ドラゴンボール ~もう一人の兄~   作:龍玉

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えー…まずは皆さんお久しぶりです。パソコンがぶっ壊れたりリアルが忙しくなったりとめちゃくちゃ投稿が遅れました。
たぶん今後も投稿頻度がバラバラになりそうなのでご容赦ください。


魔人が恐れるモノ

 

 ポタラによって融合し、二度目の誕生を果たした合体戦士―――ベジットは、魔人ブウからの恐怖を滲ませた視線を受けつつも海とバーダックに目をやる。

 海はぎりぎり行動ができそうだが、バーダックの方はまだ立ち上がるのも難しそうだ。意識自体は戻っているから最悪の事態は免れてはいるが、すぐにフュージョンをするわけにはいかないだろう。

 

(そうなってくると、オレがブウの相手をして時間を稼ぐ必要があるな…最高なのは勢いのままにヤツを消し去ることだが、あの様子だともしかしたら逃げるかもしれない。完全に逃げの姿勢に入ったブウ相手に、果たして追いつけるかどうか…)

 

 今のベジットならば、フルパワーでかかれば例えブロリーを吸収した魔人ブウだろうと完全に消滅させることは可能だ。しかしベジットはそこにある可能性を見出した。

 それは、魔人ブウがベジット相手に逃亡を図った場合のことだ。ベジットは一度、悟飯を吸収した悪ブウを無傷で叩きのめしている。その経験がもし、あの破壊兵器と言える純粋ブウに受け継がれていたらどう感じるだろうか。

―――恐れるだろう。あの時のブウと今のブウにパワーの差はあれど、それでも尚ベジットはブウを圧倒できる実力を持っている。それはあの時変身した姿が、超サイヤ人のみであることが証明していた。

 まだベジットには超サイヤ人2、超サイヤ人3が残っている。その実力は計り知れないだろうが、魔人ブウを消し去るには十分すぎる。

 

 意識を取り戻したブロリーを瞬時に吸収し、すぐさま悟空たちを強襲するほどに戦況を理解できるブウはそのことに気づいていた。あの時戦った目の前の存在は全力を出していない。今の自分ですら、ヤツのフルパワーを相手にして勝てるかは怪しい、と。

 

 ベジットがブウをすぐさま消しにかかることに足踏みしているのはそこだ。もしもベジット相手に完全に勝てないと判断した場合、ブウは脱兎のごとく逃げ出すだろう。今まで見て盗んだ技をフル活用してベジットの手の及ばない場所まで退避し、ベジットを超えることのできるその日まで耐え忍ぶはずだ。それが最適解と考えたのなら、あの破壊兵器は躊躇など一切しないだろう。

 

 ブウがベジットを超えるかもしれないことを考えると待ちたくなる気持ちもあるが、それまでに犠牲になる命を考えると待つわけにはいかないだろう。そもそもベジットですら完全に追いつけるとは断言できない。瞬間移動の上位互換のカイカイを身に着け、細胞の一片すら逃すことのできない魔人ブウなのだ。カイカイで移動した瞬間に気を消されて隠れられてしまえば、瞬間移動で追いかけることも困難だ。

 

(だからこそ詰め手が欲しい。あの魔人ブウ相手に圧倒できるだろう存在、カイとバーダックの融合した戦士を…)

 

 もしもベジットと同レベルの戦士がいた場合、片方がブウの行動を制限した状態でもう片方が攻撃を加えれば、逃亡の可能性を封じた状態で止めを刺すことができる。密着した状態でカイカイをされたとしても、その場にはすでに戦士が着いていっている。気を消されたとて、追いかけることは容易だ。

 

 そのためにも、ベジットは本気を出さない。魔人ブウにベジットを仕留めるチャンスだと考えさせることで、少しでもこの場に押し留めるために。

 二人のうちバーダックが復帰するまでの間、ベジットはフルパワーで消し去るための超サイヤ人3に変身できる体力を残したまま、全力を出さない状態でブウの攻撃をやり過ごさなければいけない。

 

