あ、投稿はこれが今年最後になると思われます。
いつもお気に入り、評価、誤字脱字の報告ありがとうございます!
ダイジェストって言ってたのに対悟飯がめっちゃ長い……。でも悟飯相手に超サイヤ人無しで戦う状況で短く終わらせるのは納得いかないんだよなぁ……。
あの後もトーナメントは続いた。
悟空対18号は初めから界王拳を切った悟空と常時バリアを張り続けながら場外へと押し出そうとする18号の攻防戦から始まり、最終的に18号が空中に退避した瞬間を狙った太陽拳&気合砲で押し出しが決まり悟空の勝ちとなった。続くピッコロとの試合では完全に技と技の応酬となり、いつかの決勝戦のような肉弾戦を経て悟空が勝利した。
そして俺と悟飯の試合では久しぶりに素の状態の悟飯と戦うこととなった。最近は超サイヤ人の状態で組み手をすることが多かったから、中々に新鮮な気分で戦えたな。
まぁ新鮮な気分で戦ったとしても相手は悟飯。素の状態でもめっちゃ強かったから天津飯並みにギリギリの試合になった。そもそも攻撃が通らない。何かしらの一撃が入ることはあれど、その程度で怯むことなくカウンターを叩き込んでくる。一度カウンターを通してしまえば今度は悟飯のターンとなり、こっちがカウンターを狙おうにもその動きすら潰すように連打を浴びせてくる戦いだった。一撃一撃が超サイヤ人の状態以上に重いし速いから、本気でやったとしてもあしらわれる始末。
元々雰囲気が変わったとは思っていた。俺が地獄でジャネンバと戦っている最中に界王神様のご先祖様から潜在能力を解放されたという話を聞いた時にはめちゃくちゃ納得したし、悟飯の中に眠っている力に驚愕すらしたぐらいだ。
ぶっちゃけた話、超サイヤ人無しの状態と今の悟飯では土台が違う。素の状態で魔人ブウとやり合えるようになった悟飯と超サイヤ人無しでは戦いにすらならない俺では天と地ほどの差があった。実際悟飯もそこを気にしていたようで、自分が全力の状態で戦えるのに俺たちはそれが出せないということを憂慮していた。
だけど俺もナッパも悟飯が本気を出さない状態になるのは嫌だったからそのままで戦っていいと言って試合に臨んだ。せっかく格上と戦うことができるのにそれを不意にしてしまうのはサイヤ人として嫌だったし、天と地ほどの差があるからって諦めるのは絶対に無理。そんな気概だったらブロリーを吸収した魔人ブウとの戦いで抗ったりはしない。
そしてナッパは自分のタフさを前面に押し出し、自分の限界よりも先に悟飯を倒すことを目標にして負けた。素の状態でナッパ以上のタフさなんて俺には無い。スピードもラディッツ以上では無いし、パワーなんて悟飯を超えることは無いだろう。
だから俺は、悟飯と少しの手合わせ後から戦い方を変えた。正面からの戦闘は無理、搦め手なんて使ったところで力の差を埋めることはできない。これらを直に感じ取った結果、俺は一つの答えに行き着いた。
ずばり、攻撃の全回避を目指すというものだ。スピード、パワー、ガードに関しては向こうが上であったとしても、悟飯の攻撃が当たらなければどうということは無い。どうということは無いが、そもそも悟飯の攻撃を避けることは普通にやったら無理だ。
だけど俺は小さい頃に父さんとトーマさんたちに揉まれた結果、どの箇所に攻撃が来るかがなんとなくわかるようになった。カリン様のところに行った時なんかは、外界の情報を相手のみに集中させることで通常以上に未来の動きを予測することさえできた。フリーザとかと殺し合うようになってからは考えなきゃいけないことが複数存在していたせいで一切使うことがなかったし使えなかったけど、ことこの場においては考えることはただ勝つことだけかつ回避のみに重心を置く関係上、何よりも重要な技術だった。実際これらがなかったら回避すらできなかった。
1秒2秒先ではなく、0.1秒00.1秒先を読み続けてどんな動きをしてそれ以外にどんな動きをするのかをひたすら予測し、それに沿うようにして攻撃を避けていく。殺す気の攻撃が飛んでこないからこそ回避のみに集中できる。もし悟飯が殺す気の攻撃をしていたなら、最初の攻防で死んでいるのは自分だった筈だ。
