ドラゴンボール ~もう一人の兄~   作:龍玉

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天下無敵の合体おとうさんたち

 

 サタンが飛び出した瞬間に異変は起きた。

 無感情なまま手のひらを翻して握りしめた気弾を放とうとしたブウだったが、体のどこかが拒否反応を起こす。

 まるでサタンを傷つけることが許せないと言わんばかりのそれは、凄まじい頭痛を伴ってブウを押し留める。

 

「ガ、アアアッ!!??カッッ…!ギイイイイ!??!!?」

 

「……へ?な、なんだ…?」

 

(っ!!ブウの気が乱れまくってる!今しかない!!)

 

「父さんっ!!」

 

「デケェ声出さなくてもわかってんだよ!!いいか、一発勝負だ!ミスったらぶっ殺すぞ!!」

 

「そんなのこっちのセリフだ!」

 

 一定の間隔を取って鏡合わせの体勢のまま、気の大きさを互いにすり合わせていく。少しでも差ができてしまえば失敗するが故に、一切の妥協は許されない。

 少しずつ、少しずつ差が縮まり―――完全に0となった。

 

 条件を満たし、フュージョンポーズを取ろうとする二人にブウは何もできない。不協和音のように響き続ける異常事態に耐えることしかできないからだ。

 呻き声が漏れ出し、ついに膝をついた時だった。何かに気づいた様子のブウが口をモゴモゴさせたかと思えば、唾とと共に何かが吐き出された。

 吐き出されたものが空気に完全に触れたその時、ホイポイカプセルが開くような音が聞こえたかと思えば太っちょのブウが現れた。

 

「あ!?ブッ、ブウ!!」

 

「ハア~~~…!!」

 

不調もなくなり、すっきりした様子のブウはその視線をフュージョンの途中だった二人へと向ける。そしてそのポーズを見た瞬間、ブウの本能は冷や水を浴びせられたような錯覚と共に理解した。

 

あれを成立させてはいけない、と。

 

「グギャオオオオオオオッ!!」

 

 飛び掛かるブウの姿を視認してなお二人は動きを止めない。二人はブウの攻撃によってフュージョンを阻止されるか、成功するかの勝負に出た。これ以上ない隙を使って条件を整え、後は指を合わせれば成功するのだ。ならば最後まで突っ走るべきだと察したからだ。

 

 ブウの拳が海へと走る。すでに〆の動作に入った海はそれを避けることはできない。

そして、指と指がくっつく寸前にブウの攻撃が成功する―――

 

 

 

 

「ブウッ!!」

 

「ホッホーーーウ!!」

 

 

 サタンの呼びかけに呼応するように目覚めた太っちょのブウが気功波を放ったことでブウが回避を取る。取ってしまう。

 気づいた時には、二人の指が合わさっていた。

 

「はっ!!!」 

 

「グオオオ……っ!?」

 

 光の柱と見間違うほどの気が空へと立ち上り、界王神界の辺り一帯を超えてその存在を主張する。

 

それは、遠い宇宙に放り捨てられていた者にまで届く。

 

「―――来た!!!」

 

 光の柱から一人の戦士―――カダックが歩み出てくるのとベジットが帰還するのは、ほぼ同時のことだった。

 現れたベジットの姿は超サイヤ人3のものであり、そこにいるだけでサタンの体が小刻みに震えるほどのパワーを携えていた。

 カダックもまた超サイヤ人の姿であり、ベジットの姿を確認したかと思えば合点がいったかのように一つ頷き、超サイヤ人3へと変身する。

 

ついに、ついに二人の合体戦士が界王神界に肩を並ばせた。

 

「少しばかり遅かったんじゃないか?ベジット」

 

「ご丁寧に宇宙の最果てに放り捨てられちまってな…。まさかオレがいない状況を作り出すとは思わなかったぜ。…二度目は、絶対に無いけどな」

 

「あぁ、へたなことされる前に決着を付けちまおう」

 

「…ギ、ギギ……ッ!」

 

 ブウの足が、一歩後ろに下がる。今のブウでは目の前の二人を相手にして勝つことは万に一つもない。かといって分断は困難だ。先程耳飾りを付けた方の人間を飛ばせたことを加味しても、どちらか一方がいればすぐに合流ができる。