 例えベジットであろうと、少々厳しいと言わざるを得ない相手と状況だというのに、その顔に恐怖もなければ焦りも無く、ただただ不敵な笑みだけが浮かんでいた。

 それは偏に、彼がサイヤ人であるからだろう。自ら挑戦者となり、格上の強者相手に挑むワクワクのなんと心地よいことか。

 

「カイ!それとバーダック!早くするんだな、じゃないと魔人ブウはオレがやっつけちまうぞ!」

 

「……ははっ、そいつは嫌だな!父さん早く立ってくれって、先越されちまうぞ!」

 

「無茶言うな…!」

 

 上半身を起こそうとするも起こせず、言うことを聞かない体に苦戦するバーダックに気を分けながら応援するカイ。そんな二人と分かれて浮き上がるベジットは、超サイヤ人へと変身しながら魔人ブウの眼前に仁王立った。

 

「…さぁて、あの時のリベンジだぞ?かかって来いよ」

 

「グギギギギギギ…!」

 

「なんだ、オレにビビってんのか?」

 

 馬鹿にした口調に、指を立てて手招きするなどの挑発行動を見せたベジットに対し、ブウは青筋を増やすだけで何もしない。いや、何もできないというのが正しかった。

 目の前の存在が本気を出さない状態でわざわざ立ち向かってくるはずがない。下にいる人間たちがパワーアップしたとて、すでに弱り切った体で戦えるはずもない。となるとやはり、コイツに何かがあるとブウは考えた。

 

(……ふーむ。さすがに警戒の方が強かったか?となると、やっぱりこっちから仕掛けるしかないな…!)

 

 怒りに身を任せて攻撃させることで勢いづかせ、その勢いのままベジットに向かってくることを望んでていたものの、あまり芳しくない結果に終わった。諦めてファイティングポーズを取ったベジットに、魔人ブウは疑問に思った。

 

 何故本気を出さない。あの時と同じパワーのままで今の自分に勝てるわけがない。それは目の前の人間もわかっているはず。なのに何故姿を変えない?あの人間たちと同じ姿になれるだろうに、何故、ナゼ、なぜ…

 

 

 

 

……………ヤツは本気を出せないのか?

 

 

 

「―――イヒッ!グギャオオオアアアア!!」

 

「!!」

 

(かかった!!)

 

 鞭のようにしなったブウの足を受け流しながら気弾を放ち、煙が両者を遮った瞬間を縫った一撃がブウの体を刺し貫いた。

 

「ギッ……!」

 

「はっ!!」

 

 悟飯を吸収したブウの時とは打って変わってブウを切り刻んでいくベジット。体を回転させて真っ二つに切ったかと思えば、流れるような手さばきで四分割にしてしまう。

 ブウの体がくっつこうと蠢いた瞬間を狙い、密着したベジットが気功波を放って追撃をかけようとブウに接近する。

 

 刹那、ベジットが後方へと回避を行った。その直後、元居た場所にブウの一部が殺到した。

 

「ギヒヒヒヒヒ…」

 

「なるほどな、道理で無抵抗だと思ったわけだ。油断も隙もあったもんじゃない」

 

 再度襲い掛かるブウの体をバリアで押しのけつつ、人の姿をしたブウへとキックを放つ。さすがのブウも嫌がったようで、回避を試みた。

 体を逸らすことで飛び蹴りを避けようとしたその時、顔の横を通ろうとしたベジットの足がぶれたかと思えば、上空から地面へと蹴り落されていた。

 

 見上げれば、体中の各所でスパーキングを放つ姿へと変わったベジットが見下ろしていた。

 

「グウ……!」

 

「そろそろ体も温まってきたところだしな、ギア上げてくぞ!」

 

「ガウアアアア!!」

 

 地上から襲い掛かるブウを足のみで迎撃しながらも、同じように接近してきていた分かたれたブウの一部に打撃を与えていく。双方ともに元のブウの体を象っているため、すでにベジットは二人のブウの相手をしている状態だ。

 

 しかしブウからの攻撃で有効打を与えられていない状況に苛立ちを覚えたのか、さらに分裂していくブウ。分裂の回数に応じて体が縮んでいく体に目もくれず、ネズミ算的に増えたブウが気弾の雨あられをベジットへと降らせていく。