悟飯からしたらいきなり攻撃をしなくなり、ひたすら回避をし続けるようになった様は不気味に映っただろう。ほんの少しの身じろぎにすら数多の情報を拾うようになった状態だったから、ちょっと時間が経てば目と鼻から血を流すようにもなってたし、しかも界王拳を使わなければ予測するだけで体が付いていけず、並行して界王拳を維持していたからどんどん俺の体がボロボロになっていくのは見ていていい思いはしなかっただろう。
最終的に悟飯が棄権し、俺の勝ちとなった。終わった瞬間にぶっ倒れたことから思うに、悟飯の棄権があと少し遅れたら限界を迎えた俺の負けだったかもしれない。もしかしたら悟飯の体力切れまで粘ったかもしれないが、考えるだけ無駄だろう。
そして死ぬつもりはなかったとはいえ、せっかくの大会なのに酷い姿を見せてすまなかったと悟飯に謝れば、「おじさんの執念に負けただけです。どれだけ力の差があっても諦めないおじさんに、尊敬すらしましたから」と言ってくれた。こんな叔父を尊敬してくれる悟飯をとても誇らしく思う。
ただ、死体寸前になったのは事実なので関係者総出で説教を受けた。リンのギャン泣きとパンジの涙で心が死にそうになり、父さんの拳骨で三途の川に行きかけた。今の俺は死んでも蘇ることなく消える状態なので父さんたちのキレ具合も当然のこと。本当にごめんなさい…。
そして準決勝も終わり―――
『―――皆さん、ついにこの時が来ました!!トラブルが発生し一時は中止も考えられていた今回の第二十五回天下一武道会、決勝戦の幕が開きます!!』
昔以上の観客から大歓声が響き、アナウンサーさんがこちらへと手を向ける。
『最強の頂点を決める戦いを彩るのは、この二人!!兄弟でありながら、二度もこの天下一武道会の舞台でどちらが強いかを決めんと出場!!そして三度目の正直と言わんばかりに名立たる戦士を跳ね除け、リベンジマッチのチャンスを掴み取ったのはこの人、孫海選手っ!!優勝経験者である天津飯選手を破り、執念の意地を持って孫悟飯選手に勝利し、この決勝の舞台へと勝ち上がりました!!』
「「「「「わあああああああっ!!!」」」」」
「海さーん!頑張ってーーっ!!」
「父さん、負けないでっ!!」
「兄貴ー!カカロットに負けるんじゃねぇぞー!」
そして今度は反対側へと手を向け、より会場のボルテージを引き上げていく。
『対するは!!トーナメントの初戦からベジータ選手と共に見ているだけで興奮してしまう最高の試合を作り出し、ピッコロ選手と18号選手を打ち破り、またこの決勝の舞台へと歩を進めた今大会の優勝候補!準優勝、優勝を経験し、さらなる勝利を掴まんとリベンジに受けて立った戦士、孫悟空選手です!!』
「「「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」」」
「悟空さー!頑張るだよー!!」
「お父さーん!ボクの仇を取ってくださーい!!」
「やっちゃえお父さーん!!」
「孫君、がんばれー!……ベジータは応援しないの?」
「するわけがないだろう」
あの時のように悟空と向き合う。俺と悟空に向けられた応援を背に、闘志を漲らせていく。
「悟空…三度目の正直だ。今度こそお前に勝つ」
「悪ぃけど兄ちゃん、オラも負けたくねぇからな。今回も勝たせてもらうぜ…」
少しの言葉だけを交わして悟空と相対し、構えを取る。今はこれだけでいい。戦いの中で、溢れる思いのままに喋る時が来るから。会場中の音が小さくなり始め、ついには風のみが耳に届く静寂の時間が訪れる。
アナウンサーさんが喉を鳴らし、その手を振りかざした。
『第二十五回天下一武道会、決勝戦!!始めっ!!!』
始まりの合図に合わせて飛び出した肘と飛び蹴りが衝突し、島中にゴングを鳴らす。
◇◆◇◆◇
「オォ―――ッ!!」
「くっ!」
さすがの悟空でも初手飛び蹴りだとは思ってなかったのか、面食らった様子のまま受け身の防御姿勢に入った。勢いのままに悟空を踏み台にして飛び上がり、急降下をしてはまた飛び上がりと何度も繰り返して悟空へと追撃を重ねていく。三回目でバックステップを取られたことで回避されてしまって舞台に足が突き刺さるが、気にせず埋まったままの足で踏み込んで悟空へと接近する。
