「ギギャハハハハハハ!!」
「来るぞーッ!!」
誰かの声を認識するのと同時にベジータが吹き飛んだ。視線を向ければ、拳を振りぬいた状態で浮かぶブウがそこにいた。そしてこちらに振り向いて笑みを浮かべる―――咄嗟の判断で顔の側面に腕を立てた瞬間、腕ごと吹っ飛ばす衝撃が襲ってきた。
「ゥグッ!?」
「コイツ!?」
「ウガガガガ!!」
「がああああ!?」
「父ちゃん!?」
気を纏った拳を交わされた父さんが蹴り飛ばされ、追撃の気功波がその体を飲み込んでいく。
遠くの方で父さんをベジータが回収するのを確認できるけど、今の攻撃だけで二人とも体力が大幅に削られている。しかも超サイヤ人3の燃費の悪さがここに来て悪さしてきやがる…!俺や父さんもかなりギリギリだし、悟空なんか維持するので精いっぱいだ。
父さんたちが合流する合間で悟空が殺されるかもしれねぇ、俺が何とか気を引かねぇと…!
「ギヒヒヒ…!」
「ち、ちきしょう…!もう、気が…!」
「こっちだあああああッ!!」
「「!?」」
「大ッ切ッ!!だあああああんッ!!!」
「ギ――――ッ」
悟空に当たらないように斜め下から横薙ぎに手を振りぬき、少しでもこちらへ意識を向けさせるために放った大切断がブウの体を一刀両断した。
ほんの一瞬だけ止まった隙をついてブウの上半身を上空へと放り投げる。逆に下半身は修復を少しでも阻害するため、蹴り飛ばして距離を離す。
「悟空、下半身のブウを消し飛ばすぞ!!ベジータ、父さん!上空のブウを!!」
「!!そういうことか兄ちゃん、わかった!!」
「「かめはめ―――」」
「バーダック、俺に合わせろ!!」
「言われるまでも無ェ…!」
「ビッグバン・アタックッ!!!」
「タイラントランサーッ!!!」
「「波アァァァアアアアアッ!!!」」
上空と地上で爆発が起きる。超サイヤ人3のパワーが衝突しあったからなのか、気弾の爆発程度だというのに界王神界そのものが揺れた。
爆風が俺や悟空の髪をはためかせるせいでちょっとうるさい。
…ブウの体が飛んでいった場所から気は感じない。それは上空の方も同じだけど、あの程度で終わるとは思えない。絶対に、絶対に生きている…。
「兄ちゃん…」
「…あぁ」
立ち昇る煙からピンク色の何かが俺達の上で集まり始める。それは父さんたちが爆破した上空も同様で、向こうからもピンクの何かが飛んできていた。
特に合わせた覚えもないのに、四人で同じ高さまで浮き上がる。その中心には形を成し始めたブウがいた。
本当ならすぐさま気功波を放つなりして再生できないようにしたい。でももう取れない手段だ。
俺も、悟空も、ベジータも、父さんもすでに限界だ。悟空に至ってはなんで超サイヤ人3が維持できてんだって思ってしまう。
界王神様の瞬間移動ができる以上逃げることもできないし、かといって今度こそブウのすべてを消し去れるのかと言われても無理だとしか言えない。
勝てない。そんな言葉が脳裏をよぎるのに、いまだに拳を握ってブウを睨んでいる。みんな同じだ。その眼に諦めっていう感情は一切ない。
なんで諦めないんだろうとは思わない。だってそんなの、負けたくないからという思いに尽きるから。
まだリンも大きくなるし、パンジとまた花畑に行って昼寝でもしたい。ラディッツの結婚だってまだ見てないし、悟飯がしたいって言ってた研究だって見れてない。
他にもやりたいことはある。だけど何よりも、まだまだ悟空やベジータと一緒に強くなりたい。
やりたいことがまだまだあるのに諦めていられるか?…諦められるわけないだろう。
だから…だから…!!
「「ぜっっったいに負けたく無ェッ!!!」」
口に出た言葉が悟空の言葉と重なる。驚いて互いに見合ってしまい、笑いが漏れてしまう。
「ったく、嬉しそうだな悟空。こんな状況だってのに…」
「へへ、当たり前じゃねぇか!こんな強ェやつとやれるなんてさ…!」
「…カカロットと戦うと気が抜けちまうな…」
「どこまで行っても貴様はいつも道理だなカカロット」
「褒めてんのかそれ?」
「貶しているに決まっているだろう」
「ひっでぇやっちゃな」
過度に入っていた緊張が解れて少し大きく息が吸えるようになった。死ぬかもしれないってのに、こんな空気感でいいもんなんかね?…悲壮感に溢れたまま死にたくねぇから別にいいや。
そんな会話をしているうちにブウの体が元に戻り、邪悪な笑みを浮かべながらこちらに視線を向けた。その体からは一切の疲労感が感じられず、ブウ自身の理不尽さを強めている気すらする。
だけどその程度で萎縮するようなやつはここにいない。
「―――行くぞみんな!!」
「「「応ッ!!」」」
「ハッハアァ…!!」
四方向からの拳の雨がブウへと向かい、その一発一発がすべて避けられる。時々対面の拳とかち合って空気を揺らし、今度こそ当てようともう一度拳を振るっても液体のような動きで避けられる。
100を超える連打を放った時だった。不意にブウの体が螺子のように回転し、もとに戻る反動を利用した回転攻撃で全員が吹き飛ばされた。
最初に狙われたのは父さんとベジータだった。伸びた腕が飛んでいく二人の肩を掴んだと思うと、一気に引き寄せて二人の腹に足がめり込んだ。
呻いた二人めがけてタックルをぶちかまし、また飛んでいった二人に気弾が投げつけられて巨大な爆発を起こした。
だが満足しなかったブウによってさらに気弾が投げ込まれ、連鎖的に爆発して空を焦がしていく。
「ァァァあアああアああああッ!!」
「グウ!?」
超スピードでブウに突撃して気弾の発射を中断させるところまでは成功した。だけど突き立てようとした腕を掴まれてしまい、勢いを付けて回転させられる。
吐きそう、そう考える暇もなく回転が止まった。何かとぶつけられる衝撃を添えて。
「あがっ…!?」
「ぐふッ」
聞こえた声的に、ぶつけられたのは悟空だったようだ。さっきまで息を整えようとしていたはずだから、瞬間移動をするなりして距離を詰められたみたいだ。
ほんっとにバケモンだなコイツゥ…!