 ならば逃亡をと考えたとて、逃がしてくれる気配はない。これが二人の内一方だけしか相対していない状況であれば逃亡も視野に入っていたが、どちらもここで仕留めるという気配に満ち溢れている。

 

 また一歩、後ろへと下がる。それに合わせるように二人の人間が構えを取る。

 さらにもう一歩下がる―――寸前に踏みとどまる。

 

 ブウが生き残る道は逃げでも降参でもない。目の前の二人を突破するしか術は残っていなかった。ならば目の前の壁を破壊するだけのことと、ブウは理解していた。そしてブウの脳内の選択肢から「逃亡」という道が消滅する。

 それはベジットが危惧していたブウの逃亡という可能性が消えたことでもあり、最後の勝負がすぐそこにまで迫っていることでもあった。

 

「グゥゥゥ……!」

 

「「……」」

 

 ベジットの両手に気で構成された剣が現れ、カダックの体が薄い虹色の光を帯びる。

 そしてブウの手のひらから気弾が浮かび上がり―――雄たけびに後押しされるようにして二人めがけて放たれた。

 

「ハアッ!!」

 

「ガアアアッ!!」

 

 カダックを先導する形でベジットが一番槍を担い、空中を駆ける一対の気弾をみじん切りにしてブウへと接近する。牽制目的で放った気弾を切ったが故に発生した一秒よりも遥かに短いほんの一瞬だけの隙を突かんとするブウだったが、咄嗟の判断で引き絞った拳をベジットから少し逸らして放つ。

 鈍い打撃音が重なり合った。

 

「グウッ!?」

 

 即座に腕を切り離して離脱すれば、目の前で浄化の力を持った光が溢れだした。カダックがベジットの斜め下から現れてかち合った瞬間に腕を切り離さなかったら、あの光はブウの体内に流れ込んでいただろう。

 ならば遠距離からの攻撃を主体にしようと気弾の雨あられを降らそうとするが、それを阻止するようにベジットのスピリッツソードが胸を貫かんとした。

 体を二分割することで回避し、分離した状態でベジットへと向かうブウ目掛けて青白い光が走った。片方が身代わりとなることで雷を防ぎ、身代わりを盾とした状態で気功波を拡散するように放つ。

 

 一つ一つが意思を持っていると思えるほどの軌道を描いて二人へと向かいだし、その多くがカダックが迸らせた電撃とベジットが放った気合砲で撃ち落とされていく。

 

 空中で霧散していく気弾を隠れ蓑とすることでブウがカダックへと接近したかと思うと、フェイントを交えた瞬間移動を使うことで攻撃を誘発させて隙を作り出し、胸元へバニシングボールを投げかけた。

 当たればダメージを、避ければ今度はベジットを相手にする。そんな算段で放たれたバニシングボールは、予想に反して空中で勢いを衰えさせる。

 

「ふんぐぐぐぐぐ……!!だァッ!!」

 

「グギ…ッ!?」

 

 予想外の反応に驚いたブウへと投げ返されたバニシングボールを回避するも、またブウへとバニシングボールが飛んできた。

 もう一度回避して飛んできた方向へと目をやれば、足を振りぬいた姿勢のベジットがそこにいた。

 

「避けたか!ならもういっちょっ!!」

 

「グオオオッ!!」

 

「ふんっ!!」

 

「ガウッ!!」

 

「もういっちょ!!」

 

「グギャオッ!!」

 

 

 

 

「ダリャリャリャリャリャリャリャッ!!!」

「グギャギャギャギャギャギャギャッ!!!」

 

 

 

 

 ベジットが作り出したボール状の気弾がブウへと蹴り飛ばされ、ブウもまた蹴り返す。時には腕を、時にはヘッドバットで相手へと押し付け返す。

 ベジットは合間合間にスピリッツソードを射出し、ブウもまたスピリッツソードを模した剣を作り出すことで斬り捨てて行く。さらに頭部の触覚からお菓子光線をカダックに放ち続けることで横やりを防ぐマルチタスクをこなしていく。

 

 蹴り返され続け、時折バニシングボールが追加されることで幾つもの気弾が行き交った頃だった。

 ベジットの放った気弾がバニシングボールにぶつかった瞬間、弾け飛んだかと思えばすべてベジットへと殺到して行く

 