引き絞った拳を突き立てた瞬間に実体を捉えなくなり、風切り音と共にその姿が消えた。残像拳だ。気づいた瞬間、尻尾を掴まれる感覚がある。
「っ掴んだぞ!!」
「は、なせ!!」
「だありゃあああああ!!」
「うおおおお!?」
振り向きざまに裏拳を放つも、当たる寸前に振り回され始めて辺り一帯の景色が一転二転したかと思えば体全体に広がる衝撃を伴いながら視界が灰色の景色に支配された。しかもそれだけで終わらず、上へ下へと振り回され始め、何回も何回も地面に叩きつけられて場外へと投げ飛ばされる。何もしなければすぐさま観客席に突撃するだろう。
だがその程度で終わりはしない。すぐさま体を地面に向けて倒し、力強く舞台を叩いて宙に浮いて場外負けを防ぐ。
下で観客の人たちの驚く声を聞きながら舞台へと振り向けば、放り投げた姿勢のままこちらへと不敵な笑みを向ける悟空がいた。
同じ笑みが浮かび、本能のままに悟空へと突撃していく。待ち構えていた悟空と拳を重ね、体を引き寄せてヘッドバットで吹き飛ばせば即座に切り返してアームハンマーでお返しを放ってくる。立ち上がって手刀で切りかかってみれば白刃取りで掴まれて引き倒され、起きるのと同時に体を回転させて蹴り飛ばして仕切りなおす。
「……はは」
「……へへ」
漏れた笑みにすら気づかず、ひたすら悟空と殴り合う。殴り合い、蹴り合い、気弾を放って目くらましを作りながら気合砲をほぼ同時にぶつけ合う。
「はははは…!」
「へへ、ははは…!」
…あぁ。やっぱりお前との戦いは違う。クウラやジャネンバと向かい合った時なんかと比べ物にならないぐらいに心と血肉が沸き立つ。
お前がベジータと戦ってた時もこんな感じだったんだろうな。悟空を超えようとして、どこまでも肩を並べようと高みを目指すあいつとの試合は。俺の場合は多分、悟空だからこんなにも感情が溢れだす。
最初は小さくて、俺なんかよりも弱くて、俺が守ってやらないとって思うぐらいだった。いつしか俺と肩を並べるどころか追い抜いて行って、それに負けじと強くなろうとして…ベジータみたいに、悟空に勝つことが俺の戦う目的になり始めた。殺し合いが嫌いなのに、誰かに勝とうとするとどうしようもなく生き生きしてしまう自分がいた。勝った時には至上の喜びとすら言える多幸感に包まれる。パンジと結婚したときや、リンが生まれた時とは別ベクトルのその喜びは、やっぱり俺がサイヤ人だからなんだろう。
そんな思いは、悟空の拳からも感じ取れる。もっと強いやつと戦いたい、それと同じくらいに俺たちと戦いたい、もっともっと戦っていたいなんていう感情がわかる。というか目がすっごいキラキラしてる。
「はぁッ!!」
「ふっ!!」
斜めに蹴り上げた右足が後ろに体を倒されたことで空振り、返す刀で放たれた同じ角度同じ威力の蹴りを悟空の懐へと潜り込む形で回避する。
歓声が沸き起こり、俺と悟空の双方を応援する声がより強く、大きくなっていく。
「なぁ悟空、楽しいか!?」
「楽しいに決まってんじゃねぇか、兄ちゃん!!」
「そうか…そうだよな…!俺も心っ底楽しい…!!」
握った拳が稲妻を帯び、体中から紫電が迸る。高揚していく体が気を高めていき、少しずつ黄金のオーラへと変化していく。悟空もまた同様に変化し始め、逆立った髪の毛がさらに枝分かれして一房の髪が額へと降りる。
俺も悟空も、超サイヤ人2へと変化していた。
◇◆◇◆◇
決勝が始まる直前のことだった。控室で準備をしていた俺と悟空をベジータが呼び出し、あることを約束するように言ってきた。それは、決勝では超サイヤ人で戦うことだった。当然、俺と悟空も難色を示した。俺達だって超サイヤ人で戦いたい。だけど変身してしまえば、いらない人気を得てしまう。別にちやほやされたくて戦ってるわけじゃないから、そういうのは遠慮したいのだ。
しかしベジータは鼻を鳴らして口を開く。
「超サイヤ人にならないなど、言った本人の悟飯が破っているだろうが」
「……そういやそうだったな」