 

「チィッ!」

 

 半数以上を迎撃し、撃ち零した十数個の気弾を防御していく。

 煙を引き裂いて現れるベジットの体に目立った傷はなく、少し上半身の服装が乱れた程度しか先程と違う。

 そしてベジットが目にしたのは、先ほどまで100体以上はいたであろうブウの分身が消え、一体に戻ったブウの姿だった。

 

「なんだ、数で押すのはやめたのか?」

 

「ギヒヒヒヒヒ…」

 

「………?」

 

 先程までの焦りを含んだ笑みとは違う、純粋な悪意で塗れた笑み。その豹変具合に違和感を覚えた。嫌な予感を感じ、辺り一帯に張り巡らせた気で再確認したことで気づいた。

 

ブウの気配がもう一つある。そしてその方向は――――カイ達のいる方向。

 

(界王神様もいる!?カイ達の回復に来てくれたのか!)

 

 水晶玉によって様子を確認していた彼らは、ベジットの作戦に感づいていた。そのため、ベジットがブウの注意を引き付けている間にカイ達の元に現れ、急いでバーダックの回復を行っていた。

 しかしタイミングが悪かった。100体以上のブウによる煙幕によってベジットが援護に向かえないかつカイの魂によって引っ張られたバーダックのパワーの回復に時間がかかったことが災いし、見知った気配をしたキビト神に気づいたブウが分身を放ったのだ。

 

「瞬間移動で―――」

 

「ギハハハハハ!!」

 

「何っ!?」

 

 カイ達の元へと急行しようとしたベジットに抱き着くブウ。自爆を警戒し、体全体の防御を固めたベジットの肩を透かすように、辺り一帯の景色が変わった。

 先程までいた界王神界の地面も無ければ、青い空も無い。360度全体に星が光り、重力が存在しない空間。さらに言えばカイ達の気が感じられない場所。

 

ベジットは何処とも知れない宇宙に来ていた。

 

(こう来たか…っ)

 

 すでに姿を消したブウと、一人残されたベジット。宇宙空間に対応するため、周囲にバリアーを張ることで生き延びる。

 すぐさま状況を整理すれば自ずと浮かんでくる最悪の状況。

 

(時間稼ぎにバレちまった…!しかもオレがすぐに助けに行かないようにする妨害!おまけにだが、恐らくここは界王神界から遠く離れたどっかの銀河。カイ達の気を感じられないのがその証拠…!!)

 

 ベジットともう一人の合体戦士が生まれる可能性に気づいたブウは、一つの策を打った。ベジットを界王神界から遠く離れた星のすぐそばに飛ばすことにより、未だ再起の出来ない人間を殺すことで最悪の状態から逃れようとした。

そしてその策は成功した。身近に起死回生の一手を打つために、自爆する一手を躊躇いなく選択肢に入れる者*1を知る悟空が合体した存在であるベジットがブウの行動に危機を覚えたことで、ブウのカイカイに抵抗することができなかったからだ。

 

 ベジットは界王神のような瞬間移動が行えない。逃げの一手に走り続ける場合のブウを危惧したように、通常の方法で向かうことのできない界王神界へ瞬間移動は困難だ。それこそ、アルティメット悟飯のような隔絶した気を持つものが界王神界にいない限り、自力で向かうしかない。

 それに気づいているのかは不明だが、ブウの気は最小限に抑えられている。

 

「こうなったら、無理矢理行くしかねぇ!!!」

 

 地球から界王神界に向かう際の方向から予想を立て、体力の温存も後回しにして超サイヤ人3となったベジットが加速する。只人では決して向かうことのできない界王神界に、歴史上誰一人として存在しない強引な侵入方法で向かい始めた。

 

◇◆◇◆◇

 

 ベジットがブウと相対している頃、カイはバーダックの回復に専念していた。

 しかし体力が限界の海ではあまりにも乏しい気の譲渡であるため、行動が可能になるまでどれだけ時間が掛かるかは不明だった。

 焦りが募り始めた海だったが、そのすぐそばに見知った存在が現れた。遠い星から見守っていた神、キビト神だった。

 