「マジかっ?!」

 

「ホッホーーウ!!」

 

「ちぃっ」

 

ベジットが気弾の対処に集中するのを放置し、お菓子光線を乱射することでカダックの包囲網を作り出す。そしてついに光線がカダックへと命中してしまい、その体がグミへと変化してしまった。

ついに二対一の状況を崩すことができたとブウが喜び、ベジットが極小サイズのバニシングボールを破壊してブウへと急行しようとした瞬間だった。

 

グミが一人でに動き出し、自らブウの口の中へと入りこんだ。

 

「グエエッ!?」

 

「ダリャアッ!!!」

 

「ゴッ――――」

 

 ベジットの腕がブウへとめり込み、吐き出されかけたグミがブウの気道内で暴れ散らかし始める。

 気でグミを固めることで辺り一帯にタックルを行い続け、時々体を伸ばしては気道を塞ぎながら吐き出されるのを拒否していく。ベジットと格闘戦を行いながらの妨害はあまりにも害悪なもので、ベジットの攻撃が飛んできた瞬間に咳きこんでしまって防御を取ることを許さない。

 

「ガ、アアァ…!!カァッ、ベッ!!」

 

『おっと』

 

「グギギギ…!!グ!!」

 

「お、元に戻ったみたいだな。初めてグミになった気分は?」

 

「食われる側の思いを知ったよ」

 

「オレもコーヒー味の飴になったからよく分かるぜ。―――さぁて、止めと行くか!!」

 

「おう!」

 

「ガアアアアアアッ!!」

 

 ベジットが両手を大きく広げ、合わせた両手を腰へと移動させて全身の気を溜めていく。カダックは体全体に帯びさせていた虹色の光を両手へと集中させ、ベジットのようにかめはめ波の構えを取る。

 相対するブウもまたかめはめ波で待ち構えた。

 

「「かめはめ―――――ッ!!」」

「ガアアアアアア―――ッ!!」

 

 

 光が臨界点へと達する。

太っちょのブウと共に避難し、三人の戦いの行く末を見守るサタンが唾を飲み込み―――

 

三対の目が見開かれた。

 

 

「「「波アアアーーーーーッッ!!」」」

 

 

二本の光と一本の光がぶつかり、拮抗すら起きずに一本の光を打ち砕いてブウを飲み込んでいく。

 

 

「ア……ッ!カカ……カ――――」

 

 光に包まれ、体の細部から浄化されるように消えていく。太陽の光を浴びているような暖かさを感じながら、どこか心地良さをすら覚えるような思いのまま、自身がチリとなっていくことをブウは実感していた。

 

 不意に光の先に、一人の男が立っているのが見えた。男はブウへと笑いかけながら口を開く。

 

「…オメェは凄ぇよ。合体したオラ達と戦ったってのに、たった一人で持ちこたえてたもんな…今度はいいやつに生まれ変わってくれよ。一対一で勝負してぇ!オラも、兄ちゃんたちと一緒に強くなっから!」

 

「―――」

 

「―――へへっ、またな!!」

 

 

 

光が薄れ、一人の大男と一本の瓶を残してブウは浄化された。

ベジットもカダックも、ブウが完全にこの世から去ったことを確認して笑みを浮かべた。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

花火が上がり、大歓声が巻き起こる。

 

天下一武道会が、また開かれる。

 

 

 




どれだけ頭でベジットとカダックのコンビでブウと戦わせてもただのいじめにしかならなくてマジで悩みました。消化不良の方もいるかもですが、ベジット&カダックVSブウ(純粋ブロリー吸収)の戦いは終わりです。
次回からZ編の最後の戦い、再開した天下一武道会です。

あとアンケートを作るのでぜひご参加をば。期間は次の話までです。

追記
誰が残ってるのか書き忘れてました…
勝ち進み→天津飯、海、ナッパ、悟飯(キビトが合体していないため繰り上がり)
未試合→ピッコロ、悟空、ベジータ、ラディッツ、ヤムー、18号、サタン
ヤムーは死亡、界王神とキビトは合体してるのでいません。

天下一武道会の展開について

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