あの時、界王神様達が悟飯の超サイヤ人2を囮にしてバビディの野郎の拠点を探そうとしていた。結果的に見つかりはしたが、ベジータの言う通り超サイヤ人になってしまっている。
言われてみればベジータの言う通り、俺達が変わったところであんまり変わんないのか。ドラゴンボールで記憶が消えてるかもだけど、消えたのは魔人ブウに関することだしな……高望みはできないだろう。
「でもよ、超サイヤ人2以上じゃなかったらまじぃかもな。セルん時は普通の超サイヤ人だったし……」
「というかベジータ、急にどうした?決勝になったら超サイヤ人になれって……。お前だって初戦の時に超サイヤ人で戦いたかっただろうに」
「だが頂点を決める戦いで本気を出さずに終わるなど、愚の骨頂だろう。……カカロットとの戦いで超サイヤ人を封じたのは、悟飯への義理立てに過ぎん」
その言葉に納得したのは、メタルクウラとの決着を思い出したからだろうか。あの時、未来の悟飯とこっちの悟飯がいなければ俺達全員が何も出来ずに死んでいた可能性が高かった。セルが合流するまで耐えれるかも五分五分だった状況で生き残れたのは、偏に悟飯たちのおかげだった。それに対する義理立てだと考えれば筋も通る。
「だがカカロット。貴様の言葉を決して忘れるなよ。いつか超サイヤ人となった貴様を超え、オレがナンバーワンになってやる……!!」
「……あぁ。ぜってぇに忘れねぇよ、ベジータ」
◇◆◇◆◇
迸る気に身を任せ、荒ぶる大気を切り裂いて足を振るう。上へと振り上げた足に合わせて風が舞い上がり、刃ととなって悟空へと襲い掛かる。
片手で打ち払われた瞬間に悟空の周りに気弾を滞空させて集中砲火を浴びせようとすると、瞬間移動を行って俺の死角へと退避。気の操作を放り捨てて後ろへの蹴りを放つが、残像を切り裂くだけで感触は一切ない。咄嗟の判断で傘状のバリアを貼ると、気弾の雨あられが降り注いだ。
傘を作ることで耐えていると、降り注いでいた気弾の一部が傘を避けるように曲線を描いて飛んできた。バリアの形を弄り、両手を振り下ろすのに合わせて周囲を覆うバリアにすることで完全に防ぎ切る。
瞬間、背筋に悪寒が走る。足元で靴が擦れる音が聞こえたかと思えば、さっきまで感じられなかった気を感じ取る。
「マズ――――ッ!?」
「ダリャアアアアアアッ!!!」
防御を取ることすら間に合わず、悟空からの連打が体中に浴びせられる。滞空したままでほったらかしにされていた気弾を引き寄せることで注意を惹き、連撃を中断させるべく正面からも気功波を放つ。計画通りに悟空は連撃を中断し、飛び上がることで引き寄せた気弾と気功波がぶつかり合って爆発を引き起こした。
その爆炎に紛れつつ気を消すことで悟空の視界から消え、その時を待つ。
上空で悟空が気を溜めていくのが分かる。煙ごと俺を吹き飛ばそうとしてるんだろう。そして悟空がかめはめ波を放った―――その寸前に、瞬間移動で悟空の後方に移動する。
「ヤベ――――ッ!?」
「堕ちろッ!!!」
振り下ろした拳が悟空の頬を打ち抜き、大きな音を立てながら舞台へと墜落する。
「界王、拳ッ!!!!オオオォォォラアアアアッ!!!」
「が、はぁっ……!?」
落ちるスピードにも負けない速度で悟空へと接近し、舞台に接触するのと同時に鳩尾へ右腕を突き立てた。昔グルメス王国の王様に使った衝撃波モドキも併用しているから、かなりのダメージを与えられたはず。しかも界王拳込みだ。超サイヤ人2の状態で使ったからこっちもかなりきついけど、悟空もかなりしんどいだろ!!
「ハァッ……ハァッ……!!」
「ゲホッゲホッ!くっ……ハァッ……ハァッ……!!」
さすがに息が上がり、少しでも呼吸を整えるために距離を取る。悟空もまた起き上がって息を整え、こちらを見据えている。どっちも傷だらけだし、攻撃の余波で道着もボロボロだ。そしてボロボロ具合では内側も同様だろう。俺は超サイヤ人2に界王拳を併用させるなんて無茶したから、気を抜けば倒れてしまいそうだ。でも悟空だって、その界王拳超サイヤ人2の衝撃波モドキをモロに喰らったから、ダメージレースはトントンの筈…!
