染みのない超サイヤ人3への変身に加え、ブロリーとの死闘が重なったことで疲労がピークに達したのだ。

 

 しかしこれだけは断言できるだろう。サイヤ人の王子ベジータとブロリーの戦いは、ベジータの勝利だということが。

 

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