「か、界王神様!」

 

「よく頑張りましたね海さん、あとは私に!」

 

 バーダックと海の間に立ち、バーダックの回復と並行して海の回復も行っていく。海とは段違いの速度で不調が治り始め、ついにバーダックの体が立ち上がった。

 

「ぐ、ぁああああ……っ!!」

 

「父さん…!」

 

「くそったれ、情けねぇ姿晒しちまった…!カイ、さっさとフュージョンするぞ!!」

 

「あぁ!」

 

「お二人とも、お早く!ベジットさんが時間を稼いでいる内に――」

 

 キビト神が話し終える寸前のことだった。先程まで感じていたベジットの気が消え、ブウの気がすぐそばに現れた。

 現れたブウの手のひらはキビト神に向いており、何をしようとしているのかは一目瞭然だった。

 

「「させるかァッ!!」」

 

「ガァ……!!」

 

「うわっ!?」

 

「界王神様!?」

 

「間に合わなかったか…!」

 

 二人がキビト神からブウを離そうと二人でタックルを仕掛けるが、放たれたエネルギー波を完全に逸らすことは叶わず余波を浴びたキビト神が黒焦げの状態で倒れ伏す。

 これ以降はキビト神による回復は行えず、ベジットの回収も行えない。かといって超サイヤ人3に変身できるほどの体力があるとは言えない。再び崖っぷちの状況に陥ってしまった。

 

「…行ける?父さん」

 

「舐めんじゃねェよ、意地でも喰らいついてやる…!」

 

「ははっ、頼もしいよ…!っ!!」

 

「ハアッ!!」

 

「ガアアアアアア!!」

 

 なけなしの体力を振り絞って超サイヤ人となった二人とブウが衝突し、大気を揺らす。しかし二人が本気で攻撃を加えようにも、遊び半分のブウ相手に捌かれ続けて防戦一方の状況へと追い込まれていく。さらに最悪なことに、ベジットを宇宙に投げ捨ててきたもう一人のブウが参戦したことで防御もままならなくなっていく。

 

「こなくそぉ!!」

 

「ガウアウアアア!!」

 

「っ避けない…!?がはっ!!」

 

「ライオットジャベリンッ!!」

 

「ギイ!!」

 

「なん―――ごォっ…!?」

 

「父、さん…!」

 

 がむしゃらに振るった攻撃に微動だにせずカウンターを返され、エネルギー波を上塗りするほどの出力のエネルギー波で撃墜される。

 

生傷が絶えなくなり、肩で息をするようになってしまった海とバーダック。すでに限界であることを確認し、一体だけの状態に戻ったブウが止めを刺そうと小さな気弾を作り出した。握りしめた指の隙間から光が漏れ出し、その危険性をまざまざと二人に知らしめる。

 

 界王神は倒れ、ベジットは間に合わず、ドラゴンボールもまだ準備が完了していない。幾度となく陥った詰みの状況に、二人は笑みを浮かべる。片や諦めの念が強いが心は死んでおらず、もう片方に至っては何処までも抗わんとする挑戦的な笑みだった。

 

死の淵に立ってなお笑みを浮かべる存在を嘲笑い、ブウが気弾を放とうとし―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブウーーーーーッッッ!!!!」

 

 

「「「!!??」」」

 

 

「オラオラオラッ!!黙ってみてたら海さんとそこの野郎を甚振っていい気になりおって!!この全世界格闘技世界チャンピオンのミスターサタンが黙って見過ごすと思うかッ!?成敗してくれる!!覚悟しろ!!貴様も相手が悪かったとすぐに後悔することになるぞッ!!!」

 

 

「……サ、タン」

 

(……き、決まったーーー!!!まさかオレが海さんを助けるとは…!!夢なことがあまりにも惜しすぎる!!)

 

 それは夢だという勘違いがあったとはいえ、確かにチャンピオンとしての自負を携えた言葉だった。例え夢だとしても、自分の恩人の危機を見過ごしたくないという善意に溢れた行動だった。

 

それは確かに、ミスターサタンという男の在り方を表した起死回生の一手だった。

 

 

*1
カイ

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