『な、なんという試合でしょうか…!!息つく暇もなく交わされた攻撃で、双方ともにかなりのダメージを負っています!!これが天下一武道会、これこそが頂点を決める戦い!!皆さん、目を逸らす暇なんてありません!!今我々は、この星に刻まれる歴史の証人となっているのですから!!』
「す、凄ぇな……!体がなんかブレたと思ったら違うところにいるし、ぶつかったと思ったら風がこっちまで飛んでくるぞ!」
「あの孫悟空という選手が少年の時から見ていたが、どこまでも強くなっていくのう……」
「というかあの金髪、どっかで見たことがあるような……でもあんな髪型だったかなぁ……?」
金髪で案の定思い出しそうになってる人がいるな……。そのまま忘れててくれ。
「へ、へへ……そろそろ後半戦ってとこかな?」
「あぁ……こっからが本番だ……!」
ボロボロになった道着を脱ぎ捨て、残っている気を練り上げていく。悟空もまた山吹色の道着を捨てて気を高めていき、少しずつ髪の毛が腰へと伸びていく。練り上げられた気が体から放出されて辺り一帯を大きく揺らしていく。
二つの気が呼応し、地球と共に宇宙を揺らしていく。それは宿舎で一味全員でテレビを見ていたボージャック達も、最近になってようやく修復が完了した界王神界で見ていた界王神達も、地獄で観戦していた悪人たちもそれを感じ取る。
「「ハアアアアアアッ!!!ァァァアアアアアッッ!!!!」」
腰まで伸びきった髪が風に揺れ、過剰なまでに放出された気が体全体でスパークする。やはり超サイヤ人3となると開放的な気分になり、少しばかり体が楽になった気がする。
「……あれが悟空たちの、全力……」
「こ、ここにいるだけで震えが止まらねぇぜ……!くっそ~!こんな時になんで野球の試合が入ってたんだよぉ……」
「ヤムチャさん、めちゃくちゃ悔しそうですね……」
「当たり前だろ!オレだって格闘家だ、あの二人と戦ってみたくも思うさ!」
「ふっ……不貞腐れて目を逸らすやもしれぬと思ったが、杞憂だったようだな」
「……こっからが、本当の戦いだ」
「あぁ。勝てなくて泣きべそかくんじゃねぇぞ……!」
「そっちこそ……!」
浮き上がった体に引っ張られるように舞台の石畳が捲れ上がり、観客席よりも上の高度辺りで俺と悟空から離れて舞台へと落ちていき、粉々になって土煙を起こす。一つ、また一つと落ちていく。そして最後の一個が落ちていき……砕けた。
「「だああッ!!!」」
砕ける音を合図として悟空へと突撃すれば、向こうもまたほぼ同時に突っ込んでくるので右ストレートで迎え入れる。悟空もまた右ストレートでお返しをしてくるので、腕同士が擦れ合って軌道を少し変えながら頬へと突き刺さる。ただただ同時に頬を殴り合っただけで風が吹き荒れ、衝撃波が会場を揺らした。
突き立てた腕を引く反動を利用して掴みかかると、悟空もまた掴みかかっていたようなので右手も出してクロスの形を取りながら指を絡めあって拮抗勝負に突入する。悟空が押し勝つか、俺が押し勝つかの勝負だ。
「ずあッ!!」
「くっ!」
手で押し合いながら悟空の膝蹴りが飛んでくる。後手に回ったものの、ギリギリのところで膝を割り込ませて防御する。お返しとばかりに体を傾け、急に押し合いの拮抗関係が崩れて態勢を崩した悟空へと頭突きをお見舞いする。しかしタダでは転ばなかったようで、今度は膝蹴りではなく前蹴りで防御ごとぶっ飛ばされた。腹に命中したせいで息を吐きだしながら手を離せば、悟空もまたそれに応じて手を離してファイティングポーズを取って接近する。そりゃそうだ。相手が隙を晒してるのにわざわざ時間をかける意味は無い……だけど、俺がただ蹴られた程度で手を離すと思ったか……!