「ギャハハハハハハハハッ!!」
「「ぶっ―――!?」」
ラリアットに巻き込まれて岩山に叩きつけられた。追加と言わんばかりに気弾が投げ込まれ、隣にいた悟空諸共がれきの山に墜落していく。
上でブウが嗤う声が聞こえる。すでに俺も悟空も、超サイヤ人3が解けてしまっている。さっきまでの気を感じないあたり、父さんとベジータも同様だろう。
まったく攻撃が当たらなかった。当たったところで意味はなかっただろうが、それでもと思わずに言われない。
あー…ほんっとに強いな。ブロリーとブウが合体した時点でわかりきったことだけど。
「…はぁー、きっつい…けど…まだ、戦えるな…悟空…!」
「……あぁ…まだ…負けてねぇ…!」
なんとか起き上がろうと腕を伸ばし、無理矢理膝を立てて体を起き上がらせる。
不意に、ボロボロになった青紫の道着が千切れて目の前に落ちるのが目に入った。悟空も山吹色の道着が破れ、下の青い服のみとなっていた。…だからなんだって話だ。
「ぐ、うう、あああ…っ!」
力を振り絞って立ち上がった時だった。千切れた服の一部から何かが零れ落ちて、地面に軽い音を立てた。
ころころと地面を転がるそのイヤリングは、なんだったっけ。
ぼうっとそれを見ていると、悟空がそれに気づいて息を飲んだ。
「……ポタラ」
「ポタラ?…そういや俺が持ってたっけ…けどこれがなんだって―――」
「……オラと兄ちゃんで…いや、それならまたベジータと…!…ッ!これなら、あいつを倒せっぞ…!兄ちゃん一緒に来てくれ!!」
「うおッ!?」
ポタラを拾い上げた悟空に掴まれたかと思うと、瞬間移動でベジータと父さんのもとに移動していた。二人も俺達と同じぐらいにボロボロの状態でがれきに埋まっていた。多分、戦っている時に巻き込んだ岩山の残骸だろう。
というか、急になんで父さんたちのもとに飛んだんだ?こんなことならデンデたちの方に行った方がいいんじゃ…?
「ベジータ、起きてくれベジータ!!兄ちゃんは父ちゃんを起こしてくれ!頼む!!」
「わ、わかった!父さん、早く起きてくれ!悟空がなにか思いついたみたいなんだよ!!」
「―――ぐ…、うぅ…揺らすんじゃねぇ…」
「がはっ…くそったれ…まだ体が、痛みやがる…!」
なんとか二人を起こせた。けれど、まだ二人ともまともに動けそうにない。
というかブウのやつは…?
「イヒヒヒヒ…」
…遊んでるしほっとこ。
「なぁ兄ちゃん、父ちゃんとフュージョンってできっか?」
「フュージョン?出来るけど…」
「よし…!ならベジータ、無理矢理ですまねぇけどまた付けてもらうぞ…ポタラを!」
「!?ま、待てカカロット…!」
有無を言わさずベジータの右耳にポタラを付けたと思うと、悟空自身の左耳にもう片方のポタラを付けた。
瞬間、目の前でポタラが急激に光りだして二人が浮かび上がり、互いに引っ張られあっていく。
「よーし、行くぞベジータ!!」
「カカロット貴様アアアアアア!!??」
悟空の喜色に溢れた声ととベジータの断末魔が響く中、ついに二人が衝突した。二人の体が溶け合っては混ざり、光の玉へと変化していく。さっきまでの二人が合体したと思えない気があたりに充満し、見ていた俺と父さんも顔を背けるほどに風が吹き荒れた。
「――――ギッ!?」
初めて聞くブウの焦った声がした。それはまるでトラウマを刺激したような声で、あのブウがそんなこと考えるのかと思ってしまう。
そんな思考を置いていくように光が人の形を成していく。髪が逆立った部分と下りている部分の両方が存在し、山吹色の道着の上に青い道着を着こんだ存在が目の前に現れた。
拳を握りこみ、何かの確認が終えたその戦士は、笑みを浮かべる。
「―――よっしゃあッ!!!」