「はあああ――――ッ!?」
「近づいてくれてありがとよ!偽・魔口砲ッ!!!」
「うわああああああ!?」
「おいおい、カイのやつ大猿じゃねえのに馬鹿でけぇ気功波を口から出しやがったぞ!」
「消耗が激しい代わりに凄まじいパワーを得る超サイヤ人3だからこそあんな無茶ができる…!超サイヤ人2じゃああそこまででけぇ気功波を吐き出せやしない…!」
「か、カカロットがエネルギー波に飲み込まれちゃった……!あんなのモロに喰らったらやばいんじゃ……!?」
「そりゃねぇな。見ろ、カカロットのやつは飲み込まれる寸前に防御に移ってやがったからな、カイの予想よりもダメージが少ねぇ」
「あの時、お父さんが海おじさんに違和感を感じたのか、すぐさま防御態勢に移ってましたからね……。ボクでも気づけるかどうかわからなかったのに、どうやって父さんは気づいたんだろう……?」
「簡単な話だ」
「ベジータさん?」
「カカロットのやつがカイのことをよく知っていただけに過ぎん。オレ達が地球に来る前から、カカロットのやつはカイと共に生きていたんだ。些細な変化など気づけんわけもない」
「確かに……」
「おー……!トランクス君、お父さん達の動きが見えないぐらいに速くなったよ!」
「は、速すぎんだろ……!今どこにいるんだ!?こうなったら超サイヤ人になって……」
「無理に目だけで追うからわからないだけだ、トランクス。わざわざ超サイヤ人にならなくとも、気と風の動きにもう少し意識を割けば場所ぐらいはわかる筈だ」
「う、う~…!気と風、気と風……!……ま、まだ完全じゃないけど、少しわかってきたような……!」
瞬間移動を交えながらの攻防戦が続き、少しずつ体の生傷が目立つようになってきた。さっきの偽・魔口砲を喰らってたから悟空の方が少し動きが鈍いけど、俺の方は超サイヤ人3の消耗にそろそろしんどさを覚えてきた頃だ。ちょっと息が上がってきたし、まだまだ超サイヤ人3の改良には至ってない。だというのに、悟空のやつはそこまで超サイヤ人3で消耗している印象を受けない。息が上がってきてるのは、どっちかというとダメージのせいで体力が減ってきたからっぽいんだよな。……。
「……まさか悟空、お前超サイヤ人3を……!?」
「ハハ、さすがにバレちまったか……。少ししか時間は無かったけど、なんとか物にしてみせたぜ…!」
悟空の超サイヤ人3の消耗が少ない理由、薄々脳裏に過っちゃいたけど、超サイヤ人3の改良に成功していたからか……!まずい、こうなってくると不利なのは俺だ!いくらダメージレースで勝ってたって、消耗が激しい俺の方が息切れするのが早い。そうなれば逆転の目なんていくらでも出来ちまう!もっと早めに勝負を仕掛けるべきだったか…!?いやでも悟空相手にそれは博打過ぎるしな……。
「へへ……ッ!ドッキリ大成功、ってな」
「くっそ~!してやられたよ……!……だけどっ!」
「まだまだ勝負はここから、だっ!!」
引き絞られた悟空の右腕と俺の左腕が衝突し、どっちが先に相手へ攻撃を届かせるかの攻防戦が始まる。何度も何度も攻撃し、何度も何度も回避する。こっちからしたら体力切れが来る前に決着を着けたいのに、たった一撃を与えるまでがあまりにも遠い。ラッシュに加えて尻尾で態勢を崩し、舞台へと叩き落そうとした瞬間に目の前が輝き、爆発した。鳩尾あたりが特に痛いところから考えるに、強引ではあるが気弾を押し付けられた……!
煙を貫いて悟空の手刀が首目掛けて飛んでくるのを避け、お返しに脇腹へとフックを放つ。悟空が呻いた瞬間にかめはめ波を構え、俺にしたように体へと押し付ける。放つ寸前に悟空が笑ったかと思えば、体が霞のように消え去ってかめはめ波が宙を割くだけに終わった。
「残像拳……!?」
「瞬間移動も混ぜた、瞬間残像拳ってとこだ!だりゃあッ!!」
「ちぃッ!?」
◇◆◇◆◇
悟空の心は凄まじい満足感に満ち溢れていた。それは、懐かしの天下一武道会で戦うことができたことや、ピッコロや18号と戦ったこと、超サイヤ人無しではあるが初戦からベジータと勝負ができたことも起因しているだろう。だが何よりも満たすものは、目の前にいる兄との闘いだろう。
兄との出会いはずっと昔、悟空自身が忘れてしまった幼いころから始まった。最初は兄が強く、目指す強さは兄を超えることだった。時が流れて兄に勝利し、兄以上の強者との激闘を経て更なる強さを目指すようになった。そしてさらなる強さを目指すうちに、恐らく悟空の人生における永遠のライバルと言えるベジータとの出会いもあった。ベジータと切磋琢磨し、己の限界に挑み続ける日々の中、悟空はあることについて考え始める。
悟空にとっての海は、どんな存在と言えるのかということを。
海が兄であることは疑いようもない。一時期己の命を狙いに襲い掛かってきた二人目の兄であるラディッツの記憶が無いように、惑星ベジータでのカイを悟空は知らない。たまに海や悟飯と共に修行をしている時あるので、その時の雑談の話題に上がる拍子に少しは聞いたことがあるが、だからと言って惑星ベジータでの記憶が蘇るわけでもない。しかし今は亡き悟飯じい様と共に過ごし、兄として悟空を見守っていてくれた。悟飯じい様を踏みつぶしてしまいそうになった時だって、彼が助けてくれた。悟空や仲間達が危機に陥った時、彼のおかげで何とかなった場面だってある。
戦いだけではない。日常生活の場面でも農業について彼自身が培った技術を惜しみなく教えてくれたし、チチが「修行ばっかしてねぇで、悟空さも働いてけろ!」と火山が噴火することも無いように便宜を図ってくれる。海自身が起業した会社で働きながら修行もできるし、給料もかなり出ているのでチチを困らせることもない。
フリーザとの戦いで海が自爆した時には、理性をかなぐり捨ててしまうほどの怒りが沸き起こった。あの時兄は魂が不完全だった関係上、一度死んでしまえばドラゴンボールでの復活ができないでいた状態だった。後から聞いた話ではあるが、兄に取り憑いていた両親がなんとかしてくれたおかげで今も健在ではあるものの、もし兄が死んでしまったままだったならば、いくら悟空でもその身に力が入らない時期があったであろうことは容易に想像できる。
兄の尻尾が棒のように伸縮しながらこちらの蹴りを妨害するのを感じつつ、体力が切れてきた兄を追い詰めるべくラッシュを掛けていく最中も、少し余裕ができたために思考する。ベジータやピッコロとは少し違う。昔の二人のような苛烈さも無く、彼らほどの野心のような己を超えようとするほどの熱量を海から感じたことはない。どちらかというと、夏の日差しを浴びているような熱量に近い。クリリンやヤムチャ、天津飯達のような尊敬混じりのものにも近しいだろうか。「尊敬しつつ、だけどお前にも勝ってみせる」というべき熱量。
しかしそれ以外に、悟空はある思いを海に抱いている。それは、「安心感」。他の仲間たち以上に海がいるときは安心感を持てるのだ。クリリン達ならば「これなら……!」という期待に近く、ベジータ達なら「お前となら、どこまでもいける!」という前へ前へと進む推進力のような感情になる。だが海となると、「兄と一緒ならば、もう大丈夫」という安心感を抱く。何故兄だけは違うのかと考え―――とあるドラマを思い出す。
悟飯曰く、昔からある刑事ドラマ?というものなのだとか。それは二人の刑事が様々な事件に真実を求め、追求していくもの。あまりドラマなどに興味がなかった悟空にとって何故か記憶に残りやすかったものだった
(――――あぁ、そうか。もしかしたらオラにとって兄ちゃんは……”相棒”っちゅうやつなんかなぁ)
認めるかは不明ではあるが、時として協力するベジータを「ライバルで相棒」と例えるのならば、海は「相棒でライバル」であると位置づけられる。
共に切磋琢磨し、力を合わせて戦おうものならば言葉にしがたい暖かさを感じる存在。だから、相棒。脳内ではあるが、言葉にしてみるととてもしっくりくる。
「なあ兄ちゃん!」
「あぁ!?なんだ!」
「オラと兄ちゃんってさ、危ねっ!?相棒っちゅうやつなんかなぁ!?」
「相棒!?なんで急に、ごはぁ!?っぺ!相棒って、うーん……!今まで考えたことなかったけどっ、案外しっくりくるな!そこぉッ!!」
「痛ってぇ!?」
兄に確認を取ってみれば向こうも違和感が無いらしい。ならばやはり相棒と言うのは間違いではないのかもしれない。
スッキリしたところで現状を確認してみれば、悟空も海もかなりのボロボロ具合だった。上着は攻撃によって吹き飛び、ズボンは所々穴が開いてしまっていて傷が痛々しく映る。ダメージと消耗した体力を鑑みたとしても、おそらく次が最後の一撃となるだろう。消耗が激しいままに戦い続けた海はすでに限界に近く、意地を見せた海の攻撃によって悟空の体力もまた限界だ。
「ハァッ……ハァッ……!次が、最後の一撃になりそうだな……!!」
「へ、へへ……!そ、そうなりそうだな……!!」
どこまでも上がり続けるボルテージがついに限界に達し、とうとう最終局面に至ったことを観客も理解したようで、どっちが勝つのか心臓が爆発しそうになりながらも待っている。悟空達の仲間たちも同様に、その瞬間を今か今かと待っていた。
「ぐ、うぅ……ッ!!お、オラだって兄ちゃんに勝ちてぇ、からな……!!ッハアアアアアアアッ!!ァァァアアアアアアアアッ!!!ッッフルパワーだああああああッ!!!!」
「な、なにぃ……ッ!?」
海から距離を取って残った気を振り絞り、最後の一撃を放つべくフルパワーの超サイヤ人3へと至る。しかし残ったすべての気と体力を使いきるため、避けるか、耐えきられでもしたら動くことすらできずに負けてしまうだろう。しかし現状の海とのパワー差は歴然。悟空のようにフルパワーの超サイヤ人3には成れず、激しい消耗によって避けることはおろか、耐えることもできないだろう。ならば必然として、真っ向勝負で打ち破るほかない。
どう考えても不可能としかいえない勝負を前にして、海は―――
「――――ハハ、それでこそ悟空だ……!!」
笑っていた。驚きはしても、悟空ならばやるという確信を持って驚きを噛み潰して獰猛に笑う。それでこそサイヤ人、それでこそ悟空なのだと。だからこそ打ち破らなければ気が済まないと。
少し悟空よりも高い位置に移動し、己もある博打に備える。今ならば、最高に好調な今の自分ならばできる、と。
「ハ、アアアァァァ……!ァァァアアア……!」
海が気を溜めながら掌握しようとし始めた瞬間、黄金に輝くオーラが赤を帯びる。それと同時に体の節々が激痛を訴え、すでに限界を迎えていることを体の持ち主に伝えようとする。しかし訴えを無視しながらどんどん気を操作していく。
「ッハアアアアアアア!!だあああああああッ!!!」
体全体を目が痛くなるような赤い光が包み込み、元々の存在感をさらに強く、大きくしていく。そして完全に赤に染まり切り―――
「超ッッ!!!界王拳だああああああああッッッ!!!!」
「く……っ!?」
超サイヤ人3をさらに倍増させたパワーが現れ、フルパワーに至った悟空の超サイヤ人3の気と呼応し合う。しかし限界に至った海の顔は芳しくなく、額を冷汗が幾度となく流れては落ち、あらぬ方向に手足が曲がろうとしてしまう。悟空と同様に、こちらも一撃限りの勝負となる。
「ッ行くぞおおおおおおおおおッ!!!」
「おおおオおおオオおおおオッ!!!」
限界まで力を込められた悟空の右腕が、上空から撃ち抜かんと突き出された海の右足が放たれた。
「「貫けえええええええええッッ!!!!」」
黄金色の巨龍と深紅の巨龍が咆哮を響かせながら空を駆ける。
巨龍同士が衝突し、地球どころか宇宙そのものを揺らす爆発が引き起こされた。
爆炎の中から二人分の人影が見えたかと思えば、少しずつ大地へと落ちていく。巨龍同士の衝突の原因である海と悟空だった。すべての体力を振り絞って放たれた技の反動により、双方同時の気絶と相成った。
少しずつ、少しずつ舞台へと近づいていき……
「ぐへぇッ!?」
「ぐはあッ!?」
悟空が場外に落ち、海が舞台の角っこに体をぶつけながら悟空を下敷きに着地した。
つまり。
『ッ!!!じょ、場外!!!孫海選手、優勝ーーーーーッ!!!第二十五回天下一武道会、優勝は孫海選手ーーーーーッ!!!!』
「わああああああああああ!!!」
「海さんが、海さんが勝ったぁ!」
「父さーん!おめでとー!!」
「兄貴ー!よくやったぞー!」
「やっぱりあいつら凄ぇな……!カイー!おめでとさーん!」
「悟空ー!よく頑張ったなー!海もおめでとー!」
「二人とも、本当にお疲れ様ー!!」
様々な労いの言葉や声には出さず拍手での祝福を浴びながら、悟空と海は二人して顔を合わせて笑い合う。
そして海は声に応じるように、震える右腕でサムズアップを天に突き立てた。
次回、ドラゴンボールZ編最終話。
それでは皆さん、よいお年を。